看護師にはリンパマッサージの資格が必要?おすすめの資格や働き方を解説

「患者さまのむくみに効果的なケアを提供したい」「美容医療の分野で働きたい」と考える看護師が、リンパマッサージ資格に関心を持つケースが増えています。
看護師は解剖学や生理学の知識があるため、リンパケアの知識と手技を学ぶことで根拠のあるケアを提供できます。
しかし、医療行為との線引きや、数ある資格の中からどれを選ぶべきか、迷う方も少なくありません。
この記事では、資格の必要性・選び方・働き方をわかりやすく解説し、不安や疑問を解消するヒントをお届けします。
看護師はリンパマッサージをしてもいい?資格の必要性
看護師がリンパマッサージをおこなう際に必要な資格の有無や、どのような場面で許容されるのかを具体的に解説します。
「リンパマッサージ=医療行為」ではない
一般的に「リンパマッサージ」と呼ばれる施術は、目的によって「美容・リラクゼーション」と「医療・治療」に分類されます。それぞれの違いを次の表にまとめました。
| 美容・リラクゼーション | 医療・治療 | |
| 目的 | むくみの解消、疲労回復、リラックス、美容効果を目的とした施術 | 医師の指示のもとでリンパ浮腫の治療を目的とした施術 |
| 資格の必要性 | 資格がなくても施術可能(美容目的であっても、医療行為との線引きが必要) | 医師、看護師、理学療法士などの資格を持つ者が指定の講座を取得して資格を取得できる |
つまり、看護師でリンパ浮腫の治療に携わるのであれば、専門資格の取得が必要だと認識しておきましょう。
リンパマッサージを無資格でおこなうリスク
美容やリラクゼーション目的であれば資格は必須ではありませんが、看護師が無資格または民間資格で施術をおこなう際には、いくつかのリスクに注意が必要です。
「マッサージ」という語は、あん摩マッサージ指圧師などの国家資格を持たない者が業務に使用すること自体が、医業類似行為として厚生労働省から指導対象になる場合があります。
美容目的であっても、「マッサージ」という名称を広告や集客に用いる際には、慎重な対応が必要です。
また、がんの既往がある方や、心不全といった持病がある方のリンパドレナージを専門知識と技術がない状態で施術すると、症状が悪化したり、合併症を引き起こしたりするリスクがあります。
看護師がリンパマッサージを学ぶメリット
看護師がリンパマッサージの専門知識や技術を学ぶことは、臨床現場や将来のキャリアにおいて多くのメリットがあります。
- 看護知識と組み合わせることでケアの質を高められる
- むくみ・リンパ浮腫など臨床で役に立つ
- 給与アップにつながる可能性がある
- 美容クリニックで需要が高い
このように、リンパマッサージのスキルは、患者さまのQOL向上につながります。医療・美容・リラクゼーションの幅広い分野でキャリアの選択肢が広がります。
看護知識と組み合わせることでケアの質を高められる
看護師には、解剖学や生理学、病態などの知識があります。
リンパマッサージの資格を取得することで、基礎知識と手技が結びつき、根拠にもとづいた質の高いケアを提供できるようになります。
むくみ・リンパ浮腫など臨床で役に立つ
リンパマッサージの知識は、臨床での手足や顔のむくみケアに役立ちます。
また、がん治療後の後遺症であるリンパ浮腫の患者さまは年々増加しており、専門的なケアが求められています。
しかし、厚生労働省によると、専門的なスキルを持つ医療者は不足しているため、専門資格を取得すれば、リンパ浮腫外来や緩和ケア病棟などで欠かせない存在として活躍できるのです。
給与アップにつながる可能性がある
リンパマッサージの資格を取得することで、キャリアアップや専門性の向上により給与改善につながる可能性もありますが、待遇は施設の方針や業務内容により異なります。
実際には給与に反映されないケースもあるため、資格取得前に勤務先の規定や転職先の条件をよく確認しましょう。
美容クリニックで需要が高い
美容外科や美容皮膚科では、術後のダウンタイムのむくみケアや、美容目的のリンパトリートメントのニーズが増えています。
看護師免許を持つスタッフは、医療知識にもとづいた施術やカウンセリングを提供できるため、美容クリニックで求められています。
関連記事:看護師のキャリアアップのためにやるべきこととは?おすすめの資格や転職先、キャリアプランの例を紹介
看護師におすすめのリンパマッサージ資格3選
看護師におすすめのリンパマッサージ資格は、「医療現場での活用」を目的とするか「美容・リラクゼーションでの活用」を目的とするかによって、どの資格を取得すべきか異なります。
ここでは、代表的な3つの資格を紹介します。
