訪問看護のマナーのポイント21選!マナーが必要な理由も解説

公開日:2024/02/07 更新日:2024/02/07
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訪問看護とは、訪問看護師が利用者さまのご自宅で、その方の状態にあった看護をおこなうことです。

訪問看護師には、病院や施設とは違ったマナーが求められます。看護師としてスキルが高くても、礼儀正しいマナーでなければ、利用者さまやご家族から信頼されず、サービス提供が中止となる恐れがあります。

この記事では、訪問看護師のマナーを解説します。訪問看護に必要なマナーを知り、利用者さまにより良いケアを提供しましょう。

なぜ訪問看護でマナーが重要なのか?|3つの理由

「訪問看護でなぜマナーを守らないといけないの?病院と一緒じゃだめなの?」と疑問に感じている方がいるかもしれません。訪問看護でマナーが重要といわれる理由は以下の3つです。

  • 利用者さまの尊厳を守るため
  • ご家族と良好な信頼関係を築くため
  • 正確でスムーズなケアを提供するため

それぞれの理由を踏まえて、利用者さまと良い関係を築きましょう。

利用者さまの尊厳を守るため

利用者さまの尊厳を守るために、訪問看護ではマナーが求められます。

というのも、訪問看護では利用者さまのご自宅、プライベートな空間でケアを提供するためです。具体的には、丁寧な言葉遣いや気を配った態度、プライバシーへの配慮などで利用者さまに接することが大切です。

マナーを遵守できると、利用者さまは訪問看護師に安心感を持てるため、信頼関係が築きやすくより良いケアの提供にもつながるでしょう。

ご家族と良好な信頼関係を築くため

ご家族との良好な関係性を築くためにもマナーは重要です。

利用者さまが快適に生活するためには、ご家族のサポートが欠かせないためです。訪問看護師の方がご家族と良好な関係を築けると、以下のようなメリットがあります。

  • 利用者さまの生活や状態について情報提供してもらえる
  • ごご家族にケアの方法を指導できる
  • ご家族とケアの連携ができる

これらのメリットがあるため、訪問看護を効果的に実施できるでしょう。さらには、ご家族に適切なケアの指導ができることで、ご家族は自信をもって利用者さまの介護や精神面のサポートができるようになります。

利用者さまの満足度向上にもつながるため、ご家族との信頼関係を築くことが大切です。

正確でスムーズなケアを提供するため

マナーを遵守できなければ、知らぬうちに利用者さまは訪問看護師に不信感を抱くことがあります。

この状況では、利用者さまは自身の状態を正確に言わなかったり、素直な思いを伝えなかったりする恐れがあります。ストレスがたまることで訪問看護師と衝突するかもしれません。

適切な情報提供がなければ、正確でスムーズなケアを提供できないでしょう。マナーを守り利用者さまと信頼関係を築くことで、安全に訪問看護をおこなえます。

訪問する前に気をつけるべきマナー3選

訪問看護師に求められるマナーについて訪問する前、訪問・ケア時、退室時の3つの場面に分けて解説します。まずは、訪問する前に気をつけたいマナーについてみていきましょう。

  • 身だしなみ・服装を整える
  • 利用者さま宅へ事前に連絡する
  • 訪問時間を守る

利用者さまの自宅を訪問する前に、上記3つを守られているか確認したうえで訪問してください。

身だしなみ・服装を整える

訪問前に身だしなみと服装を整えましょう。

「人は見た目で印象が決まる」とよくいわれ、見た目を整えることが重要であるためです。病院で働く際と同じように整えると良いでしょう。具体的には、以下のポイントに注意してください。

  • 訪問看護ステーション指定のユニフォームを着用
  • 髪の毛をまとめる
  • ナチュラルメイクにする
  • 華美なアクセサリーはしない
  • ひげは剃る
  • ニオイに気をつける

