デイサービスの看護師はどんな仕事?給料や働くメリットデメリットを紹介
「デイサービスの看護師ってどんな仕事をするの?医療処置もあるのかな?」
「デイサービスの看護師はなぜ給料が低くなるの?」
デイサービス(通所介護)への転職を考える方の中には、このような疑問を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
厚生労働省の調査によると、看護職員全体で病院に勤務する人の割合は58.3%とされています。そのため、デイサービスの看護師はどのような仕事であるのか想像できない方もいらっしゃるでしょう。
また、病棟の看護師と比べて、夜勤がないことや医療処置をする機会が少ないことから、デイサービスの看護師は給料が低い傾向にあります。
本記事では、デイサービスでの看護師の仕事内容や看護師がデイサービスではたらくメリットとデメリットをくわしく解説します。
最後までお読みいただくと、デイサービスの仕事やメリットがわかり、転職先を検討するポイントをつかめるでしょう。
デイサービスの看護師の仕事内容
デイサービスの看護師の仕事内容は以下のとおりです。
- 健康状態の確認
- 服薬の管理と支援
- 医療ケア
- 日常生活の介助
いずれも利用者さまがデイサービスで安全にすごすために大切な業務です。それぞれくわしく解説します。
健康状態の確認
デイサービスの看護師は、利用者さまの健康状態をチェックし、1日の活動内容を介護職と連携して、調整します。
デイサービスでは、リハビリや入浴を目的に通所している方が多くいらっしゃいます。
そのため、血圧や脈拍、体温などのからだの状態をチェックすることで、利用者さまがリハビリやケアを安全に受けられるのか、看護師が状態を把握して検討なければなりません。
それぞれの数値が正常値であるかだけではなく、利用者さまの日々の数値から変化や異常がないかを理解することがポイントです。
さらに、感染症の兆候をいち早く見つけることも、デイサービスの看護師にもとめられるスキルでしょう。デイサービスでは利用者さま同士で行うレクリエーションもあることから、比較的接触の多い場所です。
感染予防や、感染対策も大切な業務です。
服薬の管理
利用者さまが持参した薬を管理することも、デイサービスで働く看護師の重要な業務です。
デイサービスに通う利用者さまは、疾患により薬を飲んでいるケースもあります。持参した薬の内容に間違いがないか、副作用はないかなど介護職の方と情報共有してかかわらなければなりません。
そのため、デイサービスの看護師は利用者さまの疾患と薬を知っておくことが大切です。
医療ケア
デイサービスでは、看護師がおこなえる範囲での医療行為をすることがあります。医療行為の例として、以下があげられます。
- インスリン注射
- 点眼
- 軟膏の塗布
- けがの応急処置
- 胃ろうの管理
- 爪きり(爪に異常があるもの)
医療行為をおこなう機会が少ないとはいえ、これらのスキルは持っておくと転職活動する際に有利に働くでしょう。
日常生活の介助
デイサービスの看護師は、入浴や排泄などの日常生活を援助する場合があります。
デイサービスでの日常生活の援助は介護職の方が中心となって行いますが、そのサポートもデイサービスの看護師の重要な業務です。
看護業務以外でも利用者さまとかかわることで、利用者さまの健康状態やADLの把握をすることができます。
そのため、利用者さまの食事や排泄、入浴時の様子などを知っておくと、細かい変化にも気がつくことができるでしょう。
デイサービスの看護師の給料
デイサービスの看護師の給料を「平均月収」「平均年収」「平均時給」にわけてまとめました。転職を考える際の参考にしてください。
それぞれくわしく解説します。
デイサービスの看護師の平均月収は約37万円
厚生労働省の調査によると、デイサービスで働く看護師の平均月収は37万5,327円です。
以下はほかの介護施設で働く常勤看護師との年収を比較したものです。
介護施設 | 平均月収 |
デイサービス | 37万5,327円 |
