訪問看護の管理者の年収は600万円!大変さとやめたいと感じる現状を紹介
「訪問看護ステーションの管理者の年収はどれくらい?」「訪問看護の管理者は大変なの?」など疑問に感じている看護師の方はいませんか?
看護師としてキャリアアップを目指したり、年収アップを希望したりして訪問看護の管理者になりたいと考えている看護師の方もいるのではないでしょうか。
ただし、訪問看護ステーションで働く看護師はあまりおらず、さらに管理者ともなればもっと少なく、経験を聞く機会はほとんどないでしょう。
訪問看護の管理者の年収や管理者が大変、やめたいと感じる現状を解説します。この記事が訪問看護ステーションの管理者の現状を知るきっかけとなり、あなたの悩みや不安を解決できると幸いです。
訪問看護の管理者の年収は600万円も可能?
「訪問看護の管理者になると年収600万円を達成できるの?」と疑問を感じている看護師の方もいるでしょう。ここでは、訪問看護の管理者の年収について現状を紹介します。
訪問看護の管理者の年収は600万円
訪問看護の管理者の年収は、600万円を達成できる可能性があります。
ただし、管理者になってすぐに600万円に到達するのではなく、経験を重ねていくなかで達成できるケースが多いです。実際の求人のなかにある訪問看護の管理者は、月収60万円や時給5,000円の求人などもあるため、求人によっては高収入を得られるでしょう。
ですが、厚生労働省の調査によると訪問看護の管理者は、訪問看護ステーションに勤めるスタッフ全体の25.7%です。管理者の年代の内訳は以下の通りです。
管理者の年代 | 割合 |
20代 | 0.2% |
30代 | 5.2% |
40代 | 33.9% |
50代 | 50.1% |
60代 | 9.1% |
出典元:2014 年 訪問看護実態調査 報告書|厚生労働省(無回答1.5%は除外)
20代の管理者に限定すると全体の0.2%に過ぎず、30代でも5.2%しかいません。訪問看護の管理者は主に40~50代が担っており、全体の約80%を占める現状です。
若いうちから管理者になるのは狭き門といえますが、高収入を得たい看護師の方にとって訪問看護の管理者は魅力的でしょう。
ほかの産業の40~50代との比較
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、ほかの産業の40代の平均年収は約492万円、50代の平均年収は525万円です。
訪問看護の管理者の多くは40~50代であり、年収600万円を実現できれば、ほかの産業と比べ高年収であるといえるでしょう。
ただし、訪問看護の管理者の年収は、所属される事業所により大きく異なります。ホームページや求人サイトなどで情報を確認したり、転職サイトに登録して好条件の求人を探したりしましょう。
訪問看護の管理者をやめたい?管理者の現状
高収入を期待できる訪問看護の管理者。その分、業務がハードでさまざまな悩みを抱えているケースがあります。管理者のなかには「管理者をやめたい」と考えたり悩んだりする方もいます。
- スタッフの教育・育成ができない
- スタッフの処遇・評価
- レセプト以外の書類作成
- 管理者もオンコール待機する
- 訪問看護歴10年前後で管理職になる
- 管理職者も時間外勤務する
訪問看護の管理者は、上記のような悩みや不安を抱えているのが現状です。現状を知っておくと、実際に管理者になったときのストレスを軽減できるでしょう。
スタッフの教育・育成ができない
訪問看護の管理者は、スタッフの教育や育成ができないことに負担を感じています。
先述した資料によると、訪問看護の管理者で70.7%が負担に感じています。
というのも、訪問看護ステーションの83.5%は10人未満の看護職員で運営しており、教育や指導する時間を確保できないことが要因であるためです。
近年、訪問看護ステーションの事業所数は増加傾向であるものの、少ない人数で利用者さまに対応している事業所は多いです。
さらに、訪問看護の経験が豊富なスタッフが少なく、教育できるスタッフがあまりいないことも管理者の負担になるでしょう。
スタッフの処遇・評価
スタッフの処遇や評価に、負担を感じている訪問看護の管理者は少なくありません。管理者の63.7%が負担に感じているのが現状です。
国の方針として少子高齢化の対策で、在宅療養が進めています。そのなかで訪問看護ステーションの存在は重要です。
近年では、重症の利用者さまの対応や看取りのケアを求められるなど対応が難しいケースが増えています。一方で、処遇や評価は改善されておらず、処遇改善を求める声がよく挙がっています。
さらに、訪問看護の管理者はスタッフの不満や不安を直接聞く機会もあり、なかなか改善しない状況にこころを痛めるケースもあります。
レセプト以外の書類作成
訪問看護ステーションの管理者の61.4%が、レセプト以外の書類作成にストレスを感じています。
訪問看護の管理者は以下の書類を作成したり、調整したりしなければなりません。
- 利用者さまごとの計画書・報告書作成
- スタッフが作成した書類の添削
- 契約書やステーション規則の作成
- 訪問スケジュールやスタッフシフト調整
管理者のなかには経営者を兼務している場合もあり、病院や施設の看護師長や看護部長とは異なるプレッシャーや責任を抱えています。
さらには、スタッフ業務も兼務している管理者もいるため、利用者さまの訪問をおこないながら、これらの業務に対応しなければなりません。
そのため、管理者の負担は大きく、ストレスを感じやすいといえるでしょう。
管理者もオンコール待機する
訪問看護の管理者は、オンコール待機をする場合があります。
オンコールとは「夜間や休日にかかわらず、利用者さまから連絡があったときに対応すること」です。連絡があると電話で対応したり、利用者さまのご自宅に伺い対応したりしなければなりません。
訪問看護の管理者におけるオンコールの実態については以下の表を参考にしてください。
オンコール待機の有無 | 月の平均オンコール待機回数 | |
管理職 (統括責任者を含む) | 80% | 12.3回 |
中間管理職 (係長、主任、リーダー) | 91.2% | 9.4回 |
出典元:2014 年 訪問看護実態調査 報告書|公益社団法人 日本看護協会
多くの管理職者がオンコール待機をしており、ほかのスタッフよりも待機回数が多いことがわかります。40~50代の管理者にとっては、夜間のオンコールはからだにも負担がかかりやすいです。
オンコール待機をすると、自宅にいるときでも連絡用の携帯を持たなければなりません。「連絡が来たら訪問しないといけない…」と考える状況では、こころもからだも休まらないでしょう。
ですが、オンコール待機をすることで、利用者さまの最期に立ち会うなど貴重な経験を得ることができます。
オンコールについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:オンコール業務とは?
