【看護師の小論文】評価される書き方とよく出るテーマ7選！例文つきで解説
「看護師の採用試験で小論文を書いたことがない…」「テーマが難しくて、どう書けばいいのかわからない」
小論文は、看護師の仕事に対する考え方や倫理観、専門性などを採用担当者が知るために大切です。とくに、応募先の病院が掲げる理念や方針と看護師の考えが一致しているかを確認される際には、自分をアピールできるチャンスになります。
この記事では、小論文でよく出されるテーマ7選と例文などを解説します。あわせて、採用担当者がどこを評価しているのか、避けるべきNG例も紹介します。
ポイントを押さえて対策することで、あなたの考えや強みが伝わりやすくなり、選考を前向きに進めてもらえる可能性が高まるでしょう。
看護師で小論文が求められる理由
看護師の採用試験で小論文が出されるのは、看護業務をどう捉えているか、問題解決に向けて考えられる力があるかを文章から確認するためです。面接だけでは見えにくい思考力や価値観を、小論文を通して判断しています。
看護師の価値観や考え方を把握するため
小論文では、看護師の倫理観や専門性が、病院の理念や価値観と合っているかが見られています。病院は長期的にチームの一員として活躍できる人材を求めているため、考え方の方向性が同じであるかを重視しています。
たとえば、病院が「患者さまの意思決定支援」を大切にしている場合、患者さまの権利や倫理的なジレンマに対して、看護師がどのように向き合うのかが小論文から読み取られます。
このように採用担当者は、小論文を通して看護観が病院の文化に適合するかを確認し、長く働ける人材かどうかを見極めています。
看護師としての適性を判断するため
小論文は、「論理的な思考」と「文章の構成力」といった実務に欠かせない能力を判断するために必須とされています。これは、患者さまの急変時や多職種連携において、正確な判断ができる能力があるかを確認するためです。
「医療安全」がテーマである際、採用担当者は「◯◯を注意する」という対策を求めているのではありません。「原因分析、改善策の提案、現場への定着」という筋道を立てた解決策を示せるかを見ています。
正確な看護記録や説得力のある報告ができることを伝えましょう。
看護師の小論文｜書き方の基本
小論文は、感じたことを書く作文とは異なり、「なぜそう考えるのか」を筋道立てて伝えることが求められます。採用担当者に考えが伝わりやすくなるよう、以下の基本構成を意識して書きましょう。
- 序論：志望動機・問題意識を簡潔に書く
- 本論：経験・根拠を論理的にまとめる
- 結論：入職後の目標や貢献を具体的に提示する
この構成を守ることで、採用担当者に自分の主張が伝わります。
序論：志望動機・問題意識を簡潔に書く
序論では、まずテーマに対する自分の回答を書きましょう。これにより、採用担当者は看護師が何を伝えたいのかをすぐに理解できます。
| 【記述の例】テーマ：チーム医療における看護師の役割 私が考えるチーム医療における看護師の役割は、患者の代弁者として情報を統合し、多職種間の連携を円滑にすることである。 |
本論：経験・根拠を論理的にまとめる
本論は、自分の主張を裏づけ、説得力を持たせるための、小論文でとくに重要な部分です。
前職での失敗や成功事例を挙げ、「なぜその結論に至ったのか」を説明します。「主張、理由、具体例、再度主張」というように、筋道が通った記述となるように心がけましょう。
| 【記述の例】 前職で、リハビリスタッフと医師間での情報不足が原因で、患者さまのケアが遅延した経験がある（具体例）。私が、SBAR（状況、背景、アセスメント、提案）を活用して患者さまのADLの情報と医師の治療方針を整理し両者に共有したことで、問題が解消した（経験）。この経験から、情報統合の役割の重要性を実感している（再度主張）。 |
結論：入職後の目標や貢献を具体的に提示する
本論で述べた自分の主張と経験をまとめて、この病院で働く際、知識やスキルをどのように活かして貢献するのかを具体的に示します。
「頑張ります」ではなく、「貴院の○○の分野において、これまでの××の経験を活かし、チームの効率化に貢献したい」といった病院の取り組みと結びつけた目標を提示しましょう。
| 【記述の例】 貴院が注力されている訪問看護連携において、私の情報統合能力を活かし、患者さまがスムーズに在宅へ移行できるよう、チームの効率化に貢献したいと考えます。 |
看護師の小論文でよく出るテーマ例7選
看護師の小論文でよく出題されるテーマを一覧表で紹介します。
| メインテーマ | テーマ例 |
| 看護観 | ・あなたが考える「質の高い看護」とは何か？ ・あなたの理想の看護師像とは？ ・患者の「生きる力」を支える看護師の役割 |
