耳鼻科の看護師とは?5つの業務内容と求人を見つけるコツを解説

「耳鼻科の看護師はどのような業務をしているの?」「耳鼻科に転職したいけど、どのようなスキルが必要なの?」
耳鼻科は、外来やクリニックでの診療が中心で、専門的な処置や検査をおこなうため、一般病棟とは看護師の業務内容が異なります。
この記事では、耳鼻科の看護師の業務内容と、知っておきたいメリット・デメリットを詳しく解説します。耳鼻科の業務の全体像がわかり、耳鼻科の看護師に関心のある方にとって自信を持って転職にチャレンジできるようになるでしょう。
耳鼻科の看護師とは?どんな職場で働くの?
耳鼻科の看護師の役割や、勤務先の違いについて解説します。職場によって求められるスキルが変わるため、事前の確認が重要です。
耳鼻科の診療範囲
耳鼻科は、おもに耳や鼻、喉などの病気を専門とする診療科です。これらの器官は、聞く、味わう、話す、飲み込むといった生活の質に直結する重要な機能を担っています。
看護師は、中耳炎や急性扁桃炎、めまいなどの身近な病気だけではなく、難聴や咽頭がん・喉頭がんなどの頭頸部がんといった専門性の高い病気の患者さまをサポートします。
病院とクリニックの勤務先による役割の違い
耳鼻科で扱う病気は、働く場所によって異なります。それに伴い、看護師に求められる役割やスキルも変わります。
| 診察する病気 | 看護師の役割 | |
| 病院 | 咽頭がんや喉頭がん、慢性中耳炎など手術や入院を伴う高度な治療が中心 | 術前・術後管理、全身管理のスキル |
| クリニック | 風邪、中耳炎、アレルギーなどの軽い症状への対応が中心 | 患者さまへの生活指導や吸入器などの使用について説明 |
全身管理スキルを磨きたいなら病院、患者指導や専門的な処置スキルを磨きたいならクリニックを選ぶなど、自分の目標に合わせた職場を選びましょう。
ただし、病院の中でも「外来部門」か「病棟部門」かによって看護師の役割も異なります。どんなことに興味があり、学びたいのか自分自身で事前に整理しておくと良いでしょう。
耳鼻科の看護師の業務内容5つ
耳鼻科の看護師の業務内容を解説します。
- 診察の介助
- 検査のサポートと実施
- 患者さまの指導
- 術前・術後の管理
- チーム医療・多職種連携
これらの業務を習得することで、耳鼻科領域のプロフェッショナルとして活躍できます。業務の多くは専門的な処置と観察であるため、入職後の学習意欲が専門職として働き続けるためには重要です。
診察の介助
耳鼻科の看護師の業務は、医師の診察が安全かつ、スムーズに進むようにサポートすることです。
- 器具の準備と管理:耳鏡や鼻鏡などの準備と使用後の洗浄・滅菌
- 患者さまの誘導と体位の調整:小児の場合、診察中に動かないように介助
- 吸引・洗浄の介助:耳垢除去や鼻汁吸引など処置の介助
診察の介助中は、患者さまの不安を和らげるように声を掛けながら、医師が処置に集中できるように支援することが重要です。
検査のサポートと実施
耳鼻科における看護師の重要な役割は、専門的な検査の正確な実施とサポートです。聴力やめまいにかかわる検査は特殊で、検査結果が医師の正確な診断に直結するため、正確な機器操作と細心の注意が必要だからです。
患者さまがリラックスして検査を受けられるよう、精神的なサポートも大切な業務となります。
患者さまの指導
患者さまやご家族に対して指導することも、耳鼻科の看護師の業務です。正しい方法で自宅でのケアや治療を継続することが、回復を早め、再発を防ぐ可能性があるからです。
たとえば、点鼻薬や点耳薬、吸入器の正しい使用方法を実演しながら指導したり、鼻炎や花粉症の患者さまには、室内の換気や掃除、アレルゲン対策といった日常生活の工夫についてアドバイスしたりします。
患者さまが自宅で正しくセルフケアできるよう、理解度を確認しながら繰り返し指導することが、治療効果を発揮するためには大切です。
術前・術後の管理
大学病院や総合病院の耳鼻科病棟では、手術前後の全身管理のスキルが看護師には求められます。耳鼻科領域の手術では、気道狭窄や出血のリスクが高いため、重篤な合併症を早期に発見するための専門的な観察眼が不可欠です。
看護師は、手術前から患者さまの全身状態を入念に把握し、術後は呼吸状態や出血の有無など変化に細心の注意を払って回復をサポートします。術前・術後の管理スキルは、患者さまの安全を確保し、スムーズな回復を支えるうえで重要です。
チーム医療・多職種連携
耳鼻科では、発声や嚥下といった機能のリハビリテーションが重要となるため、専門職との連携が重要です。看護師は、患者さまの状態とニーズを伝え、多職種間の情報共有の中心となります。
- 言語聴覚士
- 理学療法士
- 医療ソーシャルワーカー
ほかにもたくさんの専門職と積極的に情報を交換し合うことで患者さまの生活をサポートしましょう。
関連記事:クリニック看護師の仕事内容4つ!診療科別の仕事内容とメリットを紹介

耳鼻科の看護師の給料事情
