看護師はワーホリで働ける?仕事内容や必要な英語力、帰国後のキャリアも解説

「看護師のキャリアを中断せずに海外の仕事を経験したい」「看護師の資格を活かしてワーホリで働けるって本当?」
海外生活を経験できるワーキングホリデー(ワーホリ)は魅力的ですが、多くの疑問や不安を感じている看護師の方は少なくありません。
この記事では、看護師がワーホリで働く課題と、夢を実現するためのステップを紹介します。帰国後のキャリアを有利にする方法まで解説しているため、海外挑戦が成功するための行動計画として活用してください。
ワーホリで看護師として働くのは難しい
ワーキングホリデー制度は、日本と協定を結んでいる30カ国・地域(2025年1月時点)で、休暇目的の入国および滞在中に、旅行資金を補うための付随的就労を認める制度です。ただし、海外で日本の看護師と同じように医療行為やケアをおこなうことは、難しい現状があります。ここでは、その理由を詳しく解説します。
海外の看護師免許の取得が必要である
海外で看護師として働くためには、就労ビザとその国が定める看護師免許を取得し、現地の看護協会に登録しなければならない場合がほとんどです。日本の看護師免許は、そのまま使えないのです。
現地の免許を取得する手続きは、国や地域によって異なりますが、一般的に次のステップが必要です。
- 学歴・単位の審査:日本の看護学校のカリキュラムが基準を満たしているかの評価
- 追加の学習:不足している単位を現地の学校で履修
- 試験の合格:現地の看護師国家試験に合格
これらの手続きはワーホリ期間内で完了することは厳しく、現地で看護師として働くには、長期的な留学や就労ビザの取得が前提となります。
ワーホリで働ける職種が限られている
ワーホリでは、休暇目的の渡航・滞在に対して、滞在費や旅行費を稼ぐための就労が認められています。そのため、高い専門性が求められる看護師や現地の免許が必要な職種などの就労は認められていません。
ワーホリで就ける仕事は、カフェやレストランのスタッフやショップ店員など、資格を必要としない職種です。また、医療機関で働ける場合でも、看護師ではなく、資格や免許を必要としないボランティアに限定される可能性があります。
看護師がワーホリを通して海外で働く方法
日本の看護師経験を活かしつつ、海外での医療現場に携わるための方法を紹介します。
- 通常のワーホリや留学で英語力を身につける
- アシスタントナースの資格を取得する
- 海外の看護師資格に登録する
ワーホリ期間で海外の看護師免許を取得するのは難しいため、「将来的に海外で働く看護師」になるための準備期間として捉えるのが現実的です。
通常のワーホリや留学で英語力を身につける
海外の医療現場で働くための条件には、高い英語力があります。ワーホリ期間の最初の数ヶ月間は、語学学校に通い英語力を伸ばしましょう。
日常会話のほかに、医療英語も留学や看護師登録試験の受験資格として求められるため身につける必要があります。
アシスタントナースの資格を取得する
アシスタントナース(看護助手)は、看護師の指示のもと、食事介助や入浴介助、ベッドメイキングなどのケアをおこなう職種です。
国によっては数週間〜数ヶ月のコースを修了するだけで働くことが可能です。医療現場で経験を積みながら、現地の医療用語や文化に慣れることができます。
海外の看護師資格に登録する
海外で看護師として働きたい場合は、ワーホリ期間を利用して次の準備を進めるのが現実的です。
- IELTS/OETなどのスコア獲得
- 現地の看護学校への進学準備
- 看護師登録に必要な書類収集
ワーホリは、「海外看護師になるため準備」として、現地での情報収集や生活への適応期間に充てるのが効果的です。実際に、海外の看護師免許を取得するためには、ワーホリではなく看護留学や看護インターンシップを活用することをおすすめします。
看護師がワーホリに行くメリット
看護師として一時的なブランクが生じたとしても、ワーホリ経験がキャリアにもたらすメリットは多くあります。
語学力やコミュニケーション能力が高くなる
海外生活では、日用品の買い物や仕事探し、銀行手続きなどあらゆる場面で外国語でのコミュニケーションが必要となります。
