看護師の時短勤務とは?メリットデメリットや注意点などを解説
雇用期間が1年以上あり、1週間の所定労働日数が3日以上ある看護師は、産休や育休明けに時短勤務の利用対象となります。
時短勤務はいつまで取れるのか、何時間働き、年収はどのくらいになるのか、気になる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、看護師の時短勤務の制度や給与事情、メリット・デメリットを解説します。
注意点も含め、制度の利用に役立ててください。
看護師の時短勤務とは
看護師の時短勤務とは、3歳未満の子どもを養育している場合に勤務時間を短くできる制度で、「育児短時間勤務制度」として、育児介護休業法により定められています。
これは、看護師のみではなく、要件を満たしている他の業種で働く労働者にも適用されます。
時短勤務になっても労働契約の定めはなく、社会保険に加入したまま働くことができます。
また、時間当たりの基本給や賞与・退職金などの算定方法も同様です。
参照元:厚生労働省|短時間正社員
時短勤務は何時間?
時短勤務における1日の所定労働時間は、原則6時間です。
看護師の場合、フルタイム勤務は、一般的に1時間の休憩時間を含めた8:30~17:30までが多い傾向ですが、時短勤務制度を利用すると9:00~16:00などの勤務時間で働くことが可能です。
なお、勤務時間は就業先と調整が必要です。
看護師が時短勤務を選ぶ理由
看護師が時短勤務を選ぶ理由は主に以下の2点です。
・子供の送り迎えができる
・仕事と家事や育児、介護を両立しやすい
それぞれ解説します。
子どもの送り迎えができる
子どもの保育時間の関係で、時短勤務にする看護師は少なくありません。
一般的な保育時間は、7:00から18:00までのところが多く、保育園によって異なります。
フルタイム勤務の場合、終業時刻が17:00でも、勤務先が遠かったり、残業が発生したりすると、お迎えに間に合わないこともあるでしょう。
一方、時短勤務はフルタイム勤務よりも早く仕事を切り上げられるため、余裕をもって子どもの送り迎えができます。
仕事と家事や育児、介護を両立しやすい
産休・育休明けの看護師は、仕事とプライベートとの両立への不安から時短勤務を選ぶ人もいらっしゃいます。
特に、1人目の出産の場合、子どもの食事やお風呂、寝かしつけをすることにも慣れておらず、仕事から帰宅して家事や育児をおこなうことは 簡単ではありません。
また、時短勤務であれば、仕事が終わった後、子どもと遊ぶことや、小児科の受診に行くこともできます。
フルタイムに比べ、心に余裕を持って子どもと関わる時間を費やせるため、仕事と両立しやすくなります。
更に、時短勤務は要介護状態にある家族の介護を理由に、制度を利用することができます。
その場合は、育児を理由にした時短勤務と異なる点もあるため必ず就業先に確認しましょう。
参照元:短時間勤務等の措置について|介護休業制度|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
時短勤務している看護師の給与事情
時短勤務は労働時間が短いため、フルタイム勤務に比べると給与が減るのが一般的です。
厚生労働省は人材確保と定着のために短時間正社員制度を推進しており、看護師が働く就業先に向けて、給与面を含めた導入・運用支援マニュアルを作成しています。
参照元:「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル
このマニュアルを基に、フルタイム勤務から時短勤務へ変更した場合の看護師の給与事情を解説します。
月収
月収の内訳は、以下の3つです。
- 基本給
- 固定手当(役職手当など)
- 変動手当(残業手当など)
厚生労働省の短時間正社員制度導入・運用支援マニュアルによると「時短勤務者の月収のうち、基本給はフルタイム時の支給額をベースに労働時間に比例して減額する」としています。
たとえば、フルタイム勤務時の基本給が20万円の場合、時短勤務で労働時間を8割にすると、もらえる基本給は16万円です。
そのほかの諸手当は、手当の趣旨や支給基準を踏まえて支給額が検討されます。
参照元:厚生労働省|「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル
ボーナス
ボーナスは、支給基準のベースにより以下のように異なります。
- 基本給を反映:支給基準はフルタイム勤務と同じ
- 人事評価の反映:評価結果が同じであれば、ボーナスはフルタイム勤務より低くなる
時短勤務では基本給が労働時間に比例して減額されていることから、基本給を反映している場合はフルタイム勤務と同じ支給月数となります。
一方、人事評価を反映する場合は、時短勤務している看護師はフルタイム勤務より低くなる可能性があります。
支給基準は就業先によっても異なるため、就業規則を確認しましょう。
看護師が時短勤務するメリット
看護師が時短勤務を選択するメリットは以下の3点です。
・家族と過ごす時間が増える
・仕事の負担を考慮してもらえる
・フルタイムに戻ることもできる
それぞれ解説していきます。
家族と過ごす時間が増える
時短勤務では早めに帰宅でき、家族と過ごす時間が増えます。
特に子どもは、保育園へ通い始めて間もない頃に、精神的に不安定になる可能性があります。
時短勤務は家族とじっくり関わる時間をもてるため、丁寧に子どものフォローができたり、パートナーと情報を共有できたりしやすくなるでしょう。
また、子どもが小さいうちは様々なことに手がかかります。
パートナーの仕事が忙しい場合や、頼れる親族が近くにいない場合は、時短勤務にすることで体力や気力に余裕をもつことができるでしょう。
仕事の負担を考慮してもらえる
時短勤務では、仕事の負担を考慮してもらえることがあります。