| 医療安全 | ・安全な医療提供のために工夫してきたこと ・医療事故防止におけるインシデント報告の意義 ・ヒューマンエラーを減らすための組織的な取り組み |
| 転職理由 | ・新しい職場で目指したい看護師像 ・前職の経験を活かし、当院に貢献できること ・キャリアアップと自己成長の目標 |
| チーム医療 | ・チーム医療における看護師の役割と課題 ・多職種連携を円滑にするためのコミュニケーション技術 ・チーム内での情報共有の重要性 |
| ストレスマネジメント | ・ストレスとの具体的な向き合い方・解消法 ・ワークライフバランスを保つための自己管理 ・職場のメンタルヘルス対策への提案 |
| 地域医療に求められる看護 | ・超高齢社会における看護師の役割 ・在宅医療と病院医療との連携で重要なこと ・予防看護と健康教育への取り組み |
| 看護師の働き方・業務改善 | ・業務効率化を図るために工夫できること ・働きがいのある職場環境づくりへの提案 ・離職防止と新人育成の課題 |
小論文のテーマは、看護師としての価値観、専門知識、問題解決能力が問われるものが多くあります。実体験を根拠に書き進めましょう。
看護師の小論文の例文
ここでは、看護師が採用試験の際に求められる小論文のテーマについて、イメージできるように例文を紹介します。
- チーム医療における看護師の役割の例文
- 安全な医療提供のために工夫してきたことの例文
- ストレスとの向き合い方の例文
これらは800文字指定の場合の例文であり、実務経験と論理的な思考を示すための形として活用してください。自分の経験に置き換え、なぜそのテーマを重要と考えるのかを記述しましょう。
チーム医療における看護師の役割の例文
| 現代医療において、チーム医療は患者中心の質の高いケアを実現するために不可欠で、その中核を担う看護師の役割は重要であると私は考えます。私の考える看護師の役割は、「患者の情報統合と多職種への橋渡し役」です。 私は前職の急性期病棟において、チーム連携の課題に直面しました。心不全の高齢患者さまが、早期離床プログラムを拒否し続けるという事例を経験しました。医師は「病状に問題はない」と指示を出し、リハビリスタッフは「患者さまの意欲が低い」と報告するに留まり、チーム内で問題が停滞していました。 そこで私は、情報統合役として介入しました。まず、患者さまへの傾聴を繰り返した結果、「夜間に呼吸苦で眠れず、日中疲労が強くリハビリテーションに意欲が持てない」という看護上の問題を把握しました。この情報を得て、私は以下のプロセスを実行しました。 ・情報統合と分析：呼吸苦、バイタルサイン、看護記録を照合し、「睡眠に課題がある」と特定。 ・多職種への伝達：医師に対して看護上の問題と対応策を提案し、薬剤投与の変更を、リハビリスタッフに対しては、訓練時間を午後に変更することを提案し、合意を得ました。 ・介入と評価：患者さまの呼吸苦が改善された結果、睡眠の質も改善し、日中の意欲が向上。リハビリプログラムへの参加にも積極的になり、退院に至りました。 この経験から、看護師は単に指示を実行するだけでなく、24時間患者さまの生活と病状を観察している専門職として、情報をまとめ、チームに最適な形で提示する役割を果たすべきだと感じました。 貴院は地域連携パスに力を入れており、これまで以上に密接な多職種連携が求められる環境です。私は、これまでの情報統合とチーム調整の経験を活かし、患者さまの退院支援に貢献することで、貴院の質の高いチーム医療に寄与したいと考えています。 |
チーム医療における看護師の役割を、事例をもとに記述しています。チームの問題解決と、応募先へ貢献する目標を明確に示しています。
安全な医療提供のために工夫してきたことの例文
| 安全な医療提供は、看護師の重要責務であり、患者さまからの信頼を得る基本となります。私が考える安全管理は「ヒューマンエラーを最小化できるシステム構築と、エラーが発生した際の要因の分析」の2点です。 前職で、私は緊急入院した患者さまに点滴投与する際、薬剤の投与速度の設定ミスを起こしそうになったヒヤリハットを経験しました。ダブルチェックで気づき事故には至りませんでしたが、私はこの経験を分析しました。原因は、「深夜帯の疲労蓄積」と「手順書のあいまいさによる確認漏れ」でした。 このヒヤリハットを個人的な注意で終わらせず、安全な医療システム構築のために、私は改善を提案しました。 ・システム改善：頻繁に使用する高リスク薬剤（昇圧剤、インスリン）の点滴指示について、マニュアルに投与速度の計算方法を書いたフローチャートを組み込み、誰でも確認できるように整備しました。 ・教育・啓発：夜勤に入る前の申し送りの際、「今夜、リスクの高い処置は何か」をチームで確認するようにしました。