訪問看護指示書とは?ルールや記入例、算定要件を実務目線で徹底解説

「訪問看護指示書の期間が誤っている」「記載内容が不足していて請求できなかった」
訪問看護の現場では、このような算定ミスや返戻(請求差し戻し)につながるケースが少なくありません。一方で「確認項目が多く、どこを重点的にチェックすべきかわからない」という声も聞かれます。
この記事では、訪問看護指示書の基本ルールや確認すべきポイント、ケース別の記入例、よくある不備への対応方法を解説します。書類不備による返戻を防ぎ、適切な算定とスムーズな訪問看護の提供につなげたい方は、ぜひ参考にしてください。
訪問看護指示書が必要な理由
訪問看護指示書が必要な理由は、主に次の役割があるためです。
- 訪問看護を実施するための法的根拠となる
- 保険請求をおこなうための算定根拠となる
- 安全で適切なケアを提供するための医師の指示を明確にする
訪問看護指示書とは、主治医が訪問看護ステーション(以下、ステーション)に対し、利用者さまへの看護やリハビリテーションの実施を指示する文書であり、法律で交付が定められています。
訪問看護指示書がないまま訪問すると、保険請求が認められません。安全なケアを利用者さまに提供するため、ステーションの持続的な運営を守るために、訪問看護指示書は欠かせません。
訪問看護指示書のルールとチェックするポイント
訪問看護指示書に記載されている内容によって、保険の種類や訪問回数、算定できる加算が決まります。そのため、記載内容に不備があると返戻となり、適切な収益が得られない、再請求しなければならないといった不利益が生じる恐れがあります。
受け取ったらすぐ確認できるよう、押さえておきたいルールとポイントを理解しておきましょう。
訪問看護指示期間が6ヶ月以内か
訪問看護指示書の有効期間は、最長6ヶ月と定められています。
指示期間が6ヶ月を超えている場合、訪問看護指示書は無効となります。
たとえば、指示開始日が2026年2月20日の場合、最長の指示期間は2026年8月19日です。
指示期間は、かならずしも6ヶ月いっぱいで交付してもらう必要はありません。1ヶ月ごとや、受診のタイミングに合わせて短い期間で発行してもらうことも可能です。
訪問看護指示書を受け取ったら、まず「開始日」と「終了日」を確認し、6ヶ月以内におさまっているかをチェックしましょう。
医療機関情報・主治医の氏名・捺印があるか
訪問看護指示書には、医療機関の情報と主治医の氏名および捺印が必須です。
多くの書類で押印は不要となりましたが、訪問看護指示書は、主治医による捺印や署名、記名が必要です。押印の要否は、医療機関や地域の運用によって異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。訪問看護指示書は原本管理が望ましいとされています。
訪問看護の利用を継続する利用者さまの場合、突然主治医が変更となっているケースもあります。医療機関名と主治医名、捺印の3点をかならず確認しましょう。
緊急時の連絡先・対応の記載があるか
緊急時にすぐ対応できるよう、連絡先や対応方法について明確に書かれているかを確認します。
入院設備がある医療機関の中には「当院へ救急搬送」「担当外来に連絡」などの記載があります。一方、個人クリニックをはじめとする24時間の対応がない医療機関では、緊急時の対応が明確でない場合があるため、以下のような記載があるか確かめましょう。
- 医師の緊急携帯へ連絡
- 救急車要請
- 当番医へ連絡(緊急連絡先)
記載が不十分な場合は訪問開始前に主治医に確認しておくと、緊急時の対応に困りません。
名前・住所などの基本事項に間違いはないか
利用者さまの氏名や生年月日、住所、年齢などの基本情報に誤りがないか確認します。とくに年齢は、適用される保険の種類や訪問回数を決める項目の一つでもあるため、忘れずにチェックしましょう。
| 年齢 | 概要 |
| 40歳未満 | ・原則は医療保険の適用で週3日まで利用可能 ・厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)や状態(別表第8)に該当する場合は、週4日以上の訪問が可能 |
| 40歳以上65歳未満 | ・特定疾病に該当すれば介護保険、それ以外は医療保険 |