介護老人福祉施設 | 45万5,491円 |
介護老人保健施設 | 46万9,573円 |
訪問看護ステーション | 46万3,927円 |
デイサービスでは医療処置をする機会がほとんどなく、夜勤がありません。
そのため、医療ケアや夜勤がある介護施設や訪問看護ステーションなどと比較すると、デイサービスの看護師の給与はやや低い傾向です。
デイサービスの看護師の平均年収は約447万円
デイサービスの看護師の平均年収は447万4,596円です。
一方で、厚生労働省の調査をもとに算出すると、役職のない看護師の平均年収は約508万円(計算:平均月収35万2,100円×12ヶ月+平均賞与約85万6,500円)です。デイサービスの看護師の年収は約60万円の差があります。
デイサービスで働く場合、夜勤がなく残業もない場合もあることから、夜勤手当や残業手当など支給される手当も少ないです。また、病院勤務では資格手当や手術室勤務手当などがある場合もありますが、デイサービスではこれらの手当てがありません。
そのため、デイサービスの看護師の平均年収は病院や施設の看護師よりも低い傾向にあります。
デイサービスの看護師の平均時給は約1,600~1,800円
デイサービスの看護師の平均時給は約1,600~1,800円といわれています。
ただし、デイサービスの看護師の平均時給に関する公的な調査では明らかにされていません。求人情報での相場であるため、あくまでも参考としてください。
デイサービスの看護師の給料が低い傾向である4つ理由
デイサービスの看護師の方は、病院や施設で働く看護師の方の年収と比べて、やや低い傾向がわかりました。その理由として以下の4つがあげられます。
- 夜勤がない
- 支給される手当が少ない
- 医療処置をする機会が少ない
- 介護保険で地域ごとに格差がある
それぞれ解説します。
夜勤がない
デイサービスでは夜勤がないため、給料が低い傾向です。
というのも、看護師の年収は夜勤手当に左右されやすいためです。看護師の夜勤手当は以下の表を参考にしてください。
勤務形態 | 平均手当額 |
3交代制(準夜勤) | 4,234円 |
3交代制(深夜勤) | 5,199円 |
2交代制(夜勤) | 11,368円 |
たとえば、2交代制で月に4回夜勤をすると、1か月あたり4万5,472円が夜勤手当として支給されます。さらに、定額の夜勤手当のほかに、夜勤回数に応じで手当を支給している病院は20.5%あります。
デイサービスのシステム上、夜勤がなく夜勤手当がもらえないことからデイサービスの看護師の給料は低めであるといえるでしょう
支給される手当てが少ない
デイサービスの看護師は、病院と比較して夜勤手当やオンコール手当など支給される手当が少ないです。
デイサービスは、日中のみの勤務でありオンコールシステムがありません。日曜・祝日など出勤や残業があまりないことから、残業手当や休日手当などはつかないことが多いです。
そのため、支給される手当が限られており、病棟の看護師よりもデイサービスの看護師は給料が低くなる傾向があります。
医療処置をする機会が少ない
デイサービスで働く場合、医療処置をする機会は少ないです。
理由として、デイサービスを利用する方は医療処置を必要とする方が少ないからです。
デイサービスの利用者さまは、比較的状態が安定している方が多く、デイサービス自体が病院のように治療に主軸を置いた場所ではないからです。そのため、医療処置を必要としないか、もしくは必要な利用者さまでも重症度の高い医療処置ではなく、シンプルな医療処置が大半です。ません。
デイサービスの看護師が医療処置をする機会は、病棟の看護師よりも少ないことから給料が低くなる要因のひとつとも考えられるでしょう
介護保険で地域ごとに格差がある
デイサービスは介護保険を利用したサービスであるため、デイサービスの所在地によって介護報酬が異なります。
介護報酬が高い地域ほど、スタッフの給料に反映されやすいです。たとえば、介護報酬は1級地(+20%)~7級地(+3%)まであり、もっとも高い地域は、東京都23区で「+20%」です。
