看護師の年金は月いくらもらえる?受給金額の目安と老後資金の増やし方

「看護師として働いているけれど、将来年金がいくらもらえるのかわからない」
業務に追われ、将来のお金について漠然とした不安を感じている看護師は少なくありません。実は、勤務先の規模や雇用形態によって加入できる年金制度が異なり、将来の受給額に差が出ることがあります。
この記事では、看護師の年金受給額の目安や、転職時にチェックすべき社会保険のポイント、今からできる老後資金の作り方について解説します。自分の年金額を確認する方法がわかり、働き方を選ぶ際に「将来の受給額への影響」を考えて判断できるようになるため、ぜひ最後までお読みください。
看護師が加入する年金制度の種類と仕組み
年金制度には、おもに次のようなものがあり、看護師がどの年金に加入するかは勤務先や雇用形態によって異なります。
- 国民年金(基礎年金):すべての看護師が加入する年金
- 厚生年金:病院に雇用される看護師が加入する年金
- 企業年金・iDeCo:任意で上乗せできる私的年金
まずは自分がどの年金に入っているか、その特徴を理解しましょう。
国民年金(基礎年金):すべての看護師が加入する年金
国民年金(基礎年金)は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての方が加入する制度です。
職業や勤務形態に関係なく、すべての方が加入する、いわゆる年金制度の「1階部分」にあたります。保険料は定額制で、満額で受け取るには40年間(480ヶ月)の加入が必要です。受給開始は原則65歳からです。
この国民年金があることで、どのような働き方をしていても最低限の年金を受け取れます。厚生年金に加入している看護師も、この国民年金には同時に加入しています。
厚生年金:病院に雇用される看護師が加入する年金
厚生年金は、会社や病院などに雇用される方が加入する年金制度の「2階部分」です。
国民年金に上乗せされる形で給付されるため、厚生年金に加入している看護師は将来、国民年金と厚生年金の両方を受け取れます。
厚生年金の保険料は給与額に応じて決まり、事業主(病院や施設)と労働者が折半して負担します。加入者は「第2号被保険者」と呼ばれ、正社員だけでなく一定の要件を満たすパートやアルバイトも加入対象です。
受給額は加入期間と在職中の給与額によって決まるため、長く働き、給与が高いほど将来の年金額が増える仕組みです。
企業年金・iDeCo:任意で上乗せできる私的年金
公的年金に上乗せする年金制度の「3階部分」として、企業年金やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)といった私的年金制度があります。
企業年金は勤務先が導入している場合に加入でき、退職金制度の一環として運用されることが多い制度です。
一方、iDeCoは個人が任意で加入できる制度で、掛金を自分で運用しながら老後資金を準備できます。iDeCoのメリットは税制優遇です。積み立てるとき、運用で増えるとき、将来受け取るときに税金が優遇されます。
公的年金だけでは不安な場合、私的年金の活用で老後資金を効率的に増やせる可能性があります。
看護師の年金受給額の目安|2つの事例でチェック
厚生労働省年金局「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2023年度の厚生年金保険(第1号)の平均受給額は、月額14万7,360円です。
働き方や勤務形態によって受給額が異なり、看護師も例外ではありません。ここでは2つのパターンで、将来もらえる年金額の目安をイメージしてみましょう。
1.新卒から定年まで病院【フルタイム勤務の場合】
新卒から定年まで病院でフルタイム勤務を続けた場合、厚生年金の受給額は比較的高くなる可能性があります。
厚生労働省年金局「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上の女性の厚生年金平均受給月額は、令和5年度で11万1,479円です。ただし、この平均には短時間勤務者やパート経験者も含まれています。
新卒から定年までの約40年間、フルタイムで厚生年金に加入し続けると、加入期間が長い分この平均よりも高い受給額が見込めます。とくに看護師は給与水準が比較的高く、夜勤手当や残業手当も年金の計算に含まれるため受給額が増えるかもしれません。
実際の受給額は、在職中の給与額や加入期間によって変動します。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで自分の見込額を確認しておくと良いでしょう。
2.結婚・出産でパート勤務に変更した場合【扶養内の場合】