これらのポイントを押さえ身だしなみ・服装を整え、利用者さまに清潔感のある印象を持たれるよう心がけましょう。

利用者さま宅へ事前に連絡する

利用者さま宅に訪問する前に、事前に一言連絡を入れてください。

利用者さま宅へ定期的に訪問している場合は連絡不要なケースもあります。初回訪問である場合や、数回のみの訪問である場合は事前に連絡すると親切です。

「ちゃんと訪問に来るのかな?」「時間通りに来てくれるのかな?」などと、利用者さまは不安に感じている可能性があるためです。

事前に連絡すると、利用者さまは安心して待てるでしょう。

訪問時間を守る

訪問時間を守ることは、訪問看護師としてだけではなく、社会人として欠かせません。

訪問する日時は事前に決められています。ただし、以下のようなケースでは予定の時刻を変更する場合があります。

  • 前の訪問時間が押した
  • 緊急の訪問が入った
  • 物品を事業所に忘れた
  • 渋滞に巻き込まれた

厚生労働省の調査によると、訪問看護ステーションあたりの看護職員数が5人未満のところは全体の45%を占めています。そのため、1人の看護師の方が多くの利用者さまに対応しているところもあるかもしれません。

訪問が押したり、急な訪問が入ったりなど、利用者さまの自宅に到着するのが遅れるとわかった時点、なるべく早い段階で利用者さまに連絡しましょう。

また、訪問時間よりも早く到着することも避けてください。利用者さまやご家族は訪問時間に合わせて、ほかの予定を調整しているためです。

訪問時間を守らないことは、訪問看護師だけではなく事業所への不信感につながる恐れがあります。時間を守って、信頼されるサービスを提供しましょう。

 訪問・ケア時に気をつけるべきマナー11選

「訪問中は何に気をつけたら利用者さまに悪く思われないの?」と不安になっている方も多いでしょう。次に、訪問・ケアするときに気をつけるべき11個のマナーを紹介します。

  • ハキハキと明るくあいさつする
  • 靴を脱いだら揃える
  • バッグは床に置く
  • 手洗い場を借りるときは一言声をかける
  • 言葉遣いや話す姿勢に注意する
  • プライバシーに配慮する
  • 提供されたものは受け取らない
  • 訪問時間を守る
  • 電話がなった際には一言声をかけて退室する

それぞれの具体的なポイントを把握しましょう。

ハキハキと明るくあいさつする

あいさつは利用者さまと訪問看護師の方は最初にかわす言葉であり、訪問看護師の方の印象に影響します。

具体的には「おはようございます!◯◯訪問看護ステーションの◯◯です」と、ハキハキと明るくあいさつすることを心がけてください。

訪問を繰り返すと「インターホンを鳴らさずに入ってもいいよ」と利用者さまにいわれることがあります。このとき、何も言わずに入ると、同居していないご家族やほかの事業所のスタッフが部屋にいるかもしれません。

良くない印象を持たれる恐れがあるため、ドアを開けて一言あいさつしてから部屋に入るようにしましょう。

靴を脱いだら揃える

靴を脱いだら揃えて置きましょう。

玄関にも上座と下座があります。下駄箱に飾り物や置物がある場合は下駄箱が上座、何もなければ下駄箱が下座です。

訪問看護は、あくまで利用者さまのご自宅に訪問させてもらいケアをしている立場です。玄関に入って正面を向いたまま靴を脱ぎ、自宅に上がってから靴を下座の位置に揃えてください。

「こんなことに気を使わないといけないの?」と感じている方がいるかもしれまぜんが、信頼関係を築くためには積み重ねが重要です。一つひとつを確実に実践しましょう。

バッグは床に置く

訪問看護では、血圧計や聴診器、記録用紙などが入ったバッグや上着を持ち歩きます。

椅子やテーブルにバッグを置くと衛生的に良いとはいえず、利用者さまのなかには不快に感じる方がいます。そのため、バッグや上着など訪問看護師の私物は床に、かつ邪魔にならない場所に置きましょう。

雨の日は、傘やレインコートなど持っていることもあります。

その場合は、玄関の外に置くようにして、利用者さまのご自宅を汚さないようにしましょう。

手洗い場を借りるときは一言声をかける

訪問看護師は、感染対策のために、処置をする前後で手洗いをしなければなりません。

手洗い場を借りるときには、利用者さまに一言声をかけて使用してください。ほかにも、私物を借りる際にも「使ってもよろしいでしょうか?」と声をかけるとトラブルを防げます。借りたものを丁寧に使ったり、元の位置に戻したりしましょう。

