看護師が退職できない6つの理由!引き止められたときの断り方を解説
「訪問看護ステーションに転職したくて看護師長に退職願を出したけど聞いてもらえない」「人手不足だから退職を引き止められる」などと、悩みがある方は多いかもしれません。
いざ退職しようと決意したにもかかわらず、引き止められ退職できない看護師の方は少なくありません。しかし、あなたの意見ばかりを無理に押し通して、退職を進めても円満退職はできないでしょう。
そこでこの記事では、看護師の方が退職できない6つの理由と引き止められたときの断り方を解説します。引き止められ断り方に悩んでいる方やお世話になった職場を円満退職したい方は、ぜひ参考にしてください。
看護師が退職できない理由6選
看護師の方が退職を決意しても、なかなか認めてもらえない現状があります。まず、看護師が退職できない6つの理由を解説します。
- 訪問看護ステーションや病院の人手が足りない
- 管理者が自身の評価を下げたくない
- お礼奉公中で奨学金を完済していない
- スタッフに罪悪感があり言い出せない
- 就業規則に沿っていない
- 退職日を引き伸ばし退職させてくれない
看護師長に退職の意思を伝える前に6つの理由を押さえておくと、円満退職する方法を考えやすくなるでしょう。
1.訪問看護ステーションや病院の人手が足りない
看護業界は、全体的に人手不足の状態であり、簡単に退職できない看護師の方は多いです。
厚生労働省が公開した「職業別有効求人倍率」では、看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20倍とされています。つまり、1人の看護師の方に対して、2つ以上の訪問看護ステーションや病院などが募集している状況です。
全職種の有効求人倍率が1.21倍であるため、ほかの職種に比べて人手不足が深刻化していることがわかります。
厚生労働省や日本看護協会などが看護師数を確保するために、さまざまな施策をしていますが、人手不足の状況は変わりません。そのため、看護師の方が退職すると下記の問題が生じます。
- 職場のシフトが組めない
- ほかの看護師の方の業務負担が増える
- ほかの看護師の方が辞めやすくなる
業務負担が増えると、ほかの看護師の方が離職する可能性が高まります。そのため、可能な限り退職せずに留まってもらいたいと考えるのが職場の本音です。
2.管理者が自身の評価を下げたくない
管理者は、自身の評価を下げたくないため、退職を引き止める可能性があります。
なぜなら、退職者を出すと人間関係や労働環境に何らかの問題があり、看護師長の評価が下がるためです。看護師の方からも「〇〇病棟〇人も辞めるらしいよ。働きにくいんだろうね」と噂を立てられたり、評価されたりする恐れがあります。
そのため、看護師長は「もう少し看護師として経験を積んだ方がいいと思うよ」「せっかく仕事に慣れてきたのに、今辞めるのはもったいない」などといって引き止めます。
あなたのことを考えて引き止めている場合もありますが、そうでない場合もあるのです。引き止められた際は、どのような意図で引き止めているのか考えましょう。
3.お礼奉公中で奨学金を完済していない
看護師の方のなかには、お礼奉公中の方もいます。
そもそも、お礼奉公とは病院が看護学生を支援する制度のひとつです。病院が看護学生の奨学金を負担する代わりに、看護師の資格を取得した際に一定期間の病院での勤務を約束します。
お礼奉公中に退職すると全額返済を求められます。全額返済できなければ、違約金の支払いを求める場合もあるかもしれません。
しかし、奨学金制度を理由に退職を認めないことは法律違反の可能性があります。奨学金は返済する必要がありますが、転職後に返済しても構いません。
職場ごとで対応が異なるため、まずは契約の内容を確認してください。
4.スタッフに罪悪感があり言い出せない
スタッフに罪悪感があり退職を言い出せず退職できない看護師の方もいます。患者さまや利用さまにも迷惑をかけると考える方もいるでしょう。
特に、プリセプターや委員会のリーダーなど役割がある方は言い出しにくいのかもしれません。
退職の意思を伝えられなければ、もちろん退職はできません。
5.就業規則に沿っていない
就業規則に沿っていない場合も、看護師の方が退職できない理由のひとつです。たとえば下記の就業規則があると、退職ができない場合があります。
退職を希望する職員は少なくとも3ヶ月前までに所属長に告げ、1ヶ月前までに退職届を提出しなければならない |
法律的には、退職の14日前までに退職の意思を伝えれば問題ありません。
しかし、就業規則に記載されている期日内でなければ、病気やケガなどの理由がない限り退職するのは現実的ではないでしょう。
そのため「1ヶ月後に退職したい」と思っても、所属長に退職の意思を伝える期限は過ぎているため、退職ができない場合があります。就業規則は、訪問看護ステーションや病院によって異なります。確認したうえで退職の意思を伝えましょう。
