看護師の退職の実態とは?離職率と5つの退職理由を解説

公開日:2023/12/26 更新日:2025/09/13
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「看護師って離職率が高いって言われるけど本当?」「看護師が退職する理由を知りたい」など、悩みや疑問がある方は多いのではないでしょうか。

看護師は離職率が高いというイメージがあるかもしれません。過酷な労働環境や労働条件などが原因となり、実際に毎年約10万人の看護師が現場を離れる状況です。

では、退職の実態は具体的にどのようになっているのでしょうか。

そこでこの記事では、看護師の退職の実態や離職率、5つの退職理由を解説します。退職を検討している方や退職の実態を詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

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看護師の離職率の実態|正規看護職員は11.3%

まずは、看護師の退職の実態をみていきましょう。

日本看護協会が公開した「2024年病院看護実態調査」によると、2023年における看護師の離職率は下記の通りです。

  • 正規雇用の離職率:11.3%
  • 新卒採用の離職率:8.8%
  • 既卒採用の離職率:16.1%

正規雇用、新卒、既卒の離職率は、いずれも前年度よりも低下しました。なかでも、新卒看護師の離職率が10%を割った点は、注目すべきポイントです。です。

設置主体別の離職率

次に、国公立病院や民間病院など設置主体別の離職率を紹介します。下記の表を参考にしてください。

単位:(%)

設置主体正規雇用の離職率新卒採用の離職率既卒採用の離職率
国立10.27.010.2
公立7.77.79.3
日本赤十字社9.45.75.9
済生会11.49.311.6
厚生農業協同組合連合会10.17.110.5
その他の公的医療機関7.53.05.9
社会保険関係団体10.521.99.9
公益社団法人・公益財団法人13.410.316.7
私立学校法人12.57.814.0
医療法人14.410.818.2
社会福祉法人12.012.120.8
医療生協11.67.314.1
会社9.03.911.7
その他の法人11.410.915.4
個人12.111.824.4
参考:2024年病院看護実態調査|日本看護協会

公的な病院よりも、規模が小さい医療法人や個人経営の病院などの民間病院で離職率が高い傾向です。とくに、個人病院における既卒採用の離職率は24.4%でした。

その理由は、規模が小さい病院では教育体制が整っていなかったり、福利厚生が充実していなかったりするためです。たとえば、教育研修のプログラムや時短制度の導入、院内保育所の整備などが追いついていないことがあります。

出産や子育てを理由に退職せざるを得ないことが、規模の小さい病院の離職率が高くなる要因のひとつと考えられます。

ほかにも、都市部には民間病院の数が多く転職しやすいです。給与や人間関係への不満があれば、退職を選択しやすいのかもしれません。

病床規模ごとの離職率

ここでは、病床規模ごとの看護師の離職率を紹介します。下記の表を参考にしてください。

単位:(%)

病床規模正規雇用の離職率新卒採用の離職率既卒採用の離職率
99床以下12.612.121.8
100~199床12.612.117.6
200~299床12.29.415.6
300~399床11.58.814.5
400~499床10.48.211.5
500床以上10.48.011.8
参考:2024年病院看護実態調査|日本看護協会

病床数が少ないほど、離職率が高くなります。

病床規模が大きい病院は、給与が高水準であり福利厚生が充実しているところが多いです。教育体制も構築されており、フォローする体制があるといえます。

病床の規模が大きくなると、看護師の数も多くなります。休みを取りやすかったり、出産や育児のために休みやすかったりすることも、離職率にかかわる要因と考えられるでしょう。

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地域ごとの離職率

さらに、地域ごとの離職率をみていきましょう。下記の表を参考にしてください。

単位:(%)