精神疾患のある利用者さまの場合は、決まった位置に物がないと不安を感じることがあるため注意してください。

言葉遣いや話す姿勢に注意する

利用者様やご家族との会話では、言葉遣いや話す姿勢に注意しましょう。

訪問を繰り返すと慣れて親しくなり、つい砕けた言葉を使うこともあるかもしれません。ただし、あくまでも利用者さまとご家族はお客さまです。適切な距離を保ち、敬意を払うことが大切です。

利用者さまのなかには砕けた言葉を好む方がいます。利用者さまとの関係性を考慮して使い分けましょう。

プライバシーに配慮する

利用者さまのご自宅は、ご家族も住む生活の場であることの意識を持つことが大切です。

そのため、清拭や陰部洗浄などをおこなう際にはご家族に「今から身体を拭きますので…」と一言声をかけましょう。

また、訪問看護師は利用者さまのご自宅を観察し、どのような療養環境であるのか、どのような設備があるのかを把握しなければなりません。

ただし、入室の許可を得た部屋以外には入らず、入室の許可を得た部屋でもキョロキョロと眺めないでください。

プライバシーに配慮したサービスを提供しましょう。

提供されたものは受け取らない

訪問看護では、利用者さまやご家族からお菓子やお茶をいただくことがあります。このときには、丁寧に断り受け取らないようにしましょう。

「お気持ちはありがたいのですが、事業所の規則で受け取れないことになっています」と伝えましょう。気持ちに感謝しつつも、利用者さまが悲しんだり不快になったりしないような配慮が必要です。

お菓子やお茶を提供したいと希望するご家族は、訪問看護師の方に何か相談したいと考えている可能性があります。「困っていることはありませんか?」とご家族に声をかけて、話しやすい雰囲気を作りましょう。

訪問時間を守る

滞在する時間を守ることも、マナーの遵守には欠かせません。

訪問看護は、医療保険や介護保険などにより訪問回数や30~90分などの訪問時間が決められています。

利用者さまは訪問看護の時間を考慮して予定を組んでいる場合があります。時間が押すことで予定を変更しなければならないため、決められた時間内でケアをおこなうことが大切です。

電話が鳴った際には一言声をかけて退室する

訪問看護師の方は、事業所用の携帯電話を持っていることが多いです。

ほかの利用者さまの状況の確認や連絡事項のほかに、緊急の連絡が来る場合があります。電話が鳴った際には「申し訳ありません。急な連絡かもしれないので電話に出てきます」と利用者さまに一言声をかけて退室してください。

利用者さまに失礼にならないよう、またプライバシーに配慮するために退室して電話しましょう。

和室・洋室それぞれの訪問看護時のマナー5選

利用者さまの自宅が和室、もしくは洋室によってマナーが異なります。それぞれのマナーを具体的にみていきましょう。

和室でのマナー

和室でのマナーを3つ解説します。

座布団の上を踏まない

利用者さまの自宅に座布団が何枚も敷かれていることがあります。座布団は踏まないように移動してください。

また、座布団を出されることもあります。座布団に座る場合は、まず座布団の下座に座り、一言お礼を述べて、座布団に座りましょう。立ち上がる際は、座布団の後ろにずれて、座布団を踏まないように立ち上がってください。