病棟の耳鼻科で働く看護師の年収は、公式なデータがありません。ですが、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計」による看護師の平均年収519万7,000円と変わりはないでしょう。
耳鼻科の看護師の給料は、勤務先によって変わります。クリニックの場合は夜勤手当がない分、病棟勤務と比べて給料水準は低めになる傾向があります。
耳鼻科は残業が比較的少ない職場も多く、時間当たりの給料やワークライフバランスを考慮すると、高待遇だと感じる看護師の方もいます。
耳鼻科の看護師のメリットと魅力
耳鼻科の看護師として働くメリットと、この分野ならではの魅力を紹介します。
- 小児〜高齢者まで幅広くケアできる
- 処置スキルが磨かれる
- 患者さまの生活の質に直結するサポートができる
これらの魅力は、看護師として長く働き続けるためのきっかけとなるでしょう。「聞く・話す・食べる」という基本機能が回復できるようにサポートする喜びはやりがいにつながります。
小児〜高齢者まで幅広くケアできる
耳鼻科で働くことで、小児から高齢者まで幅広い年代の患者さまに対応できるようになります。耳鼻科では、中耳炎や急性扁桃炎で受診する小児から、難聴や嚥下障害を抱える高齢者まで、非常に幅広い年代の疾患を対象にケアするからです。
年代ごとのコミュニケーション技術や、発達段階に応じたケアを学べ、小児特有の対応や高齢者の複雑な症状への理解が深まります。看護師としての対応力や知識の幅が広がり、多様な患者さまのケアに自信を持てるようになります。
処置スキルが磨かれる
耳鼻科では、診察介助や特殊な検査・処置の機会が多くなるため、専門的かつ繊細な処置スキルを磨けます。
とくに、吸引やファイバースコープの介助、聴力検査の実施など、細かい操作と鋭い観察力が鍛えられます。これらの経験を通じて、耳鼻科領域に特化した看護技術を習得できます。
患者さまの生活の質に直結するサポートができる
耳鼻科看護師のやりがいは、患者さまの日常生活の質につながるサポートができることです。耳鼻科の疾患は、「聞こえない」「話せない」「食べられない」など、患者さまの生活の根本的な部分に影響しがちであるため、治療のサポートやケアの効果が目に見える形であらわれます。
患者さまから「前よりも聞こえるようになった」「ご飯がおいしく感じられるようになった」といった具体的な感謝の言葉をいただくことが、やりがいとなるでしょう。
耳鼻科の看護師のデメリットと大変さ
魅力が多い一方で、耳鼻科の看護師ならではのデメリットや大変な点もあります。
- 小児の対応が多いため泣かれる・暴れるケースもある
- 耳垢・鼻汁などの処置が苦手な人にはつらい
- 外来は回転が早く素早い対応が求められる
これらの大変さは、体力的な負担と精神的なストレスにつながりやすい要素です。しかし、チームで協力して乗り越える体制が整っている職場も多くあるため、情報収集と前向きな心構えが大切です。
小児の対応が多いため泣かれる・暴れるケースもある
耳鼻科を受診する小児は、診察や処置を嫌がることが多く、泣いたり暴れたりするケースがあるため、看護師に体力的な負担と精神的なストレスがかかります。
とくに、子どもの対応が苦手な看護師にとっては、ストレスが大きくなりがちです。
耳垢・鼻汁などの処置が苦手な人にはつらい
耳鼻科では、耳垢除去や鼻汁吸引、膿の吸引など体液や分泌物の処置が日常的におこなわれます。
これらの処置に対して強い抵抗感や嫌悪感がある看護師は、業務に慣れるまで精神的なストレスを感じやすいかもしれません。
外来は回転が早く素早い対応が求められる
クリニックや総合病院の外来では、診察介助や検査の準備、次の患者さまの誘導などを迅速におこなう必要があります。
とくに、花粉症やインフルエンザの流行時期には、患者さまが増えるため、テキパキと動くことが求められます。落ち着いてじっくりと患者さまにかかわりたい看護師にとっては、プレッシャーになりがちです。
耳鼻科に向いている看護師の特徴
耳鼻科で活躍できる看護師の特徴をまとめました。
- 細かい作業・観察が得意
- 子どもや高齢者とのコミュニケーションが好き
- チームワーク重視で柔軟に動ける
これらの特性がある方は、耳鼻科への転職でスキルを十分に活かせる可能性があります。耳鼻科は専門性が高いため、スキルを面接でアピールすることで、採用担当者への印象も向上するでしょう。
関連記事:急変対応が苦手な看護師にとって負担の少ない科や職場5つ!メリットやゆるく働くための条件
耳鼻科の看護師に役立つ資格
耳鼻科領域で専門性を深めたい看護師におすすめの資格を紹介します。
- 摂食・嚥下障害看護認定看護師
- 日本禁煙学会認定指導者
- 小児アレルギーエデュケーター(PAE)
これらの資格は、術後の管理や生活習慣の改善指導など、業務をより深く、専門的にするための武器となるでしょう。資格手当やキャリアアップの機会にもつながります。
摂食・嚥下障害看護認定看護師
摂食・嚥下障害看護認定看護師は「食べる」や「飲み込む」をサポートするスペシャリストであることを証明する資格です。
