看護師がミスで落ち込むときのNG行動5つ!対処法を知って乗り越えよう

「またミスしてしまった…」
薬の投与ミス、申し送り忘れ、患者対応のすれ違い——看護の現場では、誰にでも起こりうるミスが日々のプレッシャーとなっています。
「私は看護師に向いていないのかもしれない」と自信を失うあなたへ。この記事では、落ち込んだ時にやりがちなNG行動と、その乗り越え方を具体的にお伝えします。あなたの努力は決して無駄ではありません。前を向くヒントを見つけてください。
看護師がミスで落ち込む理由
看護師は、人の命を預かる責任の重い仕事であるため、ミスが起きたときの精神的な負担は大きくなりがちです。
- 責任感の強さゆえに自分を攻めやすい
- 患者さまの生命にかかわるプレッシャーが大きい
- 先輩看護師や上司の指導にストレスを感じやすい
- 「看護師に向いていない」と思い負のループに入りやすい
ここでは、看護師がミスで落ち込みやすい理由を解説します。
責任感の強さゆえに自分を攻めやすい
看護師の仕事は、患者さまの健康と生命に直結するため、一人ひとりが責任感をもって業務をおこなっています。
だからこそミスが起きたときには「自分の責任だ」「自分が不注意だったからだ」と、過度に責めてしまう傾向です。
真面目な看護師ほど責任を強く感じ、それが落ち込みにつながります。
患者さまの生命にかかわるプレッシャーが大きい
看護師の業務には、与薬や処置、バイタルサインの管理など患者さまの生命や回復にかかわる行為が多くあるため、一つひとつの判断や行動にプレッシャーを感じがちです。
そのような状況でミスが起きてしまうと「患者さまに取り返しのつかないことをしてしまったかもしれない」といった強い罪悪感や不安に襲われることもあるでしょう。
こうした感情が、落ち込みや自信喪失の原因になる可能性があります。
先輩看護師や上司の指導にストレスを感じやすい
ミスが発覚したとき、再発防止や医療安全の観点で先輩看護師や上司、医師から厳しく指導される場合があります。
とくに、新人看護師の場合「責められている」「何でこんなに厳しくいわれないといけないのか」と受け取る方もいるでしょう。
また、これまでトラブルもなく仕事をしてきた看護師にとっては、注意や指摘を受けること自体が強いショックとなり、自信を揺るがす原因になるかもしれません。
「看護師に向いていない」と思い負のループに入りやすい
一度大きなミスを経験すると「自分は看護師に向いていないのかもしれない」「この仕事を続けられない」と、自分を否定する気持ちになる恐れがあります。
こうした負の感情は前向きな意欲を奪い、集中力やモチベーションの低下を引き起こした結果、注意力が散漫になり、さらにミスを繰り返しがちです。
この状態では、たとえ小さなミスでも「また失敗した」と自信を失い、ますます自己否定が強まっていくという負のループに陥ってしまいます。
看護師のよくあるミスの事例とその背景
看護師のミスには、確認不足や情報伝達のミス、スキル不足など、さまざまな要因があります。
- 投薬のミス
- ドレーン・チューブの管理ミス
- 申し送りのミス
- 患者さま対応のミス
よくある事例とその原因を知ることで、自分の働き方を見直すヒントになるでしょう。
投薬のミス
看護師のミスのなかでも、とくに起きやすいとされているのが、投薬に関するものです。インシデントレポート(事故発生前の危険事象の報告書)でも報告件数が多い傾向にあり、注意が必要な分野のひとつです。
具体的には、以下のような事例が挙げられます。
- 患者さまの氏名の確認不足で別の人に薬を渡してしまった
- 指示された量と違う量で点滴を投与してしまった
- 6時に投与する薬を18時と誤認してしまった
これらのミスは、業務の忙しさからダブルチェックを省略したり、業務への慣れによって確認がおろそかになったりすることが背景にあります。
ドレーン・チューブの管理ミス
ドレーンやチューブは、患者さまの状態管理や治療に欠かせないため、これらの管理ミスは患者さまの安全上の問題となります。インシデントは医療安全の観点から速やかに上司へ報告し、共有が推奨されています。
具体的には、次のような事例が考えられます。
- 患者さまがせん妄状態となりドレーンを自己抜去する
- ドレーンの閉塞を見逃し排液不良に気づかない
- チューブの接続を間違えてしまう
新しい手技や珍しい症例による知識の不足や業務が重なったことによる焦りなどが原因で、こういったインシデントが発生する可能性があります。
申し送りのミス
申し送りが正しくおこなわれないと、重要な情報が次の勤務者に伝わらず、患者さまが不利益となるおそれがあります。
