訪問看護師の魅力とは?やりがいや体験談について紹介
ご自宅で暮らしながら医療ケアが必要な方へ、看護を提供する訪問看護。
訪問看護師として働く方から「訪問看護は病院勤務と違うやりがいがある」「これからもずっと訪問看護師として働きたい」という声が聞かれます。訪問看護にはどんな魅力があるのでしょうか。
そこで、この記事では訪問看護の魅力について解説します。現場で働く訪問看護師の体験談も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
看護師の4%が訪問看護師
訪問看護師として働く経験者からは「もっと早く訪問看護の道に進んでいれば良かった」「在宅医療に魅力を感じている」という声が聞かれますが、訪問看護師の数はまだ多くありません。
厚生労働省のデータによれば、2020年時点での訪問看護師は53,404人で、看護師として働く人の約4%ほどです。しかし、平成30年の調査と比較すると、約1万人の増加です。在宅医療が進められている昨今では、需要も高まり、訪問看護師の数は増えていくと考えられます。
訪問看護師として働く方が少ないため、訪問看護の魅力がまだまだ知られていません。訪問看護のやりがいや魅力が広まることで、今後ますます訪問看護師の数が増えていく可能性もあるでしょう。
参考:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省
病棟看護との違い
まず、訪問看護の魅力を知る前に、病棟看護との違いについて知っておきましょう。看護を提供する場が違う訪問看護と病棟看護では、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
以下で、訪問看護と病棟看護の違いについて紹介します。
1人のケアに集中できる
訪問時間内は、1人の利用者さまに集中して看護できます。病院では多重課題の場面に悩まされることが多いでしょう。また、重症度が高い方を中心に時間を取ることも少なくありません。
訪問看護では、時間の指定はありますが、利用者さま1人ひとりとしっかり向き合い、コミュニケーションをとれます。他の利用者さまのことを気にせずにケアするため、集中して個別性のある看護を提供できます。
生活を把握しやすい
看護師の役割の中に、患者さまの生活状況を把握するということがあります。入院中に、患者さまやご家族に生活状況を聞きますが、把握には限界があります。そのため、退院後の生活をふまえた退院支援をしてもニーズに合わせた支援が難しい、と考える病棟看護師の方もいるでしょう。
訪問看護は利用者さまの自宅でケアをするため、利用者さまの生活をしっかり把握できます。そして、利用者さまと一緒に「自分らしい生活」をするためにはどうしたらよいか考える時間もゆっくり持てるため、利用者さまが望む「生活」や「人生」を実現するための支援がしやすいです。
利用者さまの意思を尊重できる
病院では治療が優先となり、医師の判断や病院のルールが優先されることが少なくありません。訪問看護ではどのような療養生活を過ごすかは、利用者さま自身が決めます。
例えば、糖尿病の方でも食べることを生きがいとしている利用者さまに対し、食事制限を強く指導しません。食生活を完全に否定するのではなく、本人の意思を尊重しながら、食事療法の必要性を伝えます。病院とは異なり、利用者さまの疾患が完治することが難しいという場合も多いです。利用者さまの生きがいを大切にしながら、療養生活を支援することが大切になるのです。
医療従事者と利用者さまの療養に関する優先順位は必ずしも同じとは限りません。もちろん、命に係わる危機的な際には、利用者さまにも歩み寄っていただく必要はありますが、訪問看護師は、何よりも利用者さまの意思を尊重した看護をします。
看護を提供する場が異なることで、求められる看護がそれぞれ違うことが理解いただけるのではないかと思います。
訪問看護師のやりがい
仕事への楽しさを感じながら働き続けていくには、やりがいを持てる仕事に就くことです。利用者さま1人ひとりとしっかり向き合える訪問看護には、病棟看護とは異なるやりがいがあります。
次に、訪問看護師のやりがいについて紹介します。
利用者さまの思いに寄り添える
