産業看護師の給料は?保健師資格がなくてもなれる理由や仕事内容を解説
「産業看護師の給料はいくら?」「産業看護師には保健師の資格がなくてもなれるの?」
このような疑問を感じている看護師の方は多いでしょう。
そもそも産業看護とは「産業保健の看護専門分野であり、働く人たちが健康と安全の保持増進を図れるように支援してQOL、ならびに組織の生産性の向上に寄与するものである」とされています。簡単に言うと、「企業で勤める看護師」のことを指します。一般的に、産業看護師は「企業看護師」とも呼ばれます。
産業看護師は、産業保健専門職のチームの一員として、働く人の健康問題に取り組んだり、予防に働きかけたりすることが主な業務内容です。
そこで、この記事では、産業看護師の給料や仕事内容を詳しく解説します。産業看護師に興味があるものの、詳細が分からず悩んでいる看護師の方が、一歩踏み出すきっかけになれると幸いです。
産業看護師の給料
産業看護師の給料は500万円くらいといわれています。
ただし、産業看護師の給料について、公開されている正確なデータがないため求人の情報から判断したものです。
厚生労働省が公開している「令和5年賃金構造統計基本調査」によると、看護師の平均年収は508万1,700円です。
産業看護師は、基本的には日勤勤務であるため、夜勤手当がもらえないものの、ほかの看護師と変わらない給料をもらえる可能性があります。
看護師の年収についてもっと詳しく知りたい方は、下記のページも参考にしてくださいね。【2024年版】看護師の平均年収はいくら?ボーナスや給与の内訳を解説
産業看護師の1日の流れ
ここでは、産業看護師の1日のスケジュールを紹介します。
時間 | 仕事内容 |
9:00 | 出勤・朝礼 メールチェック |
10:00 | 健康診断の結果の確認 産業医への報告 研修の資料作成 |
11:00 | 従業員との面談 |
12:00 | 昼食 |
13:00 | 衛生委員会の出席 |
15:00 | カウンセリング ホスターや掲示物の作成 |
18:00 | 業務の報告 退社 |
この例は一例です。勤務先の職種や規模などによって業務内容は異なるため、あくまでも参考としてください。
勤務時間は、企業に勤めている会社員と同じ時間帯となることが一般的です。
産業看護師は保健師資格がなくてもなれる
「産業看護師になるためには保健師の資格がいるの?」「産業看護師は産業保健師と何が違うの?」と気になる看護師の方もいるでしょう。
実際は、産業看護師には保健師の資格は必要ありません。看護師の資格のみで、企業に就職すると産業看護師として働くことができます。
とはいえ、産業看護師がおこなう「メンタルヘルス対策」や「健康相談」などには、病棟で培ったスキルとは異なるため、十分に対応でいないでしょう。
そのため、保健師や衛生管理者、産業カウンセラー、メンタルヘルスマネジメント検定、健康経営アドバイザーなどの資格があると、スキルを活かして働くことができます。以下に受験資格や試験の概要についてまとめたので参考にしてくださいね。
資格 | 試験の実施詳細 | |
保健師 | ・年に1回実施 ・受験料:5,400円 | |
衛生管理者 | ・毎月1~5回くらい実施 ・受験料:8,800円 ・第1種と第2種がある | |
産業カウンセラー | ・年に2回(2月頃)程度実施 ・受験料 学科試験:10,500円 実技試験:21,000円 ・学科試験と実技試験 | |
メンタルヘルス マネジメント検定 | なし | ・年に2回実施 ・受験料:5,280~11,550円 ・1種(マスターコース)、2種(ラインケアコース)、3種(セルフケアコース) |
健康経営 アドバイザー | なし | ・いつでも受験可能 ・受験料:8,800円 ・インターネット経由の試験 |
病棟の勤務と比べて、産業看護師は勤務が規則的であり働きやすいため人気が高いです。上記の資格取得し、スキルアップができると採用の際に有利になるかもしれません。
産業看護師の主な仕事内容
ここでは、産業看護師の主な4つの仕事内容を紹介します。
- 社員の健康診断、その後のサポート
- 社員のケガや病気の対応
- 社員への集団指導
- 社員のメンタルヘルスケア
産業看護師の仕事内容は、所属する企業によって異なります。主に、企業内の健康管理部門や医務室などに配属され従事します。それぞれの仕事内容を知って、産業看護師になるときの参考にしてください。
社員の健康診断の実施とサポート
産業看護師の主な仕事のひとつが、社員の健康診断の実施とサポートです。
生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防、病気の早期発見のためには定期的な健康診断の実施が欠かせません。
産業看護師は、健康診断の実施を企画したり当日の運営をサポートしたり、実施後に社員に健康教育をおこなったりします。
