認定看護師になるには?条件や取得までの流れ、資格取得によるメリットも解説

看護師の方の中には看護師としてのキャリアを歩んでいく過程で、キャリアアップを考えている方もいるでしょう。
キャリアアップの手段の一つとして、認定看護師の取得が挙げられます。
今回は認定看護師になるにはどうすれば良いのか、条件や取得までの流れや資格取得によるメリットを解説します。
また認定看護師と比較されやすい専門看護師との違いも解説するので、気になっている方はぜひ参考にしてください。
認定看護師になるために知っておきたい制度の変更点
2019年度の認定看護師制度の改正にともない、認定看護師制度が大きく変わりました。
おもな変更点は、2021年度から新しい教育課程のB過程認定看護師がスタートし、これまでの教育課程が廃止されることです。ここで、詳しく解説します。
ポイント1:A課程(既存分野)は2026年度で教育終了
これまで行われてきたA課程は、2026年度で教育が終了します。この課程での認定看護師を目指す方は注意が必要です。
ポイント2:B課程(新分野)へ一本化、特定行為研修が組み込まれる
B課程の特徴は「特定行為研修」がカリキュラムに組み込まれていることです。
これにより、認定看護師は点滴の速度変更や人工呼吸器からの離脱、気管カニューレの交換などを作成した手順書にもとづいて実施できるようになります。
専門的な知識やスキルを身につけた看護師が、一部の医療行為をおこなうことで、患者さまの状態に応じて、タイムリーな医療を提供できます。
A課程とB課程、どっちを目指すべき?
今から認定看護師を目指すなら、B課程で資格を取得すべきでしょう。
A課程は教育期間が終了するため、これから勉強を始める方には現実的ではありません。B課程は、特定行為研修が含まれるため、A課程に比べて教育期間が長くなりますが、その分、実践的で専門性の高いスキルを習得できます。長期的なキャリアを見据えるなら、B課程を目指すのが賢明な選択といえます。
認定看護師になるには?5つのステップ
認定看護師になるためには、次の5つのステップを踏む必要があります。
STEP1:受験資格を確認する
まず、認定看護師教育課程の受験資格を満たしているか確認しましょう。
- 看護師免許の保有
- 実務研修5年以上(うち3年は認定分野)
認定看護師を目指すには、まずこの2つの条件をクリアすることが必須です。実務経験は特定の分野で3年以上必要になるため、希望する分野での経験を計画的に積んでいくことが大切です。
STEP2:分野を選び、教育機関を探す
次に、自分がどの分野の認定看護師になりたいかを決め、その分野を学べる教育機関を探します。現在の所属部署や将来性などを考慮して選びましょう。
| A課程(21分野) | B課程(19分野) |
| 救急看護 | 感染管理 |
| 皮膚・排泄ケア | がん放射線療法看護 |
| 集中ケア | がん薬物療法看護 |
| 緩和ケア | 緩和ケア |
| がん化学療法看護 | クリティカルケア |
| がん性疼痛看護 | 呼吸器疾患看護 |
| 訪問看護 | 在宅ケア |
| 感染管理 | 手術看護 |
| 糖尿病看護 | 小児プライマリケア |
| 不妊症看護 | 新生児集中ケア |
| 新生児集中ケア | 心不全看護 |
| 透析看護 | 腎不全看護 |
| 手術看護 | 生殖看護 |
| 乳がん看護 | 摂食嚥下障害看護 |
| 摂食・嚥下障害看護 | 糖尿病看護 |
| 小児救急看護 | 乳がん看護 |
| 認知症看護 | 認知症看護 |
| 脳卒中リハビリテーション看護 | 脳卒中看護 |
| がん放射線療法看護 | 皮膚・排泄ケア |
| 慢性呼吸器疾患看護 | |
| 慢性心不全看護 |
日本看護協会のホームページでは、教育機関や開講している分野を確認できます。
STEP3:教育課程を受験し、入学する
教育機関が決まったら、入学試験を受けて合格する必要があります。
入学試験の内容は、書類審査や筆記試験(小論文、専門科目問題)、面接などです。
入学後は、共通科目と専門科目を学んでいくこととなり、教育課程の後半では臨地実習がおこなわれます。授業は、平日の昼間のコースと週末のみのコースなどがあります。自身のスケジュールに合わせて、仕事を続けながらの取得も可能です。
ただし、授業に合わせてシフトを組まなければならないため、看護師長やスタッフにシフトを協力してもらえるように、日頃から信頼関係を築き、理解を得ておくことが大切です。