都市部ほど介護報酬が高い傾向にあるため、地方のデイサービスで働く看護師の方は給料が低いかもしれません。このように地域差があるため、高収入を得たい方は、介護報酬を参考にデイサービスの求人を探すのも一つの方法です。
デイサービスに転職するときに看護師の給料アップを狙うポイント
デイサービスへの転職でより高い給料を得るために、以下のポイントをおさえて求人を探しましょう。
- 応募先の規模を確認する
- 応募先の福利厚生をチェックする
- 都市部の求人に応募する
それぞれ解説します。
応募先の規模を確認する
高収入を得るためには、デイサービスの規模を確認することもポイントです。
事業所の規模が大きくなるほど、さまざまな手当がもらえる傾向にあります。
そのため、経営母体が安定している大手の法人を目指すのも高収入を狙う方法のひとつです。
応募先の福利厚生をチェックする
応募先の福利厚生は年収に影響しやすいため、しっかりチェックしましょう。
たとえば、デイサービスは事業所によって賞与(ボーナス)がない場合や、支給されてもその額はデイサービスの経営状況により異なることもあります。
そのため、応募するときに応募先のホームページを確認して賞与支給の実績、利用者数の推移、決算報告書などからデイサービスの経営状況を推測することがポイントです。
都市部の求人に応募する
先ほど、紹介したようにデイサービス事業所の所在地が、都市部であるほど介護報酬が高いため、スタッフも高収入が期待できます。
介護報酬は、デイサービス事業所が所在する地域によって国で定められています。実際の調査では、介護職の基本給がもっとも高い地域ともっとも低い地域で約5万円の差があることがわかっています。介護職と同じように、看護師でも同じようなことがいえるでしょう。
これは介護報酬の差がひとつの要因であると考えられています。
高収入を得たい場合は、1級地である東京都23区や2級地の神奈川県横浜市または川崎市など高い等級地にあるデイサービス事業所の求人を視野にいれるとよいでしょう。
デイサービスの看護師で働くメリット
デイサービスの看護師で働くメリットは、規則的な仕事であるほかにもいくつかあります。
それぞれご紹介します。
デイサービスの看護師はワークライフバランスが保ちやすい
デイサービスで働く看護師の方は、ワークライフバランスが保ちやすいです。
とくに、子育て中の看護師の方やプライベートの時間を確保したい看護師の方は、デイサービスで働くことが、家庭と仕事のバランスを維持しやすくなります。
デイサービスの看護師は日中のみの勤務で夜勤がありません。さらに、デイサービスの営業は夕方で終了するため、退勤の時間も早い傾向です。
こうしたことからデイサービスの看護師は、家庭やプライベートの時間を確保しやすく、ワークライフバランスを保ちやすいといえるでしょう。
デイサービスでは急変の対応が少ない
デイサービスでは急変対応が少ないため、精神的な負担が病棟の看護師より少ないことが特徴です。
そもそもデイサービスに通う利用者さまは、疾患があっても状態が安定しているケースが多いです。急に体調不良となる方もいらっしゃいますが、病院や施設と比べても少ないです。
病状が不安定な患者さまを担当する病院よりは、看護師がこころに余裕をもてること、デイサービスで働く看護師のメリットかもしれません。
そのため、久しぶりに看護師として働く方にとってもデイサービスで働くことはおすすめです。
デイサービスではコミュニケーションを取りやすい
デイサービスの看護師として働くメリットに、利用者さまとのコミュニケーションの取りやすさがあげられます。
デイサービスの利用者さまは、サービスを利用しているものの元気な高齢の方が比較的多いです。
看護師は、認知機能の低下を予防したり、利用者さまに楽しんでもらったりする目的でコミュニケーションを取ります。さらに、ご自宅での状態や生活状況をヒアリングすることで、利用者さまの困りごとの解決に役立つでしょう。
「もっとコミュニケーションを取れる環境で働きたい」「話すことが好き」などと感じる看護師の方はデイサービスで働くことが向いているといえます。