| 65歳以上 | ・原則として介護保険 ・厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合は医療保険 |
39歳から40歳へ、64歳から65歳へ年齢が上がるタイミングで、適用となる保険が変わる場合があります。基本情報だからこそ、丁寧にチェックする習慣をつけておくと返戻を防ぐことができます。
主たる傷病名・傷病名コードが正しく記載されているか
主たる傷病名は、適用する保険が介護保険か医療保険かを決定する重要な情報です。
とくに以下の傷病名では、重症度や損傷部位によって保険の適用が異なるため、慎重なチェックが必要です。
| 病名 | 医療保険適用 | 介護保険適用 |
| 悪性腫瘍 | 末期の悪性腫瘍 | 末期以外 |
| 首の損傷 | 頸髄損傷(けいずいそんしょう) | 頸椎損傷(けいついそんしょう) |
| パーキンソン病 | ホーエン・ヤールの重症度分類:Ⅲ度以上、かつ生活機能障害度:Ⅱ度以上 | ・左記の分類や障害度以外 ・ホーエン・ヤールの重症度分類・生活機能障害度の記載なし |
傷病名コードは、医療情報の一元管理を目的に、2024年度の診療報酬改定から必須項目となりました。大学病院や総合病院などの多くは、専用のフォーマットが準備されています。
一方、個人経営の医療機関や手書き記載する医療機関では、ステーション側が用紙を準備しなければならないケースも少なくありません。その際は「傷病名コード」の欄が入っている、新しい様式の原本を渡すようにしましょう。
現在の状況が詳細に書かれているか
利用者さまの現在の病状や医療機器の使用状況などが、「現在の状況」の欄に詳しく記載されているかを確認します。
たとえば褥瘡がある利用者さまのうち、深さが「真皮を超える」方の訪問看護は、特別管理加算の算定や特別訪問看護指示書の発行の対象です。
しかし、褥瘡の状態が記載されていなければ、根拠となる書類がないものとみなされ、加算の申請をしても返戻となるおそれがあります。これは「装着・使用医療機器等」にチェックがない場合も同様です。
追加で報酬を受けられる可能性があるからこそ、こうした項目は事前にしっかり確認し、算定漏れを防ぎましょう。
留意事項及び指示事項は必要な内容が記載されているか
訪問看護で実施すべきケア内容が「留意事項及び指示事項」の欄に詳しく記載されているかをチェックします。
記載方法に決まった形式はありませんが、内容がはっきりしているほど治療方針を理解しやすく、現場での判断にも迷いが生じにくくなります。一方で「状態観察をお願いします」といった表現のみでは、観察すべきポイントがわかりづらく、何をすべきか戸惑う場面があるかもしれません。
内容があいまいであったり、必要な指示が不足していると感じたりした場合は、主治医に追記を依頼するか、詳細を確認しましょう。
複数のステーションが入っている場合に別のステーションが記載されているか
複数のステーションがかかわる場合は、指示書下段の「他のステーションへの指示」の欄に、ほかのステーション名が記載されているかを確認しましょう。
1人の利用者さまにかかわるステーションは基本的に1ヶ所ですが、以下のようなケースでは2ヶ所以上のステーションが訪問します。
- 毎日の訪問看護が必要で、2ヶ所のステーションで分担している
- 看護師が週3日訪問するAステーション、理学療法士が週2日訪問するBステーションが関与している
ここで重要なのが「訪問看護指示書は利用者さま1人につき、1人の主治医からのみ交付される」というルールです。
複数のステーションが関与していることを共有できていないまま、それぞれが別の医師に訪問看護指示書の交付を依頼してしまうと、訪問看護費を正しく算定できないおそれがあります。訪問看護の利用開始時は、利用者さまやケアマネジャーに別のステーションが関与していないか確かめておくと安心です。
訪問看護指示書のケース別の記入例
主治医に指示書を依頼する際や、受け取った指示書を確認する際には、ケースごとにどのような内容が必要かを理解しておきましょう。訪問看護の現場で頻度の高い3つのケースについて、記載例とチェックポイントを解説します。
リハビリテーションが必要な場合
訪問看護でリハビリテーションを実施する際は、回数と時間の明記が必須です。
週何回実施するか、1回あたり何分か、リハビリテーションの目的は何かなどが記載されているかを確認します。記載例は、以下のとおりです。