訪問看護歴10年前後で管理職になる
訪問看護の管理者になるためには、10年前後の年月を要します。
「管理者になりたいのに思ったより時間がかかる」と感じた看護師の方も多いでしょう。訪問看護の管理者は病棟での管理と違った知識やスキルが必要です。
そのため、訪問看護師として現場で経験を積み、スキルアップして管理職になることが望まれます。
管理職者も時間外勤務する
訪問看護の管理者は、81.1%が以下の理由で時間外勤務をしています。
時間外勤務で対応する業務 | 割合 |
記録・報告書の作成 | 51.6% |
他職種との連携 | 46.5% |
書類や物品の管理 | 39.7% |
出典元:2014 年 訪問看護実態調査 報告書|公益社団法人 日本看護協会 (複数回答)
月に36時間以上の時間外勤務をおこなった管理者が16.1%に対して、スタッフは3.0%にとどまっています。さらに、時間外勤務は「役職手当」として給与に含まれており、ほかに支給されていないケースもあるのです。
時間外勤務の長さが「訪問看護の管理者を辞めたい」と考えるきっかけとなる可能性があります。
訪問看護の管理者は大変?|4つの役割
訪問看護の管理者はスタッフ、利用者さまや家族、医師、セラピストなどとコミュニケーションを図りながら、訪問看護ステーションの運営をしています。訪問看護の管理者の役割は主に以下の4つです。
- 事業経営
- 提供するケアやサービスの質の管理
- スタッフの管理
- 多職種との連携
訪問看護の管理者には、利用者さまへのケアの改善や訪問看護サービスの質を向上させるためにさまざまな役割があるのです。
ただし、これらの役割を管理者1人で担う負担は大きいため、業務分担が必要です。以下のような方法があります。
- ICTを積極的に導入する
- 外部の電話代行サービスを導入し問い合わせの一元化を図る
- レセプトの外注
- 人材採用を紹介会社に依頼する
具体的には、訪問看護の記録の電子化、医師やケアマネジャーとの連絡・情報共有です。ほかにも、スタッフの訪問スケジュールの管理にICTの活用が進むと業務負担の軽減が期待できます。
さらに、訪問看護ステーションを1人で運営するのではなく、一緒に運営することで業務負担を軽減できます。また、孤立しやすい管理者の心理的な支えになれるでしょう。
訪問看護ステーションの所長と管理者の違いは?|4つの条件
訪問看護の管理者になれるのは、厚生労働省が公開している「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」に定められている条件を満たしている場合のみです。具体的には以下4つの条件です。
- 看護師・保健師・助産師の資格保有者
- 専従かつ常勤
- 医療機関での勤務経験
- 訪問看護にかかわる研修への参加
このように訪問看護の管理者の条件は法律で定められています。訪問看護ステーションには、必ず管理者を配置しなければなりません。
ただし、所長は配置を定められていません。そのため、訪問看護ステーションによっては所長がいない場合や、セラピストが所長で、看護師が管理者に配置されることもあります。
訪問看護の管理職者のやりがい
「訪問看護の管理者は大変そう」「訪問看護の管理者になっても楽しくなさそう」などネガティブな印象を持ったり、心配になったりする方もいるでしょう。
ただし、先述した資料によると、訪問看護の管理者のうち、61.3%は「今の事業所で働き続けたい」と回答しており、中間管理職やスタッフと比較しても高い割合です。訪問看護の管理者には主に以下のようなやりがいがあります。
- スタッフの教育を頑張ると成長を実感できる
- 自身のマネジメント能力によりチームが団結できる
- 地域に深く携われる
- 病院の看護師長よりも広いマネジメント能力を得られる
スタッフが成長すると利用者さまに還元され、ケアの質向上を目の当たりにできます。さらに、看護師長よりも幅広いマネジメント能力や人間性が必要とされることもあり、自身の能力の向上に期待できます。
訪問看護の管理者はやりがいを感じる場面があるため、管理者を続けたいと考えているのでしょう。
まとめ
訪問看護の管理職の年収は600万円を目指すことができ、訪問看護ステーションによってはより高い年収が期待できます。その分、訪問看護の管理者は業務内容や求められる役割が多く「大変」「つらい」と感じることもあります。
とはいえ、やりがいのある仕事であり、訪問看護の管理者の6割以上が今後も同じ訪問看護ステーションで管理者として働き続けたいと感じています。
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参考サイト・文献
2014 年 訪問看護実態調査 報告書|公益社団法人 日本看護協会
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