訪問看護の特別指示書が交付される条件とは?期間や回数のルールも解説

「特別訪問看護指示書が出たら、週4日以上訪問しなければならないの?」「介護保険から医療保険への切り替えはどうすれば良い?」
特別訪問看護指示書(以下、特別指示書)が出された場面で、判断に迷った経験はありませんか。
特別指示書は、一定の条件を満たした場合に限り交付されます。指示期間や算定方法にも明確なルールがあり、理解が不十分だと訪問回数の設定や保険区分の切り替えを誤り、算定ミスにつながりかねません。
この記事では、特別指示書が交付される条件や期間中にできること、料金の仕組みを解説します。スムーズな訪問看護サービスの提供と正確な算定につなげたい方は、ぜひ参考にしてください。
訪問看護の特別指示書が交付される条件
特別指示書は、利用者さまの状態により、通常よりも頻回の訪問看護が必要と医師が判断した際に交付されます。おもな場面は次のとおりです。
- 状態の急激な悪化
- 退院直後
- 末期の悪性腫瘍等以外の終末期
いずれも「通常の訪問では十分なケアが難しい」と、主治医が判断した場合に限り交付されます。
状態の急激な悪化
利用者さまの病状が短期間で大きく変化して、これまでの訪問頻度では対応が困難なとき、特別指示書が交付されます。具体的なケースは、以下のとおりです。
- 尿路感染症を発症し、点滴を毎日おこなう必要がある
- 褥瘡(床ずれ)が急に悪化し、連日の軟膏の塗布が欠かせない
- 肺炎が悪化し、重点的なバイタルサインの測定や状態の観察が必要となった
急激な悪化がみられる時期は、わずかな変化が重症化につながることもあります。日々の観察と適切な処置によって、再入院のリスクを抑え、在宅療養の継続につながります。
退院直後
医療機関から退院した直後は、状態が不安定で医療的な管理が必要な期間であるため、特別指示書が交付されることがあります。
起算日は、医師が診療した日から最長14日間です。
たとえば4月10日に診療を受けて特別指示書が交付された場合、4月10日~4月23日の14日間が対象期間となります。
退院直後の利用者さまでは、退院日に診療がおこなわれ、その日に特別指示書が交付されるケースも多くあります。
退院直後に依頼されることの多いケアは、以下のとおりです。
- 点滴や注射の管理
- 手術後の創部処置
- カテーテル(尿道留置カテーテル、胃ろうなど)の管理
- ご家族への医療的ケアの指導
退院前のカンファレンスやソーシャルワーカーとの連携で、特別指示書が交付される可能性を確認しておくとスムーズにケアできます。退院後すぐに訪問を開始できるよう、事前に主治医へ依頼しておきましょう。
末期の悪性腫瘍等以外の終末期
「末期の悪性腫瘍等以外の終末期」とは、がん以外の病気で終末期を迎えている状態です。
「つらい症状をコントロールしながらご家族を支えるために、複数回のケアでなければ不十分」と判断された場合に、特別指示書が発行されます。
なお、末期の悪性腫瘍は、国が定めた「厚生労働大臣が定める疾病等(以下、別表第7)」に該当します。別表第7に該当する場合、特別指示書がなくても医療保険で週4日以上、1日に複数回の訪問ができるため、頻回な訪問が必要となっても特別指示書は必要ありません。
訪問看護の特別指示書のルール
特別指示書は自由に使えるものではなく、制度上のいくつかの取り決めがあります。
- 通常の訪問看護指示書が発行されていること
- 指示期間は「指示日から最長14日間」
- 交付は原則として「月に1回」
- 条件を満たせば1か月2回まで可能
- 期間内は医療保険のみ適用
これらを守らないと、請求の不備として返戻(へんれい)や査定の対象となるリスクがあります。実務上のミスを防ぐためにも、基本ルールを整理しておきましょう。
通常の訪問看護指示書が発行されていること
特別指示書は、あくまで追加で交付されるため、通常の訪問看護指示書が発行されていることが前提です。また、これらの指示書は、同じ主治医が発行しなければならない決まりです。
