訪問看護師の個人目標の具体例4つ!新人・中堅・ベテランの違いと立て方のコツ

公開日:2025/08/04 更新日:2025/08/04
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訪問看護師の個人目標は、自分の業務の方向性やキャリアを明らかにするための大切な指針です。

訪問看護では1人で判断し、行動する場面が多く「どのような訪問看護師になりたいか」を考える必要があります。

しかし、厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、訪問看護師は全体の5.1%と少なく、キャリアパスについて相談できる相手がいないため、目標設定に悩む方も少なくありません。

この記事では、新人から管理者までの各段階に応じた個人目標の具体例や目標設定のコツを解説します。経験や立場に適した目標を見つけ、日々の業務や成長へのきっかけにしましょう。

訪問看護師の個人目標の具体例4つ

訪問看護師の個人目標は、経験年数や役職によって変わります。どの段階にいても、自分に合った目標を見つけることで、訪問看護師としての充実したキャリアを築けるでしょう。

  • 具体例1:新人の訪問看護師の個人目標
  • 具体例2:中堅の訪問看護師の個人目標
  • 具体例3:ベテランの訪問看護師の個人目標
  • 具体例4:訪問看護の管理者の個人目標

目標を立てる際は、具体的で達成可能な内容にすることがポイントです。ここでは、キャリア段階ごとの目標の具体例と、目標設定のポイントを解説します。

具体例1:新人の訪問看護師の個人目標

<具体例>
・訪問準備(持ち物・移動計画)を前日に確認しスムーズな訪問を心がける
・バイタルサインの測定から記録までを正確におこなえるようにする
・不安を抱える利用者さまに対して、傾聴と共感を意識したかかわりを実践する
・日々の訪問で気づいたことをチームLINEや記録で適切に共有する

新人の訪問看護師は、基本的な業務スキルを身につけ、1人で訪問できるようになることが優先されます。まずは訪問前日の準備チェックや、バイタルサインの測定の練習、利用者さまとの自然な会話などができるようになることを心がけましょう。

具体例2:中堅の訪問看護師の個人目標

<具体例>
・利用者さまとそのご家族に対して、不安をやわらげるような声かけや説明を実践する
・記録業務を訪問終了後30分以内で終えられるようにする
・自分が対応したケースをもとに、後輩スタッフに共有・アドバイスする機会をもつ
・3年後の理想の働き方(勤務日数、専門分野など)を明らかにし、そのために必要なスキルを1つ以上習得する

中堅の訪問看護師は、業務をおこないながら専門性と効率性を追求する段階で、将来像を考え始める時期でもあります。ケアの質向上や業務効率化、後輩指導など個人のスキルとチームへの貢献を意識して、将来的な働き方を考える目標を設定しましょう。

具体例3:ベテランの訪問看護師の個人目標

<具体例>
・利用者さまの状態に合わせた褥瘡予防のケアを考え、先輩や上司に提案できるようにする
・月の残業時間を10時間以内におさえ、効率的な訪問スケジュールを確立する
・新人への指導と自身の業務の両立ができる時間配分を確立する
・カンファレンスや担当者会議での話し合いをスムーズに進められるよう、事前に情報をまとめ、他職種とも連携して意見交換をおこなう

ベテランの訪問看護師には、自分の知識や経験を活かしてケアの内容を提案する、後輩を指導する、他職種とスムーズに連携するといったスキルが求められます。

また、家庭や個人の事情に合わせて働き方を見直すのも必要です。具体例のように「残業時間は10時間以内」といった数値で測れる内容にすることが、目標設定のポイントです。

具体例4:訪問看護の管理者の個人目標

<具体例>
・年間の教育計画を立て、スタッフの目標と連動できる体制にする
・管理者会議や研修先で他事業所の成功事例を取り入れ、現場に落とし込む
・チーム内の業務バランスを調整し、スタッフの負担が偏らないように配慮する
・事業所のビジョンを明文化し、スタッフと共有・実践できるようにする

訪問看護ステーションの管理者は、利用者さまのケアだけでなく、事業所の運営や方針決定、スタッフの成長支援などその役割は多岐にわたります。そのため、スタッフの教育体制を整えたり、ほかの事業所からの成功事例を取り入れたりして、組織全体のレベルアップを目指した目標を立てましょう。

訪問看護師の個人目標の立て方と目標管理シートを書くコツ

訪問看護師が個人目標を設定するときは、達成できたかどうかが評価しやすいものにすることが大切です。「頑張りたい」と漠然と思うだけでは、具体的な行動につながらず、目標達成は難しくなります。

  • SMARTの法則で考える
  • 自分の成長や理想像を思い描いて書く
  • 完璧を求めすぎず小さな前進を大切にする

多くの事業所では目標管理シートを使って個人目標を記録し、定期的に振り返っています。目標管理シートを書くコツを押さえて、成長につながる目標を立てましょう。

SMARTの法則で考える

個人目標を立てるときは「SMART」の法則を活用しましょう。

  • Specific(具体的に)
  • Measurable(測定可能に)
  • Achievable(達成可能な)
  • Relevant(職務に関連する)
  • Time-bound(期限を決める)

「資格取得を目指して研修を受ける」ではなく「3ヶ月以内に褥瘡ケアの研修を受け、1人で処置できるようになる」といった具体的な目標がおすすめです。

誰が読んでも同じように理解できる表現にすることで、上司との面談でも具体的な話し合いができるようになります。達成に向けた細かい行動計画が立てられ、評価しやすいでしょう。

自分の成長や理想像を思い描いて書く

訪問看護師で目標を設定することは「こうなりたい自分」に近づくためのステップです。

訪問看護師としてどのようなスキルを磨きたいか、利用者さまにどう寄り添いたいかなど、理想の働き方や成長したい姿をイメージしながら、前向きに考えてみることが大切です。

