看護師が患者さまのQOLを高めるための5つのコツ!実例とQOL向上の課題

「患者さまのQOLを高めるケアをしたいけど、どうすれば良いか分からない」
「業務で忙しくて、患者さま一人ひとりに向き合うのは難しい」
そんな悩みを抱えている看護師は、決して少なくありません。日々の業務に追われるなかで、「その人らしい生活」を支える看護の大切さを感じつつも、実践に迷いを感じる場面もあるでしょう。
QOL(Quality of Life)とは、「生活の質」や「その人らしい暮らし」を意味します。医療現場では、単に病気を治すことだけでなく、身体的・精神的・社会的に充実した生活を支えることが、看護師にとって重要な役割とされています。
近年では、厚生労働省も「治す医療」から、患者の人生に寄り添う『治し支える医療』への転換を提唱しており、QOLの向上は在宅医療をはじめとする幅広い医療現場で重視されるようになっています。
この記事では、看護師が患者さまのQOLを高めるためにできる5つの実践的な工夫と、現場で直面しやすい課題について具体例を交えながら解説します。
日々のケアに自信とやりがいを持てるヒントが見つかるはずです。
看護師が患者さまのQOLを意識する重要性
看護師が患者さまのQOLを意識することは重要です。なぜなら、病気や治療によって患者さまの日常生活が大きく変わってしまうためです。
がん患者さまは、抗がん剤治療の副作用で食欲が減り、体力が落ちて好きな活動ができなくなる場合があります。看護師は、治療のサポートだけでなく、患者さまのつらい気持ちに寄り添い、食事の工夫を提案したり、体力が落ちても楽しめる活動を一緒に探したりすることが大切です。
看護師が患者さまのQOLを高めるための5つのコツ
看護師が患者さまのQOLを高めるには、日々のケアでいくつかのコツを押さえることが不可欠です。
- 患者さまの想いや生活背景を理解する
- 患者さまの意思決定を尊重する
- 患者さまの苦痛を緩和するケアをおこなう
- 患者さまの不安を和らげ精神的にサポートする
- 多職種と連携し患者さまをサポートする
これらのポイントを意識することで、患者さまの身体的なつらさを和らげるだけでなく、心の支えになるでしょう。
患者さまの想いや生活背景を理解する
患者さまの想いや生活背景を理解することが、QOL向上の第一歩です。患者さまの価値観は一人ひとり違うため、その人にとって何が大切かを知ることが、適切なケアにつながります。
「退院して孫の運動会に行きたい」と話す患者さまの場合、看護師はリハビリテーションを促すだけでなく、患者さまと目標を共有し、一緒に計画を立てることで、患者さまのモチベーションを維持できます。
患者さまの生活背景や価値観を深く理解することは、その人らしい人生を支えるために欠かせません。
患者さまの意思決定を尊重する
患者さまの意思決定を尊重することは、QOL向上に必要です。治療やケアの方法を自分で決めることで、患者さまは病気と向き合う気持ちを保てます。
「検査を受けたくない」と話す患者さまには、まずそのお気持ちに寄り添いながら、理由を丁寧にお聞きすることが大切です。
患者さまの考えを尊重しつつも、医療的な必要性やリスクについてわかりやすく伝え、納得したうえで選択してもらえるように支援します。
また、こうした患者さまの意向は、主治医や多職種とも適切に共有し、治療方針や対応方法を一緒に検討することが重要です。チームで連携しながら、患者さまにとって最善の判断ができるようサポートしましょう。
患者さまの苦痛を緩和するケアをおこなう
患者さまの身体的な苦痛を緩和するケアは、QOL向上において不可欠です。痛みや吐き気、だるさなどのつらさが続くと、精神的にもつらくなり、生活の質が著しく低下します。
たとえば、手術後で患者さまが痛みを訴えているとき、看護師は医師に報告して痛み止めを使えるようにしたり、マッサージや体位変換をして楽な姿勢で過ごせるようにしたりしてサポートします。
身体的なつらさを和らげることは、患者さまが安心して過ごすための基本です。
患者さまの不安を和らげ精神的にサポートする