その際には、特別指示書の期限が通常の訪問看護指示書の有効期限内におさまっていることを確認しましょう。
指示期間は「指示日から最長14日間」
特別指示書の効力は、発行日から最長14日間であり、7日間や10日間などと短く設定するのは問題ありません。
期間が終了すると、自動的に通常の保険区分に戻ります。終了日が近づいたら、利用者さまとケアマネジャーに「○月○日から保険は切り替わります」と連絡しておくと混乱を防げます。
交付は原則として「月に1回」
特別指示書の発行回数は、基本的に1か月に1回です。
ここでの「1か月」は、暦月(カレンダー上の1日~末日)で数えます。
特別指示書は1回の交付で最長14日間です。たとえば4月10日〜4月23日、月の途中で指示期間が終了しても、4月中に再度交付することはできません。
ただし、次項で説明するように例外が認められるケースもあります。
条件を満たせば1か月2回まで可能
利用者さまが気管カニューレを使用している、真皮を超える深さの褥瘡がある場合など、医療的な不安が大きいケースでは、1か月に2回まで交付が認められています。次のように連続した発行も可能です。
- 1回目:4月1日~4月14日
- 2回目:4月15日~4月28日
なお「真皮を超える褥瘡」とは、DESIGN-R2020でD3以上、NPUAP分類ではIII以上の状態を指します。
期間内は医療保険の適用のみ
特別指示書が交付されている期間中は、もともと介護保険の適用でも医療保険に切り替わります。サービス内容の再調整が必要になる場合があるため、すぐにケアマネジャーに連絡しましょう。
また、医療保険に切り替わると料金の制度が変わるため、利用者さまの負担額が変わる可能性があります。そのため、利用者さまやご家族へ料金体系の変更点を丁寧に説明することも重要です。
なお、福祉用具や訪問介護などのサービスは、特別指示書が発行されても介護保険が適用されます。
訪問看護で特別指示書が交付された期間にできること
特別指示書が交付されると、通常の枠を超えた訪問体制が認められ、より手厚いケアが可能になります。3つのメリットを押さえておきましょう。
週4日以上の訪問が可能となる
医療保険での訪問看護は原則として週3日までです。しかし、特別指示書の対象期間中は、この回数制限が緩和され、週4日以上の訪問がおこなえるようになります。
あくまで「必要に応じて増やせる」という趣旨であり、毎週必ず4日以上訪問しなければならないわけではありません。
たとえば、14日間で特別指示書が交付された場合、病状が不安定な前半は毎日訪問し、落ち着いてきた後半は週3日程度へ調整するといった利用者さまに合わせた対応も可能です。
2か所の訪問看護ステーションから訪問できる
特別指示書が出ている期間は、状況に応じて2か所の訪問看護ステーション(以下、ステーション)が関与できます。
通常の医療保険にもとづく訪問看護では、1つのステーションからしか訪問できません。
ただし、病状が不安定で訪問回数が増える場合や、時間帯の調整が難しい場合など、1つのステーションだけでは対応が難しいケースがあります。そのような場合に、複数のステーションが連携して訪問することが認められています。
実務上は、週4日の訪問では2か所、毎日訪問が必要な場合は3か所のステーションが関与する例もあります。
複数のステーションがかかわる場合は、訪問看護計画書や記録書などを通じてケア内容や利用者さまの情報を共有し、支援内容にズレが生じないよう連携体制を整えることが欠かせません。
難病等複数回訪問加算・長時間訪問看護加算が算定できる
特別指示書が交付されている期間中は、以下の加算が算定できるようになります。
- 難病等複数回訪問加算:1日2回以上の訪問に対して算定できる加算
- 長時間訪問看護加算:90分を超える訪問に対して算定できる加算