それぞれの内容・費用・受講条件は、年度やカリキュラムの改定により変更されることがありますので、検討する際は必ず各団体の公式サイトで最新情報をご確認ください。
- リンパ浮腫療法士
- 医療リンパドレナージセラピスト
- リンパ浮腫専門医療従事者
それぞれの資格を詳しく見ていきましょう。
1.リンパ浮腫療法士
| 認定団体 | 日本リンパ浮腫治療学会 |
| 特徴 | ・リンパ浮腫治療の医療職向けの資格である ・看護師資格取得後、2年間の実務経験が求められる ・座学・実技を含む研修(計135時限以上)が必要である |
受験するためには、リンパ浮腫や静脈性浮腫、低蛋白性浮腫と診断された症例(いずれか5症例)の提出が必要です。また、受験料は1万6,500円、認定登録料2万2,000円がかかります。
2.医療リンパドレナージセラピスト
| 認定団体 | 日本医療リンパドレナージ協会 |
| 特徴 | ・看護師の資格が必要であるが実務経験は求められない(学生でも手続きすると受講できる) ・国際リンパ学会「複合的理学療法」を習得するための講習会である ・初級・中級講習会を修了し、修了試験に合格することで認定される |
初級、および中級の理論はオンラインで受講できます。受講料は57万2,000円(初級+中級講習会+修了試験)です。
3.リンパ浮腫専門医療従事者
| 認定団体 | ICAA |
| 特徴 | ・看護師の資格が必要であるが実務経験は求められない ・リンパ浮腫の患者さまに対し、リンパドレナージ、スキンケアなどのケアを提供できる資格である ・リンパ浮腫療法士の受験資格を同時に得られる養成講座もある |
東京都、大阪府、福岡県の会場で受講できます。受験料は42万9,000円です。
関連記事:看護師がスキルアップできる資格一覧25選!プラスの資格を取るメリット
看護師がリンパマッサージ資格を選ぶときの注意点
看護師が医療職としての倫理と法的な制限を考えたうえで、リンパマッサージに関連する資格を選ぶ必要があります。
- 協会の信頼性にバラつきがある
- オンラインだけで学べる資格は実技不足になりやすい
- 習った技術が医療行為に該当しないか注意する
- 開業を目指すなら集客・経営の知識も必要である
これらの点に注意し、患者さまのケアに役立ち、キャリアアップできる資格を選びましょう。
協会の信頼性にバラつきがある
リンパマッサージの民間資格は多数存在するため、資格を認定する協会の信頼性や教育内容にバラつきがあります。
医療現場で安全に、かつ専門性を活かして活動するためには、医療資格保有者向けの団体(例:日本リンパ浮腫治療学会、日本医療リンパドレナージ協会など)が認定する資格を選ぶことが重要です。
これにより、法的リスクを回避し、医師の指示のもとで正確なケアを提供できます。
オンラインだけで学べる資格は実技不足になりやすい
リンパマッサージは、圧の加え方や方向など患者さまの症状に合わせた手技が大切になります。
座学はオンラインで完結できても、実技演習が不足していると、患者さまの症状が改善できるようなスキルを身につけるのは難しいでしょう。医療系資格の多くが数十時間以上の実技演習を必須としているように、リンパマッサージの講習でも実技のカリキュラムが含まれているか確認してください。
習った技術が医療行為に該当しないか注意する
資格を取得しても、看護師の業務範囲は「療養上の世話」と「診療の補助」に限定されます。
リンパマッサージを治療目的で施術する場合は、医師の指示を守らなければなりません。
また、美容・リラクゼーション目的でサロンを開業する場合でも、「マッサージ」という語を使用することには法的な注意が必要です。
あん摩マッサージ指圧師の資格を持たない者が「マッサージ」を業務名や広告に使用すると、医業類似行為に該当し違法となる恐れがあります。
サロン名称やサービス説明には「トリートメント」や「ケア」などの用語を使い、医療行為と誤認されない表現を徹底しましょう。
開業を目指すなら集客・経営の知識も必要である
将来的にリンパマッサージのスキルを活かして開業を目指す場合は、技術習得だけでなく、経営や集客の知識が不可欠です。
物件取得費、設備費、広告宣伝費などで初期費用が100万円を超えるケースも珍しくありません。競合調査やターゲットの明確化など、ビジネスの基礎をしっかりと学ぶことが重要です。
看護師×リンパマッサージの働き方
リンパマッサージの資格を持つ看護師は、その専門知識と手技を活かし、さまざまな働き方を選べます。
- 医療機関
- 美容クリニック
- エステサロン
- 訪問看護ステーション
- 個人サロン開業
看護師の資格に加えて、専門資格を持つことで、看護師としてのスキルを活かしながら多様なキャリアを具体的に描けるようになります。
医療機関
リンパマッサージに関連する専門資格を取得することで、リンパ浮腫外来や緩和ケア病棟、整形外科などで活躍できます。
