看護を楽しむことが、安心を生む~訪問看護ステーションつな樹 伊藤さんにインタビュー~

かつて小児病棟で経験したお看取りの時に感じた「心残り」から、地域での小児在宅看護に挑戦しようと決意した伊藤さん。ゼロから立ち上げた訪問看護ステーション「つな樹」では、経験よりも「子どもが好き」という気持ちを大切に、多職種と協力しながら、0歳から100歳まですべての世代に看護を届けています。「責任は私が取るから、まずは看護を楽しんでほしい」――そんな伊藤さんの言葉に、安心して一歩を踏み出せるヒントがあります。

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事業所名
雇用形態
給与
就業場所
病院で抱いた“心残り”が、在宅小児看護の原点に
-病棟での長いご経験のあと、訪問看護に転じられたきっかけを教えていただけますか?
長年にわたり病棟看護を経験し、多くの命と向き合ってきた伊藤慈子さん。その看護観を大きく変えたのは、小児病棟でのある出来事でした。
「小児病棟で、終末期を迎えたお子さんがいらっしゃったんです。もうお話もできない状態で。お母様が“おうちで川の字になって寝たい”と望まれていたのですが、当時の大阪では子どもの在宅看護の受け入れ体制がほとんどなくて…。地域連携の方と何とか外泊の調整を試みたのですが、叶いませんでした」
その子は病院で亡くなりました。お母様からは感謝の言葉もあったと言います。しかし伊藤さんの胸には、どうしても拭いきれない思いが残りました。
「“できなかった”という気持ちがずっとあって…。その出来事が、私のなかで大きな転機になりました。『子どもの在宅医療をやっていきたい』と強く思うようになり、行動に移していったんです」
その後、伊藤さんは訪問看護師として、新たな一歩を踏み出します。子どもたちが安心して在宅で過ごせる環境を整えたい――そんな思いから、仲間と共に訪問看護ステーションの立ち上げに挑戦しました。

小児未経験でも大丈夫。“看護を楽しめる場”のつくり方
-ステーションの立ち上げエピソードを教えてください
三田市という新たな土地に移り、ゼロからの立ち上げ。地元のことも人脈も、一から探りながらのスタートでした。
「最初はもう、何をしてるか分からないくらいバタバタしていました(笑)。マニュアルも制度も、全部自分たちで整えていって」
小児看護を経験しているスタッフは数名です。しかし伊藤さんは、“経験”よりも“気持ち”を重視しました。
「『子どもが好き』それだけでも、十分なんですよ。実際に来てくれたスタッフもほとんどが小児未経験。同行訪問をして、少しずつ慣れてもらっています」
-小児経験がない方が安心して入れるのは心強いですね。スタッフをどのようにサポートされていますか?
「 “私に責任は丸投げでいいから、まずはやってみて”って伝えています。看護って、楽しむことがすごく大事。自分が楽しんでないと、利用者さんに安心感って伝わらないと思うんです」
伊藤さんの言葉には、「自分もやってみよう」と背中を押してくれるような、安心感がにじんでいるように感じられます。
一人で抱え込まない。チームで支える“訪問”の工夫
-訪問看護は一人での対応になることも多く、不安を抱える方もいらっしゃると思います。つな樹さんでは、どのように支え合っていますか?
「うちは“担当制”にしていなくて、スタッフ全員で利用者さんを見守るスタイルです。看護観が違うスタッフが関わることで、多角的な看護が提供できるようになるんです」
それぞれの個性や視点が生きる環境。利用者さまからも「キャラクターが豊富で面白い」と好評です。
一方で、訪問看護には“ひとりで行く”というプレッシャーもつきもの。そこを支えるのがICTの活用です。
「困ったらすぐに連絡を取れるように、ICTやチャット、電話も使います。私が手を離していても、あとで必ず見るようにしています。“困ったときは一人で判断しなくていい”という環境を整えることはとても大事だと思っています」
現場で即判断を迫られる訪問看護。そのプレッシャーを、スタッフ全員と管理者が一体となって和らげています。

生まれてから看取るまで――“区切らない看護”を地域に
-今後のビジョンとして、地域でどのような存在になりたいとお考えですか?
「人って、生まれてから亡くなるまでの間を、区切れないじゃないですか。看護ってその“切れ目のない人生”に寄り添うものだと私は思っています」
そう語る伊藤さんのステーションでは、赤ちゃんから高齢者まで、あらゆる世代の利用者さまに対応できる体制が整っています。
-“さんだ在宅医療ネットワークの窓口”もやっていらっしゃるとお聞きしました。
「急な退院が決まっても、うちが窓口になって先生やケアマネさんをすぐに調整して、ご相談の翌日に退院できるようにしています。スピード感が求められることもあるので」
市の委託事業として学校・保育園への看護支援にも取り組みながら、伊藤さんは小児看護専門看護師の資格取得も目指しています。
「“子どもの看護はつな樹に任せたらいい”って思ってもらえるように、地域に根付いていきたいんです。声にならない困りごとに気づいて、一緒に考えられる存在でありたい」
病気がなくても、つらさを抱える人たちがいる。そんな誰かの隣にそっと寄り添える“看護の本質”を、訪問看護ステーションつな樹は体現し続けています。
インタビュアーより
「責任は私に丸投げでいいから、まずは看護を楽しんで」――
この言葉を聞いたとき、私は胸が温かくなりました。
伊藤さんは、理知的で落ち着いた語り口のなかに、強い信念としなやかな優しさをお持ちの方です。小児看護の在宅移行が難しかった時代に感じた“心残り”を胸に、地域での小児訪問看護をゼロから切り拓いてこられました。
特に印象的だったのは、「子どもが好きなら、それだけでいい」と、小児未経験の看護師にも優しく門戸を開かれている姿勢。そして何より、「看護は楽しんでいいんだよ」と語ってくださったその言葉に、訪問看護の本質が詰まっているように感じました。
事業所概要
- 事業所名: 株式会社SGT 訪問看護ステーションつな樹
- 住所: 〒669-1324 兵庫県三田市ゆりのき台2-25-1
- 事業所紹介ページ:https://ns-pace-career.com/facilities/16867

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