看護師も健康診断は義務?受ける3つのタイミングと見るべき兆候

「看護師って健康診断を受けないといけないの?」「患者さまの健康ばかり考え、自分のことは後回しになっている気がする」
看護師も健康診断を受けることが法律で義務づけられています。とくに、就職時、年に1回の定期健診、夜勤をする場合は受診が必要です。
患者さまの健康と命を守る仕事だからこそ、看護師自身の健康は重要であり、体調不良で安全なケアが提供できなくなるという事態は避ける必要があります。
この記事では、不規則勤務で働く看護師に向けて、健康診断の必要性や受けるタイミング、見ておくべき検査項目などを解説します。自分の健康に不安を抱える看護師は、ぜひ最後までお読みください。
看護師に健康診断が重要な理由
看護師には、健康診断が重要とされる理由があります。ここでは、看護師特有の健康リスクと健康管理に取り組む必要性を解説します。
不規則勤務による身体への影響が大きくなりがちだから
看護師は「日勤」「準夜」「深夜」といった交代制の勤務が基本です。
夜勤や不規則なシフトは、ホルモンバランスや自律神経の乱れを引き起こしやすく、睡眠の質の低下や免疫機能の低下につながります。また「いつものことだから」と軽視してしまいがちな症状が、実は重要な病気のサインであることも珍しくありません。
定期的な健康診断でチェックして、自覚のない身体の変化を早く見つけて対処することが大切です。
看護師は「健康リスクのある仕事」だから
看護師の仕事は、感染症やストレス、身体的な負担など、さまざまな健康リスクが潜んでいます。
考えられるリスク | 詳しい状況 |
感染症にさらされるリスク | ・発熱患者さまや感染症患者さまとの接触 ・処置中の針刺し事故 ・飛沫感染のリスク |
強い精神的なプレッシャー | ・急変対応での緊張状態 ・患者さま、ご家族対応でのストレス ・責任の重さからくる心理的な負担 |
身体の酷使 | ・長時間の立ち仕事 ・患者さまの体位変換や移乗介助 ・重い物品の運搬 |
こうした負担が積み重なると、気づかないうちに体調を崩してしまうことがあります。とくに、慢性的なストレスは血圧上昇や血糖値の異常、免疫機能の低下など、さまざまな形で身体に影響を与える可能性があります。
健康診断は「自分の身体の状態を知り、問題を早く見つけるための機会」と考えると、その重要性が実感できるはずです。
看護師が受けるべき健康診断と3つのタイミング
看護師として働いていると、自分の健康をつい後回しにしてしまいがちです。しかし、実は法律でも定められているように、看護師にも定期的な健康診断が義務づけられています。
- 就職・転職するときの健康診断
- 年1回の定期健康診断
- 6ヶ月に1回の特定業務従事者健康診断
看護師が受けるべきおもな健康診断の種類と、そのタイミングについて見ていきましょう。
1.就職・転職するときの健康診断
労働安全衛生法第六十六条、労働安全衛生規則第四十三条にもとづき、病院や施設は労働者に対して、雇い入れる際に健康診断を実施する義務があります。対象となるのは、次のタイミングです。
- 新卒で就職するとき
- 転職で新しい職場に入るとき
- パート・契約社員で、雇用契約を結ぶとき(無期契約もしくは契約期間が1年以上の有期契約で、正社員の週所定労働時間の4分の3以上働く従業員が義務となる)
健康診断の内容は、身長・体重・視力・聴力・血液検査・胸部X線・尿検査・心電図などの13項目で、労働安全衛生規則第四十三条で定められています。
また、看護師免許の申請時に必要な診断書も、この「雇入れ時健診」の結果をもとに作成されることがあります。新しい職場での勤務に支障がないかを確認するために重要です。
2.年1回の定期健康診断
常勤の看護師は、病気の早期発見と健康維持を目的に、年に1回の定期健康診断を受けることが労働安全衛生法第六十六条、労働安全衛生規則第四十四条で義務づけられています。
フルタイムの看護師や、週の所定労働時間が常勤者の4分の3以上であるパート看護師も対象です。