STEP4:認定審査(筆記試験)に合格する
教育課程を修了したら、日本看護協会が実施する認定審査を受験します。審査は筆記試験形式(マークシート方式・四肢択一)、150点満点で105点以上が合格となり、認定看護師と認められます。
ある調査によると、認定審査の合格率は80~90%といわれていますが、出題範囲は広く、専門的な内容が多いため、しっかりと対策をして臨む必要があるでしょう。
STEP5:登録・5年ごとの更新
認定審査に合格したら、日本看護協会に登録することで、正式に認定看護師として活動できます。資格は5年ごとに更新が必要です。
更新には、定められた研修の受講や、実務経験の証明などが求められます。
認定看護師になるためにかかる費用
認定看護師になるためには、ある程度の予算を確保しておかなければなりません。
認定看護師の取得までにかかる費用は、約150万円〜200万円程度はあった方が良いでしょう。
| 項目 | 費用 |
| 認定看護師教育機関入試費用&入学金 | 約10万円 |
| 授業料 | 約100万円〜 |
| 実習費用 | 約10万円 |
| 認定審査料 | 5万1,700円(税込) |
他にも交通費や教材費、通信機器や電子機器の購入費用なども含まれるので、最低でも表の金額に加えて50万円は見積もる必要があります。
もし更新せずに認定看護師資格が消失した後、再認定審査を受ける場合は3万800円(税込)が必要です。
金銭的に難しいと悩んでいる方は、日本看護協会の認定看護師教育課程奨学金のような奨学金制度を利用したり、働いている病院が支援制度を設けていたら支援制度を利用したりすることもおすすめです。
認定看護師を検討しているのであれば、一度職場に相談してみると良いでしょう。
認定看護師になるメリット
ここでは認定看護師になろうと考えている方に向けて、認定看護師になると得られるメリットを解説していきます。主に考えられるメリットは下記の3つです。
- 昇進や給料アップなどの待遇改善が期待できる
- 仕事の幅が広がる
- 周囲からの信頼を得られて働くモチベーションが上がる
それぞれ詳しく解説していきます。
昇進や給料アップなどの待遇改善が期待できる
認定看護師になることで、主任や看護師長など役職の昇進や、資格手当などの給料アップが期待できるかもしれません。
ただし、認定看護師になったからといって必ずしも昇進や給料アップするわけではありません。
実際に、時間やお金をかけて認定看護師になったのに待遇は変わらなかったという看護師の方もいます。
あくまでも昇進や給料アップを目的にするのではなく、自己研鑽や業務の専門性向上など他の目的で認定看護師を目指すと良いでしょう。
仕事の幅が広がる
認定看護師になると、特定の看護分野についての知見が資格を持って証明されることとなります。
そのため教育や指導などの立場にたったり勉強会を開催する立場になったりなど、これまで携わってこなかった仕事を受けられるようになり、仕事の幅が広がる可能性もあるでしょう。
時には院外でセミナーや勉強会を開催し、より良い看護について自分が勤めている職場以外の医療従事者と話す機会もあるかもしれません。
認定看護師になった後も自己研鑽していきたい方にとって、働いている職場以外の方と関わることは、非常に良いメリットと感じられるでしょう。
周囲からの信頼を得られて働くモチベーションが上がる
認定看護師であることは、その専門的な知識や技術が周囲から確実に信頼され、頼られる機会を増やすことにつながります。
たとえば、緩和ケア認定看護師の資格を取得したことで、病院内に新設される緩和ケア病棟の師長を任されるといったケースもあります。
現場で求められる存在となることは、自身のやりがいや働くモチベーションを高める大きな要因となるでしょう。
認定看護師が活躍する場所
認定看護師が活躍している現場は、例として下記のような場所があります。
- 病院
- 訪問看護ステーション
- クリニック
- 介護保険施設など
病院では、診療科によって認定看護師を配置し、より高度で専門性の高いケアの提供や後輩への指導を中心として活躍する認定看護師の方がいます。
その一方で、訪問看護ステーションや介護保険施設のような地域に根付いた環境で働く認定看護師もいます。
在宅看護の場では、「在宅ケア」「皮膚排泄ケア」「認知症看護」「摂食嚥下障害看護」など幅広く活躍しています。