疲れが溜まっている状況でもリスクを認識する習慣づけを目指しました。 ・相互チェック体制の強化：深夜帯の疲労リスクを管理するため、夜勤帯のケアや処置をする際、看護師がペアを組んで行動することを提案。これにより、個人に依存せず、チームとして相互に監視し合う文化が根づきました。 この取り組みの結果、当該病棟における点滴関連のヒヤリハット報告件数が、半年間で約30%減少しました。安全の確保は、看護師の個人の努力だけでなく、疲労や環境の変化に対応するシステムと、チームでの取り組みによって実現できると感じました。 貴院は、重症度の高い患者さまを受け入れており、より高度な安全管理が求められます。私は、このシステム改善と要因分析の経験を活かし、危険予知能力を高めるとともに、貴院の「安全な医療の提供」に積極的に貢献していきたいと考えております。 |
ヒヤリハットの経験を、個人の反省ではなく「システムと組織文化の改善」へと昇華させて記述しました。具体的な改善策と数字を挙げることで、現場での課題解決能力と高い専門性をアピールできます。
ストレスとの向き合い方の例文
| 看護師の専門職としてのストレスは、患者さまへの責任の重さや、多忙な業務から生じるものです。私は、ストレスとの向き合い方において、「ストレスの原因を特定し、組織的・個人的な二軸でコントロールする」ことが重要だと考えます。 前職では、リーダー業務が増えた時期に、業務量が自分のキャパシティを超え、極度の疲労とイライラを同僚にぶつけそうになるという経験をしました。このとき、原因を「自分の能力不足」と自己否定するのではなく、以下の二軸で分析しました。 ・組織的な原因：複数の患者さまの急変対応が同時期に集中したこと、リーダーとしての業務の優先順位づけのトレーニングが不足していたこと。 ・個人的な原因：ストレスサインを無視し、趣味の時間を削って睡眠不足を招いていたこと。 この分析から、私は具体的に行動しました。組織的な対策として、看護師長や指導者と相談し、リーダーシップ研修に参加することで、緊急時の業務再配分のスキルを体系的に習得しました。また、個人的な対策としては、「週に1回、自然に触れる時間」を確保することを習慣化し、仕事と完全に切り離されたリフレッシュの時間を設けました。 その結果、業務の多忙さは変わりませんでしたが、精神的な安定度と緊急時の判断速度が向上しました。ストレスは完全になくならないからこそ、適切な対処法を身につけ、心のキャパシティを保つことが、質の高いケアを継続するために不可欠だと感じています。 貴院は、看護師のメンタルヘルスサポートに力を入れていると伺いました。私は、このストレスを客観視し、組織と個人両面で解決を試みた経験を活かし、自己の安定を図ってまいります。また、同僚の異変にも気づき、声をかけられる存在となることで、風通しの良い職場環境づくりに貢献したいと存じます。 |
日本看護協会「2024年病院看護実態調査」によると、年度末までに退職した新卒採用者が1名以上いる病院において、
看護管理者が考える退職理由（複数回答）として「健康上の理由（精神的疾患）52.5％」「自分の看護職員としての適性への不安 47.4％」「上司・同僚との人間関係 29.8％」が多く挙げられています。
これらは新人看護師個人の問題ではなく、教育体制や業務負担、支援体制などの組織的要因が複合的に影響していると考えられます。
病院側は、看護師の離職防止のため、自己管理能力や組織適応能力を小論文で確認したいと考えています。長く貢献できる人材であることを印象づけましょう。
採用担当者が看護師の小論文で見ているポイント
採用担当者は、小論文の出来栄えだけでなく、その背景にある看護師の能力と姿勢を評価しています。
- 論理的な思考
- 看護観の一貫性
- 文章の構成力と読みやすさ
- 実体験と根拠の有無
これらのポイントは、看護記録の正確性や緊急時の判断力、コミュニケーション能力に直結するため、採用の重要な判断基準となります。
論理的な思考
採用担当者は、看護師の主張に一貫した筋道があるかを見ています。看護現場での問題解決能力に直結するからです。
転倒リスクや皮膚トラブルの発生リスクなどの課題に対して、「原因分析、介入策、結果」という流れで論じられているかなど、思考プロセスが明らかであるかを見ているのです。
単なる感想や理想論ではなく、自身の専門職としての判断力を証明するために、この流れを意識して記述しましょう。
看護観の一貫性
小論文にある看護に対する価値観が、面接や履歴書の内容、病院が掲げる理念と一致しているかを採用担当者は確認しています。
一貫性がない場合、「準備不足」または「軸がない」と判断され、不採用となるかもしれません。
文章の構成力と読みやすさ
