訪問看護のオンコールとは?ストレスなく過ごす方法や実例も紹介
「訪問看護のオンコールってどのような勤務?」「オンコールはきついって聞いたけど、自分にもできる?」と疑問をもつ看護師の方はいませんか。
訪問看護は、24時間365日対応できる体制をとっているステーションが多いです。これから訪問看護ステーションへの転職を考えている人は、オンコール勤務について気になるところでしょう。
この記事では、訪問看護師のオンコールの実情や、オンコールがきついと言われる理由について解説します。また、オンコール勤務でもストレスなく過ごす方法や、実例も紹介します。
これから、訪問看護に就職したい方や、オンコールをきついと感じている方はぜひ参考にしてください。
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訪問看護のオンコールとは
オンコール勤務は、自宅などで待機しながら連絡を受ける勤務形態です。訪問看護ステーションでは、24時間体制のオンコール体制を整え、電話で利用者さまやご家族からの相談に応じることが一般的です。電話だけでは解決できない場合には、緊急で利用者さまのご自宅に訪問します。
オンコール勤務を行っているステーションは多いですが、回数や手当などはステーションによって異なります。
ここでは、訪問看護におけるオンコールの一般的な回数や手当などについて解説します。
オンコールの回数
オンコール勤務の回数は、ステーションの看護師の人数や体制によって異なります。例えば、スタッフ全員が同じオンコール回数になるようにしているステーションもあれば、管理者だけでオンコールをしているステーションもあります。
全国訪問看護研究事業によると、多くのステーションで1ヶ月あたりオンコールを担当している訪問看護師は4〜6人です。そのため、スタッフが同じ回数でオンコールを担当すると、1人あたり5〜8回/月になります。
家庭の事情で夜間の対応が難しいスタッフは、オンコールを免除されることがあるようです。オンコールの回数はステーションによって全く異なるため、それぞれステーションに確認するとよいでしょう。
オンコールの手当
オンコール手当は、緊急時の連絡がなくても支給される手当です。
全国訪問看護研究事業によると、オンコール手当は1回あたり1,000〜3,000円程度のケースが一般的です。5,000円以上手当がつく場合もあるようです。また、緊急時の訪問を行った場合、訪問時間に応じて時給で計算される手当を別途支給する事業所が多いようです。
オンコールの実態
実際の緊急電話の頻度や内容はその事業所の利用者層によって大きく異なります。ターミナル期の利用者や、医療依存度の高い利用者では身体的な理由で利用者・家族から電話相談が来ることや実際に出動することも多くなります。
一方で、高齢独居の利用者であれば生活上の困りごと、精神疾患の利用者であれば「不安で少し話を聞いて欲しい」と助言や傾聴対応で済むような電話がかかってきたりします。そういうケースでは出動せず電話対応で終わることが多いです。対応に迷うケースでは、その場で主治医に対応を確認することや、連携を組みながら適切に対応していくことがあります。
病院のオンコールとの違い
病院勤務でも、手術室や内視鏡室などで勤務する看護師は、オンコール勤務をしています。しかし、病院と訪問看護のオンコールでは少し違いがあります。
以下に、それぞれの特徴をまとめます。
訪問看護 | 病院 |
基本的に利用者から直接連絡がある連絡があっても訪問するとは限らないオンコールの対象日は24時間365日 | 病院職員から連絡がある連絡があった場合は、必ず出勤するオンコールの対象日は土日祝や夜間のみ |
訪問看護のオンコールがきつい理由
オンコールは、緊急の連絡がいつ入るか分からず、ときに緊急の訪問を求められる勤務です。オンコールは手当がつく勤務ですが、きついと思っている方も少なくないようです。
ここでは、訪問看護のオンコールがきついと言われる理由について解説します。
落ち着かない
いつ連絡があるか分からないため、慣れるまでは気持ちが落ち着きにくいことが、オンコールのつらい点です。
すぐに電話に出られるように、トイレや入浴をするときにも気を張ってしまいます。また、携帯電話の充電が切れていないか、連絡がなくても電話を何度も見てしまう方も多いようです。また、夜間の連絡に備え、緊張をしてゆっくりと眠れない方は、つらいと思われます。
遠出ができない
オンコール勤務時は、外出する場合に遠出は難しいです。ステーションによっては、職場から30分圏内にいることが明確に定められているところもあります。
遠出をしている時に、緊急の電話がかかってきた場合、訪問が必要でも素早い対応ができません。
お酒を飲めない
オンコール待機中はアルコールを飲めません。訪問が必要になった際に、アルコールを飲んでいると正確な判断ができず、ミスにつながり危険です。
また、自動車や自転車を利用するステーションでは、飲酒運転になります。
普段から飲酒習慣のある方は、オンコール待機中にお酒を飲めないことをつらいと思うでしょう。
対応できるか不安
オンコールは、直接利用者さまから連絡を受けて、自分のアセスメント力で対応しなければいけません。そのため、病院での臨床経験が多い方でも、訪問看護の経験が浅いと不安に思うようです。
訪問看護師にどのような連絡がきて、どう対応するか分からないと、オンコールに対しストレスを感じてしまうでしょう。
訪問看護のオンコールをストレスなく過ごす方法
