看護師の目標管理シートのテンプレート|経験年数と部署別の例文を紹介

「目標管理シートの記入、毎年時間がかかる…」「評価しやすい目標ってどのようなもの?」
看護師の目標管理シートは、自分の成長を見える化できる重要なものです。上司からの評価やキャリアアップにもつながるため、具体的に書くことが求められます。
ただし「書き方がいまいちわからない」「毎年同じようなことしか書けない」といった悩みを抱える看護師は少なくありません。
この記事では、看護師の目標管理シートにおける基本的な考え方から具体的なテンプレート、評価されやすい目標の書き方のコツまで詳しく解説します。効果的な目標管理で、自分に合ったキャリアを実現させましょう。
看護師の目標作成テンプレート
目標を立てるのが苦手な看護師に向けて、自分に合った目標を作成できる便利なテンプレートをご紹介します。
【目標作成テンプレート】
「課題」を解決するため「具体的な行動」をおこない「達成したい状態」を目指す |
この「」に自分の考えを当てはめると、ほかの人にも伝わりやすい目標が完成します。
【例】
「夜勤中の急変対応や判断への不安」を解決するため「急変時の報告・連絡・対応フローの復習と月2回のシミュレーション」をおこない「3か月以内に急変時の初期対応を自立可能と判断される」ことを目指す |
このテンプレートは、幅広いキャリアの看護師に当てはめることが可能です。ぜひ活用してみてください。
【経験年数別】看護師の目標管理シートのテンプレート
目標を書こうと思っても「何を目標にすれば良いかわからない」という悩みを抱える方は少なくありません。ここからは、看護師の経験年数に合わせた目標設定のテンプレートを紹介します。
- 新人・若手の看護師向け
- 中堅の看護師向け
- リーダー看護師向け
- 管理職向け
それぞれの目標管理シートのテンプレートを確認していきましょう。
新人・若手の看護師向け
年間目標 | 安全な看護技術を身につけ、日々の業務を自立しておこなえるようになる |
行動目標 | ・毎月1つ以上の看護技術を習得し、チェックリストで進捗を管理する ・指導者や先輩から週1回フィードバックを受け、記録に残す |
評価指標 | ・習得した看護技術の数と達成度 ・先輩や指導者からの評価内容 |
看護師としての基礎を固めることが重要です。知識や技術の習得、報告・連絡・相談のタイミング、患者さまとの接し方など現場に慣れることを意識した目標設定が効果的です。
関連記事:看護師2年目の6つの課題!振り返りやすい目標設定のコツと目標例を解説
中堅の看護師向け
年間目標 | チームの一員として役割を理解し、後輩育成や業務改善に積極的にかかわる |
行動目標 | ・月1回、後輩看護師に対して技術指導や振り返りをおこなう ・業務改善案を年3回チーム内に提案する |
評価指標 | ・指導した後輩の技術評価と満足度 ・提案した業務改善内容とその採用数 |
基礎が身についてきた中堅看護師は、後輩の指導やリーダーとメンバーの橋渡し役を担う段階です。主体性や協調性を意識した目標が求められるでしょう。
リーダー看護師向け
年間目標 | リーダーとしての役割を果たし、働きやすい職場環境を作る |
行動目標 | ・毎月のリーダー会議に参加し、1回以上提案をする ・新人看護師へのメンタルフォローを月1回実施し、記録を残す |
評価指標 | ・会議での提案数と採用数 ・新人フォローに関するアンケート結果や満足度 |
リーダー看護師は現場の調整役として、チームをまとめ、問題を解決する力が期待されます。多職種との連携や新人看護師のフォロー、チーム全体への貢献がキーワードです。
管理職向け
年間目標 | 安全で効率的に部署を運営し、スタッフの働きやすさとケアの質を高める |
行動目標 | ・半年に1回のスタッフ面談を継続し、働き方や悩みをヒアリング ・インシデント分析をもとに、改善策を年4回以上実施 |
評価指標 | ・面談の実施数とフィードバック記録 ・インシデント件数の推移と改善結果 |
管理職は部署の運営や人材育成、経営意識など多角的な視点で目標を立てることが求められます。ケアの質だけでなく、組織全体の成果や職場環境の改善といった貢献度が評価対象となります。
関連記事:主任看護師の目標管理シートの書き方と例文4つ!看護スタッフとの違い
【部署別】看護師の目標管理シートのテンプレート
看護師の配属部署によっても、求められる看護の質や内容は異なります。
- 急性期病棟
- 慢性期病棟
- 病院の外来
- 訪問看護ステーション
- 介護施設