とくに、海外でのアルバイトや医療施設でのボランティアの経験を通して、文化や習慣の異なる人々と協力するコミュニケーション能力が鍛えられます。
厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果報告書」によると、日本の50.0%の病院が外国人患者を受け入れているため、帰国後の医療現場でも海外の経験は高く評価されるでしょう。
日本の職場では得られない経験ができる
ワーホリは、日本の職場では得られない多様な経験を通じて、価値観を広げるチャンスです。
現地を肌で感じることで、日本の医療の強みと弱みを客観視できます。慣れない環境での仕事や生活のトラブルを解決した経験は、自己肯定感と精神的なタフさを向上させ、多忙な看護現場での糧となるでしょう。
看護師がワーホリに行くデメリット
メリットだけでなく、対策すべきデメリットも把握しておきましょう。
看護師としてブランクが生まれる
ワーホリ期間中は看護師として働けない場合が多いため、約1年間のブランクが生じます。
帰国後の転職面接では、「ブランク期間に何をしていたか」が問われます。ワーホリ期間中のアルバイトや学習内容を説明できるような準備が必要です。
収入が一時的に下がるリスクがある
ワーホリ期間中は、語学学校の学費や渡航費用などがかかります。さらに、現地のアルバイト収入は、看護師時代の給与に比べて下がる恐れがあります。
渡航から最初の3ヶ月程度は収入がない可能性も考慮し、貯金したり医療保険に加入したりするなど対策を立てましょう。
看護師のワーホリにおすすめの国と特徴
看護師に人気がある国を紹介します。
- オーストラリア
- カナダ
- アメリカ
働きやすく学習環境が整っている国を選びましょう。それぞれを詳しく解説します。
オーストラリア
ワーホリ制度が充実しており、温暖な気候で人気が高い国です。
アシスタントナースは、最短半年で資格取得を目指せる場合もありますが、
1年かかるケースもあります。そのため、ワーホリ期間中に数ヶ月、現地で働ける可能性があります。これは、医療現場で使う実践的な英語や、日本とは異なる多職種間の役割を肌で学ぶ機会といえるでしょう。
関連記事:オーストラリアの看護師の年収はいくら?日本との違いを詳しく解説
カナダ
カナダは、移住しやすい国として知られており、都市部では日本人同士のコミュニティも形成されています。多文化共生の環境で、看護師として多様な背景を持つ人々への理解を深められるのが特徴です。
カナダの高齢化率(2022年)は、19.0%であるため医療の需要が高い可能性があります。また、多民族国家であるため、文化や宗教が異なる患者さまへの接し方やケアを深く学べます。この異文化コミュニケーション能力は、日本で増加する外国人患者対応に役立つでしょう。
ワーホリ期間中にカナダの正看護師免許を取得して働くことは難しいですが、現地でアルバイトをすることで、多岐にわたる文化を持つ人々と日常的に交流できます。これが、ゆくゆく海外で働くための適応力を養います。
アメリカ
アメリカでは、看護師と医師は対等な関係にあり、指示を仰ぐというよりは意見交換しながらケアをおこなうことができます。
アメリカで看護師として働くためには、NCLEX-RN(アメリカの看護師国家試験)に合格する必要があるため、ワーホリ中に現地の看護師として働くのは難しいかもしれません。詳しい方法については、下記の記事で解説しているためぜひ参考にしてください。
関連記事:アメリカの看護師の年収はいくら?日本の看護師より高い6つの理由を紹介
ワーホリ中に看護師ができる仕事一覧
ワーホリで日本の看護師資格を活かせる仕事は少ないですが、医療や介護分野で経験を積む方法はあります。
- アシスタントナース
- 医療ボランティア
- レストラン・カフェなどの一般職
これらの仕事の就労条件は国によって制度が異なるため、渡航前に現地の規制を確認する必要があります。語学力や異文化対応力を高め、帰国後の看護師としてのキャリアに活かせる経験を積みましょう。
関連記事:看護師が海外で働く方法6選!仕事内容の違いや海外の資格について紹介
看護師のワーホリに必要な費用と準備
海外生活は、資金計画と事前準備が不十分だと続けられなくなります。ここでは、ワーホリに不可欠な費用のシミュレーションと、渡航前に準備すべき書類について解説します。