- 「週2回、1回40分、廃用症候群の予防」
- 「週1回、1回60分、ADLの維持」
可能であれば、中止基準や禁忌事項も記載されていると、安全なリハビリテーションの実施につながります。
また、介護保険にもとづいた訪問の場合、原則として週120分以内(1回20分で週6回以内)と定められています。指示内容がこの範囲を超えていないかもあわせてチェックしましょう。
褥瘡処置が必要な場合
褥瘡処置では「現在の状態」と「具体的な処置内容」がセットで記載されているかを確認します。処置内容は、以下のように書いてもらうとケア内容に迷いが生じません。
- 「右踵部に発赤をともなう褥瘡あり。洗浄、被覆材による保護を実施」
- 「仙骨部の褥瘡に対し、石けん洗浄後、指示薬を塗布し別紙に記載したようにガーゼ保護する」
指示内容が複雑な場合、別紙を準備してくれていることもあります。訪問看護指示書にその旨が書かれているかを確認しておきましょう。
点滴・注射治療が必要な場合
点滴や注射を訪問看護で管理する場合は、薬剤名や投与量、投与速度などが明記されているかを確認します。記入例は、以下を参考にしてください。
- 「500mLを5時間程度で投与。投与期間は2週間目安」
- 「生理食塩水を40mL/時間で持続投与中。緊急時は主治医へ連絡」
週3日以上の点滴を訪問看護で実施する場合は「在宅患者訪問点滴注射指示書」の交付が必要です。この指示期間は最長7日間と定められています。通常の訪問看護指示書に在宅患者訪問点滴注射指示書を兼ねている場合は、「点滴注射指示期間」が期間内におさまっているかもチェックしなければなりません。
実施内容によっては、特別管理加算を算定できます。算定漏れを防いで適切な報酬を得るためにも、点滴・注射の内容と指示期間は漏れなく確認しましょう。
訪問看護指示書で起こりがちなトラブルと対処法
訪問看護の現場では、訪問看護指示書に関するトラブルが起こることもあります。よくあるトラブルと、その対処法を知り、いざというときに備えておきましょう。
医師がなかなか指示書を作成してくれない
訪問看護の依頼があっても、主治医の同意が得られていない場合は、訪問看護指示書は交付されません。とくに次のような状況では注意が必要です。
- 主治医が訪問看護は必要ないと判断している
- 依頼者が主治医へ相談していない
- 主治医が対象疾患の担当医ではない
このような場合は、まず依頼者に「主治医の同意は得られていますか」と確認しましょう。
同意が得られていない場合は、利用者さまやケアマネジャーから改めて主治医へ相談してもらうよう依頼します。
一方で、同意が得られているにもかかわらず指示書が発行されない場合は、医療機関へ進捗状況を問い合わせても問題ありません。
記載内容が不十分である
訪問看護指示書の記載に、不備があるケースも少なくありません。
よくある例として、以下のようなパターンがあげられます。
- 指示期間が間違っている
- 傷病名コードの記載がない
- 主治医が間違っている、主治医の捺印がない
- リハビリテーションや褥瘡処置など必要事項が記載されていない
ただし、捺印に関しては電子署名や記名でも認められる運用があるため、地域ルールや運用確認が必要です。
不備を発見したら、速やかに医療機関に問い合わせましょう。
「恐れ入りますが、点滴の欄に薬剤名の記載をお願いできますか」と、「どこに」「何を」追記してほしいか明確に伝えると、スムーズな対応につながります。
2人以上の医師から訪問看護指示書が発行された
訪問看護指示書は、1人の利用者さまに対して1人の主治医からしか発行できない決まりです。しかし、以下のようなケースで発行が重複してしまうことがあります。
- 1ヶ所のステーションが追加で訪問開始となった際、連携が不十分だと別の医師から発行されてしまう
- 同じ医療機関で複数の診療科にかかっている場合、手違いで別の科の医師が記載してしまう
発行後に2人以上の医師が記載していることが発覚したら、速やかにケアマネジャーやもう一方のステーションに問い合わせ、どちらに統一すべきか明らかにしましょう。
主治医が決まったら、必要に応じて指示書の発行を依頼します。
訪問看護指示書に関するよくある質問
訪問看護指示書について、多く寄せられる質問にお答えします。看護師の適切なケアや算定漏れを防ぐために、しっかり確認しておきましょう。
Q1:訪問看護指示書の様式は決まっていますか?