自分の考えをわかりやすく伝える力は、看護記録の正確性や多職種への報告に求められる重要なスキルです。
採用担当者は、誤字脱字や不適切な接続詞がないか、構成（序論・本論・結論）が守られているか、スムーズに理解できる文章になっているかなどを確認しています。
実体験と根拠の有無
小論文では、「努力します」「大切です」といった抽象的な表現ではなく、具体的な経験と客観的な根拠が示されているかを採用担当者はチェックしています。
エピソードを述べる際には、「○○という状況で、私は××という介入をして、△△という結果を得た」というように記述しましょう。
このように具体的に記述することで、現場での再現性や実践力が伝わり、採用担当者から評価されやすくなります。
看護師の小論文でやってしまいがちなNG例
小論文の評価を下げてしまう、典型的な失敗例を避けてください。
- 前職の不満や人間関係のトラブルをそのまま書く
- 抽象的で「どの病院でも通用する」内容になってしまう
- 実体験が書かれていない
これらのNG例は、看護師の「他責思考」や「志望度の低さ」を採用担当者に印象づけてしまい、不採用になるリスクがあります。ネガティブな経験も、前向きな学びや改善策に言い替えましょう。
前職の不満や人間関係のトラブルをそのまま書く
「前の病院は残業が多くて人間関係も悪かった」「前の職場は残業が多く、先輩が業務を教えてくれなかったため辞めました」といったネガティブな理由をそのまま書くと、他責思考と見なされ評価を下げます。
採用担当者は、新しい職場でも同様の問題を他人のせいにするのではないかと懸念します。問題の原因を環境や他者に求める姿勢は、チームワークを重視する医療現場ではマイナス評価です。
ネガティブな経験は、「そこから何を学び、応募先でどう貢献したいか」というポジティブな目標に転換して記述しましょう。
抽象的で「どの病院でも通用する」内容になってしまう
病院の理念や特徴に触れず、一般的な理想論や教科書的な内容で終わってしまうと、採用担当者に志望度の低さが伝わりがちです。
小論文の内容と志望する病院の具体的な部署や取り組みを結びつけ、「貴院だからこそ」という熱意を伝えましょう。
実体験が書かれていない
「患者さまの主体性を尊重すべきだ」という正論だけでは、看護師の専門性や判断力は伝わりません。実体験と介入した内容をセットで書くことで、採用担当者に興味を持たれるでしょう。
「いつ」「何を考え」「どう行動し」「何という結果を得たか」を具体的にする必要があります。
看護師の小論文でよくある質問
ここでは、看護師の小論文でよくある質問に回答します。
Q1：臨床経験が少ない場合、どのようなテーマで書けば良いですか？
臨床経験が少ない場合は、新人時代に直面した具体的な疑問や困難、または学生時代の実習経験をテーマにしましょう。
「実習で学んだ倫理的なジレンマへの向き合い方」「新人研修で重要だと考える医療安全教育のあり方」などをテーマにするのがおすすめです。
経験が浅くても、その出来事を論理的に分析できる能力を示すことが重要です。
Q2：小論文に専門用語は使っても良いですか？
小論文に専門用語を使っても問題はありませんが、適切な使用を心がけることが大切です。
使用して良い専門用語としては、「インフォームド・コンセント」「SBAR」「クリニカルパス」など、看護専門職として共通認識のある言葉が挙げられます。
専門用語を使うことでかえって文章がわかりにくくならないように注意し、多用しすぎないようにしましょう。
Q3：志望動機と小論文の内容が重複しても問題ありませんか？
志望動機と小論文の内容が重複しても問題ありません。むしろ、一貫性があると判断され、考えにブレはないと評価されます。
たとえば、面接で「貴院の地域連携に魅力を感じた」と述べたなら、小論文では「地域連携における看護師の役割」について、自身の経験を交えて詳細に説明することで、入職への本気度と専門性を伝えられます。
関連記事：【例文付き】看護師になりたい理由は？面接で活用する際の7つのポイント
小論文を整えることで看護師転職を前向きに進めやすくなる
小論文は、自分の論理的な思考力と看護観を伝えることができる機会です。しっかりと対策すると、面接での受け答えにも一貫性が生まれ、評価につながりやすくなる可能性があります。
あなたの強みや看護観を活かせる職場を見つけませんか。NsPaceCareerは、訪問看護に特化した求人サイトです。病院以外の環境で、じっくりと利用者さまと向き合いたい方や、これまでの経験を地域医療で活かしたい方をサポートしています。
あなたの理想のキャリアを実現するため、ぜひ活用してみてください。
＜参考サイト・文献＞
SNSシェア
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
