認知症看護認定看護師になるには?役割や条件、学校にかかる費用を解説
高齢化社会により認知症の患者さまと関わる機会も増え、認知症看護認定看護師へのキャリア展開を考える方もいるでしょう。
この記事では、認知症看護認定看護師の役割や、なるにはどのような条件や過程が必要か、学校にかかる費用の目安について解説します。認定看護師になるメリットや目指す際の注意点も紹介するので、キャリア展開の参考にしてください。
認知症看護認定看護師とは
認知症看護認定看護師とは、日本看護協会により、認知症看護の分野で専門的な知識・技術を有すると認められた看護師です。
具体的には、以下のような知識と技術を有します。
- 認知症の症状マネジメント及び生活・療養環境の調整
- 認知症の病期に応じたコミュニケーション手段の提案と意思決定支援
- 家族への心理的・社会的支援
- 身体所見から病態を判断し、抗けいれん剤、抗精神病薬及び抗不安薬の臨時の投与ができる知識・技術
参照元:日本看護協会
2024年2月時点での認知症看護認定看護師の登録者数は1,966人で、病院以外に高齢者施設や訪問看護ステーション、クリニックなどで活躍しています。
内閣府によると、65歳以上の認知症高齢者は、2012年で約7人に1人の割合でした。2025年には約5人に1人になると予測されており、社会的にも認知症看護認定看護師の需要が高まっているといえるでしょう。
参照元:内閣府
認知症看護認定看護師の目的
認知症看護認定看護師を養成する目的は、認知症をもつ患者さまとそのご家族に対して、熟練した専門的技術と知識を用いて看護を実践し、その質を評価することでさらなる認知症看護の発展と質の向上につなげることです。
主に、認知症看護分野において、以下の能力を育成します。
- 個人や家族、集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護を実践する能力
- 看護実践を通して看護職に対し指導をおこなえる能力
- 看護職などに対しコンサルテーションをおこなえる能力
- 多職種と協働しチーム医療のキーパーソンとしての役割を果たせる能力
現場ではこれらの能力を用い、認知症看護認定看護師としての役割を担います。
認知症看護認定看護師の役割
認知症看護認定看護師は、以下3つの役割を担います。
役割 | 主な内容 |
実践 | ・患者さまの隠れたニーズをくみ取るための的確なアセスメント ・周辺症状の予防・緩和のための的確なケア ・事故や症状悪化を防ぐための環境整備 ・合併症に配慮した健康管理と医療連携の対応 |
指導 | ・勉強会の開催やマニュアル整備 ・実践を通して看護職に認知症対応のノウハウを指導 |
相談 | ・看護職や介護職に対するアドバイス ・認知症の介護に悩むご家族へのケア |
認知症看護認定看護師は、認知症についての専門知識や適切な看護技術を習得しています。そのため、看護・介護職へ対応を周知することで、患者さまに統一したケアを実践できるでしょう。
認知症看護認定看護師になるには
認知症看護認定看護師になるために必要な条件や、教育課程について解説します。
必須条件
認知症看護認定看護師になるための必須条件は、以下の通りです。
- 日本の看護師免許を保持
- 看護師免許取得後に実務経験が5年以上、うち3年以上は認知症看護の分野
- 認定看護師の教育機関へ入学・修了
- 認定試験に合格
参照元:公益社団法人日本看護協会
試験に合格したあとは認定証が交付され、名簿に登録されます。以降、5年ごとに更新が必要となり、看護実践と自己研鑽の実績を提示していきます。
教育課程
認知症看護認定看護師になるには、A・B課程いずれかを修了する必要があります。
教育課程 | A課程 | B課程 |
特定行為研修 | なし | あり |
選択可能時期 | 2026年度で終了 認定審査は2029年度まで | 2020年から開始 |
受講時間 | 615時間(選択により+305時間) | 797時間 |
2つの違いは、特定行為研修の有無です。
特定行為とは、これまで医師や歯科医師のみが実施可能だった医行為のうち、手順書に則り看護師ができるようになった38行為のことです。ドレーン類の抜去や抗精神病薬・抗けいれん薬などの臨時投与などがあります。
参照元:厚生労働省
特定行為研修のないA課程は2026年度に終了予定で、今後はB課程が主流になるでしょう。
認定看護師教育機関
2023年3月時点の認知症看護認定看護師の教育機関は、以下の通りです。
A課程 | B課程 |
・北海道医療大学 認定看護師研修センター ・高崎健康福祉大学 看護実践開発センター ・聖路加国際大学 教育センター ・湘南医療大学 看護キャリア開発コアセンター ・石川県立看護大学附属看護キャリア支援センター ・山梨県立大学看護実践開発研究センター ・島根県立大学出雲キャンパス看護栄養交流センター ・学校法人澤田学園 松江看護キャリア支援センター | ・獨協医科大学SDセンター ・日本看護協会看護研修学校 ・昭和大学 認定看護師教育センター ・福井大学大学院医学系研究科附属地域医療高度化教育研究センター ・公益社団法人兵庫県看護協会 ・熊本保健科学大学キャリア教育研修センター |