厚生労働省が示している「別紙様式16」が基本形ですが、この様式をそのまま使う必要はありません。
実際には、多くの医療機関やソフト会社が独自のフォーマットを用意しており「必要な記載事項が別紙様式16に準じていればよい」という運用となっています。
Q2:訪問看護指示書の期間内で状態が変化した場合は再発行が必要ですか?
指示期間内であっても、ケア内容が増える場合や、リハビリテーションを新たに開始する場合などは、訪問看護指示書の再発行が推奨されます。
状態悪化により一時的に頻回訪問が必要となった場合は「特別訪問看護指示書」を追加で発行してもらうケースもあります。
Q3:訪問看護指示書の算定はどのようになっていますか?
訪問看護指示書料を算定するのは作成した医師が所属する医療機関側で、月に300点を算定できます。算定のルールは、以下のとおりです。
- 1ヶ月に算定できるのは1回
- 2ヶ所以上のステーションに交付しても、1人の利用者さまに対して月1回が限度
- 傷病コードの記載がなければ算定不可
算定要件を押さえておくと「なぜ医師が指示書に慎重なのか」「どのように依頼すべきか」が理解しやすくなり、医療機関との関係づくりにも役立ちます。
Q4:訪問看護指示書の料金は誰が払うのでしょうか?
訪問看護指示書の料金は、利用者さまやご家族が訪問看護指示書を発行した医療機関に支払います。訪問看護指示料は300点(3,000円相当)で、自己負担割合に応じて次のようになります。
- 1割負担:300円
- 2割負担:600円
- 3割負担:900円
説明の際には「診察料とは別に、指示書の文書料がかかります」と事前に案内しておくと、利用者さまの納得が得られやすいでしょう。
Q5:訪問看護指示書以外の指示書はありますか?
通常の訪問看護指示書以外にも、以下のような指示書があります。
- 特別訪問看護指示書
- 在宅患者訪問点滴注射指示書
- 精神科訪問看護指示書
- 精神科特別訪問看護指示書
どの場面でどの指示書が必要かを把握しておくと、いざ必要となったときの混乱を防げるでしょう。
訪問看護指示書のチェックポイントを理解してスムーズな訪問につなげよう
訪問看護指示書は、訪問看護サービスを提供するうえで欠かせない文書です。
受け取ったら、指示期間や傷病名コード、医療機関や主治医の情報、留意事項などの重要な項目をかならず確認しましょう。こうした確認の徹底が、返戻や算定ミスを防ぎます。
この記事で紹介したチェックポイントや対処法をマニュアルとして活用し、利用者さまに質の高い訪問看護を提供しましょう。
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<参考サイト・文献>
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-Gov 法令検索
訪問看護指示に関する事項 | 大阪府訪問看護ステーション協会
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