患者さまの不安を和らげ、精神的にサポートすることは、QOL向上に欠かせません。患者さまは、病気や治療に大きな不安や恐怖を感じがちです。
初めて手術を受ける患者さまが「手術が怖い」「ちゃんと目が覚めるか心配」と話す場合、看護師は、手術の流れを説明したり、術後の生活をイメージできるような話をしたりして不安を和らげます。
患者さまが抱えている不安を聞き出すことで、患者さまは安心して手術に臨めるため、QOLの向上が期待できます。
多職種と連携し患者さまをサポートする
多職種と連携し患者さまをサポートすることが、QOL向上のために大切です。看護師のケアだけでは患者さまのすべてのニーズに応えるのは難しいからです。
栄養状態が悪い患者さまには、栄養士と相談して、食べやすい食事や栄養バランスの取れた献立を考えます。また、リハビリテーションが必要な患者さまには、理学療法士や作業療法士に依頼します。
このように、医師や薬剤師、リハビリテーションのスタッフなど、さまざまな専門家と協力し、患者さまをサポートすることがQOL向上につながるのです。
看護師が患者さまのQOL向上に取り組む具体例
看護師が患者さまのQOL向上にどのように取り組んでいるのか、事例を3つ紹介します。
事例1:急性期病院での術後の早期離床の支援
急性期病院である手術を終えたAさん。Aさんは「手術したばかりで痛いから動きたくない」と話していました。看護師は、無理のない範囲でベッドの横に座ることから始め、Aさんのペースに合わせて少しずつ歩く練習を促しました。痛み止めの調整をしたり、一緒に手すりを持って歩いたりすることでAさんは「動けるようになった」と感じ、自信を取り戻せました。 |
手術後、患者さまの状態が落ち着いたタイミングで身体を動かすことは、元の生活に戻るためには必須です。しかし、早期離床は痛みを伴うケースが多いため、痛み止めを活用しながら、患者さまの不安な気持ちに寄り添いサポートすることが重要です。
事例2:終末期ケアでの苦痛緩和と「その人らしさ」の尊重
終末期で療養していたBさん。Bさんが「桜が見たい」と話しており、看護師は病室に桜の枝を飾り、窓から桜が見える場所へ車椅子で移動できるように調整しました。また、痛みを和らげるケアを丁寧におこない、最期まで好きな音楽を聴く時間や、ご家族とゆっくり話すひとときを持てるよう、スタッフ間で協力してサポートしました。 |
患者さまが残された時間を、自分らしく過ごせるように願いを叶えることで、最期までその人らしい人生を生きることを支えられます。終末期ケアでは、患者さまの尊厳を尊重し、心の平穏を保つことが大切です。
事例3:訪問看護での利用者さまの生活環境に合わせたケア
足腰が弱くなり、訪問看護のサービスを受けているCさん。Cさんが「大好きな料理を続けたい」と話していました。看護師は、部屋の手すりの位置やキッチンのレイアウトを工夫して、転倒の危険を減らすためのアドバイスをしました。また、安全に料理ができるように、調理器具の使い方を一緒に確認しました。 |
訪問看護では、自宅の環境に合わせてケアを工夫することで、利用者さまが趣味や日課を続けられるよう支援できます。住み慣れた場所で、できることを増やしていく支援は、利用者さまの自立心と生きがいを育むことにつながります。これが訪問看護におけるQOL向上の大きな役割です。
関連記事:訪問看護でできること・できないこと12選!訪問看護の対象者や利用する手順
看護師がQOLを高めるための支援の課題と工夫
患者さまのQOLを高める看護には、いくつかの課題があります。
- 業務の多忙さでQOLを意識する難しさ
- 医師や多職種との連携の重要性
- 患者さまやご家族の希望をどう調整するか
- 実践に活かすための工夫
これらの課題を乗り越えるには、スタッフ同士の連携を密にし、ケアを工夫する必要があります。多職種と協力し、患者さまの想いをチーム全体で共有すれば、より質の高いケアが提供できるようになります。
業務の多忙さでQOLを意識する難しさ
看護師の業務の多忙さは、QOLを意識するうえでの大きな課題です。というのも、日々の業務に追われていると、患者さま一人ひとりとじっくり向き合う時間が取れないためです。
