看護師は性格悪いって本当？5つの理由と人間関係の悩みの対処法
「看護師は気が強い」「厳しく見える」などの印象を持たれる場合がありますが、個人の性格というよりも、現場の忙しさや緊張感など“環境の影響”でそう見えることが多いと考えられます。
特に、新人や経験の浅い看護師にとって、先輩や同僚の言動が強く感じられ、「性格が悪いのでは…」と悩んでしまう場面は少なくありません。
しかし、こうした言動の背景には、看護師ならではの過密な業務、命を預かる責任の重さ、そして緊張感の続く環境など、現場特有の要因が隠れていることがほとんどです。
ここでは、一部の職場で起こりがちな「きつく見えやすい言動」と、その背景にある心理を紹介します。※すべての看護師に当てはまるわけではありません。
さらに、理不尽に感じる言動から自分の心を守る方法や、人間関係の良い職場を見極めるポイントも紹介します。自分を責めすぎず、より穏やかに働ける環境を見つけるための手がかりになるでしょう。
「看護師は性格悪い」と誤解される5つの理由
医療現場で働く看護師の言動が「厳しい」「冷たい」と受け取られてしまうことがありますが、これは個人の性格ではなく、現場の状況に起因する“見え方”であるケースが多いです。
以下は、そうした誤解が生まれやすい5つの主な背景です
- ミスが許されないため言い方が端的になりやすい
- 忙しさと業務量の多さから心に余裕がなくなる
- 上下関係が厳格な場面がある
- 患者対応や多職種連携でストレスがかかる
- 慢性的な人手不足で互いにフォローしづらい状況がある
こうした要因が重なることで、本来は責任感や緊張感からくる言動が「きつい」「性格が悪い」と誤解されてしまうことがあると考えられます。
ミスが許されないため言い方が端的になりやすい
医療現場では、わずかな情報の遅れや判断ミスが患者さんの状態に影響する可能性があります。
そのため、指示や注意が的確かつ迅速に求められるため、言い回しが自然と端的になり、結果として「厳しい」「冷たい」と受け取られることもあります。
とくに新人指導の場面では、指導者側も「自分の伝え方が不十分だと後輩が危険な状況に巻き込まれるかもしれない」という強い責任感を持っており、この緊張感が会話に現れることがあります。
忙しさと業務量の多さから心に余裕がなくなる
看護師の対応に余裕がなくなるのは、多忙さや精神的ストレスによって、心のゆとりを失っているためと考えられます。
実際には、患者さまへのケアに加えて、急変対応や記録作成など、複数の業務を同時に抱えることが多く、休憩時間を十分に確保できないこともあります。また、夜勤のある勤務形態の場合は、不規則勤務になるため体調管理がより難しくなります。
このような状況が続くと、時間的にも精神的にも余裕を失い、普段は穏やかな人でも、「今は後にしてもらえる？」といった端的な返答になってしまうことがあります。こうした反応は、個人の性格ではなく、過密な業務や時間的制約といった“状況による反応”と捉えるのが適切でしょう。
上下関係が厳格な場面がある
医療現場では、経験年数や役割分担による明確な指示系統が求められるため、上下関係が厳格になりやすい傾向があります。
たとえば、急変の場面で、「アドレナリン早く持って来て！」「すぐに準備して！急いで！」など経験の浅いスタッフに、一方的で強いコミュニケーションが発生することがあります。
患者さまの命の危険があり、一刻も争う場面は医療の現場の特徴の一つです。
これは患者さんの安全を守るために必要なコミュニケーションですが、経験の浅い職員から見ると強く、時に厳しく感じられることがあります。
患者対応や多職種連携でストレスがかかる
看護師は、患者さまやご家族からの不安や怒りといった感情の矢面に立つことが少なくありません。さらに、医師やリハビリスタッフなどほかの職種の方との連携がうまくいかない場合、意見の板挟みとなり、調整役として高いストレスがかかります。
実際に、「待ち時間が長い」「リハビリが進まない」といった患者さまの不満を看護師が対応しなければならない場面があります。
こうしたストレスが続くため、感情のコントロールが難しくなることがあります。結果として、口調が硬くなったり、表情が疲れて見えたりすることで、意図せず「冷たく感じる」印象を与えてしまう場合があります。
慢性的な人手不足で互いにフォローしづらい状況がある
看護師だけではなく、医療現場では人手不足が慢性化しているところもあり、助け合いの余裕が失われている恐れがあります。
