看護師が患者さまにイライラする場面とは?感情をコントロールできないときの対処法

「患者さまに優しく接したいのに、ナースコールが鳴り止まなくてイライラしてしまう」「理不尽な要求やクレームに、どう対応して良いかわからない」
看護師は、患者さまの命と向き合う責任感と、多忙な業務のストレスから、つい感情的になってしまうことがあります。しかし、感情的な対応が続くと、同僚や患者さまとの信頼関係が築けなくなり、働きにくくなるかもしれません。
この記事では、看護師が患者さまにイライラしてしまう場面を挙げながら、感情をコントロールするための対処法や、対応に困ったときの声かけ例を解説します。自分と向き合ってイライラを解消し、患者さまに寄り添うケアを続けるためのヒントを見つけましょう。
看護師が患者さまにイライラしてしまう場面
看護師の感情をコントロールするためには、「なぜイライラするのか」原因を特定することが重要です。看護師が患者さまに感情を揺さぶられてしまう代表的な場面を紹介します。
- 忙しいときに何度もナースコールを押される
- 「まだ?」と急かされてほかの業務が止まってしまう
- 怒鳴られたり、強い口調で言われたりする
- 説明しても何度も同じ質問をされる
- 自分のミスではないのにクレームの矢面に立たされる
これらの場面は、多忙な業務と患者さまの不安や要求がぶつかることで発生します。原因は看護師だけにあるわけではないことも多いです。状況を理解し、冷静に対処するための準備をしましょう。
忙しいときに何度もナースコールを押される
看護師からすると緊急性が高くない用件で、ナースコールが頻回に鳴ると時間的・精神的な負担が大きくなりがちです。
看護師は、常時複数のタスクをこなしています。患者さまの急変やナースコールの応答、救急搬送の対応など、予定通りに業務が進められないケースも多いでしょう。
とくに、ほかの患者さまの急変対応をしているときにナースコールで呼ばれると、「なぜ今なのか」という気持ちからイライラが募りやすくなります。
「まだ?」と急かされてほかの業務が止まってしまう
処置や検査の準備に時間がかかるときや、ナースコールへの対応が遅れた際に、患者さまから「まだ?」「早くして!」と急かされることがあります。
その一言で、集中しているタスクの流れが断ち切られ、気持ちが焦ることでイライラを感じます。看護師は複数の業務を並行しておこなっているため、急かされることで業務効率が低下することへのイラ立ちも生じます。
ただし、この急かしは、患者さまの治療や状況に対する不安の裏返しであることも理解しておく必要があります。
怒鳴られたり、強い口調で言われたりする
患者さまやご家族から怒鳴られる、高圧的な口調で指示されるといった経験は、看護師の自尊心を傷つけ、強いストレスになります。
とくに、理不尽なクレームや、医療者への不満をぶつけられた際は、プロとして冷静に対応しようとしても、感情的な反発が起こりやすいでしょう。
説明しても何度も同じ質問をされる
疾患の説明や退院後の生活指導など時間をかけて丁寧に説明した際に、同じ内容を質問されると、「理解してくれていない」「自分の説明が悪いのか」と感じイライラするかもしれません。
これは、患者さまの病気に対する不安や認知機能の低下が原因という場合もあります。看護師の焦りやイラ立ちは、患者さまの不安を見過ごすことになる可能性があるため注意が必要です。
自分のミスではないのにクレームの矢面に立たされる
患者さまからのクレームや不満は、最初に対応した看護師に集中する傾向にあります。
たとえ、医師や他部署のミスであっても、矢面に立たされて謝罪や対応を求められることで、理不尽さからイライラを感じてしまう恐れがあります。
関連記事:看護師がクレームで落ち込む6つの事例!患者さまの本音と対処法を解説
看護師が患者さまにイライラしたときの対処法
感情的なまま対応してしまうと、患者さまとの信頼関係を損なうだけでなく、自身の心の健康にも悪影響を及ぼします。イライラを感じたときに冷静さを取り戻すための、具体的なセルフケアの方法を押さえておきましょう。
- 「6秒間」じっとして感情をコントロールする
- イライラを溜めこまないように記録を書き振り返る
- 睡眠・休息など生活リズムを整える
- 同僚に相談する
- 距離を置く・担当を交代してもらう
これらの方法は、怒りの感情に振り回されず、冷静な判断と行動を保つための「心のセルフマネジメント」です。自分自身を大切にしながら、より良いケアを続けていくために、日常的に取り入れてみましょう。
「6秒間」じっとして感情をコントロールする
