准看護師から正看護師になるには?流れやかかる費用、資格の違いを解説
この記事を読んでいる方の中には、准看護師として働いている方もいるのではないでしょうか。
さまざまな理由から、いずれは正看護師の資格を取得したいと考えている方もいるかもしれません。
今回は准看護師から正看護師になるにはどうすれば良いのか、資格取得の流れや、正看護師になるためにかかる費用、2つの資格の違いについて解説していきます。
准看護師の方で、正看護師を目指したいものの、詳細が調べきれず迷っている方はぜひ参考にしてください。
准看護師から正看護師になるには?3つの選択肢
准看護師から正看護師になるためには、必ず看護師学校養成所に通う必要がありますが、その中でも主に3つの選択肢があります。
- 全日制(2年間)
- 定時制(3年間)
- 通信制(2年間)
上記のいずれかの課程で養成所を卒業した後、看護師国家試験を受験するのが基本的な流れです。
それぞれの養成所に通学するために、必要な実務経験も解説していきます。
参照:公益社団法人日本看護協会「准看護師から看護師へ今の一歩が未来を変える」
全日制の看護師学校養成所に2年間通う
看護師学校養成所に通学するには、基本的に高卒者または高卒認定試験合格者であることが条件です。また中卒の方の場合は、3年以上の実務経験が必要となります。
3年以上の実務経験がある方の場合は、一度仕事を中断して全日制の看護師学校養成所に2年間通うのが最短のルートでしょう。
全日制は定時制よりも短い期間で修了できますが、全日制のため仕事を続けながら通学するのは難しく、キャリアがストップしてしまう点は留意しておく必要があります。
定時制の看護師学校養成所に3年間通う
定時制の場合でも、高卒者または高卒認定試験合格者ではない中卒の方の場合は、3年以上の実務経験が必要となります。
3年以上の実務経験があり、仕事をし続けながら正看護師になりたい方は、定時制の看護師学校養成所が選択肢にあがります。
ただし仕事をしながら養成所で学ぶという点で、心身ともに負担は大きくなると考えられます。
また全日制よりも1年長く学ばなければならないため、継続し続けるために心身ともにタフであることも求められるでしょう。
通信制の看護師学校養成所に2年間通う
通信制の学校に通い正看護師になるルートも存在します。しかし通信制の看護師学校養成所に通うには、7年以上の実務経験が必要となります。
7年以上の実務経験がある方は、仕事をしながら通信制で正看護師を目指せるため、学び続けやすいでしょう。
ただし7年の実務経験よりも早く正看護師になりたいと感じる方は、現実的ではない選択肢ととらえるかもしれません。
准看護師から正看護師になるにはいくらかかる?基本の費用と利用できる支援制度
准看護師から正看護師になるまでにかかる費用は、看護師学校養成所にかかる費用がほとんどとなり、それぞれ養成所ごとに費用は異なります。
ただ、比較的安いと言われている通信制でも100万円以上はかかるとされています。
さらに費用の内訳は入学金や授業料だけでなく、ユニフォームや教材費、通学のための交通費なども想定しておかなければならないため、まとまった費用を貯めておく必要があるでしょう。
その費用は決して安いものではないため、奨学金や修学資金、給付制度などを活用している方も多くいます。
ここでは看護師学校養成所に通いたいものの、どのような支援制度を利用できるかどうかわからない方のために、それぞれ代表的なものを解説していきます。
主に利用できる制度は下記の通りです。
- 看護職員修学資金貸与事業
- 教育訓練給付制度
- 看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金
それぞれみていきましょう。
看護職員修学資金貸与事業
看護職員修学資金貸与事業は、各都道府県が設けている修学資金貸与事業です。
それぞれの都道府県で貸与の条件や金額は異なりますが、卒業後に該当の都道府県内で看護師として働く意思のある学生が、貸与を受けられる制度です。
月額の希望額(2.5~10万)を貸与する形式で、返還免除の要件が設けられているところもあるため、該当する自治体の修学支援貸与事業について調べてみると良いでしょう。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は専門実践教育訓練とも呼ばれ、在職中で雇用保険に加入している方が利用できる制度です。労働者の主体的なスキルアップを支援するために、厚生労働省の設けた制度で、支援元はハローワークです。
年間上限額は40万円と決まっていますが、受講費用の5割を支援してもらえるため、負担は大きく抑えられるでしょう。
給付金は専門実践教育訓練受講中の6か月おきに支給されます。
最も大事な条件が、志望校は教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)の対象講座として厚生労働大臣から指定を受けている点です。
他にも給付を受けるための条件などもあるため、詳しくは該当する自治体のハローワークに問い合わせてみてください。
参照:ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」
看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金
日本看護協会による奨学金で、対象者は日本看護協会の会員であり、通信制の看護師学校養成所2年課程の通信制へ進学する方です。
無利息で貸与型の奨学金で、年額36万もしくは48万円の支給となっています。最長4年以内に全額返還をするため、正看護師として働きながら返還していく想定でいると良いでしょう。