患者さまや利用者さまの思いに沿った看護を提供する事は、病棟も訪問看護も同じです。しかし、利用者さまのご自宅でケアを行う訪問看護では、より個別性の高い看護ができます。
訪問看護では、利用者さまと向き合う時間が長いため、より密なコミュニケーションをとれます。そのため、利用者さまやご家族と信頼関係を築きやすいです。
関係が築けると、利用者さまは自分の不安や希望、思いを伝えてくれます。気持ちを表出してくれるので、訪問看護師はニーズに沿った看護を提供しやすいのです。
スキルアップにつながる
訪問看護では、看護師の知識やスキルをより一層広げられます。訪問看護は、最新・高度の医療を経験できない、と考える方もいるでしょう。しかし、利用者さまが必要とする医療は、最新・高度の医療だけではありません。
訪問看護では小児から高齢者まで、さまざまな疾患だけでなく、利用者さまを取り巻く社会福祉資源についても幅広く知識を深められます。多職種と関わりを持てるため、コミュニケーションを高められ、関係機関についての理解が深められます。また、病棟での勤務では経験できないような営業活動(利用者さま獲得のため)や名刺交換なども、訪問看護を通じて学べます。
訪問看護師のメリット
訪問看護師として働くメリットとして「移動時間に楽しみがある」「自分のワークライフバランスを充実できる」などが挙げられます。周りに訪問看護師がいないと、訪問看護の魅力について知らないことも多いでしょう。
ここでは、現役訪問看護師に聞いた、訪問看護師のメリットについて紹介していきます。
移動中の時間が楽しめる
移動中は1人になれる時間であるため、リフレッシュを図れます。移動しながら季節ごとの花や風を感じ、時間に余裕がある場合には一息つくことも可能です。
病院勤務に比べ、訪問看護は仕事に追われているプレッシャーを感じにくいです。たとえ、訪問中に嫌なことがあっても、一旦外に出ることで気持ちを切り替えやすいことは、訪問看護のメリットでしょう。
ワークライフバランスを保ちやすい
基本的に訪問看護は夜勤がなく、土日に休みが取れるステーションもあります。さらに、電子カルテの普及により、直行・直帰ができる訪問看護ステーションも増えてきました。
訪問看護ステーションで働く看護師の方は、育児中の方が多いです。そのため、子どもの通院やお迎えなどで短時間勤務や、勤務調整をつけやすいことを理由に、直行・直帰が可能な訪問看護ステーションを選ばれる方もいます。
また、夜勤がなくオンコールという体制のため、規則的な生活ができます。
病院や施設内などとは異なり、比較的柔軟な働き方が検討しやすいため、ワークライフバランスを保ちやすいです。柔軟な働き方は、訪問看護ステーションの方針や規模にも左右されるため、転職時には十分に確認しましょう。
高めの給与
病院勤務では、夜勤がある病棟と夜勤がない外来では、給与に大きな差があるでしょう。しかし、訪問看護は夜勤や残業が少ないですが、実際に働く訪問看護師の中には「思った以上に給与が良い」という声があります。
実際の調査によれば、病院勤務の給与に大きな差はなく、1〜2万程度しか変わりません。病院勤務の給与が高額に見える場合でも、「平日日勤だけ」を考慮すると、訪問看護の給与は高めといえます。
ただし、オンコール体制を取っている訪問看護ステーションがほとんどであり、恩顧―rの手当ての回数によって給与が変わります。
訪問看護で大切なこと
訪問看護は、基本的には1人で利用者さまのご自宅に伺い看護を提供する仕事です。病棟看護より利用者さまの人生や生活に寄り添う場面が多くなるため、うまく利用者さまと関係を築けないと悩んだり、プレッシャーを強く感じたりすることがあります。
そのため、訪問看護師は利用者さまと信頼関係を築き、より良い看護を提供するために、以下の点を大切にしています。
- コミュニケーションを積極的にとる
- 報告を細かくおこなう
- マナーを守る
- 1人で責任を負いすぎない
それぞれについて解説します。
コミュニケーションを積極的にとる
訪問看護では、病棟の患者さまよりも密な関係になりやすいです。医師に指示されたケアをするだけではなく、利用者さまがどんな支援が必要かを知り、場合によっては、利用者さまの人生や生きがい、価値観を共有して看護を行います。そのため、利用者さまと積極的にコミュニケーションをとることが必要です。