点滴の準備やバイタルサインの測定、巡回など決められた業務に追われていると、患者さまのささいな変化や心の声に気づきにくいかもしれません。
看護師同士で業務を分担したり、情報共有のツールを活用したりすることで、業務の負担を減らし、QOL向上につながるケアができるようになるでしょう。
医師や多職種との連携の重要性
医師や多職種との連携は、QOLを高めるために重要です。患者さまのケアは多岐にわたるため、看護師だけで対応できることには限りがあるからです。
医師やリハビリテーションのスタッフ、栄養士、薬剤師など多職種のスタッフと定期的にカンファレンスを開き、情報共有をおこなうことで、チームで患者さまをサポートできます。
患者さまやご家族の希望をどう調整するか
患者さまとご家族の希望をどう調整するかは、QOL向上における課題の1つです。患者さま本人とご家族の意見が異なる場合、介入が難しくなりがちです。
実際に「家に帰りたい」という患者さまと「自宅での介護は難しい」というご家族の意見が対立することがあります。
看護師は、まず両者の意見にしっかりと耳を傾け、それぞれの想いを理解することが欠かせません。そのうえで、医師や医療ソーシャルワーカーと連携して、訪問看護や介護サービスの利用など、双方にとって最善の解決策を調整する役割を担います。
実践に活かすための工夫
QOL向上に向けた支援を実践に活かすためには、いくつかの工夫が必要です。
患者さまとの会話から趣味や好きなものを把握したり、カンファレンスの場でQOL向上に役立つ情報を積極的に共有したりしましょう。
定期的に研修会に参加して新しい知識や技術を学び、実践することでケアの質を高められます。
患者さまのQOLを高める看護のよくある質問
患者さまのQOLを高める看護について、よくある質問をまとめました。
Q1:患者さまのQOLを高めるための看護師の役割は何ですか?
患者さまのQOLを高めるための看護師の役割は、次のように多岐にわたります。
- 病状の観察
- 治療のサポート
- 精神的に寄り添うこと
- 多職種との連携
これらの役割をとおして、患者さまにとってより良いケアを提供することが大切です。
Q2:看護師が患者さまのQOLを評価する方法はありますか?
患者さまのQOLを評価する方法はあります。厚生労働省から、在宅医療におけるQOL評価表が報告されています。
QOLを評価するための専門的な質問票やスケールを使う方法もありますが、日常の看護のなかでも評価はできるのです。
患者さまがどのような表情や態度で日々を過ごされているか、好きな活動や食事にどれくらい関われているかなど、普段の様子を通じてQOLの手がかりを得ることができます。ただし、外見だけで判断せず、言葉や行動の背景にある気持ちを丁寧にくみ取る姿勢が大切です。
Q3:高齢者のQOLを向上できる看護には何がありますか?
高齢者のQOLを向上させる看護では、身体的ケア・精神的ケア・社会的支援の三本柱が重要です。特に看護の視点からは、次のような実践が効果的です。
- 身体的ケア:低栄養・フレイル・転倒予防への対応
- 精神的ケア:生きがいや充実感を支える関わり
- 社会的ケア:地域や家族等とのつながりと役割を保つ
Q4:看護師が患者さまのQOL向上のケアを続けるためにはどうすべきですか?
看護師が患者さまのQOL向上のケアを続けるためには、スタッフ間で協力し、業務の負担を減らすことが欠かせません。
また、看護師の心身の健康を保つために、休暇をしっかり取ったり、趣味の時間を持ったりすることも重要です。
看護師は患者さまのQOL向上を意識してケアをしよう!
看護師は、病気やケガでつらい思いをしている患者さまのQOLを向上させるために、重要な役割を担っています。
患者さまの想いに寄り添い、苦痛を和らげ、多職種と連携しながら、その人らしい人生を支えることが大切です。日々の業務は多忙ですが、この記事で解説したコツを参考に、できることから実践してみましょう。
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<参考サイト・文献>

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