怒りのピークは一時的だとされています。衝動的な反応をやり過ごすための心理的な目安として“6秒間待つ”方法があります。実際に怒りのピークは数秒で下がり始めることがあるとされており、深呼吸や一呼吸置くことで冷静さを保ちやすくなります。
イライラを溜めこまないように記録を書き振り返る
イライラした感情を、その日のうちにメモや日記に書き出して「見える化」しましょう。
- 何があったか(事実):ナースコールが5分間に3回鳴り患者さまから「まだか」と強い口調で言われた
- どう感じたか(感情):「腹が立った」「悲しくなった」
- 原因は何か(分析):「自分の業務がひっ迫していたから」「他の看護師へ対応を依頼しなかったから」
この作業により、自分の感情を客観視でき、次に同じ状況になったときの対応パターンを冷静にシミュレーションできるようになります。
睡眠・休息など生活リズムを整える
イライラや怒りの感情は、心身の疲労や睡眠不足によって増幅されます。夜勤や長時間勤務が続き、メンタルヘルスの不調に悩む看護師は少なくありません。
実際に、日本看護協会の調査によると「メンタルヘルス不調による1か月以上の連続休暇を取得した看護職員(正規雇用)がいた」と回答した病院はおよそ80.5%にのぼります。このデータが示すように、心身の健康を保つことが感情の安定に不可欠です。
仕事が休みの日は業務のことを考えない時間を作り、思いっきりリフレッシュしましょう。生活リズムを整えることで、感情的な許容量を回復させることが大切です。
同僚に相談する
同僚は同じ職場で似た状況を経験しているため、具体的なアドバイスや共感を得られる存在です。
相談することで、感情を客観視でき、気持ちの整理がつきやすくなるでしょう。単なる愚痴で終わらせず、「次どうすれば良いか」という意見をもらうことで、具体的な対応策や新たな視点を見つけられます。
距離を置く・担当を交代してもらう
特定の患者さまに対して、どうしても感情的に反応してしまう場合、その場から物理的に距離を置くことも有効です。
- 「〇〇を確認してきますので、少々お待ちください」と伝えて病室を出る
- ほかの看護師に対応を依頼する
対応が難しい状態が続く場合は、看護師長や看護主任に相談し、担当を交代してもらいましょう。これはチームで患者さまをケアするために必要なことです。看護師の精神的な安定を保つことが、結果的に質の高い看護を続けるうえでの重要です。
看護師が患者対応で困ったときに役立つ例文集
患者さまの言動にイライラを感じても、看護師の適切な声かけで状況を改善できる場合があります。原因に応じた声かけの例文を紹介します。
- ナースコールが多い患者さまへの上手な伝え方
- 怒りっぽい患者さまへの落ち着かせ方
- 不安の強い患者さまへの寄り添い方
感情的な対応は、患者さまの不安をさらに増幅させ、信頼関係を壊すかもしれません。冷静に状況を把握し、相手の心に寄り添う言葉遣いを身につけましょう。
ナースコールが多い患者さまへの上手な伝え方
頻回なナースコールは、「何かあったときにすぐに来てもらえないのではないか」という患者さまの不安から来ていることがあります。
| 【不安の解消】 「すぐには来られないことがあるかもしれませんが、〇〇さまのことを気にしていますからね」と寄り添いの姿勢を示す。 【対応時間の明示】 「次は〇時にお部屋に伺います。それまではゆっくりお休みくださいね」と、次の訪問時間を伝える。 |
怒りっぽい患者さまへの落ち着かせ方
怒鳴ったり、強い口調で話したりする患者さまには、まずは看護師自身の安全を確保してから、共感を示して怒りの感情を受け止めます。
| 【共感と傾聴】 「大変おつらい状況でいらっしゃいますね。よろしければ、何があったのかお聞かせいただけますか?」と、相手の話を聞く姿勢を見せる。 【静かな環境への誘導】 「落ち着いてお話しいただけるように、少し静かな場所に移動しませんか?」と、病室外の静かなスペースを提案する。 |
不安の強い患者さまへの寄り添い方
同じ質問を繰り返す、些細なことで看護師を呼ぶのは、病気への強い不安が原因の可能性があります。
| 【肯定と反復】 「〇〇についてご心配なのですね。〇〇という形で準備を進めていますのでご安心ください」と、不安な気持ちを否定せずに、根気強く情報を繰り返す。 【安心感の提供】 「次の巡回に来るまで〇時間ありますから、この間に何か変わったことがあったらすぐに呼んでくださいね」と、いつでも対応できることを伝え、安心感を与える。 |
関連記事:看護師の声掛け例13選!患者さまの不安を和らげるためのポイント
