DMAT看護師になるには?仕事内容や必要な経験、向いている人の特徴を解説

「災害医療に貢献したいけど、DMAT看護師になる方法がわからない」「DMATで自分のスキルが通用するか不安」と悩んでいる看護師の方はいらっしゃいませんか。
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)とは、おおむね看護師2名+医師1名+業務調整員1名(医師・看護師以外の医療職および事務職員)の少人数チームが基本(4〜6名構成が一般的)とし、大規模災害や多傷病者が発生した事故現場に駆けつけ、救命活動をおこなう医療チームです。
この記事では、DMAT看護師になるための方法や災害現場での業務内容などを解説します。DMAT看護師になる方法がわかり、高度なスキルと情熱を、人命救助の場面で発揮できるでしょう。
DMAT看護師になるには?
DMAT看護師として活動するためには、臨床経験と登録が必要です。
- DMAT指定医療機関で働く
- 救急外来や急性期病棟で経験を積む
- 厚生労働省の「DMAT登録者」になる
これらに沿って準備を進めると、「災害医療に貢献したい」という強い情熱と、看護師としての専門性を活かせるでしょう。
1.DMAT指定医療機関で働く
DMAT看護師になる条件は、DMAT指定医療機関に勤務していることです。
臨床経験を積み、病院側からDMATメンバーになることを認められると「DMAT研修」の受講資格が得られます。現在、DMAT指定医療機関に勤めていない場合は、転職も視野に入れる必要があります。
2.救急外来や急性期病棟で経験を積む
救急外来や急性期病棟で5年以上の経験を積むことで、病院のDMATチームの一員に選ばれやすくなります。多くの病院で5年以上の経験が望ましいが、施設によっては要件が異なり、経験年数はあくまで目安として考えてください。
DMAT看護師には、限られた情報と時間のなかで、傷病者の命を左右する判断をする初期対応能力が求められるからです。臨床経験を積み、アセスメント能力と技術を磨くことが推奨されます。
関連記事:看護師で急性期病棟の経験なしでも急性期病棟で働ける理由4つ!向き不向きも解説
3.厚生労働省の「DMAT登録者」になる
DMAT看護師として活動するには、厚生労働省が定める研修(目安として約4日間)を受け、修了する必要があります。研修の受講要件は次のとおりです。
- DMAT指定医療機関への所属
- 「災害・感染症医療業務従事者」の登録への同意
- 20歳以上65歳未満
- 実務経験が2年以上
- 災害時に被災地での対応に従事する意思
DMAT研修を受ける条件の1つに「実務経験が2年以上」とありますが、実際には、「5年以上」を求める病院が多くあるようです。
登録を維持するためには、5年ごとに研修を受けなければなりません。また、維持研修を定期的に受講することが義務づけられています。
DMAT看護師のおもな業務内容
DMAT看護師の業務は、病院の看護師の役割とは異なります。倒壊した建物や避難所、あるいは病院の機能が停止したところなど、活動する場所は多岐にわたります。
- 災害現場でのトリアージ業務の補助
- 処置の介助とバイタルサインの管理
- ほかのDMATや救急隊との連携
- 活動訓練や準備
これらの業務は、医療資源が限られた状況で、正確な判断が求められるため高い専門性と緊張感を伴うものです。それぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう。
災害現場でのトリアージ業務の補助
DMAT看護師の重要な業務がトリアージの補助です。これは「治療をすれば救命できる傷病者」を優先的に選び、治療の優先順位をつける業務です。
短時間で傷病者の状態を正確にアセスメントし、救命できる可能性が低い方、または軽傷の方といった判断を医師がスムーズにできるようにサポートします。
処置の介助とバイタルサインの管理
現場での応急処置や、医師の外科的処置の介助をおこなうことがDMAT看護師の業務です。
とくに、負傷者が多数発生している場所では、限られた資材を活用し、正確に処置を進めることが求められます。また、継続的にバイタルサインを管理し、傷病者の変化の把握に努めます。
ほかのDMATや救急隊との連携
現場では、複数のDMATチームや消防の救急隊、自衛隊などが活動しています。