都道府県名正規雇用の離職率新卒採用の離職率既卒採用の離職率
北海道11.55.916.6
青森県8.610.716.7
岩手県6.87.819.1
宮城県9.17.112.4
秋田県7.45.07.3
山形県6.86.212.7
福島県9.27.915.4
茨城県10.15.414.5
栃木県10.29.216.6
群馬県8.19.418.2
埼玉県12.48.917.4
千葉県12.68.614.2
東京都14.211.715.6
神奈川県13.69.918.0
新潟県9.78.09.7
富山県7.62.814.4
石川県9.34.814.5
福井県8.24.79.0
山梨県11.37.214.6
長野県8.87.813.1
岐阜県10.37.616.8
静岡県9.66.514.7
愛知県12.18.116.3
三重県10.26.113.8
滋賀県10.05.19.2
京都府12.35.816.6
大阪府13.711.317.7
兵庫県13.19.816.8
奈良県11.87.414.2
和歌山県10.66.616.6
鳥取県8.58.314.6
島根県8.47.012.3
岡山県10.16.414.7
広島県10.39.515.1
山口県9.510.616.6
徳島県7.94.917.7
香川県8.115.214.6
愛媛県11.310.413.8
高知県9.28.313.9
福岡県11.79.417.9
佐賀県8.59.58.3
長崎県9.09.412.5
熊本県10.59.017.5
大分県9.98.622.4
宮崎県9.57.214.7
鹿児島県13.09.122.0
沖縄県12.14.719.3
参考:2024年病院看護実態調査|日本看護協会

全体として、都市部に近い地域ほど離職率が高くなる傾向です。正規雇用において離職率が最も高いのは、東京都の14.2%でした。

都市部であると転職先が多く転職しやすいことや、都市部で経験を積んだ後に地元にUターンする場合などが考えられます。

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看護師が退職する理由のランキング上位

ここでは、看護師の方が退職した理由のラインキング上位を紹介します。

  • 出産や育児などのライフステージの変化
  • 他施設への興味
  • 人間関係への不満
  • 労働環境や条件への不満
  • 責任の重さや医療事故への不安

看護師の方は、利用者さまの生命にかかわる責任ある業務に携わっています。ハードな職場環境であり身体的、精神的な負担がかかります。辞めたいと考える方も多いでしょう。

出産や育児などのライフステージの変化

「看護職員就業状況等実態調査結果|厚生労働省」によると、出産や育児、結婚を理由に退職した看護師の方は、全体の39.8%を占めます。男性の看護師が増えているとはいえ、9割が女性の看護師です。近年、男性の育児休暇が話題となりましたが、取得率は低い現状です。そのため、ライフステージの変化をきっかけに、女性が退職をせざるを得ないケースが多くなっています。

ただし、女性の社会進出への理解から、ライフスタイルに合わせた働き方ができる病院や訪問看護ステーションは増えています。今後、職場がさらに整備されると、退職する看護師が減るのではないかと期待できます。

他施設への興味

「心臓血管外科領域に興味がある」「認定看護師になりたい」など、キャリアアップやスキルアップを目指す場合、転職を目的に退職するケースは多いです。

施設によって、スキルアップをサポートする制度は異なります。学会費を負担してくれるところや特別休暇で研修に参加できるところなどさまざまです。

サポート体制でスキルアップの機会は大きく異なります。そのため、転職先を決めるときに、サポート体制で判断する看護師の方もいます。

人間関係への不満

人間関係に悩み、退職する方は少なくありません。

どの職場でも人間関係に悩むことがあるでしょう。ただし、看護師の方の場合は、利用者さまの生命にかかわる業務であり、ひとつのミスが生命の危機に直結します。

そのため、ミスをしたときに上司や先輩から厳しく指導をされることも少なくありません。誰しも、厳しく指導をされた後は働きにくさを感じるでしょう。

さらに、医師や薬剤師、リハビリスタッフなど多くのスタッフと連携をしながら業務をおこなっています。そこで、人間関係が悪くなると働きにくくなります。

人間関係を一度リセットする目的で退職する方もいます。

労働環境や条件への不満

労働環境や条件への不満から退職する方もいます。

というのも、看護師の方は、働く場所で業務内容や待遇がまったく異なるためです。

具体的には「夜勤がない職場で働きたい」「超過勤務が少ない職場で働きたい」などの理由で退職します。病棟勤務の場合、夜勤は避けて通れません。不規則な勤務で生活リズムが乱れ、体調を崩す原因となります。

