看護師のワークライフバランスとは?6つの課題と実現する取り組み

「夜勤や残業で自分の時間がない」「趣味や友人との時間を大切にしたいけど、疲れていて何もする気にならない」
このように悩んでいる看護師はいらっしゃいませんか。
看護師の仕事は、患者さまの命と健康を守るという役割を担っており、患者さまやご家族から感謝されることも多いでしょう。
しかし、その責任の重さや、長時間にわたる勤務は、看護師の心身に負担をかけることも事実です。
この記事では、看護師が直面しやすいワークライフバランスの課題に焦点を当て、より充実した働き方を実現するための方法を紹介します。自分らしい働き方を見つけるための一助となれば幸いです。
看護師のワークライフバランスとは仕事とプライベートの充実が両立できていること
看護師にとってのワークライフバランスとは、仕事とプライベートの充実が両立できている状態を意味します。
単に仕事時間を短くすることではなく、仕事への満足感を得ながら、自分の時間や家族との時間、趣味や休息もしっかりと取れていることが重要です。
ワークライフバランスが保たれていると、心身ともに健康な状態で仕事ができ、結果として患者さまへの質の高いケアにつながります。
看護師のワークライフバランスの課題6つと現状
看護師がワークライフバランスを実現するためには、まず現状の課題を理解することが大切です。
- 不規則勤務で生活リズムが乱れる
- 人手不足で忙しい
- 有給休暇の取得率が低い
- 自己研鑽の時間を確保できずプライベート時間を圧迫される
- 強い緊張感による精神的ストレスが大きい
- ライフイベントとの両立が難しい
これらの課題をひとつずつ確認することで、ワークライフバランス実現への道筋が見えてくるでしょう。
不規則勤務で生活リズムが乱れる
看護師の勤務は、日勤や夜勤、遅出など多くの職場がシフト制であり、そのパターンは多岐にわたります。
生活リズムが不規則になりがちで、睡眠不足や食生活の乱れから体調不良につながる可能性があります。
また、友人や家族との時間も合わせにくく、社会的な孤立を感じる看護師もいるでしょう。規則正しい生活を送ることが難しいため、慢性的な疲れやストレスが溜まりやすい現状です。
人手不足で忙しい
厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」の調査によると、2022年度における看護職(看護師・准看護師)の有効求人倍率は2.20倍です。
全職業が1.19倍であることを考えると、看護師の職場は人手不足であるといえます。
慢性的な看護師の人手不足が深刻な問題となっており、看護師一人当たりの担当患者さま数が増え、それに伴い業務量も増加しています。
その結果、患者さまの対応に追われ休憩を十分に取れなかったり、忙しさのあまり心休まる時間がなく心身ともに疲弊してしまったりする看護師も少なくありません。
この慢性的な人手不足は、看護師がワークライフバランスを実現するための大きな障壁となっています。
有給休暇の取得率が低い
看護師は、常に患者さまのケアを第一に考える、責任感の強い方が多い傾向です。
そのため「自分が休むとほかのスタッフに迷惑がかかるのではないか」「病棟の人に申し訳ない」と感じてしまい、有給休暇を取得しにくいこともあるようです。また、人員不足のため、休みを取りにくいという問題もあります。
日本看護協会「2023年病院看護実態調査 報告書」の調査によると、有給休暇の平均取得率は67.7%です。
休日や有給休暇が少なく休息を十分に取れない状況が続くと、心身の疲労が溜まり、バーンアウトのリスクも高まるでしょう。
自己研鑽の時間を確保できずプライベート時間を圧迫される
医療技術や知識は進歩しており、看護師は仕事の特徴から、最新の情報を学び続けることが求められます。
資格取得のための勉強や日々の業務に必要な知識・スキルのアップデートなど、学習するためにはプライベートの時間を削らざるを得ない場合があります。
勤務中は患者さまのケアやナースコール対応などによって、学習する時間と環境を確保できないことが。
自己学習の必要性は十分に理解していても、仕事と学習の両立が難しいと感じる看護師は少なくないでしょう。
強い緊張感による精神的ストレスが大きい
患者さまの命にかかわる仕事であるため、看護師は高い集中力と緊張感を持って業務に取り組む必要があります。