通常は、国が定めた特定の疾患(別表第7)や状態(別表第8)に該当しない場合、これらの加算は算定できません。しかし、特別指示書が交付されている期間中は算定が可能となります。
たとえば、体位変換や入浴介助を1人では難しい場合や、ターミナルケアでご家族への支援も含めて長時間の対応が必要な場合などがあげられます。
訪問看護で特別指示書が交付されたときのチェックポイント
先述した特別指示書のルールをチェックリスト形式にまとめました。特別指示書を受け取ったら、以下に沿って内容を確認するとチェック漏れが防げます。
- 指示期間が14日間以内になっているか
- 発行日(交付日)が記載されているか
- 通常の訪問看護指示書を発行した主治医と同じ医師か
- 「症状・主訴」に頻回の訪問看護が必要な理由は記入されているか
- 点滴・注射、処置などの指示が具体的に書かれているか(薬剤名、投与量、処置方法など)
- 医療保険への切り替えについてケアマネジャーに連絡したか
- 利用者さま・ご家族に料金体系の説明をしたか
不備や記載漏れを発見したら、速やかに医療機関に問い合わせましょう。
訪問看護で特別指示書が出た場合の利用料金
特別指示書の指示期間中の訪問看護は、医療保険が適用されます。そのため、通常の介護保険とは料金体系が異なります。利用者さまの自己負担割合が1割の場合の目安は、次のとおりです。
| 項目 | 自己負担額(1回の訪問につき) |
| 訪問看護基本療養費 ※Ⅰの場合 | ・週3日まで:555円 ・週4日以降:655円 |
| 訪問看護管理療養費 ※2の場合 | ・月の初日:767円 ・2日目以降:250円 |
なお、機能強化型の指定を受けているステーションでは、月の初日の訪問看護管理療養費の金額が高く設定されています。
介護保険よりも料金体系が複雑なため、利用者さまへ説明する前に、最新の単価と負担割合を確認し、正確な金額を把握しておきましょう。
訪問看護の特別指示書に関するよくあるトラブルと対処法
特別指示書に関して、現場でよく起こるトラブルと、その対処法を解説します。事前に知っておくことで、トラブルが起きても冷静に対応でき、利用者さまへの影響を最小限に抑えられます。
主治医が交付を渋る
状態が悪化しているにもかかわらず、主治医が特別指示書の交付に慎重なケースがあります。
おもな理由として、以下があげられます。
- 主治医が特別指示書を必要とする状態ではないと判断している
- 特別指示書の制度や運用について認識が十分でない
- ステーション側からの状態報告が不十分で、緊急性が伝わっていない
「通常の訪問では十分なケアができない」と感じたら、利用者さまの状態を詳しく主治医に伝えましょう。バイタルサインの変化、症状の悪化の程度、訪問時の様子などを共有することで、状況を正確に理解してもらいやすくなります。
また、特別指示書の交付は最終的に医師の医学的判断にもとづいて決まります。制度上どのような場合に交付されるのかを共有しながら、利用者の状態や訪問看護の必要性を具体的に伝えることで、適切な判断につながることがあります。
記載内容にミスがある・内容が不十分である
記載内容が不十分だと、レセプト審査で返戻になる可能性があります。よくあるミスは以下のとおりです。
- 指示期間が15日間以上になっている
- 交付日の記載が漏れている
- 「症状・主訴」欄が空欄である
- 点滴や注射、処置の内容があいまいである
- 医師の署名・捺印がない
届いたらすぐに内容を確認し、記載漏れや内容の不備があれば、交付元の医療機関に問い合わせましょう。
その際は「恐れ入りますが、○○の記載が漏れております。どのように対応したら良いでしょうか」といった丁寧な言い方で伝えると、スムーズに対応してもらえます。
訪問看護の特別指示書に関するよくある質問
特別指示書について多く寄せられる質問にお答えします。交付条件やルールを理解し、適切な対応につなげましょう。
Q1:特別指示書が出たら週4日以上訪問しなければなりませんか?