これらのチームと連携して、傷病者を搬送したり、治療をサポートしたりします。災害現場での活動のほかに、被災地域にある病院の支援や医療物資の確保などのスムーズな連携は、1人でも多くの命を救うために不可欠です。
DMAT看護師は、高いコミュニケーション能力と調整力を発揮して、システムが機能するように努めます。
活動訓練や準備
災害はいつ起こるかわからないため、定期的な訓練が欠かせません。
院内でのシミュレーション訓練や、厚生労働省が主催する「令和7年度DMAT技能維持研修およびブロック訓練」などに参加し、スキルと連携体制を維持します。
また、急な出動に備え、医薬品や機材の点検・補充といった準備も重要な業務です。
DMAT看護師の給料事情
DMAT看護師の給料は、チームに所属していることによる特別手当はない場合が多く、基本的に通常の看護師の給与と同じ扱いのようです。
ただし、医療機関によっては所属していることへの特別手当に加えて、大規模災害が発生し、出動した際の出動手当や時間外手当が別途支給されるところもあります。
また、DMAT看護師は、救命救急センターや集中治療室などに勤務しているため、病棟の看護師と比較して、夜勤手当や危険手当などが多くなり、給与が高くなる病院もあるようです。
関連記事:【2025年版】看護師の平均年収はいくら?ボーナスや給与の内訳を解説
DMAT看護師に向いている人の特徴
DMAT看護師には、通常の臨床能力に加え、自然災害という特殊な環境で業務をスムーズに進めるための精神的な強さや適性が求められます。
- 災害現場で冷静に対応できる人
- 熟練したスキルがある人
- 救急医療に興味がある人
- 体力に自信がある人
これらの特徴は、DMAT看護師としての使命を果たすために重要です。自身の適性とスキルを見極め、挑戦できるか検討してみましょう。
災害現場で冷静に対応できる人
DMAT看護師には、極度の混乱や悲惨な状況でも感情的にならず、目の前の業務に集中できる冷静さが必要です。
災害現場では、氏名や病歴、内服薬など患者さまの情報が正確にわからないことが多く、さらに刻一刻と負傷者の容態が変わるため、情報が錯綜しがちです。このような環境下で感情に流されてしまうと、適切な判断ができず、業務に支障をきたすリスクがあります。
負傷者が多数いるなかで、傷病者のバイタルサインの把握や損傷部位の治療の補助などに臨機応変に対応する柔軟性が求められます。
熟練したスキルがある人
DMAT看護師には、普段の臨床現場で培った高度なアセスメント能力と熟練した手技が欠かせません。
災害現場では、医療資源が限られ、すぐに医師の指示を受けられない状況もあるため、自身の知識とスキルで判断し、自律的に対応する場面があるからです。
高度な外傷処置の知識や迅速なルート確保、気道確保といった熟練した手技が求められます。
救急医療に興味がある人
DMAT看護師に向いているのは、重症患者の初期対応や迅速な処置に強い関心と熱意がある人です。
DMATとして任務を遂行するためには、高い緊張感でも活動できるよう、定期的な訓練への参加や、新しい知識を習得し続ける姿勢が欠かせません。
救急医療に興味があり、強い情熱がある看護師は、DMAT隊員の1人として成長し、長期的に活動を続けられるでしょう。
体力に自信がある人
DMATの活動は肉体的なタフさが求められるため、体力に自信がある人には適性があります。災害現場では、過酷な環境のなかで、長時間にわたる活動を強いられるからです。
具体的には、重い医療機材を背負って瓦礫の近くを移動したり、十分な睡眠がとれないまま何時間も立ちっぱなしで処置を続けたりすることがあります。
DMATの活動は、高度な判断力と技術に加えて、体力があってこそ成り立つタフな仕事なのです。
DMAT以外で看護師が災害現場で活躍する方法
DMATのほかにも、看護師が災害医療や支援に貢献できる専門チームや枠組みがあります。
- 災害支援ナース
- 日赤救護班
- 災害派遣精神医療チーム
- 災害医療コーディネーター
DMATが超急性期の救命に特化しているのに対し、これらの活動は長期的な被災者の生活・心のケアなど異なるフェーズでも専門性を発揮できます。
災害支援ナース
災害支援ナースは、自然災害や感染症の発生時に被災地に派遣され活動します。
災害支援ナースになるには、厚生労働省医政局の「災害支援ナース研修」を修了することが条件です。