6.退職日を引き伸ばし退職させてくれない
退職を申し出ても引き伸ばされ退職できない場合もあります。
看護業界は人手不足であるため、職場はあなたに1日でも長く在籍してもらいたいと考えるのです。
そのため、看護師長から「あと3ヶ月待って」「後任者が来るまで待って」などいわれ、退職できない場合があります。
なかには「夜勤を減らすから」「残業しなくてもいいから」など労働条件の変更を理由に引き伸ばされる場合もあります。
看護師の方が退職すると、シフトの調整や引き継ぎがあるため、1ヶ月程度待つのは職場への配慮として必要かもしれません。
しかし、一度退職の意思を伝えたため居づらく感じ、3ヶ月待つのは精神的につらいでしょう。モチベーションの維持も難しいです。
さらに、労働条件が変更されても、根本的な解決ができなければ「やっぱり退職したい」と悩みます。
看護師が退職を引き止められたときの断り方
看護師の方が退職を引き止められたときの断る方法は下記の5つです。
- 引き止められない退職理由を伝える
- 転職先をまず決める
- 退職相談ではなく明確な退職意思を伝える
- 看護部長に相談する
- 転職サイトに相談する
一度引き止められると、退職日がうやむやになりスムーズに退職できません。そのため、引き止められにくい理由を用意し、退職できない状況を作ることが重要です。
引き止められない退職理由を伝える
そもそも引き止められない退職理由を伝えると、看護師長も引き止めないかもしれません。具体的には、下記の退職理由を用意しておくといいでしょう。
- スキルアップのため、この病院にはない診療科で経験を積みたい
- 専門看護師の資格を取るために大学院で学びたい
- 看護師以外の仕事を経験して成長したい
- 海外で看護師として働くために語学留学したい
- 子育てや介護に専念したい
人間関係や待遇など職場への不満があっても、そのまま伝えるのは避けてください。スキルアップや学びたい意欲などポジティブな退職理由を伝えましょう。
「この病院ではできないこと」を退職理由に伝えると、看護師長も引き止めにくいです。
詳しくは以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:看護師の退職で強い引き止めにあう理由10選!退職しやすい理由を解説
転職先をまず決める
退職を引き止められてうまく断れない方は、転職先をまず決め強制的に退職しなければならない状況を作ることもひとつの手段です。
ただし、就業規則に沿った方法であることを確認したうえで活用しましょう。就業規則に沿っていなければ、円満退職はできないため注意してください。
転職先が決まっている状況であると、看護師長に引き止められても心が揺らがないでしょう。経済的な不安もやわらぎます。
退職の意思が固まるため、退職する覚悟を持てるようになり、引き止められても断れます。
退職相談ではなく明確な退職意思を伝える
退職の相談をすると引き止められやすいです。
「相談」ではなく「明確な意思を伝える」ことが大切であり、退職の意思が明確であると看護師長は引き止めにくいです。退職の相談であったり、意思があいまいであったりすると、引き止めやすくスムーズに退職できないでしょう。
看護師長に退職を伝えようとしたときに、同僚への罪悪感や患者さま、利用者さまへの配慮から退職の意思が十分に固まっていない恐れがあります。
看護師長に退職を伝えるのを一旦待ち、退職するのか、そのまま働くのか自身に問いかけてください。意思が固まったうえで、看護師長に伝えましょう。
看護部長に相談する
看護師長に引き止められたら、看護部長に相談しましょう。
看護部長が納得すれば、看護師長も納得せざるを得ません。
しかし、看護師の方は「看護部長とは面識がない」「そもそも看護師長よりも看護部長のほうが相談しにくい」など感じる方がいるかもしれません。看護部長に相談できない場合は、人事部に相談しましょう。
いきなり看護部長に相談にいくと、看護師長がよく思わず関係が悪化する恐れがあります。そのため、看護師長に退職の意思を伝えても退職できない場合にのみ、看護部長や人事部に相談してください。
転職サイトに相談する
退職にかかわる悩みを抱えている看護師の方は、転職サイトに相談しましょう。
看護師特化の転職サイトであると、看護師の方それぞれの状況に合わせてスムーズに退職するための具体策をアドバイスできます。ほとんどの転職サイトは無料で利用できるのもおすすめポイントです。
転職の相談もできるため、仕事を変えたい方に向いているでしょう。
看護師が退職交渉をスムーズに進めるためのポイント
看護師の方が退職を引き止められないため、退職交渉をスムーズに進めるためのポイントを押さえましょう。
- しっかり業務の引き継ぎをすると伝える
- 退職しやすい時期を選ぶ
これまでにお世話になった職場です。ただ退職の意思を伝えるだけではなく、職場への配慮を忘れないでください。具体的なポイントは下記のページで解説しているため、ぜひ参考にしてください。