結婚や出産を機にパート勤務に変更し、配偶者の扶養に入った場合、フルタイムで働き続けた場合と比べて、年金受給額は減少します。
扶養内で働く場合、第3号被保険者として国民年金のみに入ることになり、厚生年金には加入しません。そのため、扶養期間中は厚生年金の加入期間が増えず、将来受け取れる厚生年金はフルタイムで働いた期間の分のみです。
たとえば「フルタイム10年、扶養内パート25年」というキャリアの場合、厚生年金の加入期間は10年のみとなり、40年間フルタイムで働いた場合と比べて受給額は少なくなります。65歳以上の女性の平均が約11万円であることを考えると、フルタイム期間が短い場合はこれを下回る可能性があります。
看護師が個人クリニック・パート勤務で働く際の年金加入条件
個人クリニックやパート勤務を検討する場合、勤務先の規模や雇用条件によっては厚生年金に加入できないケースがあります。
厚生年金に加入できるかどうかで将来の年金額は大きく変わるため、就職・転職前に確認しておきましょう。ここでは年金加入の条件と注意点を解説します。
従業員5人未満の個人クリニックは社会保険に入れない可能性あり
看護師が厚生年金に加入できる事業所は、法人事業所と、常時5人以上の従業員を雇っている個人事業所です。
反対に、従業員が常時5人未満の個人事業所は「任意適用事業所」に分類され、厚生年金への加入が義務ではありません。社会保険に加入するかどうかは、事業主の判断に委ねられているのです。
そのため、小規模な個人クリニックや少人数の訪問看護ステーションでは、厚生年金に入れず国民年金だけになるかもしれません。このケースでは、将来受け取れる年金は国民年金のみとなり、厚生年金の上乗せ分がなくなります。
できる限り多くの年金を受給したい看護師が小規模のクリニックや訪問看護ステーションへの転職を考える場合は、「社会保険完備」かどうかを確認し、厚生年金に加入できる職場を選びましょう。
扶養内パート(第3号被保険者)になる条件と年金への影響
配偶者の扶養に入り「第3号被保険者」となる場合、自分で保険料を払わなくても国民年金に加入できます。
第3号被保険者になれるのは、厚生年金に入っている配偶者(第2号被保険者)に扶養されており、本人の年収が一定額未満の場合です。保険料を払わずに将来は基礎年金をもらえるため、一見するとお得に感じるかもしれません。
しかし、厚生年金には入らないため、受け取れる年金は基礎年金のみです。手取りを優先して扶養内におさめると、将来のもらえる年金額は少なくなります。受け取れる年金を多くしたい看護師は、扶養内にこだわらず、厚生年金に加入して働くことを検討しましょう。
看護師が年金を増やして老後資金を準備する方法
公的年金だけでは老後資金が不安な場合、次のように制度を活用したり、福利厚生が充実した職場を選んだりすることで、効率的に資産形成ができます。
- 税制優遇で節税しながら貯める「iDeCo(個人型確定拠出年金)」
- 運用益が非課税になる「NISA(少額投資非課税制度)」
- 企業年金・退職金が充実した職場への転職を検討
看護師が今日から実践できる具体的な対策を解説します。
税制優遇で節税しながら貯める「iDeCo(個人型確定拠出年金)」
iDeCoは、掛金を自分で運用しながら老後資金を準備できる私的年金制度です。
メリットは、掛金のすべてが所得控除の対象となり、毎年の所得税や住民税が安くなることです。運用で増えたお金にも税金がかからず、将来受け取るときも税金が優遇されます。
公的年金に上乗せして受給できる仕組みであり、しっかり運用できれば老後の生活資金を増やせるでしょう。
掛金は月5,000円から始められ、職業や企業年金の有無によって上限額が異なります。
長期運用が前提であるため、早めに始めるほど複利効果が大きくなります。ただし、原則60歳になるまで受け取れない点に注意してください。
関連記事:看護師は何歳まで働ける?60歳以上の年収や長く働くコツ3つを解説
運用益が非課税になる「NISA(少額投資非課税制度)」
NISA(ニーサ)は、長期・積立・分散投資を国が支援するために運用益が非課税となる制度です。
通常、株式や投資信託の運用で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で運用すればこの税金がかかりません。
2024年から始まった新しいNISAでは、年間投資枠が拡大され、非課税保有期間も無期限となりました。つみたて投資枠と成長投資枠を併用でき、自分のペースで柔軟に資産形成を進められます。
iDeCoとの違いは、NISAはいつでもお金を引き出せる点です。老後資金だけでなく、住宅購入や教育資金などにも対応できる柔軟性があります。
