看護教員とは?仕事内容やなり方・向いている人の特徴を解説
看護学生への指導に楽しさを感じ、転職の候補として看護教員の仕事が気になる方や、働きながら看護教員になれるのか、知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
看護師等養成所で教育に携わる看護教員になるには、一定の条件が必要です。
この記事では、看護教員の仕事内容やなり方、向いている人の特徴を解説します。看護教員を目指したい方や、自分に向いているか判断したい方は、ぜひ参考にしてください。
看護教員とは
看護教員とは、看護師等養成所で学生に必要な学科や実践技術を教える看護職員です。養成所には、看護大学や看護系短期大学・看護課程専門学校などがあります。
厚生労働省によると、令和4年度の看護教員の数は6,784人で、就業している看護師全体の1.3%となっています。割合で見ると少ないものの、看護教員は看護職を育成するうえで必要不可欠な存在です。
参照元:厚生労働省|令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
看護師等養成所で働く看護教員は、主に以下の3種類です。
- 教務主任者:教務に関する主任者
- 専任教員:専門分野ごとに配置され、学生の指導にあたる教員
- 実習指導教員:実習施設などで学生の指導にあたる教員
まずは専任教員か実習指導教員になり、経験を積むと教務主任者になることができます。
参照元:厚生労働省|看護教育に携わる方
看護教員の仕事内容
看護教員の仕事内容は、以下のとおりです。
主な仕事 | 内容 |
授業や演習 | ・学生に基本的な看護知識や技術を指導 ・カリキュラムに沿った授業計画を作成 ・資料作成などの授業準備 ・テスト作成、採点 ・演習に必要な物品の準備 |
実習指導 | ・病院や地域の施設で学生の看護実践をサポート ・看護援助の考え方や技術面を指導 ・引率のみのケースもある |
国家試験の対策 | ・問題演習 ・集中的な補習 |
学生の個別対応 | ・精神的なサポート ・必要時には面談 |
学校運営 | ・行事やイベントへの参画 ・会議 ・入試業務 |
看護教員は、看護職を養成するために生徒へ直接指導をするだけでなく、国家試験の対策や個別対応などもおこないます。
看護教員の1日のスケジュール
看護教員の1日のスケジュールは、主に以下の通りです。
時間 | スケジュール例 |
8:00~8:30 | ・出勤 |
8:30~9:00 | ・ミーティング ・出欠席の管理 ・他講師との調整 |
9:00~10:00 | ・授業の準備 |
10:30~12:00 | ・授業 |
12:00~13:00 | ・昼休憩 |
13:00~14:30 | ・担任業務(カリキュラムの調整や成績管理など) ・実習先へ移動 |
14:30~16:30 | ・実習指導者と打ち合わせ ・学生の行動計画を確認 ・看護技術を指導 ・看護援助の評価、翌日の援助計画の立案へ助言 ・実習指導者と翌日の看護援助の調整 |
16:30~17:00 | ・学生と実習の振り返り |
17:00~17:30 | ・学校に戻り報告 ・翌日の演習準備 |
17:30 | ・退勤 |
看護教員は、1日のうちに養成所内での授業や演習、臨地実習での指導を掛け持つケースがあります。
看護教員の給料
看護教員の年収は一般的に、300万円~400万円ほどといわれています。
設置母体が、私立の場合はやや高めの年収に設定されていることがあります。
厚生労働省の調査によると、令和4年度における看護師の平均年収は約508万円です。このことから、看護教員の年収相場は看護職員の平均より低めです。
しかし、看護教員が大学院で修士号をとった場合などでは、年収が500万円~800万円と提示されるケースもあります。
看護教員の魅力
看護教員の魅力は、生徒の成長を間近で感じられることです。
生徒が自ら積極的に学び、看護の本質に気づいた姿を見たときや、国家試験に合格したときは、やりがいを感じるでしょう。実習先の病院で、かつての教え子が看護師として活躍する姿を見る機会があれば、喜びを感じられます。
また、実習指導を通して、多くの患者さまと関われることも魅力の1つです。医療機関を離れても患者さと触れ合う機会が多いため、これまでの経験や知識を指導で活かせるでしょう。
看護教員になる方法
看護教員になる方法は、以下2つです。
- 経験年数5年以上+専任教員の教育課程を修了
- 専門分野での経験年数3年以上+大学や大学院で教育科目を履修
それぞれ詳しく解説します。
経験年数5年以上+専任教員の教育課程を修了
保健師・助産師・看護師として5年以上の経験年数がある場合、専任教員の教育課程を修了することで看護教員になれます。
教育課程は、以下から選択が可能です。
- 厚生労働省が認定した専任教員養成講習会
- 旧厚生労働省看護研修研究センターの看護教員養成課程
- 国立保健医療科学院の専攻課程
- 専門課程地域保健福祉分野
なかでも受講しやすい方法は、厚生労働省が認定した専任教員養成講習会です。講習会は都道府県ごとに受講可能で、定員が30人~100人、費用が20万円~40万円ほどです。