関連記事:看護師の退職は何カ月前に伝えるの?円満退職への切り出し方を解説
どうしても退職できないときの方法
断りにくい退職理由を伝えたり、看護部長や人事部に相談したりしても退職できない場合があります。どうしても退職できないときには、下記3つの方法を実施してください。
- 退職届を郵送する
- 労働基準監督署に問い合わせる
- 退職代行サービスを活用する
これら3つの方法はあくまで最終手段です。これまでに紹介した方法を実施しても退職できない場合に実施しましょう。ただし、円満退職できないことは想像できるかと思います。
退職届を郵送する
退職届や退職願を受け取ってもらえない看護師の方は、書類を郵送しましょう。このとき、「内容証明郵便」で送ってください。
内容証明郵便であると、あなたが職場に書類を送った事実が郵便局に記録として残ります。退職届を受理しないことは法に反するため、人事部に送ると退職の手続きを進められるでしょう。
内容証明郵便で送ると、あなたの退職する意思が強いことを職場に伝えられます。
労働基準監督署に問い合わせる
なかなか退職を認めてもらえない方や就業規則よりも早い時期の退職を考える方など、1人で解決できない場合は労働基準監督署に問い合わせましょう。
なぜなら、先述したように、法律的には退職の14日前までに退職の意思を伝えれば問題ないためです。退職を認めないのは職場の問題といえます。
余裕を持って数ヶ月前から退職日を決め準備を進めるのが理想的です。
「労働基準監督署に相談する」と職場に伝えるだけでも、退職の話が進むかもしれません。話が進まない場合は、実際に労働基準監督署に問い合わせましょう。
退職代行サービスを活用する
退職代行サービスは、退職したいあなたに代わり、退職を進めてくれます。
「もう職場に行きたくない」「看護師長や同僚と顔を合わせたくない」など、看護師長や看護部長と一切連絡を取らずに退職したい方におすすめです。
サービス利用に費用が発生しますが、あなたが退職交渉するよりもスムーズに退職できます。さまざまな退職代行サービスがあるため、対応する地域やサービス内容、費用などを確認しあなたに合った退職代行サービスを活用しましょう
退職代行サービスを活用する際は、有給休暇の残りの日数や受け取る書類、返却する物品などを事前に伝えるのを忘れないでください。
看護師が退職するのは難しい?
看護師の方が退職するのは難しいといえます。
看護業界が全体的に人手不足であり、訪問看護ステーションや病院、施設などいずれの場所で看護師数が足りないためです。
特に、看護師数の確保は、診療報酬の評価基準で重要です。7対1、10対1などの基準を満たせなければ、病院の収入が下がり、患者さまも質の高い看護ケアを受けられなくなります。
そのため、1日でも長く在籍してもらうために退職を引き止めたり、引き伸ばしたり、さらには退職を認めない場合もあります。
新人看護師は辞めさせてもらえない?
新人看護師の方も辞められます。
日本看護協会が公開した「「2022 年 病院看護実態調査」 結果」によると、2022年の新人看護職員の離職率は10.3%とされています。実際に、多くの新人看護師が辞めています。
しかし、新人看護師の方が退職の意思を伝えても、スムーズに辞められない場合があります。
たとえば、看護師長が「まだ1年経ってないから辞めるのは早いよ」「今辞めてもほかに行くところがないよ?」などといって、引き止める可能性があるためです。
新人看護師の方であっても、ベテラン看護師の方であっても、病院側は看護師の方が辞めることを止められません。
訪問看護ステーションや病院では、第2新卒を歓迎しているところもあります。転職先を決めて、退職の意思を伝えると引き止められず辞められるかもしれません。
看護師が退職するときの手続きは?
看護師の方の退職が決まったら、退職の手続きを進めなければなりません。
多くの場合、看護師長や人事部が教えてくれます。そのため、指示された通りにすると、スムーズに進められるでしょう。
退職願や退職届の書き方がわからない方は下記のページで具体的に解説しています。ぜひ、参考にしてください。
関連記事:【例文付】看護師の退職届の書き方!退職願との違いや注意点を解説
看護師が退職できない理由は6つ!円満な退職を目指そう
看護師の方は人手不足や看護師長の評価が下がるなどの理由から、退職を引き止められ退職できない場合があります。
退職届の郵送や労働基準監督署への相談は、あくまで最終手段です。
あなたの退職日をあなたや看護師長さん、双方が気持ちよく迎えられるために、引き止められたときのうまく断る方法を知ってください。この記事で紹介したことを実践し、円満退職を目指しましょう。
参考サイト・文献
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。