特別指示書が出たからといって、週4日以上の訪問が必須ということではなく、週3日以下でも算定は可能です。
ただし、医師が「週4日以上の訪問が必要」と判断して交付される書類であるため、ステーション側の独断で訪問回数を調整できるものではありません。
そのため、医師が「訪問回数を減らしても問題ない」と判断した場合に限り、週3日以下の訪問が可能と覚えておきましょう。
なお、特別指示書の指示期間に週3日以下の訪問となる場合は、訪問回数が減った理由を記録する必要があります。
Q2:特別指示書が交付された場合、リハビリテーションの訪問はどうなりますか?
特別指示書が交付されても、リハビリテーションの訪問は可能です。「リハビリテーションは継続」と追加で記載してもらうと、算定上の根拠書類としても安心です。
ただし、特別指示書が交付される場合は状態が悪化している可能性が高いため、主治医にリハビリテーションの可否を確認しましょう。
Q3:特別指示書の期間が月またぎで発行された場合、どのように扱えば良いでしょうか?
月をまたいで発行された場合でも、翌日に続けて発行できます。
たとえば、3月28日〜4月10日の14日間で特別指示書が発行された場合、発行日は3月となるため、4月にもう1回交付できます。また、4月11日から連続での発行も可能です。
月2回交付できる条件の場合は、以下のように連続して発行できます。
- 1回目:3月28日~4月10日(発行日3月)
- 2回目:4月11日~4月24日(発行日4月、1回目)
- 3回目:4月25日~5月8日(発行日4月、2回目)
このように、発行日がどの月かによって交付回数が決まるため、特別指示書を受け取ったらかならず発行日を確認しましょう。
Q4:2ヶ所の訪問看護ステーションで訪問する場合、情報共有はどうすれば良いですか?
2ヶ所のステーションがかかわるときは、以下のような方法で情報共有します。
- 訪問看護計画書を共有する
- 連絡ノートを準備し、訪問時の様子を書き留める
- ICTツール(チャットアプリや専門システム)を使う
また、24時間対応加算や長時間訪問看護加算など、どちらか一方のステーションしか算定できないものがあります。
訪問開始前に、どちらが算定するかを決めておくと、請求時に迷いません。
訪問看護の特別指示書のルールを把握しスムーズな訪問につなげよう
特別指示書は、利用者さまの状態が悪化したときや退院直後など、通常より多くの訪問看護が必要な場面で交付される書類です。
交付された期間中は医療保険が適用され、訪問回数の制限や算定方法も通常時とは異なります。また、複数の訪問看護ステーションが関与できる点や、自己負担額が変わる可能性がある点も重要なポイントです。
特別指示書の条件とルールを理解しておくと、算定ミスやトラブルを防げます。
この記事で紹介したチェックポイントや対処法を実務で活用し、利用者さまに必要なケアを提供しましょう。特別指示書への対応に不安がある方や、制度理解を深められる環境で働きたいと考えている方は、訪問看護専門の求人サイトNsPaceCareerをご活用ください。
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<参考サイト・文献>
Q6【特別訪問看護指示書の交付要件について】 | 2. 訪問看護指示に関する事項|熊本県看護協会
一般社団法人全国訪問看護事業協会,訪問看護実務相談Q&A令和6年版,2024年,中央法規出版株式会社.
改定DESIGN-R® 2020 コンセンサス・ドキュメント|日本褥瘡学会
Q&A:8.複数事業所での訪問に関する事|長崎県訪問看護サポートセンター
パーキンソン病(別表7)の方に訪問をしています。1回の訪問が90分を超えた場合、長時間訪問看護加算を算定することができますか?|鳥取県訪問看護支援センター
訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法|厚生労働省
令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】|厚生労働省保険局医療課
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