必要な単位数は31単位(660 時間)以上で、修了するまでには半年~1年弱ほどかかります。
参照元:厚生労働省|令和5年度講習会開催予定一覧、看護教員養成講習会の実施状況について、専ま「任教員養成講習会実施要領、埼玉県庁|令和5年度埼玉県専任教員養成講習会の開催について、公益財団法人 東京都福祉保健財団|看護教員養成研修事業
専門分野での経験年数3年以上+大学や大学院で教育科目を履修
専門分野での経験年数が3年以上ある場合は、大学や大学院で教育科目を履修すると看護教員になれます。
専門分野は、以下5つの領域を指します。
- 成人
- 老年
- 小児
- 母性
- 精神
参照元:厚生労働省|保健師助産師看護師学校養成所指定規則、看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン
大学や大学院に進む場合、1年~2年ほどの期間が必要です。通信制の大学もあり、働きながら看護教員を目指す方法もあります。費用は養成機関によって異なりますが、多くの大学で初年度60万円以上かかります。
看護教員を目指すにあたって、修士号や博士号を条件にしている就職先もあり、大学や大学院で教育科目を履修しておくと、待遇や給与面がよくなるケースもあるでしょう。
参照元:神奈川県立保健福祉大学実践教育センター、環太平洋大学、日本赤十字看護大学、人間総合科学大学
看護教員に向いている人の特徴
看護教員に向いている人は、以下のとおりです。
- 学ぶことが好き
- 教えることに喜びを感じる
- 看護の魅力を後輩に伝えていきたい
- 看護師としての現場経験を活かしたい
- コミュニケーション能力に自信がある
それぞれ詳しく解説します。
学ぶことが好き
知識をアップデートすることが好きな人は、看護教員に向いています。
看護教員は生徒が正しく判断して行動できるよう、常に最新の知識や技術をインプットしたうえで指導にあたらなければなりません。また、看護師国家試験は4~5年ごとに出題基準が見直されるため、看護教員は医療を取り巻く社会情勢や、注目されているテーマを把握しておく必要があります。
教えることに喜びを感じる
教えることに喜びを感じる人は、看護教員に向いています。
「国家試験の合格」という看護学生の明確なゴールに向けて、看護教員は生徒とともに歩まなければなりません。積極的に教えてくれる看護教員は生徒からも頼りにされやすく、やりがいにつながるでしょう。
看護の魅力を後輩に伝えていきたい
看護の魅力を後輩に伝えていきたい人は、看護教員に向いています。
看護師を目指す人のなかには「親に言われたから」「安定した仕事だから」などの理由をもつ学生もいます。生徒が看護の本質を知り魅力に気付けるよう関わると、やりがいをもって活躍できる看護師に育成できるでしょう。
看護師としての現場経験を活かしたい
現場で長く経験を積んできた看護師は、看護教員に向いています。
看護師として多くの経験があると、アセスメントの視点や処置のコツ、注意点などを具体的に教えやすくなります。また、看護業界における社会人としてのマナーも指導できるでしょう。
コミュニケーション能力に自信がある
コミュニケーション能力に自信がある人は、生徒を支え導いていく看護教員の仕事に向いています。
看護教員は、生徒と打ち解ける以外に、学生同士のやり取りを支援するスキルも大切です。また、ほかの領域の教員や、実習施設のスタッフとのコミュニケーションも必要とされます。そのため、連携・協働が得意な人も、スムーズに仕事が進められるでしょう。
看護教員のキャリアプラン
看護教員のキャリアプランには、以下のような道があります。
年数 | キャリアプラン |
1年目~3年目(新人) | 新人教員研修や上長の指導を受ける |
4年目~9年目(中堅) | 講習や研修でスキルアップを目指す |
10年目以降(ベテラン) | 教務主任や管理職へ |
仕事に慣れてきたら、専門領域の講習会や臨床研修への参加で、自分の受け持つ科目の専門性を磨いたり、教育学会で指導手法を取得したりして、授業力の向上をめざします。
教務主任や管理職になると、カリキュラム編成や教育内容・方法の管理など、円滑な学校運営を図ります。
まとめ
看護教員は、看護職を目指す学生に必要な学科や実践技術を教える仕事です。生徒へ直接指導するだけでなく、国家試験への対策や個別対応、学校運営にも携わります。
看護教員になるには、看護師として5年以上働いたあとに専任教員の教育課程を修了するか、専門分野で3年以上働いたあとに大学や大学院で教育科目を履修する方法があります。
中には通信制の大学もあり、働きながら看護教員を目指すことも可能です。
看護教員は、生徒の成長を間近で感じられます。教えることに喜びを感じる人や看護の魅力を後輩に伝えていきたい人、学ぶことが好きな人などに向いています。
自分の培ってきた知識や経験を後輩につなげたいと考える方は、キャリア展開の1つとして検討してみてもよいでしょう。
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