厚生労働省「職業情報提供サイトjob tag」によると、看護師の有効求人倍率は全国平均で2倍前後と高い傾向にあり、慢性的な人手不足の影響が現場に及んでいると考えられます。ただし、地域や施設によって差がある点には留意が必要です。
自分の仕事に精一杯になってしまい、「冷たい」「配慮がない」と誤解される場面が生まれやすくなりますが、これも環境の影響といえるでしょう。
「性格が悪い」と感じがちな看護師の言動の例
ここでは、性格が悪いと勘違いされてしまう看護師の言動と、その背景にある心理を解説します。ただし、これはすべての看護師に当てはまるわけではなく、職場環境・人員配置・ストレス状況の影響が大きい点に注意が必要です。
- 感情的な言い回しに聞こえる
- 陰口や批判が目立つように見える
- ミスに対する指摘が強く感じる
- 態度にムラがあるように映る
これらの言動は、看護師が抱えるストレスや疲労、不安といったネガティブな感情が、他者への攻撃として表出してしまっているものと考えられます。
一方で、「声かけや助け合いが自然な職場」「余裕を持った人員配置で落ち着いた対応ができる職場」も多く、理想的な職場を選ぶ上での比較材料になります。
感情的な言い回しに聞こえる
業務が立て込んでいるときに先輩に質問や報告をすると、「今、忙しいから後にして」「手が離せないから別の人に聞いて」と返されることがあります。
こうした発言は、先輩が自分の業務で手一杯であり、業務の優先順位を瞬時に判断しているからこそ起こる現象ものです。相手を否定したり、冷たく接したりする意図があるわけではありません。
つまり、これは性格ではなく、緊急度や状況による反応だと捉えるのが適切です。
陰口や批判が目立つように見える
休憩時間やナースステーションで、陰口や批判が聞こえてくることがあります。看護現場ではストレスが溜まりやすく、緊張が続く環境の中で、同僚への不満が言動として現れやすくなってしまうことがあります。
ただし、すべての職場がそうではなく、あくまで一部の環境や人間関係によって生じる現象です。組織的な風通しやマネジメントの工夫で改善されている職場も多くあります。
ミスに対する指摘が強く感じる
小さなミスに対して厳しく注意されたり、時に無視されたりするような態度をとられることもあります。これは指導者が「自分もかつて厳しくされた経験」や「後輩のミスで患者に被害が出てはいけない」という強い責任感から、過敏に反応してしまう可能性があります。
もちろん、過度な叱責は適切ではありませんが、背景にある不安や責任感を理解することで、受け止め方が変わることもあります。
態度にムラがあるように映る
看護師は患者さまやご家族には丁寧に対応しつつ、同僚には端的な言い方をする場面があります。これは、「限られた時間で安全かつ正確に業務を遂行する必要がある」という医療現場特有の事情によるものです。
つまり、コミュニケーションの使い分けは、性格ではなく「役割と状況の違い」によるもの。場面ごとに求められる対応が異なることを理解しておくと、誤解を減らすことができます。
関連記事：看護師はブラック・やめとけといわれる理由は？ブラックな職場の見分け方
性格が悪いと言われている看護師とかかわるときの対処法
一部の看護師の言動が「きつい」「冷たい」と感じられることがあります。そんなとき、自分の心を守るために取れる行動を紹介します。
- 必要最低限なコミュニケーションにする
- 相談できる先輩や同僚を確保する
- 言い返せない場合のかわし方を知る
- どうしても合わない時は部署異動や転職も選択肢にする
大切なのは、無理に相手を変えようとするのではなく、自分の心の安全と距離感を大切にすることです。必要なときは、環境を変える決断も自分を守る方法のひとつです。
必要最低限なコミュニケーションにする
相手との関わりがストレスになる場合は、業務上必要なやり取りにとどめることで、自分の心を守ることができます。不必要な接触は、無意識のうちにストレスを増やすきっかけになることも。
例えば、業務連絡は簡潔にして、雑談や私的な話題を避けることで、一定の距離を保つことができます。
相談できる先輩や同僚を確保する
信頼できる先輩や同僚に相談することは、悩みを抱え込まず心のバランスを保つ大切な方法です。第三者の視点や共感を得られることで、「自分のせいではない」と冷静に状況を見つめ直すきっかけになります。