それぞれの業務の特性を含めた目標を設定し、効果的な成長と評価につなげましょう。
急性期病棟
年間目標 | 急変対応や術後管理を的確におこない、患者さまの早期回復に貢献する |
行動目標 | ・月1回研修参加や書籍でBLS/ACLSの知識・技術を継続的に学ぶ ・急変時のロールプレイをチームで月1回実施 |
評価指標 | ・急変時の初動対応に対する上司や先輩からのフィードバック ・ロールプレイへの参加回数と自己評価 |
急性期病棟では、迅速な判断力と急変対応能力が求められます。日々の観察力や術後管理の質の向上を意識しましょう。
慢性期病棟
年間目標 | 長期入院中の患者さまとの信頼関係を築き、個別性のあるケアを提供する |
行動目標 | ・患者さまとのかかわりを毎日5分間記録する ・個別性のある看護計画を月1回見直す |
評価指標 | ・看護記録の内容(患者反応の記載や振り返り) ・看護計画の見直し頻度と実施内容 |
慢性期では、長期療養中の患者さまに対し、信頼関係の構築や生活支援の視点が重要です。継続的な観察と個別ケアが求められます。
病院の外来
年間目標 | 外来患者さまのスムーズな診療を支え、安全かつ迅速に対応する |
行動目標 | ・診療補助のマニュアルを見直し、月1回改善案を提案する・待ち時間の短縮を意識した声かけ・誘導を実施する |
評価指標 | ・改善提案の回数と採用率 ・患者アンケートの結果(待ち時間・対応満足度) |
外来業務はスピードと正確性が求められ、患者さま対応で良い第一印象を与えることが重要です。目標設定には、診療補助や環境整備も関連づけてみてください。
訪問看護ステーション
年間目標 | 利用者さまの生活背景に寄り添い、安全な在宅療養支援をおこなう |
行動目標 | ・緊急対応事例を月1件ピックアップし、振り返りを実施 ・医師やケアマネとの連携強化を目的に、月2回の情報共有を実施 |
評価指標 | ・緊急対応へのチーム内評価 ・多職種連携の頻度とスムーズさ |
訪問看護では、個人宅という生活の場におけるケアの柔軟性が求められます。安全への配慮と多職種との連携がポイントです。
介護施設
年間目標 | 利用者さまの生活の質を高めるケアを実践する |
行動目標 | ・年2回の看取りケア研修を受講し、対応マニュアルを見直す ・週1回介護職と情報交換し、ケアの一貫性を保つ |
評価指標 | ・研修受講の有無と学びの共有 ・チーム内連携の頻度とケアの統一性 |
介護施設では、日常生活のサポートを通じて利用者さまの生活の質向上に貢献することが求められます。観察力と寄り添うかかわりが大切です。
看護師の目標管理シートNG目標の具体例
ここでは、よくあるNG目標と、それを具体的で評価可能な内容に変えた目標をセットで紹介します。
NG目標 | NGの理由 | 修正後のOK目標 |
知識を深めたい | 何の知識を深めたいのかがはっきりせず評価が難しい | 糖尿病とケアの知識を深めるために、書籍を月に2冊読み月1回チーム内で共有する |
業務を効率化する | どの業務を効率化するのかが明らかではない | 午前中にバイタル測定を終えるため、タイムスケジュールを見直し、週1回振り返る |
このように、目標は「具体的な対象・行動・期間・評価指標」まで落とし込むことが重要です。
看護師の評価される目標の立て方
「自分に合った目標を立てたい」「評価される目標にしたい」と考えている看護師もいるでしょう。ここからは、評価されやすく、成長にもつながる目標を立てるためのステップを紹介します。
- この1年の「できたこと」「できなかったこと」を簡単に書き出す
- 「SMARTの法則」で具体的な目標に変換する
- 「自己の成長」「後輩の育成」「部署への貢献」の3つの視点で整理する
- 具体的な行動計画と評価指標まで落とし込む
それぞれのステップを具体的に解説します。
1.この1年の「できたこと」「できなかったこと」を簡単に書き出す
目標を立てる前に、自分の1年を振り返ってみてください。A4用紙1枚に「できたこと」「できなかったこと」「印象に残ったこと」などを思いつくままに書いてみるのがおすすめです。
【例】
できたこと | できなかったこと |
・処置の介助がひとりでできた ・新人指導でうまく声をかけられた ・点滴ルート確保に自信がついた | ・急変時に行動が遅れてしまった ・アセスメントに自信が持てない ・優先順位を考えた行動が難しい |
このように1年を振り返り、看護スキルの獲得状況を明らかにすることが、自分に合った目標設定につながります。
2.「SMARTの法則」で具体的な目標に変換する