訪問看護ステーションで働くと、オンコールに悩みをもつ看護師は少なくありません。しかし、多くの訪問看護師の方はオンコールに対応しながらも働き続けられています。
それは、オンコール勤務であってもストレスなく過ごす方法を知っているからです。
ここでは、オンコールをストレスなく過ごす方法について、4つ紹介します。
- 自宅でゆっくり過ごす
- 緊急対応できるスキルや知識をもつ
- 家族に協力を得る
- 利用者さまやご家族の自律を促す
それぞれ解説していきます。
自宅でゆっくり過ごす
できる限り自宅でゆっくり過ごすことも、オンコールによるストレスを軽減させる方法の1つです。出かけ先でオンコールの連絡があると、利用者さまの話をゆっくり聞けず、対応が遅くなる場合があります。
そのため、「いつ連絡があってもすぐに対応できるから大丈夫」と気持ちを落ち着かせて、自宅でゆっくり過ごすことをおすすめします。あまり気を張り詰めないようにするとよいのです。
また、病棟の夜勤業務では病院の仮眠室で休憩を取りますが、オンコール勤務では自宅の慣れた環境で眠ることができるので、体力が回復しやすいと感じる訪問看護師の方は多くいるようです。
緊急対応できるスキルや知識をもつ
初めてオンコール勤務をする場合、「緊急訪問ではどのような対応や処置をするの?」「利用者さまから連絡があったら、まずはどのような対応をすればよい?」など、多くの人が不安を抱くことがあります。
オンコール勤務を始めたばかりの方は、経験者である同僚や先輩に相談し、アドバイスを受けるとよいでしょう。これまでのオンコールの事例や対応方法を聞いておくと、安心感が得られます。また、自分のスキルや知識で不足している部分が分かれば、学習しておけます。
家族に協力を得る
自分の家族に協力を得ることも、オンコール時のストレスを軽減する方法です。
例えば、小さな子どもがいるスタッフの場合、オンコールの日に預け先がないとオンコール時にすぐに利用者さまのもとに駆けつけられません。「呼ばれたとき、子どもを留守番させられないけどどうしよう」と悩むでしょう。
オンコール待機の日には、家族に協力を得て、緊急訪問があった場合にもすぐに対応できる体制をとっておくと、安心できます。
利用者や家族の自律を促す
利用者さまやご家族の自律を促すことは、オンコール回数を減らすことにつながります。
例えば、「ストーマ装具が外れて衣服が汚れてしまった」と利用者さまから連絡を受けることがあります。日中の訪問時に、ストーマ装具の交換方法や漏れたときの対処法を伝えておくと、利用者さまやご家族だけで対応できるようになります。
「利用者さまやご家族の能力を最大限に活かす」ことも、訪問看護師の役割です。利用者さまやご家族の自律はオンコール回数の軽減にもつながるため、日中の関わり方を十分に行いましょう。
実際のオンコール事例
ここまで、オンコールについて詳しく解説してきました
実際にオンコール勤務中に連絡を受けた実例について紹介します。
ケース①Aさん/80代/男性
ストーマ造設をし、退院したばかりのAさん。退院直後から、ストーマ装具交換の自己管理を目的として、訪問看護を利用されていました。
夜間にAさんから連絡があり「便が漏れており、皮膚も赤くなっているため自分で上手く交換できない」とのことでした。
そこで、訪問看護師は緊急でAさんの自宅を訪問し、ストーマ周囲の皮膚を観察と、ストーマ装具の交換をしました。ストーマ周囲のスキントラブルについて、主治医より事前指示がなかったため、明日になったら病院を受診するように促しました。
ケース②Bさん/90代/女性
精神疾患のあるBさん。週に3回、服薬管理と精神状態を観察するために、訪問看護が導入されていました。
ある日の早朝、Bさん本人から連絡があり「不安、怖い、どうしたらよいか分からない」とのこと。これまでも、Bさんから同じような連絡があり、いつも1時間ほど話を聞くと落ち着くことを知っていたため、訪問はせずに傾聴していました。
Bさんが落ち着いたところで、通話を終了しました。
ケース③Cさん/10代/男性
気管切開があり、人工呼吸器を利用しているCさん。日中に訪問した時には呼吸状態に変化はなかったのですが、夜間に酸素飽和度が88%まで下がっていると、ご家族から連絡がありました。
すぐに訪問することを伝え、訪問看護師が到着するまでの間に、吸引を行うようにご家族に伝えました。
訪問してCさんの状態を確認すると、発熱があり、痰も多く、吸引をしても酸素飽和度は上がりにくいため、救急車を要請しました。救急車が到着するまでは、利用者さまのケアだけでなく、不安を抱いているご家族へのケアも行います。
まとめ
記事では、訪問看護師のオンコール勤務の実状や、きついといわれる理由、ストレスなく過ごす方法や、事例について紹介しました。
多くの訪問看護ステーションは24時間365日対応の体制をとっているため、オンコール勤務を採用しています。回数や手当は、ステーションによって異なるため、訪問看護ステーションに就職を考えている方は、事前に確認するとよいでしょう。
オンコール勤務を始めたばかりの方は、利用者さまからの連絡に悩むこともあると思いますが、いくつもの事例や先輩看護師への相談を通して、対応できるようになっていくでしょう。
また、オンコール勤務をすることで、利用者さまとご家族の24時間の過ごし方を理解でき、看護計画をブラッシュアップすることも可能になります。
これからオンコール勤務を始める方や、始めたばかりの方はぜひこの記事を参考にしてみてください。
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