これは、一般的なマナーです。「ここまでする必要はないよ」と利用者さまから言われるかもしれませんが、配慮することは忘れないようにしましょう。

たたみの縁は踏まない

たたみの縁(へり)とは、たたみ同士が接するところのことです。たたみの縁も踏まないように注意してください。

たたみの縁の色柄は、かつて格式をあらわすものとされていたためです。

たたみの縁を踏むことはタブーな行為とみなされることがあるため、踏まないように意識して歩きましょう。

敷居は踏まない

敷居も踏まないようにしてください。

敷居には、世間と家や部屋などをわける境界の役目があるためです。訪問看護師の方と利用者さまを区別する意味合いもあります。

敷居を踏むことは無作法な行為とみなされることがあるため、注意して移動しましょう。

洋室でのマナー

洋室でのマナーを2つ紹介します。

下座に座る

出入り口に近いところが下座です。反対に、出入り口から1番遠い席が上座になるため、上座には座らないように気をつけてください。

利用者さまから「こちらにどうぞ」と指定されない限りは、下座に座ったほうが良いでしょう。

スリッパを履く

衛生面を確保するために、スリッパは履きましょう。

訪問しているとき、靴下を履いていても足の裏は汚れています。スリッパを履くと利用者さま宅の床を汚さずに済みます。

訪問看護師の方自身の靴下を汚さないことにもつながります。

また、万が一汚れたときに交換できるよう、予備の靴下を訪問バッグに入れておくと良いでしょう。

退室時に気をつけるべきマナー2選

ここでは、退室時に気をつけるべき2つのマナーを紹介します。

  • ケアが終わったらあいさつする
  • 静かにドアを締める

丁寧なケアを実施しても退室時のマナーが悪いと、印象も悪くなる恐れがあります。最後まで気をつけて対応しましょう。

ケアが終わったらあいさつする

ケアが終わったら利用者さまとご家族にあいさつをして退室します。

使用した物品はバッグに入れ、忘れ物がないように気をつけてください。利用者さまに借りたものがあれば、返却を忘れないようにしましょう。

静かにドアを締める

静かにドアを締めてください。ドアの開け締めは最後に印象を左右するため大切です。

素晴らしいサービスの提供であってもバタン!と強く音を立てて閉めると「あの看護師さんは雑だな…」「怒って帰ったのかな?」などと思われたり、誤解を与えたりするかもしれません。

最後まで気を抜かずに、そっと丁寧に両手でドアを締めましょう。

これってマナー違反?訪問看護のマナーでよくある質問

最後に、訪問看護のマナーで悩んだり迷ったりする質問に回答します。

  • トイレは借りてもいいの?
  • 利用者さまの環境アセスメントはどうすればいいの?
  • 看護学生と一緒に訪問するときはどうすればいいの?

これらの質問を参考に、訪問看護の場での悩みを解決しましょう。

トイレは借りてもいいの?

基本的にはトイレは外で済ませておきます。

訪問の合間でトイレに行けるように、事前に訪問する道順にトイレがあるか確認してください。万が一の際には、利用者さまに一言声をかけて使わせてもらいましょう。

利用者さまの環境アセスメントはどうすればいいの?

訪問看護師の役割のひとつが環境アセスメントです。たとえば、利用者さまのご自宅の様子から以下のようなことを考えなければなりません。

  • 自宅が清潔であるか
  • 転倒しやすい場所はないか
  • どのような食事を取っているか
  • 浴室に手すりはついているか

これらの情報を踏まえて、リスクがあると判断した場合は利用者さまやご家族に指導することが大切です。ただし、自宅をキョロキョロ見られるのは利用者さまにとっては良い気持ちはしません。

そのため、さり気なくご自宅の様子を見たり、ご家族に聞いたりなどして自宅環境をアセスメントしましょう。

看護学生と一緒に訪問するときはどうすればいいの?

病院の実習と同様に、訪問看護の実習では利用者さまの許可が欠かせません。

訪問看護の実習は、利用者さま宅でおこなうため、プライバシーの観点から拒否されるケースも少なくありません。

そのため、利用者さまに実習の必要性や実習することで利用者さまに不利益となることがないことなどを丁寧に説明して、協力してもらえるようにしましょう。

まとめ

訪問看護においてマナーの遵守は欠かせません。

病院とは異なり、利用者さま宅でのケアとなるため、マナーにはより配慮することが大切です。マナーに配慮したサービスを提供できると、利用者さまやご家族と良好な関係を築くことができ、スムーズなケアをおこなえます。

記事で紹介した訪問前、ケア中、退室時、それぞれのマナーを守り利用者さまの満足度向上につながるようなより良いケアを提供しましょう。

参考文献・サイト

2024年度診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査|厚生労働省

訪問看護しくみ|厚生労働省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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