質の高い看護を求めて〜利用者の価値観を尊重する姿勢を大切に〜さがみはら訪問看護ステーション結 江藤さんにインタビュー

訪問看護の世界に魅了され、長年の経験を積まれた江藤様。現在は、管理者だけでなく認定看護師としても活躍されています。そんな江藤様に訪問看護の魅力や、働きやすい職場づくりについてうかがいました。
働き方に魅力を感じ訪問看護の道へ
看護大学を卒業後、4年間病院で働き、結婚を機に退職しました。その後1年ほど看護専門学校で教員として働いていましたが、やはり現場の方がいいなと考えていたんです。
そんなときに訪問看護を知ったのですが、当時は看護師の経験が4年だったので、経験の面で不安はありました。でもいろんな訪問看護ステーションに問い合わせをしたら、4年の経験でも受け入れてくれるところがあったのです。それが訪問看護への道の始まりでした。
訪問看護を選ぶ最初のきっかけは、実は働き方に魅力を感じたからなのです。結婚していずれ子どもを持ちたいと考えていたので、長期的な視点で考えると家庭との両立がしやすいかなと思って。入口はそれだけの理由なのですが、いざ訪問看護の世界に入ってみるとおもしろくて、訪問看護の経験はもう15年目になります。
当ステーションに入る前にも訪問看護ステーションで経験を積み、その際に皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取得しました。
利用者により良いケアを提供するために認定看護師の資格を取得
訪問をしていく中で、なかなか褥瘡が治らずにこのまま処置で良いのだろうか、もっと良い方法があるのではないか、褥瘡についてももっと学び直したい、最新の処置方法について知りたいと思いました。
ただ、認定看護師の資格をとるには1年近く学校に行かないといけないので、まずは「在宅褥瘡管理者」という資格を取りました。
その資格を取ったら、褥瘡についてもっと学びたいと思うようになり、子どもが小学校に上がったタイミングで「皮膚・排泄ケア認定看護師」の資格を取得するために学ぶことにしました。
褥瘡のケアは時代とともに変化するので、学び続けることで最新の褥瘡ケアを実践できます。また、褥瘡が治らないときに先生に根拠をもって伝えられるようになりましたね。

人となりに寄り添うという訪問看護の魅力
病院では急性期病棟に勤めていたので、患者さんは入院から退院までの日数が短く、ゆっくり関わることが難しかったです。正直なことを言うと、患者さんがどんなふうに自宅に戻っているのか知らなかったですし、考えたこともあまりありませんでした。
訪問看護の世界に入り、利用者さんとご家族と話す時間が持てることや、継続的に関わっていけるところにとても魅力を感じました。病院とは時間の流れも使い方もちがうし、同じ看護職でもこんなにちがいがあるのかと衝撃でしたね。もともと人と話すことが好きなので、利用者さんやご家族とコミュニケーションをとる機会がたくさんあることが、私はすごく楽しかったです。
ほかにも、在宅の現場では、利用者さんやご家族の人となりに寄り添って対応ができることにおもしろさを感じます。たとえばタバコを吸うのは病院では絶対にだめですが、在宅だと1本ぐらいいいかな、みたいになることもあって驚きましたね。
最初は先生もダメだよとは言いますが、しぶしぶ認めざるを得なかったり……。もちろん許容される程度はありますが、利用者さんの想いや生活に沿って、受け入れる幅がちがうのがあるのがおもしろいですね。
相手の価値観を尊重し、日常に喜びを届けたい
これまで印象に残っている利用者さんに、50代のALS(筋萎縮性側索硬化症)の男性がいます。元々は長く学校の先生をされていた方で、奥様も教員をされていました。まだ50代なのに右肩下がりに状態が悪くなって……そんなときに「昔は自分が家族の中心だった。仕事が忙しかったけど、犬の散歩はよく行っていた」と話してくれたんです。
車いすに乗って犬の散歩をすることも考えましたが、体格が大きい方だったので難しくて。自分たちに何かできないかと思い、寝たきりだったその方の身体の上に犬を乗せてみたんです。そうすると、家族の一員でもあった犬の温もりを感じることができて、すごく喜ばれたんです。
その後、犬がご主人から離れたくなくて降りてくれなくなって困りはしましたが、そのとき「こういうのもいいね」と利用者さんが言ってくれたんですね。ちょっとしたことでも、その人にとってはかけがえのない瞬間になるんだと感じました。
ほかにも猫を自分の娘のように思っている利用者さんには、スタッフ間で「まず猫を褒める」という申し送りがあることもありますよ。その人が大事にしているものを尊重することが大切だと思っています。利用者さんとご家族の価値観に、私たちが入らせてもらう感じですね。