看護師の患者さまへのイライラが収まらないときの対処法
看護師の努力や職場の同僚への相談では解決できないほど、ストレスやイライラが続く場合は、専門的な対処を検討しましょう。
- アンガーマネジメントを学ぶ
- 看護主任や看護師長に相談する
- 医療者向けメンタルサポートを利用する
- 転職を検討する
これらの対処法は、自分の努力だけで状況が変わらない場合に、視点を変えたり、専門家の力を借りたりして、根本的なストレス源を解決するために役立ちます。
アンガーマネジメントを学ぶ
アンガーマネジメントとは、違いを受け入れ、人間関係を良くする心理トレーニングです。
「怒らない」を目的とするのではなく、怒る必要のある場面ではうまく怒れるようになり、怒る必要のない場面では怒らなくて済むようにすることを目標としています。
研修や書籍を通じて学ぶことで、感情のコントロールスキルが向上し、仕事だけでなく私生活にも役立ちます。
看護主任や看護師長に相談する
イライラやストレスを抱え込まず、看護主任や看護師長に相談する方法もあります。
とくに、看護師長は担当変更や患者さまへの介入といった解決策を決定できるポジションです。相談することで、もしかすると他の看護師からも相談が来ていたので対応を検討しているところだった…ということもあるでしょう。看護師ひとりでは解決できない問題も、組織の責任者として対応してもらうことで、看護師の負担を軽減し、問題を根本的に解決できるでしょう。
医療者向けメンタルサポートを利用する
職場での相談が難しい、またはストレスが強く抑うつ気分や体調不良などの症状があらわれている場合は、産業医や医療者向けのメンタルヘルスサポートを利用しましょう。
日本看護協会には「看護職のためのメンタルヘルス相談窓口」があり、臨床心理士や精神保健福祉士などのスタッフが対応してくれます。専門家が看護師の状況を改善するために、心理療法や環境調整のサポートをしてくれるため安心です。
転職を検討する
現在の職場の体制や特定の患者層への対応がイライラの原因である場合、状況によっては環境を変えることが早い解決策となるかもしれません。
救急外来や急性期から、慢性期や回復期病棟に異動したり、病院から訪問看護ステーションに転職したりする方法があります。
自分のキャリアやワークライフバランスを考え、ストレスの少ない職場を選ぶことも、看護師を長く続けるための重要な解決策です。
患者さまにイライラしてしまう看護師によくある質問
看護師の患者さまへのイライラや感情のコントロールについて、よくある質問にお答えします。
Q1:イライラして患者さまに優しくできないときはどうしたら良いですか?
イライラしている状態で無理に優しく接しようとすると、かえって態度が不自然になったり、感情が爆発したりするリスクがあります。
深呼吸して気分をリセットしたり、一旦退室して患者さまと距離を置いたりして、看護師自身の気持ちを落ち着かせることが大切です。無理に対応せず、自分のメンタルを守ることも考えましょう。
Q2:感情をうまくコントロールできないときはどうしたら良いですか?
感情のコントロールが難しい状態が続くことは、心身が疲弊しているサインです。
疲れや睡眠不足が影響する可能性があるため、オフの日は仕事から完全に離れ、心身を回復させる時間を作りましょう。状況が改善しない場合は、専門家を頼るのも有効です。
Q3:患者さまから理不尽に怒られたときの正しい対処はありますか?
理不尽な怒りやクレームに遭遇した場合、冷静かつ組織的な対処が必要です。
まずは「大変ご不快な思いをさせて申し訳ございません」と、患者さまの感情を否定せずに受け止め、話を最後まで聞いてください。その後、事実を確認し、すぐに解決できない場合は、「事実確認をして、改めてご報告させていただきます」と伝え、対応を保留にします。
理不尽なクレームは抱え込まず、すぐに看護師長や看護主任に報告し、対応を代わってもらうか、一緒に対応してもらいましょう。また、どのような状況で、何をいわれたかを正確に記録に残すことで、後の対応や再発防止に役立ちます。
患者対応で悩むのはあなただけじゃない!工夫でイライラした気持ちは押さえられる
患者さまにイライラしてしまうのは、看護師の「良いケアを提供したい」という真面目さや責任感の裏返しです。
イライラをそのまま行動に出すのではなく、冷静に対処するスキルとチームで対応する仕組みを持つことが大切です。「同僚に相談する」や「メモに感情を書き出す」などの対処法を試してみてください。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