デイサービスの看護師として働くデメリット
デイサービスで働くメリットがある一方で、以下のデメリットがあげられます。
- 「看護師1人しかいない」という不安
- 看護スキルが向上しにくい
- 求人が少ない
これらについて、くわしく解説します。
「看護師1人しかいない」という不安
デイサービスの看護職員は「単位ごとに専従1人以上」の配置が義務づけられています。
そのため、施設内に看護師が1名だけというところもあり、この点に不安を感じている看護師の方もいるでしょう。
ただし、デイサービスに通う利用者さまは介護度が低かったり、医療ニーズが低かったりなど状態は落ち着いています。
利用者さまが急変したときには協力医の指示を仰いだり、救急車を手配したりなどマニュアルに沿って対応できるようにシミュレーションしておくことが大切です。
デイサービスの看護師は看護スキルが向上しにくい
デイサービスでは、看護師が清拭や洗髪などの清潔ケア、救急時の処置、検査データからのアセスメントをする機会が医療機関よりも少ないです。ただし、デイサービスでは利用者さまとコミュニケーションを取ったり、介護業務を担ったりすることもあるため、以下のようなスキルを得やすいです。
- 利用者さまとのコミュニケーションスキル
- 生活介助のスキル
- 機能訓練のスキル
- レクリエーションに関するスキル
今後、専門看護師や認定看護師などの新たな資格にチャレンジしたい方にとっては、デイサービスで働くことで要件を満たせず不利に働くかもしれません。
デイサービスの看護師の求人が少ない
デイサービスの看護師は、求人が少ないことがデメリットのひとつです。
デイサービスの看護師は、1つの事業所で1〜2名ほどしかいません。
デイサービスの看護師は求人が限られるため、転職したいと思ったときに希望する職場の募集がない可能性があります。
デイサービスの看護師に関するQ&A
デイサービスの看護師に関するよくある質問にお答えします。
デイサービスで看護師は採血できますか?
デイサービスでは、所属するデイサービスの看護師が採血するケースはほぼありません。
採血は、医師の指示がないとできないことや、検査や治療が必要である利用者さまは病院への受診を促すからです。
採血を経験したい方にとっては、デイサービスで働くことは向いていないと言えるでしょう。
デイサービスで看護師が休んだ場合、どうなりますか?
デイサービスの看護師が休んだら、同じ法人内の看護師がサポートに回るのが一般的です。
デイサービスの看護師は、単位ごとに1名以上の配置が義務付けられています。
ただし、デイサービス営業中のすべての時間に従事する必要はないとされています。
「看護職員については、訪問看護ステーション等と連携し、健康状態の観察を行った場合には、人員配置基準を満たしたものとする。」とあります。
引用元:参考資料3 参考資料(通所介護・療養通所介護) (mhlw.go.jp)
そのため、デイサービスの看護師が休んでも、同じ法人の介護施設や訪問看護ステーションで働く看護師が、業務や訪問の合間にサポートする形でも問題ありません。
デイサービスへの転職を検討している場合は、上記のようにサポートを受けられる体制にあるのか確認しておくと安心です。
まとめ
デイサービスの看護師の年収は約447万円で、一般の看護師よりも約60万円少ないです。
その理由として、夜勤がないことや支給される手当が少ないことがあげられます。
デイサービスの看護師は給料が低めであることがデメリットですが、病棟勤務よりも精神的な負担が少なく、ワークライフバランスが整いやすいことがメリットです。
「デイサービスで働きたいけど、少しでも給料が高いところに転職したい」と、考えている看護師の方は、規模の大きい事業所やボーナスのある事業所を検討しましょう。
参考文献・サイト
厚生労働省 図表1-2-24 看護師の平均賃金(役職者除く)(月収換算)
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。