病気や障害で食事ができない患者さまや、飲み込む機能が低く誤嚥するリスクが高い患者さまを対象にケアします。この資格は、耳鼻科の看護師のキャリアにおいて強みになるでしょう。
日本禁煙学会認定指導者
日本禁煙学会認定指導者は、日本禁煙学会が認定する資格です。
タバコの煙は、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、頭頸部がんなどのリスクを高めます。禁煙への取り組みをサポートすることで、生活指導の質の向上につなげられます。
小児アレルギーエデュケーター
小児アレルギーエデュケーターは、日本小児臨床アレルギー学会が認定する資格です。アレルギー性鼻炎や食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などの小児患者さまに対する指導や環境整備について、専門的な知識と技術を習得できます。
耳鼻科の看護師の求人を探すコツ
自分に合った耳鼻科の求人を見つけるためのポイントを解説します。
- 対象となる病気や処置の幅を確認する
- 年齢層とスタッフの人数を確認する
- 業務範囲をチェックする
- 耳鼻科の看護師に沿った志望動機を考える
- 耳鼻科で経験を積んだ後のキャリアを検討しておく
これらのポイントを確認することで、入職後のミスマッチを防ぎ、納得のいく転職を実現できます。将来の目標に合った職場を見つけることが転職成功のカギです。
対象となる病気や処置の幅を確認する
耳鼻科の病院やクリニックでは、対象となる病気が異なります。
たとえば、クリニックでは風邪やアレルギー、中耳炎など軽症の処置が中心である一方で、総合病院では手術やがん治療などの治療が中心です。
自分が深めたいスキルに合わせて、求人情報に記載されている診療内容を確認しましょう。
年齢層とスタッフの人数を確認する
転職先のスタッフの年齢構成は、職場の雰囲気や教育体制を推測するために重要な情報です。幅広い年代の看護師がいる職場は、ベテラン看護師からの知識や技術の継承がスムーズで、多様な働き方への理解があり、人間関係が安定しやすい傾向にあります。
また、クリニックでは看護師の人数が少なく、1人当たりの業務負担が大きい場合があります。欠員時にも助け合える体制が整っているかを施設見学やインターンシップの際に質問してチェックしましょう。
業務範囲をチェックする
クリニックの場合、看護師が看護業務に加えて、受付業務や医療事務を兼任する場合があります。
看護業務に集中したい方は、事務職が在籍しているのか、看護師の業務範囲がはっきりとわけられているかをチェックすることが重要です。
耳鼻科の看護師に沿った志望動機を考える
転職面接では、なぜ耳鼻科を選んだのかという志望動機が重要です。
「急変が少ないから」といった消極的な理由ではなく「患者さまの生活の質につながる専門的な処置のスキルを磨きたい」「小児の不安を和らげるコミュニケーションスキルを活かしたい」といった、前向きな理由を具体的に伝えましょう。
耳鼻科で経験を積んだ後のキャリアを検討しておく
耳鼻科で身につけた専門的な処置スキルは、訪問看護ステーションや介護施設など幅広い分野で活かせます。
将来的にどのような分野に進みたいかキャリアプランを明らかにしておくと、求人選びの軸が定まります。
耳鼻科の看護師についてのよくある質問
耳鼻科の看護師についてよくある疑問に回答します。
Q1:耳鼻科の看護師に採血のスキルは必要ですか?
病院と比べて、クリニックでは採血する機会は少ない傾向です。
総合病院や大学病院の耳鼻科病棟では、術前検査や入院中の全身管理のため、採血・点滴のスキルは必須です。
Q2:耳鼻科の看護師には未経験でもなれますか?
耳鼻科の看護師には、未経験でもなれます。とくに、クリニックの求人は「未経験可」「初心者歓迎」としているところもあります。
しかし、耳鼻科の看護師には専門的なスキルが求められるため、入職後にOJTが実施されているのか、継続的に教育は受けられるのかを確認しておくと安心です。
Q3:耳鼻科の看護師は勉強が大変ですか?
耳鼻科の看護師は、専門知識の勉強が必要であり簡単ではないです。
耳、鼻、喉という特定の領域に特化して知識を深めなければならず、手術をおこなう病院では全身管理の知識も必要になります。
耳鼻科の看護師の業務内容を知ってチャレンジしてみよう!
耳鼻科の看護師は、高い専門性と患者さまの生活の質に深くかかわれるというやりがいがあります。耳鼻科で身につけた専門的な処置スキルや生活の質向上への視点は、在宅医療や訪問看護の現場でも役立ちます。
専門スキルを活かして在宅や地域医療に貢献したいとお考えでしたら、訪問看護に特化したNsPaceCareerを、お気軽にご活用ください。耳鼻科での経験を活かせる次のキャリアを見つけましょう。
<参考サイト・文献>
NsPace Careerナビ 編集部 「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