たった一人でも、「大変だよね」と共感してくれる味方がいるだけで、心理的な安心感は大きく変わります。
言い返せない場合のかわし方を知る
感情的な注意や攻撃的な言葉には、真正面からぶつからず、やわらかくかわす力が必要です。感情で応じると、状況が悪化してしまうことも。
たとえば、「ご指摘ありがとうございます。確認してみますね」といったクッション言葉を使うと、相手の言葉を受け止めつつ、自分を守ることができます。
どうしても合わない時は部署異動や転職も選択肢にする
どれだけ努力しても改善しないときや、心身に影響が出はじめたときは、部署異動や転職を前向きに考えることも選択肢の一つです。
人間関係の悩みは、個人の努力だけでは解決できない構造的な問題が関係していることも多いため、環境を変えることは“逃げ”ではなく“自分を守る手段”です。
関連記事：看護師の人間関係が重要な理由！よくある悩みと良い職場を見分けるコツ5つ
看護師としてつらいと感じたとき、自分の心を守るためにできること
職場での言動や人間関係に傷つき、「自分が悪いのでは」と感じてしまう場面もあるかもしれません。そんなとき、自分の心を守るためにできることを知っておくと、気持ちが少し楽になるはずです。
- 相手の性格の問題を自分の責任と考えない
- 小さな成功体験を実感する
- 感情を溜め込まずに早めに上司や同僚に相談する
- 限界を感じたら相談窓口を利用する
周囲のきつい言動に振り回されすぎないためにも、自分の心の限界に気づき、守る手段を持つことはとても大切です。
相手の性格の問題を自分の責任と考えない
他者からきつい言葉を浴びたとき、「自分が悪いのでは」と自分を責めてしまう方も多いと思います。でも、その言動の多くは、本人のストレスや過酷な環境、まだ対処力が追いつかないだけかもしれません。たとえば、
- 過度なストレス
- 未熟な対処能力
- 過酷な労働環境
といった要因が背景にあることが考えられます。
大切なのは、「あなたのせいではない」と理解して、自分を責めすぎないこと。 たとえ周囲が荒れていたとしても、自分の価値や尊厳は守っていいのです。
小さな成功体験を実感する
人間関係でつらい思いをして、自信を失ったときは、日々の“できたこと”に目を向ける のがおすすめです。たとえば、
- 記録が時間内に終わった
- 患者さまに笑顔で対応できた
- 同僚のサポートができた
など、ちいさな成果でも「自分はできる」「今日も頑張れた」と自分を認める機会になります。こうした“積み重ね”が、自己肯定感を少しずつ回復させてくれます。
感情を溜め込まずに早めに上司や同僚に相談する
ストレスや不満は、溜め込まずに信頼できる上司や同僚に相談することが、心身の不調を防ぐためには必要です。相談が早ければ、深刻なパワハラやいじめに発展する前に食い止めることができるでしょう。
また、何が起こったかを話すだけでも、気持ちが整理され、アドバイスが得られるかもしれません。
限界を感じたら相談窓口を利用する
心身に限界を感じたときは、自分だけで解決しようとせず、専門的な相談窓口を積極的に利用しましょう。たとえば、次の専門的なサポートを活用してみてください。
- 病院の産業医
- 病院の窓口（ハラスメント窓口、メンタルヘルス相談室など）
- 各都道府県の看護協会
- 労働基準監督署
相談窓口を利用することは、自分を守るために必要な行動で、健康を保ちながら働き続けるための重要な手段となります。
性格が悪い看護師ばかりではない！良好な職場の特徴
看護の現場には、ストレスや人間関係でつらさを感じる場面もあります。しかし、職場を慎重に選ぶことで、安心して働き続けられる環境に出会えることも多いです。以下のようなポイントを目安に、職場選びをしてみましょう。
- 離職率が低い
- 教育体制が充実している
- 看護師同士が助け合っている
- 管理職のマネジメントが機能している
- 人手不足が慢性化していない
職場の中身をしっかり見極めることで、「安心して長く働ける職場」は必ず見つかるでしょう。 求人情報だけでなく、面接時の雰囲気、実際に働く人の声などを大切にして、自分に合った環境を探してみてください。
離職率が低い
離職率が低い職場は、人材の定着が比較的良く、待遇や働きやすさ、職場の雰囲気など複数の要素が揃っている可能性があります。ただし、離職率だけで「人間関係が良好」「ストレスが少ない」と断定するのは難しいため、他の情報とあわせて判断することをおすすめします。