現職が最善ではないと判断し、退職する方が一定数いるのかもしれません。

責任の重さや医療事故への不安

看護師の方の業務は、大きな医療事故につながりかねません。

実際に、医療従事者のなかで看護師が医療事故にかかわる機会が多いとされています。たとえば、下記のような事例があります。

  • 薬の投与量の間違い
  • 点滴の投与忘れ
  • 胸腔ドレーンの操作ミス
  • ベッドからの転落

これらのミスは、重点的な経過観察のみで事なきを得るケースもあります。一方で、薬の投与量を間違え血圧が下がったり、脈拍が遅くなったりして、追加の処置が必要となるケースもあります。

「ちょっとしたミスも許されない」との不安から退職する看護師も少なくありません。

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看護師の離職率は高い?|ほかの産業との比較

看護師の方の離職率は、ほかの産業と比較して高くないといえます。

「看護師=離職率が高い」とイメージする方も多いでしょう。

実際は、正規雇用の看護師の離職率は11.3%です。一方で、厚生労働省が公開した「令和6年雇用動向調査結果」によると、全産業の離職率は15.4%です。

看護師業界は常に人手不足といわれています。このイメージが「離職率が高い」と連想させるのかもしれません。

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看護師の退職でメンタルヘルス不調による理由は多いの?

先ほど紹介した「2024年病院看護実態調査」によると、病気により1か月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員がいた病院は70.0%で、そのうちメンタルヘルス不調者がいた病院は80.7%です。

メンタルヘルスに不調をきたすケースは多く、人間関係や責任の重い業務、過酷な労働環境などが原因と考えられます。

一度、メンタルヘルスに不調をきたすと復帰するのが難しくなります。そのため「こころの病気かもしれない」と悩んでいる方は、症状が悪化しないうちに上司に相談したり、医療機関を受診したりしましょう。

退職して、身体とこころを休めることもひとつの手です。

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看護師が「もう辞めたい…」と思ったら。後悔しないための選択肢

もし「もう辞めたい」と感じたら、すぐに辞める決断をする前に、いくつかの選択肢を検討してみましょう。

  • まずは部署異動を相談できないか検討する
  • 休職制度を利用して心身を休める
  • 信頼できる上司や同僚、外部の窓口に相談する

それぞれを詳しく解説します。

まずは看護師長に部署異動を相談できないか検討する

人間関係や特定の業務内容に悩んでいるなら、部署異動で解決できることがあります。

同じ病院内でも、部署が変われば人間関係や業務内容、勤務体系が大きく変わるため、気分を一新できるかもしれません。まずは看護師長に相談してみましょう。

休職制度を利用して心身を休める

心身ともに疲れ切ってしまった場合は、休職制度の利用を検討してみてください。

無理をして働き続けると、体調を崩してしまう可能性があります。休職中は、給料の保障や傷病手当金を受けられる場合もあるので、病院の就業規則を確認してみましょう。

信頼できる上司や同僚、外部の窓口に相談する

1人で悩まず、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。

同僚や先輩、看護師長に相談することで、解決策が見つかることもあります。病院内に相談窓口がなければ、地域の看護協会や産業保健センターなど、外部の専門家を頼るのも手です。

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看護師の円満退職に向けた伝え方とタイミング

退職を決意した場合は、できるだけ円満に退職できるよう、伝え方とタイミングを慎重に選びましょう。

一般的には、退職希望日の2〜3ヶ月前には直属の上司に直接伝えるのがマナーとされています。退職理由を聞かれたら「スキルアップのため」「別の分野に興味がある」といった前向きな理由を伝えるのがおすすめです。