たとえば、日中のバイタルサインの変化が伝わらなければ、治療が遅れてしまい、夜間、患者さまが急変するリスクがあります。また、アレルギー情報を共有しなければ、アナフィラキシーショックを起こして、患者さまの生命の危機にさらされるかもしれません。
こうした背景には、必要な情報を選ぶ難しさや、緊急性が低いと勘違いして情報を省略することなどが原因としてあげられます。
患者さま対応のミス
患者さまとのコミュニケーションや対応も、看護師の重要な業務のひとつです。
しかし、患者さまの十分に聞かなかったり、不適切な言葉遣いをしてしまったりするとクレームにつながり、ミスのひとつとしてとらえられます。
こうしたミスの背景には、次のような状況があげられます。
- 業務の忙しさから患者さまに向き合う時間が十分にとれない
- 精神的な疲労やストレスが溜まっている
- 看護師間で情報の伝達がうまくいっていない
患者さまへの不適切な対応は、信頼関係を損ねる原因となり、看護師としての自信喪失や気分の落ち込みにつながるでしょう。
看護師がミスで落ち込むときのNG行動5つ
ミスで落ち込んでいるときに誤った行動をとってしまうと、立ち直るのに時間を要します。
- 自分を責め続ける
- 誰にも話さず一人で抱え込む
- 思考停止に陥り対策を考えない
- 開き直る・反省しない姿勢を見せる
- 過剰に周囲の目を気にする
5つのNG行動を知り、自身の行動にあてはまる場合は、できるだけ早く改めましょう。
1.自分を責め続ける
ミスをした自分を責める気持ちは自然ですが、過度な自己否定は自己肯定感を下げます。
たとえば投薬ミスがあっても、それが看護師の適正にかかわるということにつながりません。ネガティブな考えばかりであると、心の回復が遅れるでしょう。
2.誰にも話さず一人で抱え込む
悩みやミスにともない落ち込んだ感情をひとりで抱え込むのは危険です。
不安や緊張を抱えたままだと、インシデントや医療事故を繰り返す原因になることも報告されています。
心の負担が限界を超えてしまう可能性もあるため、つらい気持ちを我慢するのはやめましょう。
3.思考停止に陥り対策を考えない
ミスが起きたことを受け止めきれず、原因の分析や再発防止策を考えなければ、同じミスを繰り返す恐れがあります。
たとえば「忙しかったから仕方ない」「たまたま失敗してしまっただけ」と振り返らずに作業を続けた場合、同じようなミスが起き、重大なインシデントにつながるかもしれません。
4.開き直る・反省しない姿勢を見せる
落ち込むと開き直りたくなるかもしれませんが、反省のない態度は同僚からの信頼を失います。
たとえば、誤薬の指摘を受けても「自分は間違っていない」「次、失敗しなかったら大丈夫」などと改善を試みない態度は、患者さまの安全を守れないため不適切です。
その結果、同僚からの信頼を損ね、職場での孤立やさらなるミスにつながる可能性があります。
5.過剰に周囲の目を気にする
ミスを起こしたあとに、周囲の目を気にして不安になり過ぎる看護師もいます。
確かに周囲の目は気になりますが、気にし過ぎると仕事に集中できなくなり、いつもと同じような心理状態で仕事ができなければ、ミスを引き起こすリスクがあります。
看護師がミスで落ち込むときに見逃してはいけない限界サインをチェック
ミスによる一時的な落ち込みは誰にでもありますが、長期化したり、日常生活に支障をきたしたりする場合は、心が限界を感じているサインかもしれません。
次の項目をチェックしてみて、自身の状態を確認してみましょう。
- 食欲不振や過食、睡眠障害(不眠・過眠)が続いている
- 趣味や好きなことにも興味が持てず、何もやる気になれない
- 強い不安感や焦燥感が続き、落ち着かない
- からだのだるさや頭痛、腹痛など、身体的な不調が続いている
上記に当てはまる項目が多い場合は、心が限界を感じているかもしれません。職場の産業医やカウンセリング窓口に相談することをおすすめします。
看護師がミスをくり返さないための対処法
一度ミスして落ちこんだ経験をしたからこそ、今後、同じ過ちをくり返したくないと感じているはずです。
- ダブルチェックの徹底
- インシデント・ヒヤリハットの報告と共有
- 業務手順の見直し
- ストレスマネジメント
ここでは、ミスの再発防止に役立つ対処法を解説します。
ダブルチェックの徹底
投薬や輸血などリスクの高い業務は、ダブルチェックを徹底しましょう。
油断はせず、手順どおりに声に出して確認するという基本的な確認作業が重要です。