また、人生の最終段階で過ごす場所として、自宅を選ぶ人が年々増加しています。そのため「緩和ケア」の認定看護師も、在宅の現場で多数活躍されています。
訪問看護師が認定看護師を取る意味や必要性
訪問看護師が認定看護師を取得することで、訪問看護の現場においてスペシャリストとしてステーションのメンバーを牽引していく役割を担うことも可能です。
たとえば、認定看護師の知見を活かした勉強会を開催し訪問看護ステーション全体の看護の質を底上げできるでしょう。
訪問看護ステーションの看護の質については、訪問看護ステーションが乱立する中で課題の1つとして厚生労働省も注目しており、診療報酬の改定なども検討されています。訪問看護ステーションを長期的に存続させていくという目線でも、訪問看護師が認定看護師を取ることは非常に意味のあることといえるでしょう。
認定看護師に向いている人
最後に認定看護師に向いている人を解説していきます。
もし向いている人の項目に当てはまっていない方でも、働いていく中で適性を身に付けていく方もいるため、「当てはまっていないから認定看護師を諦めよう」などと考える必要はありません。
あくまでも参考としてご覧ください。
質の高い看護を提供できるようになりたい
認定看護師は取得した分野について、ほかの看護師を先導できるような知識や技術を持った看護師を指します。
周囲を牽引するような存在となって、該当分野の看護の質を底上げしていきたいと考えている看護師の方にはおすすめです。
看護師の働き方は多様化していますが、看護の現場で1つの分野を極めている知見者の存在は、周囲の看護師のスキルアップにもつながります。
自分自身が質の高い看護を提供したいと考える方はもちろん、その分野自体の看護水準を高めたいと考えている方にも向いているといえるでしょう。
スペシャリストを目指している
認定看護師の方は、特定の分野を極めているスペシャリストともいえます。
看護師としてのキャリアプランの中で、スペシャリストの道を目指している方には、認定看護師になることは活躍の場を広げるという意味でもおすすめです。
認定看護師になるには時間と費用がかかりますが、生涯をかけてこの分野の看護師として働いていきたい、という強い思いがある方に向いている資格です。
詳しくはスペシャリストについて下記の記事もご覧ください。
関連記事:専門看護師とは?専門分野14個の種類や認定看護師との違いを解説!
給与アップや管理職を目指したい
認定看護師は、所属する病院や施設、訪問看護ステーションによって異なりますが給与アップができる場合があります。
「資格手当」として、毎月の給与に数万円追加されたり、賞与に追加されて支給されたりする場合もあるようです。給与がアップすることで、より学びを深めるために使うこともできますし、ご褒美としてリフレッシュに使うこともできます。何より、モチベーションアップにもなるでしょう。「資格手当」は職場によって異なるため、詳しくは職場の人事部などに確認しましょう。
認定看護師と専門看護師の違い
認定看護師と専門看護師は、それぞれ看護師がキャリアアップするための資格です。いずれの資格も高度な知識とスキルを証明するものですが、役割や給料などに違いがあります。
詳しい違いについては、下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:認定看護師と専門看護師の違いとは?9つの違いや向いている人の特徴
認定看護師になるには所定の教育や審査を受ける必要がある!特定の看護分野を極めたい方におすすめ
本記事では、認定看護師になるための要件や取得までの流れ、取得によるメリットをわかりやすく解説しました。あわせて、しばしば比較される「専門看護師」との違い、認定看護師に向いている人の特徴についても紹介しています。
費用や時間の投資は必要ですが、高度な専門性を持つ看護師の需要は今後も確実に高まっていくでしょう。各分野のプロフェッショナルであることを示す「認定看護師」の資格取得を、ぜひ前向きに検討してみてください。
また、認定看護師としてさらなる専門性を発揮したい方には、病院だけでなく、地域医療の要となる「訪問看護」というキャリアも有力な選択肢です。
訪問看護の現場で専門性を活かしたい方は、ぜひ「NsPaceCareer」をご利用ください。認定看護師として、地域社会に貢献できる新たなキャリアを見つけましょう。
<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