一緒に生活を支える仲間として認めてもらうこと
利用者さんの価値観を知ることを大切にしているので、スタッフには利用者さんやご家族と関わるときに「教えてもらう姿勢」でいこうと伝えています。利用者さんやご家族から、私たちの存在が「一緒に生活を支える仲間」だと認識してもらえないと、大事にしているものも聞き出しにくいんですよね。信頼関係を作るうえでも、利用者さんやご家族に対して教えてもらう気持ちで、立場が上にならないようにと考えています。
また、利用者さんは高齢の方が多いので、人生経験も私たちよりずっと長いです。人生の先輩という感覚で関わることを大切にしてほしいですね。看護師なので、利用者さんにどうしても指導するような場面はあるかもしれません。
そんなときはふり返りをして、考え方や伝え方についてアドバイスすることがあります。スタッフには、利用者さんの価値観をしっかり理解してほしいのです。
みんなが同じ方向に進むために。スタッフとの対話を大切に
当ステーションは、スタッフの半数が男性看護師です。とくに意識して採用したわけではありません。だけど、やはり男女で考え方のちがいがあるので、カンファレンスで意見を出し合うと、偏りが正される部分もありますね。同性だと同じ方向になりやすいことが多いのですが、男性もいることでいろんな視点に気づけるところはあります。そこが強みでもありますね。
スタッフには育児中の人も多いので、カンファレンスはなるべく就業時間内に行うようにしています。週に1回、30分だけですが、情報共有だけでなく勉強会もしていますよ。たとえば事例検討や皮膚・排泄ケア、緩和ケアについて学ぶ時間があります。
初期のメンバーは社長を含めて3人だったので、お互いのことをなんとなくわかってやってきたのですが、今はスタッフも増えてきているので、方向性の統一に向けてしっかりコミュニケーションをとることに取り組んでいます。
私と対スタッフというよりは、みんながつながってくれる方が風通しがよくなると思うので、スタッフが私に報告してくれたときには「〇〇さんにも教えておいてあげて」とつなぐようにしています。

スタッフ全員で看護の質を求めて
当ステーションは、他のところよりも記録が細かいと思います。それは、利用者さんの経過だけでなく、自分たちの看護の質を求めたいと考えてのことです。地域のなかで質の高い訪問看護ステーションになり、訪問看護の必要性を感じてもらって、最終的には訪問看護業界の底上げになっていけばいいなと思います。
訪問看護の利用者さんは人生の終盤を迎える方も多いので、その方の歴史に寄り添えないと、看護の質は求められないと考えています。謙虚な姿勢で相手に信頼していただかないと、大事な部分も見えてこないし想いに添えないと思っているので、私を含め、スタッフ全員で看護の質を大切にしていきたいです。
病院は教育のシステムが出来上がっていますが、訪問看護の報酬の面では、教育の時間を使わずにスタッフに訪問してもらった方が利益としては上がるんです。ただ、教育の時間をとらないと、看護の質は上がっていきません。
その訪問看護の利益と質のバランスを当ステーションの社長は理解してくれているんですね。なので、私たちはカンファレンスの時間を使って、スタッフ全員でしっかり話し合うことを大切にし、看護の質を求める取り組みをしています。
個人としての今後の目標は、皮膚・排泄認定ケア看護師としての活動です。現在も医師からときどきご相談いただくことがあるので、たとえば施設の看護師さんが褥瘡のケアに不安だったら、私が介入してケアの方法を伝えたり、一緒に実践したり、そういう活動を広げられたらいいなと思っています。
インタビュアーより
さがみはら訪問看護ステーション結様は、スタッフ同士で自由に意見を交わせる雰囲気があります。カンファレンスでは、江藤様を中心にひとつの物事を全員で深く考える姿勢が印象的でした。利用者様に寄り添う看護がしたい方にはぴったりのステーション様です。
事業所概要
さがみはら訪問看護ステーション結(神奈川県相模原市)
住所:神奈川県相模原市中央区中央2丁目12-15相模中央ビル501
運営方針・理念:
綾をなす看護の創造
美しい彩(いろどり)の織物は、複数の糸を織り上げて作られるように、私達もそれぞれの能力を集結させ多彩でオリジナリティのある看護を創造します。人生を楽しむために働き、やりがいを追求できる職場環境で自己実現を目指します。
感動という付加価値の提供
Professionalであることの自信と誇りをもち、感動という付加価値を提供する実践を行います。何が私たちの強みであり、私たちに任せてもらうことで、どんな感動を与えられるか、それらを訴求しながらブラッシュアップ(自分磨き)をしていきます。
顧客との価値共創の実現
顧客である利用者、家族、医療・福祉関係者との連携と協働により、関係性のなかでこそ生まれる価値にこだわり、新しいつながりが生まれる場をつくります。
自分たちだけでなく、関わる人にとっても豊かさが増す関わりにより地域社会へ貢献します。

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。