また「指示された薬の量が多い気がする」「患者さまの名前を聞き間違えたかもしれない」といった迷いや不安を感じたときは、医師に指示を確認したり、上司に相談したりする勇気を持つことも大切です。
インシデント・ヒヤリハット(ヒヤッとした出来事)の報告と共有
起こしたミスの大小に関係なく、きちんと上司に報告し、部署内で情報を共有しましょう。
これは、個人の責任を追及するためではなく、チーム全体の医療安全対策につながるためです。
報告した事例を分析し改善策を検討することで、同じようなミスを防げます。
業務手順の見直し
日々の業務手順を明らかにして、複雑な作業は見直しも必要です。
たとえば、ミスが起こりやすい業務は手順書を改めて読み込んで、自分の理解とズレがないか確かめたり、同僚と手順をチェックし合ったりすることも、見落としの防止に役立ちます。
また、ミスの原因が業務フローにある場合は、職場で手順の見直しを提案することも、医療安全の向上につながる方法のひとつです。
ストレスマネジメント
業務中のストレスをうまく調整することは、間違いを防ぐうえで欠かせません。
強いストレスは集中力や判断力を低下させ、インシデントのリスクを高めるためです。
すぐにできる対策として、次のような工夫があげられます。
- 深呼吸やストレッチで緊張をほぐす
- 気持ちをメモに書き出して整理する
- 小さな成功体験を振り返る
忙しいなかでも意識的に取り入れることで、落ち着いて行動しやすくなります。
看護師がミスで落ち込むときのセルフケア
ミスで落ち込んだときは、メンタルを安定させるために、自らが行動することも大切です。
- 先輩看護師や上司に相談する
- 心身のリフレッシュに時間を使う
- 次にやることを考えて気持ちを切り替える
- 転職を検討する
それぞれを詳しく見ていきましょう。
先輩看護師や上司に相談する
ひとりで抱え込まず、職場の先輩や上司、同期、家族など信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。
感情を共有することで、気持ちが楽になるだけでなく、客観的なアドバイスや、共感を得られることで、孤独感がやわらぎます。
心身のリフレッシュに時間を使う
落ち込んでいるときほど、意識的に心と身体を休ませることが重要です。
趣味や散歩、読書など好きなことに没頭したり、ウォーキングやストレッチといった軽い運動を取り入れたりしても良いでしょう。また、睡眠不足は精神状態が不安定になる原因となるため、しっかりと眠ることも大切です。
自分に合ったリフレッシュ法を見つけて、無理なく心身のバランスを整えていきましょう。
次にやることを考えて気持ちを切り替える
ミスをして落ち込んだときは、その出来事ばかりを考えてしまいがちですが、次に何をすべきかを考えることで、気持ちの切り替えがしやすくなります。
たとえば「同じ場面でどう対応すればよかったか」「同じミスをしないためにはどのような看護技術を身につける必要があるか」といった具体的な行動に意識を向けましょう。
前向きな思考は、回復のスピードを早めるとともに、再発防止にもつながります。
転職を検討する
職場の環境や体制がミスを招く原因となっている、ミスした後のサポートが不十分で心の回復が見込めないと感じるといった場合は、転職を前向きに検討しても良いでしょう。
無理に今の職場にとどまり続けることが、心身の負担となるケースもあります。
看護の現場にはさまざまな選択肢があり、病院以外の環境で本来の力を発揮できる看護師もいます。
そのうちのひとつが、訪問看護師です。一人ひとりの利用者さまとじっくり向き合いながら、その人らしい生活を支える看護を提供します。
落ち着いた環境で自分のペースを大切にしながら働け、スタッフとの人間関係にも悩まされにくいため、やりがいと心のゆとりを感じやすい現場です。
自分らしく働ける職場を探したい看護師は、訪問看護に特化した求人サイト「NsPaceCareer」をぜひご覧ください。
看護師がミスで落ち込むのは珍しくない!ゆっくり前向きに行動しましょう
看護師がミスをすると、責任感の強さや患者さまの命をあずかるプレッシャーから、自分を過度に責めてしまいがちです。
しかし、落ち込んだあとに正しい対処をとれば、早い回復につながります。
看護師のミスは、ベテランであっても起こりうることです。自己否定やひとりで抱え込むことは避け、ゆっくりと気持ちを整理しながら前向きに行動しましょう。
<参考サイト・文献>
2022年度 クオリティ・インディケーター インシデント報告件数推移(2020-2022)|兵庫医科大学病院

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。