看護師としての知識を活かし、患者さまの生活指導やセルフケア指導も併せておこなえる点が強みです。
美容クリニック
美容整形や医療脱毛後のダウンタイム中のむくみケアとして、リンパマッサージのスキルは重宝されます。
看護師資格があるため、施術前に患者さまの病歴や既往をチェックでき、医師の指示に従い安全性を確認しながら施術を提供できます。
エステサロン
美容やリラクゼーション目的のエステサロンで、正社員またはアルバイトとして働くことも可能です。
看護師の解剖生理学の知識と、患者さまへの接遇経験は、スタッフやお客さまからの信頼を高めます。
訪問看護ステーション
在宅療養中の利用者さまに対し、むくみケアや疼痛緩和を目的としたリンパケアを提供できます。
とくに、終末期や難病の患者さまにとって、リンパマッサージは生活の質向上と精神的な安らぎをもたらす重要なケアです。
訪問看護ステーションの中には、リンパマッサージを特徴の1つとしているところもあるため、このような場ではリンパマッサージの資格を持つ看護師はとくに重宝されるでしょう。
個人サロン開業
看護師としての知識を強みに、自宅や賃貸で個人サロンを開業する道もあります。健康と美容の両面からケアを提供するサービスが人気です。
ただし、自由な働き方ができる反面、集客や経営、法的な問題などすべてを自身で担う点に注意してください。
看護師のリンパマッサージ資格についてよくある質問
看護師のリンパマッサージ資格について、よくある質問に回答します。
Q1:看護師は資格がないとリンパマッサージができませんか?
美容・リラクゼーション目的であれば、資格がなくても施術は可能です。
しかし、リンパ浮腫の治療といった医療目的で施術をおこなう場合は、専門の資格を取得し、医師の指示の範囲内で実施する必要があります。
Q2:エステサロンで働くには看護師免許があると有利ですか?
エステサロンで働く際に、看護師免許があると有利に働く可能性があります。看護師免許は、解剖生理学の知識と、患者さまへの適切な接遇スキルの証明になります。
しかし、エステサロンで提供される施術は医療行為ではないため、看護師資格がないとできない業務はありません。給与や待遇は、資格よりもエステサロンでの実務経験や売上の貢献度で判断される場合もあります。
Q3:リンパマッサージを学べる研修はありますか?
リンパマッサージを学べる研修はあります。
たとえば、「リンパ浮腫療法士」「医療リンパドレナージセラピスト」などは、資格取得の要件に座学研修と実技演習を義務づけています。
また、民間の協会でも、通信教育や通学形式の講習会が豊富に提供されている研修もあるため、資格取得の目的やキャリアの方向性から自分に合った研修を検討しましょう。
Q4:リンパマッサージで開業しても違法にならない?
治療目的のマッサージには「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要であり、無資格者が「マッサージ」という名称を使用すると違法になる恐れがあります。
美容・リラクゼーション目的で開業する場合は、医療行為をおこなわないよう徹底する必要があります。
Q5:リンパマッサージは看護師の副業として成り立ちますか?
リンパマッサージは、副業となる可能性があります。
自宅サロンや出張サービスとして開業し、看護師としての知識を付加価値として提供することで、お客さまの信頼を得やすく、需要が高まるかもしれません。
ただし、副業を禁止している医療機関もあり、勤務時間外の施術であっても規定違反となる場合があります。
また、患者さまとの金銭のやり取りや身体接触を含むサービス提供には、労務リスクやハラスメントリスクも伴います。開始前に十分な法的・職場的確認が必要です。
看護師×リンパマッサージの資格はキャリアを広げる鍵!未来の選択肢を見つけよう
リンパマッサージの資格を取得することで、看護師としてのスキルに「専門性」「自立性」「柔軟性」が加わり、医療現場での信頼向上はもちろん、美容クリニックや訪問看護、さらには自宅サロン開業まで、働き方の選択肢が広がります。
現場でのケアの質を高めたい方、収入やライフスタイルを見直したい方、自分らしいキャリアを築きたい方にとって、リンパケアの学びはその第一歩になるはずです。
まずは、自分の目指す方向性に合った資格や研修内容を比較検討してみましょう。気になる講座があれば、資料請求や説明会に参加するのもおすすめです。
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<参考サイト・文献>
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