円満退職できるようにするための流れを、下記の記事でも解説しているため、チェックしてみてください。

関連記事:看護師の退職ガイド!円満退職までの流れを8ステップで解説

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看護師の離職率が低い「働きやすい職場」の5つの特徴

長く働き続けられる職場には、共通の特徴があります。

  1. 人間関係が良好で、風通しが良い
  2. 教育・研修制度が充実している
  3. ワークライフバランスを重視している
  4. 適切な人員配置と業務分担がされている
  5. キャリア支援やメンタルヘルスサポートが手厚い

自分に合った転職先を探す際の参考にしてください。

1.人間関係が良好で、風通しが良い

良好な人間関係は、仕事のストレスを大きく軽減してくれます。

スタッフ同士のコミュニケーションが活発で、気軽に意見交換ができる職場は、働きやすいと感じる人が多いです。

日頃から挨拶や感謝の言葉が飛び交い、チームで協力する意識が高い職場は、心理的な負担が少なく、仕事に集中できるでしょう。

2.教育・研修制度が充実している

若手看護師への教育が手厚かったり、中堅看護師向けの専門的な研修が用意されていたりする職場は、キャリアアップを目指しやすい環境です。

新人のOJT(現場での教育)が丁寧におこなわれ、定期的な研修で知識をアップデートできる環境は、不安なくスキルを磨けるため、自信につながります。

3.ワークライフバランスを重視している

休暇が取りやすく、残業が少ない職場は、仕事とプライベートの両立がしやすいため、心身の健康を保ちやすいです。

有給休暇の消化率が高く、希望日に休みが取れる職場は、心身のリフレッシュがしやすく、仕事へのモチベーションも維持しやすいでしょう。

4.適切な人員配置と業務分担がされている

一人ひとりの業務負担が過剰にならないよう、適切な数の看護師が配置され、業務が公平に分担されている職場は、疲弊しにくいです。

また、急な欠員が出ても対応できる柔軟な体制が整っており、特定のスタッフに業務が偏らないように配慮されているため、無理なく働けます。

5.キャリア支援やメンタルヘルスサポートが手厚い

資格取得の支援制度や、専門家によるカウンセリングなど、スタッフのキャリアや心の健康をサポートする体制が整っている職場は、安心して長く働けます。

病院が費用を負担してくれたり、勉強時間を確保してくれたりするなど、スキルアップを積極的に後押ししてくれる職場は、将来の目標が描きやすいでしょう。

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看護師の転職で失敗しない!働きやすい職場を見極める方法

働きやすい職場を見つけるためには、求人票だけでなく、面接や見学で実際に確認することが重要です。

求人票でチェックすべきポイント

求人票では、下記のポイントをチェックしましょう。

  • 「年間休日」「平均残業時間」の具体的な記載
  • 教育体制や福利厚生の詳細
  • 「アットホーム」といったあいまいな表現に注意

これらの情報を正確に把握することは、入職後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔するのを防ぎます。求人票だけではわからない部分は、面接や見学の際に積極的に質問して、職場の実態を確かめるようにしましょう。

面接・見学で必ず確認すべき質問リスト

面接や見学は、その職場で働く自分を具体的にイメージする絶好の機会です。ここでは、求人票だけでは見えない職場のリアルな部分を知るために、聞いておきたい質問をまとめました。

  • 看護師の平均年齢と勤続年数
  • 実際の残業時間と休暇の取得率
  • 教育担当者やプリセプター制度

これらの質問によって、その病院の働きやすさや教育体制が本当はどうなのかが見えてきます。採用担当者の表情や、言葉に詰まる様子なども含めて、総合的に判断することが大切です。入職後の自分の働き方を想像しながら、納得いくまで確認しましょう。

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看護師の退職の実態を知り、自分の環境を見直そう

看護師の方は、ライフステージの変化や労働環境などから退職します。

ただし、ほかの産業と比べて、離職率は高いとはいえません。働く場所が変わると、労働環境や条件、業務内容がまったく違います。

そのため、現職が最善ではないと考えている方は、自分の環境を見直し、転職を検討しましょう。

参考サイト・文献

2024年病院看護実態調査|日本看護協会

看護職員就業状況等実態調査結果|厚生労働省

令和5年雇用動向調査結果の概要|厚生労働省

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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