はじめは、コミュニケーションがうまくいかないこともありますが、看護師自らコミュニケーションをとっているうちに利用者さまと良い関係を築いていけます。
報告を細かくおこなう
訪問看護は、利用者さまに関わる多職種と、同じ目標をもち、協働することが不可欠です。新しい情報を得たら、すぐに報告し、連携をとりながら看護を提供します。
そして、「困ったこと」や「不安なこと」は、すぐに管理者や他のスタッフと共有することも大切です。訪問看護はチームで取り組んでいることを忘れず、情報や課題を共有しなければいけません。
マナーを守る
利用者さまに対する基本的なマナーを守ることが大切です。例えば、靴を揃える、挨拶をする、家を汚さない、約束を守るなどが含まれます。
また、それぞれの利用者さまの家庭内におけるルールを守ることは信頼関係にもつながります。場合によっては、訪問看護師が来ていることを近隣に知られたくない方もいらっしゃいます。インターフォンの使用を避けたり、近隣の人たちに気づかれないように訪問する、といったことに気をつけることも必要です。
1人で責任を負いすぎない
チーム全体が協力していることを意識することは重要です。訪問看護は基本的に1人で訪問するため、生命にかかわる状況や責任、プレッシャーを感じやすいものです。ただし、1人だけが全ての責任を負う必要はありません。
連携を重視し、利用者さまのケアを共有することで、より最適な看護を提供できます。
【体験談】訪問看護あるあるエピソード
病院での働き方とは異なる点も多い訪問看護。訪問看護ならではのエピソードも多くあります。
ここでは、実際に訪問看護で働く看護師に聞いた「訪問看護あるあるエピソード」を紹介します。
車内や公園で食事をする
訪問先が訪問看護ステーションから遠い場合、昼食時間に訪問看護ステーションに戻る余裕がなく、車内や公園などで昼食を取ることがあります。
忙しい時は、近くのコンビニでパン屋おにぎりを買って食べます。車内や公園での食事は景色を楽しむことができ、1人でゆっくりと食べられます。また、公園での昼食はベンチに座って短時間でものんびりした時間を過ごせます。余裕があれば、飲食店で食事を取ることもあります。近所のおいしいお店や、すてきなロケーションに詳しいのも訪問看護師ならではです。
トイレのタイミングを考える
訪問看護師は、頻繁な訪問や移動の中で、トイレの利用が難しい場合があります。
通常、利用者さまの家のトイレは利用できないため、訪問する地域のトイレの場所を把握している訪問看護師もいます。トイレに悩まないように、スケジュールの中にトイレが利用できるタイミングを考えることもあります。
季節を感じられる
季節によって暑い、寒いという悩みもありますが、春には桜を見たり、夏にはひまわりを見たりと季節を感じられます。移動が多い訪問看護ならではの楽しみでしょう。
また、訪問時に利用者さまのお庭の景色を一緒に見て、季節の移り変わりを楽しむこともあります。
道やお店に詳しくなる
訪問看護では、エリア内の地域にとても詳しくなります。住み慣れた場所であっても、案外知らない道も多いものです。
移動中に、今まで知らなかったお店を見つけることもよくあり、休みの日に新しく見つけたお店に行ってみようという楽しみがあるようです。
まとめ
この記事では、訪問看護の魅力や訪問看護として働くメリットについて紹介しました。
看護師全体を見ると、まだまだ訪問看護師の数は少ないです。そのため、訪問看護の魅力について知っている人は少ないでしょう。
訪問看護は利用者さまの生活に密接に関わり、自分の専門性を活かせ、やりがいを感じられる仕事です。将来的にますます需要が高まる訪問看護師は、医療・看護分野において不可欠なものとなりつつあります。
訪問看護は、将来性のある分野の1つです。訪問看護の魅力を知り、訪問看護師への興味を深めていただけ頂けたら幸いです。もし、「訪問看護やってみたいな」「訪問看護の仕事気になる」と思われた方は、NsPaceCareerがお勧めです。
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