詳しくは下記の看護協会HPから条件など詳細をご確認ください。
参照:公益社団法人日本看護協会「看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金」
准看護師から正看護師になるメリットとは?それぞれの資格の違い
そもそも准看護師と正看護師の違いが今一つ理解できず、正看護師になる必要はあるのかと感じている方も、いるのではないでしょうか。
ここでは准看護師から正看護師になるメリットを、それぞれの資格で可能なことや違いについて触れながら解説していきます。
主なメリットは下記の通りです。
- 准看護師より正看護師の方が給与は高い
- 可能な業務内容が増える
- 管理職へ昇進しやすくなる
- 応募できる求人の数が増える
それぞれ詳しくみていきます。
准看護師より正看護師の方が給与は高い
給与の面での違いを感じて、准看護師から正看護師になろうとしている方も多いのではないでしょうか。
実際に令和4年賃金構造基本統計調査によると、准看護師と正看護師の平均年収には約90万円の差が発生しています。
普段の月給だけでなく、平均の賞与なども20万円ほど異なっているため、生涯年収を考えると大きく差が開いていくと考えられるでしょう。
長期的な視点で見たときに大きな給与の差が開くことを考えると、准看護師ではなく正看護師の資格を取得したいと考える人も多く、資格取得によって給与が上がることは大きなメリットといえるでしょう。
参照:e-Start「賃金構造基本統計調査|令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
可能な業務内容が増える
准看護師と正看護師では業務にあまり差がないと感じている人もいるかもしれません。
しかし、准看護師は「保健師助産師看護師法」によって医師や正看護師の指示でなければ動けない場面や、看護計画を1人で立案できないといった業務上の制限があります。
正看護師になることで業務の幅を広げたいと考えている方は、大きなメリットと感じるでしょう。
管理職へ昇進しやすくなる
准看護師だからといって昇進できない訳ではありません。
しかしその職場において、管理職が担う仕事や役割によっては昇進できない可能性も考えられます。
日本看護協会では「看護管理者は、看護部門や看護単位の責任者として、正看護師から准看護師に適切に指示が出され、対象者の状態に応じた最良の看護が安全に提供されているかを管理・監督する責任がある。看護管理職は正看護師が担うべき。」と述べられています。
業務範囲の定められた准看護師を、管理職に配置するケースは少なくなっています。
正看護師になると管理職へ昇進しやすくなるため、キャリアアップを考えている准看護師の方の看護師資格取得は、大きなメリットといえるでしょう。
応募できる求人の数が増える
現在は、正看護師の求人の方が多くなっており、准看護師の免許で応募できる求人は限られてきています。
転職したくても、准看護師として応募できる求人があまりないと悩んでいる方は、正看護師になることで、やりたかった仕事や働きたかった職場で働けるようになるかもしれません。
准看護師から正看護師になる方がおすすめ?正看護師が目指せるキャリア
今後、長期的なキャリアを歩んでいくのであれば、准看護師から正看護師を目指した方が、業務の幅も広がり、転職しやすくなるなど、さまざまなメリットを感じるでしょう。
また准看護師には取得できないものの、正看護師になると取得できる資格として、下記のものがあります。
- 保健師
- 助産師
- 認定看護師
- 専門看護師
上記のような資格は、各分野のスペシャリストにもなれる資格です。
キャリアプランとしてスペシャリストへの道を歩もうとしている方であれば、さらに正看護師になる方がおすすめといえるでしょう。
准看護師の資格は無くなる可能性もある
実は、准看護師養成が停止になる可能性も考えられています。
ただし日本看護協会と日本医師会での意見が、対局に割れている現状もあり、まだ断定できることではありません。
日本看護協会では、看護の対象者が複雑かつ多様化している中で、准看護師養成はこうした社会の変化や患者さまのニーズに応えるためには、教育内容・時間ともに不足していると考えています。対する日本医師会では、准看護師は過去に正看護師の人員不足を解消してきた実績があり、廃止することで再度人員不足に陥る可能性もあると考えています。
しかし、准看護師を目指す人の数は減少傾向にあり、2002年から2022年の20年間にかけて、准看護師の数は約40%減少しています。
また准看護師資格を取得後、准看護師として就業する割合は6割ほどです。残りは正看護師養成所へ進学していることから、正看護師になるために遠回りをするようなルートとなってしまっている現状がみられています。
今後資格自体が廃止になるかどうかはまだ不明ですが、最初から正看護師を目指す人の方が増えていくと予想できるため、看護師資格を取得しておいた方が良いかもしれません。
准看護師から正看護師になるには看護師学校養成所に通う必要がある!キャリアも合わせて検討しよう
本記事では、准看護師から正看護師になるにはどのような選択肢があるのか、費用や准看護師資格と比較した看護師資格を取得するメリットも合わせて解説しました。
准看護師から正看護師になるには看護師学校養成所に通う必要がありますが、学校の通学にはまとまった費用が必要であり、2年〜3年ほどの年単位で学び続けなければなりません。
経済的また心身の負担はもちろん、自分自身の今後のキャリアも含めて取得について検討すると良いでしょう。
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