1年に1回、健康診断をおこなうことで身体の変化がわかり、生活習慣病や職業性の病気の兆候を見逃さないようにします。職場で健康診断が実施されない場合は、自分で病院や健診センターを予約して受診しましょう。
3.6ヶ月に1回の特定業務従事者健康診断
1ヶ月に平均4回以上の夜勤がある看護師は、労働安全衛生法第六十六条の二、労働安全衛生規則第五十条の二にもとづき、6ヶ月に1回(年2回)の健康診断が推奨されています。
努力義務ではありますが、夜勤を規定の回数おこなう看護師は受けておくことをおすすめします。その理由は、夜勤は、睡眠リズムの乱れや不規則な食事時間など、身体に負担をかける可能性があるからです。
これらの身体の変化は短期間で健康診断の結果にあらわれる場合があるため、定期的な健康チェックが不可欠です。
看護師が健康診断で見逃したくない項目と兆候
夜勤や不規則勤務で体調を崩しやすい看護師にとっては、一般的な健康診断項目のなかでも、注意深くチェックしたい項目があります。ここでは、身体のサインとしてあらわれやすい兆候に関連する検査を解説します。
- 血液検査|貧血や血糖の異常による疲れ・だるさの可能性
- 血圧・心電図|自律神経の乱れや高血圧
- 体重・腹囲|生活習慣病の予兆
これらの項目をしっかり確認することで、日々の疲れや不調がどこから来ているのか、その具体的な原因がわかる可能性があります。自身の健康と向き合い、長く働き続けるためにも、ぜひ健康診断を有効活用してください。
血液検査|貧血や血糖値の異常による疲れ・だるさの可能性
「なんとなく身体が重い」「疲れやすい」と感じているなら、血液検査の数値にヒントが隠れているかもしれません。
実は、貧血や血糖値の異常が原因だったという場合もあります。また、肝機能の低下は慢性的な疲れの原因にもなります。健康診断での採血で、これらの項目を定期的にチェックすることで早期の対策が可能です。
血圧・心電図|自律神経の乱れや高血圧
頭痛や動悸、めまいを感じた経験がある看護師は、健康診断での血圧や心電図のチェックが重要です。
生活リズムの乱れは自律神経に影響しやすく、健康診断で高血圧や不整脈などが見つかることも珍しくありません。
とくに、看護師の場合は、夜勤にともなう生活習慣の乱れや精神的なストレスの影響で、血圧や心拍数に変化があらわれる可能性もあるため、これらの数値を確認しましょう。
体重・腹囲|生活習慣病の予兆
勤務の忙しさから食生活が乱れがちな看護師にとって、生活習慣病のリスク管理も重要です。体重や腹囲の変化が、メタボリックシンドロームのリスクの指標にもなります。
夜勤をする看護師は、食事の時間が不規則になったり、運動する時間がなかったりすることから、内臓脂肪が溜まりやすい傾向です。「最近少し太ったかも?」と感じたら、身体が変化している可能性があります。
看護師が健康診断の結果を受け取ったらすべきこと
健康診断の結果をどう受け止め、どのように行動に移すかが健康維持には不可欠です。ここでは、健康診断の結果を受け取ったあとの具体的な行動について解説します。
「要精密検査」はすぐに医療機関を受診する
「要精密検査」は、専門医による詳しい検査が必要というサインであり、放置すれば生活習慣病や肝機能障害などの病気が悪化するリスクがあります。
勤務先によっては再検査費用に補助制度がある場合や、再検査結果の診断書提出が求められるケースもあります。忙しくて時間がないという理由で受診を先延ばしにせずに、早めに医療機関に相談しましょう。
健康診断の結果を活かして体調と向き合う
健康診断の結果は、数値だけでなく、日頃の自分の体調と照らし合わせて考えることが重要です。
看護師はつい「私はまだ大丈夫」と自分の健康を後回しにしがちですが、次のような身体の不調が、健康診断の結果となる可能性があります。
看護師に起きやすい不調 | 健康診断の結果の一例 |
疲れがとれない | ・貧血 ・肝臓の機能低下 ・血糖の異常 |