日本看護協会「2024年病院看護実態調査」では、看護職員（正規雇用）の離職率は11.3％でした。ただし、病院の規模・地域・雇用形態によって離職率は変動するため、求人票や面接時に「定着率」「勤続年数」「勤務負担」について具体的に確認するのが望ましいでしょう。
教育体制が充実している
プリセプター制度や研修制度が整っている職場では、感情論ではなく手順や教育計画に基づく指導が期待でき、理不尽な叱責や勘に頼った指導のリスクは下がります。
指導マニュアルやプリセプター制度が整備されている場合、指導者は自身の経験からではなく、手順書にもとづき指導します。そのため、指導内容に一貫性があり、「なぜできないんだ」といった感情的な批判が減少します。
もし可能であれば、面接時に制度の有無を質問し、見学で先輩と後輩のやりとりの雰囲気を観察するのがおすすめです。
看護師同士が助け合っている
看護師が「お互い様」と助け合える雰囲気がある職場は、スタッフのストレスが軽減されるため、より良い人間関係になる傾向があります。
業務をチームで分担し助け合うことで、特定の看護師に業務の負担が集中するのを防ぎ、精神的に余裕を持って働くことができます。
「困ったときに助けを求められるか」「意見を言いやすいか」「ハラスメント対策が機能しているか」は、求人票や言葉だけでは見えにくい部分です。可能であれば、職場見学や面接で 先輩同士の会話や動きを観察し、“雰囲気”を確かめることが重要です。
管理職のマネジメントが機能している
管理職のマネジメントが機能している場合、ハラスメントやいじめが放置されにくいため、看護師が働きやすい職場環境になります。
看護主任や看護師長が定期的に面談を実施したり、風通しの良い環境を作ったりしている職場では、不満やトラブルが大きくなる前に解決できます。
管理職の公正なマネジメントは、人間関係のトラブルを早期に摘み取るために重要です。
人手不足が慢性化していない
看護師数が充実している職場は、看護師の負担が軽減されているため、同僚に対して優しさや思いやりを持って接することができるでしょう。
人手不足が解消されている職場では、看護師の心身の負担が軽減され、心にゆとりが生まれるからです。
業務に追われず、時間的な余裕があると、質問にもイライラせずに答えられるかもしれません。余裕のある人員配置は、看護師の心の健康を保つためには不可欠です。
性格が悪いように見える看護師に悩む人によくある質問
職場で“きつい”“冷たく感じる”看護師の言動に悩んでいるあなたへ。
ここでは、多くの方が抱えやすい疑問に答えています。一人で抱え込まず、まずは“知る”ことから始めてみましょう。
Q1：人間関係がつらいとき、新人看護師でも転職しても大丈夫ですか？
新人看護師は、状況によっては転職しても問題ないでしょう。
「3年は続けるべき」という意見もあるようですが、心や体を壊してまで我慢する必要はありません。特にハラスメントや理不尽な指導がある場合、そのまま続けることでキャリアに悪影響を及ぼすこともあります。
一方で、転職先では「なぜ前職を早期に退職したのか？」と質問されるケースもあるため、転職の目的や今後の働き方について事前に整理しておくと良いでしょう。
関連記事：看護師1年目はつらい？辞めたい理由や7つの乗り越え方を詳しく紹介
Q2：いじめやパワハラはどこに相談すれば良いですか？
まずは、信頼できる上司や相談窓口に話してみましょう。一人で抱え込む必要はありません。
必要であれば、各都道府県の看護協会や労働基準監督署といった公的機関にも相談できます。
Q3：性格のきつい先輩とうまく距離をとる方法はありますか？
性格がきつい先輩とうまく距離を取る方法は、仕事以外の話題に深入りせず、基本のあいさつや業務報告を丁寧にすることで、必要最低限の信頼関係は保てます。
また、その先輩より上の立場の人や、信頼できる同僚に状況を伝え、サポートや配置換えを打診してもらうのも効果的です。1人で抱え込まず、組織として対応してもらいましょう。
人間関係に悩んだとき、環境を変えるという選択肢もある
看護師の言動が強く見えたり、厳しく感じられたりする背景には、過密な業務、命を預かる責任、環境によるストレスなどが大きく影響しています。
それは決して、あなたの性格や能力のせいではありません。
もし今の職場で心がすり減っていると感じたら、「環境を変える」という選択肢を考えてみてもよいのです。
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