厚生労働省は「看護師の時短勤務者にはフルタイム勤務者と同じレベルの役割を期待しつつ、キャリアを形成できるような職務内容を設定することが求められる」としています。
「短時間正社員制度」導入・運営支援マニュアルでは、業務内容の質はフルタイム勤務の看護師と同様にしつつ、勤務時間を短縮していることを考慮して、担当患者さまの数を調整する事例が紹介されています。
就業先での働きやすさは重要なポイントです。
看護師の定着を図るためにも、職場全体で働き方の見直しを行なっているような就業先あれば、時短勤務を利用する際の業務負担にも考慮してくれる可能性は高いといえるでしょう。
フルタイムに戻ることもできる
時短勤務に慣れ、「時間にも余裕ができたし収入も増やしたい」といった場合、フルタイム勤務に戻ることも可能です。
育休明けに時短勤務を採用した看護師のなかには、徐々に働く時間を長くしてフルタイム勤務に戻る人も少なくありません。
ご自身の生活パターンや家族との時間などを考慮し、働き方を変えることができます。
看護師が時短勤務するデメリット
看護師が時短勤務すると身体的・精神的にも余裕が出やすい一方、デメリットが生じる場合があります。
時短勤務で生じる可能性があるデメリットを解説します。
収入が減る
時短勤務では、労働時間に比例して基本給が減ります。
フルタイム勤務の際、出費が多い暮らし方をしていた人は、同じ価値観で過ごすと生活面で支障が出る可能性があります。
また、保護者の負担軽減の政策が進んではいますが、0~2歳の間は保育園では保育料がかかる場合が多いです。
幼稚園の場合では、基本的に3歳以上であれば無償化対象ではありますが、入園時に制服やバッグなど指定品の購入が必要な場合もあります。
オムツや衣服など、子どもにかかる費用も多いため、収入面でデメリットを感じる可能性はあります。
ほかのスタッフに気疲れする
時短勤務はフルタイム勤務の看護師より先に退勤するため、ほかのスタッフに気疲れしてしまう可能性があります。
入院や急変対応などが退勤時間に重なった場合、残った業務をほかのスタッフに任せてしまうことに申し訳なさを感じる人も少なくありません。
時短勤務者に対して職場全体でサポートし合えるような環境や文化が整えられていると、働きやすさは変わるでしょう。
看護師が時短勤務する場合の注意点
看護師が時短勤務する場合には、注意すべき4つのポイントがあります。
なお、時短勤務制度は介護でも利用できますが、今回は育児に限って紹介します。
時短勤務する期間を決めておく
時短勤務をする期間を決めておくのがおすすめです。
基本的に、時短勤務は子どもが3歳未満の場合に利用できますが、就業先によっては就学前まで延ばせることもあります。
子どもと十分に時間を取るために最長期間まで利用する、収入面や看護師としてのキャリアを考え早めにフルタイム勤務に戻る、などさまざまな方法を選択できます。
余裕をもって申請しておく
看護師で時短勤務制度を利用するときには、余裕をもって申請しましょう。
時短勤務に必要な手続きは、就業規則などによって異なります。
育休復帰前に、あらかじめ担当者より案内があるので、速やかに手続きを済ませておくと安心です。
社会保険の手続きをしておく
看護師が時短勤務制度を利用するときには、社会保険の手続きが必要です。
主に必要な手続きは、以下の2つです。
- 育児休業等終了時報酬月額変更届:社会保険料の負担を軽減する制度
- 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置:フルタイム勤務と同額の年金を受け取れる制度
社会保険料は産休・育休前の給料を基に計算されるため、フルタイム勤務していた場合は以前の給料から計算されます。
育児休業等終了時報酬月額変更届により復帰後1ヵ月目~3ヵ月目の給与を基に社会保険料が計算され、4ヵ月後には時短勤務に即した金額になるでしょう。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置は、納める社会保険料を抑えながら将来受け取る年金が多くなります。
いずれの手続きも3歳未満の子どもがいる場合に該当し、会社経由で日本年金機構に提出する流れです。
参照元:日本年金機構|育児休業等終了時報酬月額変更届の提出、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
時短勤務以外の制度も調べておく
時短勤務する看護師の方は、以下の制度も利用できます。
制度 | 概要 | 子どもの対象年齢 |
所定外労働の制限 | 残業が免除される | 3歳未満 |
子の看護休暇 | 子どもの看護・予防接種・健康診断などで年5日間休める(子1人当たり) | 就学前 |
法定時間外労働の制限 | 1ヵ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限できる | 就学前 |
深夜業の制限 | 22:00~5:00までの労働を制限できる | 就学前 |
所定外労働の制限は就業先によって、就学前まで利用できる場合もあります。
また、子の看護休暇が有給になるかも、就業先によって異なります。
これらの制度はいずれの就業先でも利用できるため、担当者に確認しましょう。
まとめ
看護師が時短勤務をする場合、原則6時間の所定労働時間が必要です。
1時間の休憩がある場合は、7時間の拘束時間が発生すると考えておくとよいでしょう。
労働時間が減ることにより、基本給も比例して減額します。
忙しい病棟では、ほかのスタッフへ申し訳なさを感じやすいかもしれませんが、時短勤務は家事や育児、介護とも両立しやすく、いつでもフルタイム勤務に戻れる安心感もあります。
ほかに利用できる制度も確認しつつ、生活とのバランスを考えながら働き方を検討するのがおすすめです。
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