むくみがある・体重が増えた | ・腎機能の低下 |
頭痛が増えた | ・血圧上昇 |
動悸や息切れがある | ・心電図の異常 ・貧血 |
これらの症状を改善できる健康問題として捉え、食事や睡眠、働き方などを見直すきっかけにすることが大切です。
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看護師が健康を維持するためにできること
忙しい看護師でも、自分の健康を守るためにできることはたくさんあります。現実的で続けられる方法を見つけることが大切です。ここでは、日々の生活に取り入れられる健康管理のポイントを解説します。
生活リズムを意識する
交代制勤務の看護師でも、できる限り生活リズムを整えることが大切です。
とくに、重要なのが夜勤明けの過ごし方で、次の4つを参考に生活を整えると、体内時計の調整やホルモンバランスの安定につながる可能性があります。
- 夜勤明けは寝る前に軽く消化の良いものを摂取する
- 日中は遮光カーテンや耳栓を使って質の良い睡眠を確保する
- 起床後は日光を浴びて体内時計をリセットする
- カフェインの摂取は夜勤前に限定し、夜勤明けは避ける
できることから少しずつ取り入れられると、不規則勤務による身体への負担が軽減するため、健康診断の結果の改善につながるでしょう。下記の記事では、看護師の夜勤明けの過ごし方について詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。
関連記事:看護師の夜勤明けの過ごし方8つ!疲労回復の方法やあるあるを紹介
心のストレスも見逃さない
心の不調は、自律神経や消化器系の不調としてあらわれることがあります。
- 頭痛やめまいが増えた
- 食欲がない・逆に食べすぎる
- 理由もなく焦ることが多い
こうした症状は、心身のバランスが崩れているサインかもしれません。ストレスを感じたときは、同僚と話したり、軽い運動をしたりなど、早めのセルフケアを心がけましょう。
看護師の健康診断でよくある質問
看護師の健康診断について、よくある疑問や質問をまとめました。自分の健康と向き合うヒントになれたら幸いです。
Q1:看護師の健康診断は自分の病院で受けますか?それとも健診センターですか?
多くの場合、勤務先の病院で健康診断を受けられます。
ただし、非常勤の看護師や派遣スタッフの場合は、個人で別の医療機関を受診しなければならないこともあります。
総合病院や内科のクリニック、健診専門のクリニックなどで健康診断を受けられる可能性があるため、受診前に問い合わせて、健康診断に対応しているか確認してみましょう。
また、人間ドックや検診センターを利用して、より詳しい検査を受けることもおすすめです。
Q2:健康診断を受けないと何かデメリットはありますか?
病気の早期発見の機会を逃すことが、健康診断を受けないデメリットです。
また、定期健康診断は、労働安全衛生法・労働安全衛生規則にもとづく病院側の義務であり、受診しない場合は病院側に罰則が課せられるかもしれません。
看護師の健康診断は法的義務!「私の健康、大丈夫かな」と思った今が見直しどき
看護師の健康診断は、法的義務であると同時に、看護師自身と患者さまの安全を守るための重要な制度です。
倦怠感や原因がはっきりしない不調を感じているなら、それは身体からの重要なサインかもしれません。「私の健康は大丈夫かな?」と不安に感じたときが、健康管理を見直すのに適したタイミングです。
忙しい毎日のなかでも、自分の身体と心の声に耳を傾け、自身の健康を守っていきましょう。
<参考サイト・文献>
労働安全衛生規則 | e-Gov 法令検索
Relationship between night shift work, eating habits and BMI among nurses in Lebanon|PMC

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