渡航後1年間の費用シミュレーション
国や都市によって変動しますが、オーストラリアやカナダでの1年間(語学学校3ヶ月を含む)の一般的な費用目安は約200~250万円とされています。
この費用は、現地でのアルバイト収入を見込まない場合の目安です。初期費用として、渡航から仕事が見つかるまでの3〜4ヶ月分の生活費を用意しましょう。
必要な書類と申請方法
ワーホリの申請方法は国ごとに異なりますが、共通して必要となる準備をリストアップします。
- パスポート:有効期限を確認
- クレジットカード:支払いに必要
- 健康診断・犯罪経歴証明:国によってはビザ申請時に必要
これらの書類は渡航する国や地域によって異なるため、事前に各国の大使館や領事館のホームページを確認しましょう。
ワーホリから帰国後の看護師転職
ワーホリから帰国後の看護師転職の面接では海外に行っている間のブランクを指摘されることがあり、不利に働く場合があります。ワーホリ経験を強力な武器として転職試験に臨みましょう。
ワーホリ経験をプラスにする伝え方
ワーホリでのブランクを問われた際は、次の要素を盛り込み説明しましょう。
- 目標達成能力:IELTSスコアの基準点を目標に語学学習に励みました
- 異文化対応力:多様な国籍の利用者さまがいる介護施設で働き、コミュニケーションや文化的な違いを考慮したケアを実践しました
- 自己成長:予測不能なトラブルを自力で解決した経験から、精神的なタフさや問題解決能力を身につけました
これらの経験を論理的に伝えることで、主体性や行動力をアピールでき、「キャリアのために目標を持って行動した」と評価されます。
ブランクを理由に落とされないためのポイント
転職活動前に、あらかじめブランク対策をしておくことが重要です。
医療安全や最新のガイドラインなど、日本の医療現場の情報を学習したり、看護協会の職支援研修を受講したりして、「看護師として復帰する意欲と準備がある」ことを示しましょう。
看護師がワーホリについてのよくある質問
ワーホリを検討中の看護師から多く寄せられる疑問や不安にお答えします。疑問点を解消し、自信を持ってワーホリの準備を進めましょう。
Q1:看護師がワーホリに行く際、英語力がなくても大丈夫ですか?
英語力がなくても、渡航自体は可能です。
ただし、仕事探しや現地生活で苦労する可能性があります。医療・介護系のボランティアの仕事に就きたい場合は、日常会話レベルの英語力を身につけておくことをおすすめします。
Q2:ワーホリ後の転職は不利になりますか?
ワーホリ後の転職は伝え方次第で、有利にも不利にもなります。
単に「遊びに行った」と採用担当者に捉えられると不利です。一方で、「語学力向上や国際的な医療経験など明確な意思を持って計画的に過ごした」ことを伝えられると、主体性や行動力が高く評価され、むしろ有利に働くでしょう。
Q3:看護師がワーホリで1番稼げる国はどこですか?
オーストラリアやカナダは最低賃金が高く設定されているため、一般職のアルバイトでも比較的稼ぎやすい傾向にあります。
とくに、オーストラリアでは、アシスタントナースの時給が高く、経験を積めば効率よく収入を得られるでしょう。
看護師のワーホリはキャリアの幅を広げる絶好のチャンス!
看護師のワーホリは、現職との調整や資金の関係から一見ハードルが高く感じられるかもしれません。
ただし、ワーホリは、語学力や異文化の理解力、自己解決能力というグローバルな看護師に求められるスキルを身につけるチャンスです。海外で看護師として働くために、ワーホリでの経験をきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
「もっと利用者さま一人ひとりと向き合いたい」「専門性を高めたい」と感じたら、次のステップとして「訪問看護」という選択肢があります。
NsPaceCareerは、訪問看護に特化した求人サイトです。病院以外の環境で、じっくりと利用者さまと向き合いたい方、これまでの経験を地域医療で活かしたい方をサポートしています。あなたの理想のキャリアを実現するため、ぜひ活用してみてください。
<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