DMATが初期の救命活動をおこなうのに対し、災害支援ナースは、被災者の健康管理や生活支援、メンタルヘルスケアなど、比較的長期にわたる支援をおこないます。
日赤救護班
日赤救護班は、日本赤十字社に所属するチームとして、災害発生時における医療・人道支援を担います。日赤救護班として活動するためには、原則として日本赤十字社の病院で働く必要があります。
普段は病院スタッフとして勤務しており、大規模災害が発生した際に次のような業務をおこないます。
- 医療救護
- 救援物資の備蓄と配備
- 血液製剤の供給
- 義援金の受付と配分
- 防災ボランティアによる活動や外国人の安否調査
日赤救護班は、医療提供だけでなく、物資の支援や資金の配分といった、被災者の生活再建に欠かせない支援をおこなう重要な存在です。
災害派遣精神医療チーム
災害派遣精神医療チーム(DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team)は、災害発生後の被災者や被災地の支援者、医療従事者への精神科医療や精神保健活動を専門とするチームです。
たとえば、東京都でDPATの一員として活動するための条件は、「東京DPAT登録機関」の病院で働き、「東京DPAT隊員登録希望者」に登録することです。
所属している病院が、都道府県のDPAT登録の医療機関であるかを確認する必要があります。
災害医療コーディネーター
災害医療コーディネーターは、おもに次の事項について助言や、調整を支援します。
- 医療体制の構築の助言
- 傷病者の把握や重症患者の搬送の調整
- 医療チームの受け入れ調整や活動場所の割り当て
災害医療コーディネーターには、マネジメント能力と調整能力が求められます。「医療提供体制に精通しており、専門的な研修を受け、災害対応を担う関係機関と連携を構築している者」が望ましいとされています。
DMAT看護師についてのよくある質問
ここでは、DMAT看護師についてのよくある質問に回答します。
Q1:DMAT看護師になるためには経験年数の条件がありますか?
DMAT看護師になるためには、DMAT研修の修了が必須であり、この研修の受講条件は「実務経験を2年以上有すること」です。
しかし、高度なスキルと豊富な経験が求められることから、実際には5年以上の臨床経験が推奨されています。
また、DMAT研修を受けるためには、病院からの許可が必要であるため、蘇生治療や外傷診療、多数傷病者への対応などのスキルを身につけ、病院側からの推薦を得られるようにしておくことが重要です。
Q2:DMAT看護師と災害支援ナースの違いは何ですか?
DMAT看護師と災害支援ナースのおもな違いは活動の時期と内容です。下記の表に、その違いをまとめました。
| 項目 | DMAT看護師 | 災害支援ナース |
| おもな活動時期 | 災害発生後、48時間以内 | 災害発生後、比較的早期から長期 |
| おもな活動 | 救命のためのトリアージ、応急処置、初期治療 | 避難所の健康管理、生活支援、メンタルヘルスケア |
| 所属 | DMAT指定医療機関 | 都道府県看護協会 |
DMATが超急性期の命を救うことに特化するのに対し、災害支援ナースは被災者の生活と心の健康を長期的に支えるという、異なる役割と使命を担っています。
Q3:DMAT指定医療機関の求人はどうやって探すと良いですか?
DMAT指定医療機関の求人は、次の方法で探すとスムーズに見つけられるでしょう。
- 厚生労働省の公式リストを確認する
- 「DMAT」「救命救急センター」「集中治療室」など求人サイトで検索する
- 病院の採用ページを確認する
とくに、DMAT指定医療機関の救急外来や集中治療室の募集は、メンバーの一員になれる可能性があるため、これらの部署に絞って情報収集しましょう。
DMAT看護師は災害現場で専門性を発揮できる貴重なポジション!
DMAT看護師は、災害という状況で、高度なスキルと判断力によって多くの命を救うというやりがいのある専門職です。その活動は、キャリアと自己成長に大きく貢献します。
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<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