評価しやすく行動にうつしやすい目標にするためには「SMARTの法則」を意識してみるのが効果的です。ステップ1で書き出したことを「SMARTの法則」に当てはめて考えてみましょう。
【SMARTの法則】
要素 | 意味 | 目標例での活用 |
Specific(具体的に) | 目標を明確にする | 点滴ルートの確保を実施できる |
Measurable(測定可能に) | 達成度が評価できるように数値や行動で示す | 1か月以内に5例の点滴ルート確保を先輩の見守りなしでおこなう |
Achievable(達成可能に) | 自分のスキルや状況に合った現実的な目標にする | 週1回先輩の技術チェックを受ける |
Relevant(関連性があるか) | 業務・部署・役割と関連させる | 外科病棟で必要な手術前後の患者さまの観察とケアを習得する |
Time-bound(期限を区切る) | いつまでに達成するかを示す | 3か月以内に夜勤業務を独り立ちできるようにする |
このように「SMARTの法則」に沿って記載すると、具体的な行動につながる目標になります。上司からの評価や自分の成長の実感にもつながりやすいです。
3.「自己の成長」「後輩の育成」「部署への貢献」の3つの視点で整理する
看護師の目標設定では、自己の成長だけでなく、周囲への貢献も意識すると、より視点の幅広い目標を立てることが可能です。目標の方向性に迷ったら、次のポイントから考えてみてください。
- 自己成長:看護技術や知識の習得やスキルアップ
- 後輩育成:プリセプターや教育担当者としての役割
- 部署への貢献:業務改善やチームワーク、委員会活動への貢献
個人目標の達成とともに、部署目標や自身の役割を理解し課題に取り組む姿勢は、看護師としての主体性を表すことにもつながります。
4.具体的な行動計画と評価指標を明確にする
目標を設定する際は「何を達成したいか」だけでなく「どう行動するか(行動計画)」と「どのように成果を判断するか(評価指標)」まではっきりとすることが重要です。
これにより、日々の行動がブレにくくなり、振り返りや上司の評価もしやすくなります。たとえば「月2回の面談を実施し、フィードバック内容を記録する」といったように、行動・頻度・結果の測定方法を具体的に書くことを意識しましょう。
看護師の目標管理シートについてのよくある質問
看護師の目標管理シートについてよくある質問をまとめました。
Q1:目標管理シートには何を書くべきですか?
目標管理シートには「この1年間で何を達成したいのか」「どのような行動をとるのか」「どうやって評価するのか」の3点を記入するのが基本です。次の内容を盛り込むと評価しやすくなります。
- 年間を通して目指す看護師像(例:自立して行動できる/後輩を支援できる)
- 業務で意識的に取り組むこと(例:報告・連絡・相談の徹底、疾患理解の深化)
- 定期的にチェック可能な評価指標(例:指導件数、学習内容、改善提案の数)
具体的な行動や期間を明らかにすると、自己評価や上司からのフィードバックにもつながりやすいです。
Q2:目標管理シートでNGワードはありますか?
目標管理シートでは以下のような「NGワード」が含まれていると、評価が難しくなる傾向があります。
- 「頑張る」「努力する」など、曖昧で測定できない表現
- 「〇〇したい」「〇〇できたら良い」などの希望的観測
- 「できるようになる」だけで、手段や期限がないもの
「看護技術を向上させたい」という目標では、何をもって「向上した」と判断できるのかはっきりしません。
具体例としては「看護技術(採血や吸引など)を選び、練習・実践し、チェックリストを用いて習得状況を確認する」というように、行動に落とし込むと評価しやすくなります。
看護師の目標管理シートでキャリアをデザインしよう
目標管理シートは、看護師としてのキャリアを描き、自分を成長させるための設計図のようなものです。目標設定の仕方や書き方の工夫で、日々の行動がはっきりして、モチベーションや成果に差がでます。
大切なのは、目標管理を「自分ごと」としてとらえることです。そのために、看護師の経験年数や配属部署に合わせて、柔軟に目標を設定しましょう。目標管理シートをきっかけに、自分の強みや志向にあったキャリアを見つけてください。
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<参考文献>

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