社員のケガや病気の対応
産業看護師の主な役割は病気の予防が中心です。
ただし、産業看護師は社員のケガや病気にも対応しなければならないケースもあります。たとえば、作業中にケガをしたり、熱中症で倒れたりしたときです。
産業医と連携し、ケアを行います。
緊急時には、最初に応急処置を行い、通院に付き添う場合もあります。
社員への集団指導
社員への集団指導は、予防医療において重要な業務です。
健康診断を実施するほかに、様々な健康へのサポートを行います。たとえば、禁煙をして過度な飲酒を控えるように指導したり、肥満傾向である社員に対しては食事や運動を指導したりします。
企業内に、健康について相談しやすい看護師がいることは、社員にとって安心できるでしょう。
社員のメンタルヘルスケア
厚生労働省の「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」によると、仕事に強い不安や悩み、ストレスがある方の割合は82.2%だそうですさらに、実際にメンタルヘルスの不調を理由に、退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%です。
令和3年の調査と比べると、いずれの割合も上昇しておりメンタルヘルスの不調に悩む方は増えていることがわかります。
そのため、産業看護師が社員のメンタルヘルスケアをおこなっていくことは必須の業務といえます。
産業看護師のメリット・デメリット
ここでは、産業看護師のメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
(メリット)
- 医療処置のプレッシャーがない
- 土日休みで夜勤なしの働き方ができる
- 看護師以外のスキルが身につく
(デメリット)
- 医療的ケアのスキルが獲得できない
- 自分では求人を探しにくい
- 収入が下がる可能性がある
産業看護師は、患者さまのお看取りや急変に立ち合うことはないため、そのようなストレスは医療機関より少ないです。一般の会社員と同じように、夜勤はなく休日はカレンダー通りの勤務です。祝日も休みであり、企業によっては長期連休を取れる場合もあるでしょう。さらに、残業は少ないといわれているためワークライフバランスを保ちやすいです。
企業の中では、一般会社員と接することで、ビジネススキルや看護以外のことも多く学ぶことができます。
また、採血や薬剤投与などの医療的ケアを行うことは非常に少なく、スキルを維持したり、新しい技術を獲得する機会が少ないです。ほかにも、求人数が少ないため自分では求人を探すことが難しいかもしれません。
それぞれのメリットやデメリットをわかったうえで、産業看護師を目指してみてはいかがでしょうか。
産業看護師に関するQ&A
最後に、産業看護師に関するよくある質問を2つ紹介します。
産業看護師は新卒でもなれるの?
産業看護師は、新卒でも採用される可能性はゼロではありません。
ただし「看護師歴5年以上」「臨床経験3年以上」「実務経験がある方を優先」など、経験者を中心とした募集の条件としている場合があるため、未経験では採用枠が少ないです。
さらに、健康相談や予防の指導、保健指導などをするときには、スキルや経験、知識があったほうが実施しやすいです。
そのため、病院やクリニックなどで経験を積んでから産業看護師を目指すことをおすすめします。
産業看護師で大手企業に勤められるの?
産業看護師も大手企業に勤められます。
ただし、産業看護師を募集する人数は少なく、倍率が40倍になるケースもあります。人気の理由は、働きやすさから長期の就業が可能であること、大手企業であると、給料の水準が高く福利厚生が充実しているためです。
企業のなかには1名のみの採用であるケースもあり、希望通りに就職できるとは限りません。大手企業の産業看護師になるハードルは高いといえるため、志望動機をはっきりさせたり、新着の求人情報をチェックしたりすることが大切です。
まとめ
ほかの看護師と比べ、産業看護師は夜勤手当てがなくても変わらない給料水準で働くことができる可能性があります。
産業看護師になるためには、保健師の資格がなくても従事することができます。
とはいえ、近年メンタルヘルスの不調を訴える方が増えていることから、衛生管理者や産業カウンセラーなどの資格があると、実際に働くときに活用できます。ほかにも、転職する際に有利になる可能性があります。
産業看護師は、ワークライフバランスを保ちやすく、医療処置や急変などのプレッシャーがないことがメリットです。高い給料水準や充実した福利厚生を得たい方は、求人サイトや転職サイトを活用して産業看護師を目指してみてはいかがでしょうか。
参考文献・サイト
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。