企業年金・退職金が充実した職場への転職を検討
自分で資産運用するのが不安な場合、企業年金のある病院や施設を選ぶことが老後資金対策となります。
企業年金には確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(DC)などがあり、勤務先が制度を導入していれば加入できます。退職金制度と連動していることが多く、長く勤めるほど受取額が増える仕組みです。転職を検討する際は、給与額だけでなく「企業年金の有無」「退職金制度の内容」も比較しましょう。
NsPaceCareerは、退職金制度のある職場を効率良く探せる訪問看護ステーション特化型の求人サイトです。訪問看護ステーションは退職金制度を整備しているところが限られており、それぞれのホームページで一つひとつチェックしていると時間と手間がかかりがちです。
また、少人数での運営が多いことから社会保険が完備されているとも限りません。NsPaceCareerを活用すれば、希望条件をチェックするだけで社会保険や退職金などの制度が整った事業所を短時間で検索できます。訪問看護ステーションへの転職をお考えの方は、ぜひご活用ください。
看護師の年金についてのよくある質問
ここでは、看護師から寄せられることの多い年金に関する質問に回答します。手続きや制度に関する不安を解消し、長期的に安心できるキャリアを選べるようにしましょう。
Q1:看護師が転職するときに、年金手帳の手続きは必要ですか?
転職時の年金手続きは、原則として転職先の事業主(病院や施設)がおこないます。
以前は年金手帳の提出が求められることが多くありましたが、現在はマイナンバーとの連携により、基礎年金番号を確認できれば年金手帳の提出は不要になりつつあります。
ただし、転職先によっては念のため年金手帳の提示を求められることもあるため、紛失している場合は年金事務所で再発行しておくと安心です。
なお、退職後に日を開けて再就職する場合は、空白期間中は自分で厚生年金から国民年金への切り替え手続きが必要です。再就職時は先述のとおり、転職先の事業主が手続きをおこないます。
Q2:看護師が産休・育休中の年金はどうなりますか?
産休・育休中も、厚生年金の被保険者資格は継続します。そのため、復職後も年金加入期間に空白が生じることはありません。
また、産前産後休業期間中および育児休業期間中は、事業主が年金事務所に申し出ることで、本人・事業主ともに厚生年金保険料が免除されます。この免除期間中も保険料を納付したものとして扱われるため、将来の年金額が減ることもありません。
安心して産休・育休を取得するための制度ですので、該当する場合は勤務先の人事担当者に確認しておきましょう。
Q3:看護師が40年勤務した場合の退職金はいくらですか?
看護師が40年勤務した場合の退職金は、1,500万〜2,000万円程度が目安です。ただし、この金額はあくまで目安であり、以下により金額は変わります。
- 病院の規模
- 退職金制度の算出方法
- 役職、貢献度
- 退職理由
退職金は老後資金の重要な柱となるため、長期的に働く予定がある場合は、入職前に就業規則で退職金制度の有無や算出方法を確認しておきましょう。看護師の退職金制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:看護師の退職金は少ない?退職金の相場や支給されるタイミングを徹底解説
看護師がもらえる年金の仕組みを知って老後設計を始めましょう
看護師の年金受給額は、働き方や勤務先の社会保険加入状況によって異なります。とくに、個人クリニックへの転職やパート勤務を検討する際は、目先の手取りだけでなく「将来の年金受給額」への影響も考えることが大切です。
まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で自分の加入状況を確認してみてください。そのうえで、必要に応じてiDeCoやNISAを活用したり、福利厚生の整った職場を選んだりすることで、老後の不安を減らせます。
正しい知識を持って、長く安心して働けるキャリアを選んでいきましょう。
<参考サイト・文献>
パート・アルバイトの皆さんへ社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。|政府広報オンライン
令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局
iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
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