参照元:公益社団法人日本看護協会
タイミングによっては定員数の変動や休講などもあるため、詳細はそれぞれの教育機関に確認しましょう。
認知症看護認定看護師になるための費用
認知症看護認定看護師になるには、一般的に約200万円以上の費用がかかるといわれています。
費用の内訳例は、以下の通りです。
費用項目 | 相場 |
教育機関の入学検定料 | 約5万円 |
入学金 | 約5万円 |
受講料 | 約80万円~170万円 |
教材費 | 約6万円 |
認定看護師の審査料 | 約5万円 |
合格後の認定料 | 約5万円 |
参照元:獨協医科大学SDセンター、日本看護協会、昭和大学、兵庫県看護協会
入学金や受講料、教材費は教育機関ごとに異なりますが、上記の相場でも約100万円~200万円です。そのほか、傷害保険への加入費用や臨地実習にかかる交通費、通学するための宿泊費などが必要になるでしょう。
資金面で迷われる方は、奨学金制度を活用する方法もあります。
認知症看護認定看護師になるメリット
認知症看護認定看護師になるメリットは、主に以下の3つです。
- 活躍の場が広がる
- 待遇が向上する可能性がある
- 周囲から評価される
それぞれ解説します。
活躍の場が広がる
認知症看護認定看護師になると、病院内での勤務のほか、病院外での活躍も増えます。
インタビューを受けたり講演依頼がきたりすることも増え、これまで以上に地域や社会へ関わりやすくなるでしょう。
在宅での認知症看護へのサポートもしやすくなり、新たなやりがいを感じられるかもしれません。
待遇が向上する可能性がある
認知症看護認定看護師になると、待遇が向上するケースがあります。
日本看護協会の調査によると、認定看護師の約5人に1人が昇給や昇進し、約5人に2人は資格手当が支給されています。2022年度における資格手当の平均額は、毎月8,530円です。
参照元:日本看護協会|「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書
医療機関によっても異なりますが、認知症看護認定看護師になることで待遇がよくなるケースはあるでしょう。
周囲から評価される
認知症看護認定看護師は認知症看護のスペシャリストだと認められているため、周囲から評価される可能性が高まります。
認知症の症状に対し、どのように関わったらよいのか悩むご家族や医療従事者は少なくありません。
認知症看護認定看護師は高度な知識や技術を学び、総合的にアセスメントする能力に長けています。認知症の症状に対し、適切な関わり方を見出せるため、周りからも頼られるでしょう。
認知症看護認定看護師を目指すときの注意点
認知症看護認定看護師を目指すときには、以下の2点に注意する必要があります。
- 資格取得に時間がかかる
- 勤務先の資格取得支援制度を確認する
それぞれの注意点を押さえ、キャリアアップを目指しましょう。
資格取得に時間がかかる
認知症看護認定看護師を目指す際、資格取得には時間がかかることを頭に入れておく必要があります。
認知症看護認定看護師になるには、実務経験が通算5年以上、そのうち3年以上は認知症分野に携わる必要があります。さらに、教育機関の入学試験から認定までにかかる期間は約2年です。
教育機関に入学後、A課程で約6ヵ月~1年、B課程で約1年かかります。認定試験の開催は、年1回のみです。そのため、カリキュラム修了後から期間があくケースもあるでしょう。
参照元:京都大原記念病院グループ
参照元:日本看護協会
勤務先の資格取得支援制度を確認する
認知症看護認定看護師を目指す場合、自分の勤務先に支援制度があるかどうか確認しておくことが大切です。また、支援制度がある場合は、具体的な内容も把握しておきましょう。
資格取得の支援制度は、勤務先によって異なり、研修期間を出張や研修扱いにするケースがあります。その場合、給与を受け取りながら資格取得を目指すことが可能です。
資格取得のための教育機関が遠方の場合、働きながらの受講は困難な場合があります。状況によっては、資格取得のために休職が必要になるケースも考えられるでしょう。
研修期間中のシフトの扱いだけでなく、受講料や交通費も支援してもらえる勤務先であれば、資格取得にかかる費用の負担を減らせるでしょう。
まとめ
認知症看護の分野で専門的な知識・技術を有すると認知症看護認定看護師になるには、5年以上の看護師経験が必要です。
資格取得のためには、教育機関でのカリキュラムの受講・修了などの時間だけでなく、費用もかかります。認知症看護認定看護師を目指す際、活用できる奨学金制度や資格取得支援制度を確認しておくことが大切です。 今後、高齢化により認知症看護のニーズは高まると想定されます。認知症看護認定看護師の資格を取得し、看護師として活躍の場を拡げるのも1つの選択肢となるでしょう。
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