小さなミスも許されないというプレッシャーや、患者さまやそのご家族のさまざまな感情を受け止め、寄り添うという精神的な負担は大きいものです。
ライフイベントとの両立が難しい
結婚や出産、介護などライフイベントと仕事の両立は、多くの看護師にとっての課題です。
というのも、看護師ならではの理由により、両立が難しいからです。
- 不規則な勤務形態
- 看護師不足
- ストレスの高い職場環境
ライフステージの変化に合わせて、柔軟な働き方をしたいと思っても、これらの状況から諦めざるを得ない現状があります。
看護師がワークライフバランスを実現するメリット
看護師がワークライフバランスを実現することは、看護師の生活の質を高めるだけでなく、病院や施設にとってもプラスの効果をもたらします。
- 人手不足の解消につながる
- 看護師の健康を守ることができる
- ケアの質が向上する
- 病院や施設の運営が安定する
それぞれのメリットを見ていきましょう。
人手不足の解消につながる
ワークライフバランスが整った環境は、看護師の離職を防ぐだけではなく、新たな人材にとっても魅力的な職場となります。
柔軟な勤務形態や充実した福利厚生は、求職者にとってのアピールポイントとなり、結果として人手不足の解消が見込めます。
働きがいのある環境づくりは、人材確保の重要な戦略といえるでしょう。
看護師の健康を守ることができる
ワークライフバランスが整い、十分な休息やプライベートな時間の確保ができると、看護師は心身の健康を維持しやすくなります。
疲労が軽減され、意欲的に仕事に取り組めるでしょう。看護師の健康が保たれることは、長く働き続けるうえで重要です。
ケアの質が向上する
看護師がワークライフバランスを実現することで、心身にゆとりを持って業務に取り組めるようになるため、ケアの質の向上が期待できます。
たとえば、時間に追われることなく患者さま一人ひとりを注意深く観察したり、話を丁寧に聞くことで患者さまの不安な気持ちに寄り添ったりできます。
患者さまのわずかな体調の変化にいち早く気づき、適切に対応できるようになるでしょう。
看護師のワークライフバランスが保たれることは、患者さまの状況に合ったケアに直結するのです。
病院や施設の運営が安定する
ワークライフバランスが実現して看護師の離職が減少し、高い定着率を維持できるようになると、病院や施設の運営は長期的に安定します。
人材の採用や教育にかかるコストを削減でき、組織の業務効率も向上するからです。
具体的には、経験豊富な看護師が長く働くことで、チームの専門性が高まり、安全な医療サービスを継続して提供できるようになります。また、新しく入職した看護師にとっても、安心して学べる環境が整うでしょう。
このように、安定した運営は患者さまが医療を安心して受けられるだけでなく、看護師がより働きやすい職場づくりにもつながると考えられます。
看護師がワークライフバランスを整えるための取り組みのコツ
看護師が主体的にワークライフバランスを整えていくためには、意識しておきたいポイントがいくつかあります。
- 自分がどのような働き方をしたいのか振り返る
- 日本看護協会「ワークライフバランス推進ガイドブック」を活用する
- ワークライフバランスを実現できる職場に転職する
業務のなかで意識を少しずつ変えていくことで、自分らしい働き方を実現できるでしょう。
自分がどのような働き方をしたいのか振り返る
まず、どのような働き方を理想としているのか、じっくりと考えてみることが大切です。たとえば、次のポイントに沿って振り返ってみてください。
- 勤務時間
- 休日の過ごし方
- 業務内容
- キャリアプラン
何を重視するのかを明らかにすることで、ワークライフバランスを実現するための目標が見えてきます。自分の価値観を踏まえながら、理想の働き方を描きましょう。
日本看護協会「ワークライフバランス推進ガイドブック」を活用する
看護師がワークライフバランスを実現するためには、客観的な情報を得ることも重要です。
日本看護協会の「ワークライフバランス推進ガイドブック」には、より良い働き方を実現するための考え方や、実践的なアドバイスが載っているため強い味方となるでしょう。
実際には、時間管理のコツや職場とのコミュニケーションのヒント、ワークライフバランスを実現している職場の事例などが紹介されています。
ガイドブックを活用して働き方を見つめ直し、より良い方向へ変えていきましょう。