日々の業務へのモチベーションも高まり、目標達成への意欲が湧いてくるでしょう。

完璧を求めすぎず小さな前進を大切にする

個人目標は大きなものでなくても構いません。今できることから始めて、少しずつ自分の理想に近づくことが大切です。

具体例としては「利用者さまとの信頼関係を築きたい」という目標がある場合「利用者さまの好きなものや趣味を次の訪問で話題にする」といった行動から始めるのがおすすめです。

完璧を求めすぎると、目標設定そのものがプレッシャーになってしまうため「小さな一歩でも前進」という考え方で進めましょう。

訪問看護師が個人目標を具体的に立てるメリット

個人目標をしっかりと設定することで、訪問看護師としてのキャリアに次のような効果が期待できます。

  • 自己成長の方向性が明確になりモチベーションにつながる
  • 上司やチームとのコミュニケーションが円滑になりやすい
  • 訪問看護師のキャリアパスの整理にも役立つ
  • 日々の業務をただの作業にせず意味づけできる

詳しく見ていきましょう。

自己成長の方向性が明確になりモチベーションにつながる

目標を明らかにすることで「なんとなく働いている」状態から「この目標に向かって働いている」状態に変わり、同じ業務でも取り組む姿勢が変化します。

「1ヶ月で褥瘡ケアを習得する」という目標があれば、先輩の処置を見学する際も積極的に質問し、自分なりに工夫するポイントを見つけられるでしょう。

また「コミュニケーション力を向上させる」という目標を立てれば、利用者さまとの何気ない会話も「相手の気持ちを理解する」ことに意識して取り組めるようになります。

こうした日々の小さな成長を実感できることが、訪問看護師の仕事へのやりがいにつながります。

上司やチームとのコミュニケーションが円滑になりやすい

上司や同僚と目標を共有すれば、方向性を揃えやすくなり、コミュニケーションもスムーズにおこなえます。

一例として、評価面談の際には「この目標に対して〇%達成できています」と具体的に伝えられ、上司からもより的確なフィードバックや支援を受けやすくなります。

また、自分に足りないスキルや知識をイメージできることで「難病の利用者さまの援助についての研修に参加してみたい」「利用者さまの意思決定のサポートについて教えてほしい」といった相談もしやすく、成長の機会を得られるでしょう。

訪問看護師のキャリアパスの整理にも役立つ

はっきりとした目標は、キャリアを長期的に考えるうえで重要な要素です。

短期目標の積み重ねによって、将来のキャリアビジョンや、3年後、5年後にどのような訪問看護師になりたいかが見えてきます。

具体的には「いつか取りたい」と考えていた資格も「3年以内に取得する」といった目標に設定することで、その達成に向けた具体的な計画を立てられます。

これにより、研修や資格取得の優先順位がつけやすくなり、効率的なキャリアアップが可能になるでしょう。

日々の業務をただの作業にせず意味づけできる

訪問看護の業務は多岐にわたるものの、利用者さまの状態が安定していることから、流れ作業のように感じる場合もあるかもしれません。

しかし、目標を持っていると、一つひとつの業務が自分の成長や目標達成につながっていると実感できます。

記録業務も事務作業ではなく「正確な情報共有のスキルを磨く機会」として捉えられ、利用者さまとの会話も「コミュニケーションスキル向上」として意味を持つようになります。

目標があることで「何のためにやっているか」が明らかになり、達成感を得やすくなるでしょう。

訪問看護師の個人目標の具体例でよくある質問

個人目標を設定する際に、訪問看護師が抱きやすい疑問や不安にお答えします。これらの質問への回答を参考に、自分らしい目標にしましょう。

Q1: 病棟勤務時代の目標とは何が違うのでしょうか?

病棟では常に周囲にスタッフがいるため、助けを得ながら業務を進めやすい環境があります。一方、訪問看護では単独で判断・対応する場面が多く、自律性や連携力がより強く求められがちです。

ただし、病棟看護師と同様に訪問看護師にも、成長段階に応じた教育や研修を受けながら実践力を高めていく流れが重要です。

そのため、訪問看護師の個人目標も、自分の経験年数やスキルに合わせて無理のないステップで設定していくことが望ましいでしょう。

Q2:個人目標が思いつかないときはどうしたら良いでしょう?

日々の業務で「うまくいかなかったこと」や「もっと良くしたい場面」を振り返ってみてください。

メモをとったり、先輩に相談したりすることで、自分では気づかなかった視点が得られるでしょう。

新人の訪問看護師の場合は、理想像から逆算して目標を立てると、何をすべきかが明確になり、日々の行動にも目的意識を持ちやすくなります。

Q3.先輩からの評価がプレッシャーで書きづらいです。

個人目標は成長のための道しるべであり、完璧な目標を最初から書く必要はありません。

先輩や上司に相談しながら決めても構いませんし、途中で修正することも可能です。評価よりも、自身の成長に目を向けて書いてみましょう。

訪問看護師の個人目標の具体例を活用して、なりたい看護師に近づきましょう

訪問看護師の個人目標は、自分の成長を促し、充実したキャリアを築くための大切なツールです。

新人、中堅、ベテラン、管理者のそれぞれの経験に応じた目標を立てることで、日々の業務に意味と方向性が生まれます。明確な目標を持つことで、きっと自分らしい訪問看護師としてのキャリアを歩んでいけるはずです。

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<参考サイト・文献>

令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省

目標の設定と達成のマネジメント|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

菱田一恵ら,新人訪問看護師から中堅訪問看護師への成長にかかわる経験, P13 ~23,医療看護研究,第17巻1号(2020)

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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