ワークライフバランスを実現できる職場に転職する
現在の職場で、どうしてもワークライフバランスの改善が難しいと感じているのであれば、より良い働き方を求めて転職を検討することも有効です。
訪問看護専門の転職支援サイト「NsPaceCareer」(ナースペースキャリア)は、訪問看護に特化した求人サイトであり、希望する働き方や条件に合った職場探しを丁寧にサポートいたします。
ぜひ一度、あなたの希望する働き方についてお気軽にご相談ください。
看護師のワークライフバランスが整っている求人を見つけるコツ
ワークライフバランスが比較的整っているといえる病院には、看護師が仕事とプライベートを両立しやすいように配慮された、いくつかの共通した特徴が見られます。
- 有給休暇の取得率が高い
- さまざまな勤務形態で働ける
- 離職率が低い
- 福利厚生が充実している
これらの特徴を知っておくことは、転職を検討する際に、自分にとって働きやすい環境かどうかを見極めるうえで重要です。転職活動をおこなう際には、これらの視点で情報収集してみると、良い求人と出会えるでしょう。
有給休暇の取得率が高い
ワークライフバランスが整っている病院の特徴として、挙げられるのが有給休暇の取得率の高さです。
看護師の方がプライベートな時間を大切にでき、心身をしっかりと休ませることができる環境は、働きやすさに直結するからです。
具体的には、人員配置に余裕があり、お互いに協力して休みを取りやすい雰囲気がある職場では、有給休暇を気兼ねなく申請できます。
日本看護協会「2023年病院看護実態調査 報告書」の調査によると、有給休暇の平均取得率は67.7%と報告されています。そのため、この数字を基準にして、求人を選ぶと良いでしょう。
さまざまな勤務形態で働ける
ワークライフバランスを重視するなら、さまざまな勤務形態がある職場選びが重要です。
育児や介護といったライフスタイルや家庭の状況に合わせて、柔軟な働き方が可能になるからです。時短勤務制度を利用して子育てと仕事を両立したり、フレックスタイム制を活用して自分のペースで働いたり、パートタイムで時間を有効活用したりといった選択肢があります。
このように、多様な働き方が選べる環境は、看護師が長く安心してキャリアを築くための支えとなります。
離職率が低い
ワークライフバランスが整った求人を見つける際には、看護師の離職率が判断基準のひとつとなります。
離職率が低いということは、看護師が働きやすいと感じており、職場の人間関係が良好であったり、福利厚生が充実していたりなど労働環境が整っている可能性が高いからです。
日本看護協会の「2023年病院看護実態調査」による離職率を次の表にまとめました。
離職率 | |
正規雇用看護職員(新卒採用者や既卒採用者を含む) | 11.8% |
新卒採用者 | 10.2% |
既卒採用者 | 16.6% |
転職する際には、この離職率のデータを基準にすると良いでしょう。
離職率が低い職場では、看護師が安心して長く働くことができ、結果としてワークライフバランスも実現しやすくなります。
福利厚生が充実している
ワークライフバランスを重視するなら、福利厚生が手厚い職場を選ぶことは大切です。
育児支援制度やリフレッシュ休暇などが充実している病院は、スタッフが安心して働き続けられるサポートが整っていると考えられるからです。
院内託児所や提携している保育園があれば子育て中の看護師が働きやすいです。育児休業制度や時短勤務のサポートがあれば、ライフステージの変化にも対応できます。
このように、福利厚生が充実している職場は、看護師のワークライフバランスをしっかりと支えてくれるでしょう。
関連記事:看護師の働き方改革とは?ワークライフバランス実現への取り組み5つと事例
まとめ:看護師のワークライフバランスを整えて自分らしい働き方に変えよう
看護師が、仕事とプライベートの調和を実現し、より自分らしい働き方を手に入れることは十分に可能です。
ワークライフバランスを整えることで、仕事への満足度を高めながら、プライベートな時間も充実させられるからです。
この記事でご紹介した、働き方を振り返る、スキルアップを目指す、働きやすい職場を選ぶといった取り組みを参考に、ぜひご自身の理想とする働き方を追求してみてください。
<参考サイト・文献>

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。