看護師の勉強会のテーマは何がいい?選び方と例を解説

勉強会による継続的な学習は、看護の質を高めるうえで欠かせません。
効果的にスキルアップを図るためには、適切なテーマ選びが重要です。
この記事では、看護師の勉強会の目的や具体的なテーマ例と選び方について解説します。
看護師の勉強会の目的とは
看護師の勉強会には、主に以下3つの目的があります。
知識・技術の向上
医療は常に進歩しており、新しい治療法や看護技術が出ています。
勉強会を通じて最新の知識や技術を習得すると、患者さまへ、より質の高い看護を提供できます。
特に、医療機器の進化は目覚ましく、適切な使用方法の習得は、患者さまの安全を守るうえでも重要です。
また、定着している技術を見直し、より良い方法を学ぶ機会にもなります。
他病院・他部署との比較、意見交換
他病院・部署の看護師、他職種と意見交換する勉強会へ参加すると、新たな視点や考え方を得られます。
普段の業務では、自身の所属する病院や病棟のやり方に偏りがちです。
多様な意見に触れられると、柔軟な判断力を養えます。
また、他病院の取り組みの共有は、自院の改善点を見つけるきっかけにもなるでしょう。
自信の獲得
看護師は患者さまの命を預かる責任ある仕事であり、常に緊張感をともないます。
勉強会で知識や技術を深められると、業務に対する自信がつきます。
スムーズな看護技術を実施できるようになると、患者さまへの負担を軽減し、安心感を提供できるでしょう。
看護師の勉強会のテーマの選び方
看護師の勉強会には、多くのテーマがあります。
いくつか例を紹介します。
心電図の読み方
心電図は、心臓の状態を評価するために重要な検査です。正しい読み方を習得すると、不整脈の早期発見や適切な治療につなげられます。
しかし、心電図に苦手意識をもつ看護師は多いため、以下のように段階的に設定すると効果的です。
レベル | 詳細なテーマ |
基礎編 | ・心電図の基礎知識 ・正常、異常波形の判別 ・徐脈性、頻脈性不整脈の波形の見方と看護 |
中級編 | ・12誘導心電図とモニター心電図の違い ・12誘導心電図の取り方 ・症例ごとの波形の見方と看護 |
座学だけでなく、実際に波形を見ながら学ぶことで、それぞれの波形の特徴や治療、ケアのポイントなど、より実践的な知識を習得できるでしょう。
所属病棟等でよくみる疾患
自分の病棟でよくみる疾患に関する知識・技術を深められると、日常業務や看護の質の向上につながります。
たとえば、以下のようなテーマがあげられます。
- 病態:疾患の成り立ちや症状
- 検査:画像・血液検査の結果の見方
- 治療:薬物療法・手術療法など
- 看護:日常生活の援助、療養上の世話のポイント、アセスメントや看護計画
実践的な内容であればすぐに現場で活かせるため、学習意欲の向上につながるでしょう。
フィジカルアセスメント
フィジカルアセスメントは救急看護だけでなく、一般病棟や在宅、手術室、クリニックなど、すべての看護現場で必須のスキルです。
勉強会では、以下のテーマを取り上げると、学びを深められます。
- 身体部位ごとのアセスメント方法(視診・触診・聴診・打診)
- 異常所見の解釈と対応
- 具体的な症例検討
- アセスメントに役立つツールの紹介
- 経験豊富な看護師によるデモンストレーション
また、特定の分野(呼吸器・循環器・消化器など)に焦点を当てた勉強会も効果的です。
ME機器の扱い方
看護師がME機器を正しく使用することは、医療安全の確保に不可欠です。
誤った使用方法は患者さまに危険を及ぼす可能性があるため、適切な習得が求められます。
まずは、病棟でよく使用される以下のようなME機器を中心に学ぶとよいでしょう。
- 輸液ポンプ
- シリンジポンプ
- ネブライザー
- 心電図モニター
- 酸素機器など
医療技術の進化にともない、新しいME機器が次々と登場しています。
新たなME機器を病院や病棟に導入する際は、必ず勉強会を実施することが大切です。
家族看護
病気は患者さま本人だけでなくご家族全体にも影響を与えるため、看護師はご家族の状況や感情、役割の変化を理解し、適切な支援を行うことが重要です。
勉強会のテーマ例は、以下のとおりです。
- 家族看護の基本:家族看護の目的や意義、倫理的な考え方
- 家族理解に必要な視点:家族構成、家族の発達段階、役割、人間関係など
- 家族看護の理論:家族発達理論、家族システム理論、家族ストレス対処理論など
- 家族看護モデル:カルガリー家族アセスメント/介入モデル、家族看護エンパワーメントモデルなど
- 家族看護介入:情緒的支援、役割調整、家族関係調整など
参照元:日本家族看護協会|家族看護実践力を伸ばす 研修計画立案に役立つ教育ツールp.3
家族看護の勉強会では、事例検討やロールプレイなども効果的です。
医療安全
看護師にとって、医療安全に関する知識と意識の向上は必須です。
医療事故は、患者さまの生命や健康に重大な影響を与える可能性があるため、リスクを最小限に抑えるための対策が求められます。
勉強会のテーマ例は、以下のとおりです。
- 医療事故の発生状況
- 医療事故の防止策
- 医療安全管理体制の構築
- 医療事故発生時の対応など
医療安全に関する専門的な知識を深め、現場でリーダーシップを発揮したい場合は、日本看護協会の「医療安全管理者養成研修」の受講がおすすめです。
呼吸リハビリテーション
呼吸リハビリテーションは、COPDなど呼吸器疾患をもつ患者さまの呼吸機能を改善・維持し、悪化を予防するためのリハビリテーションです。
適切な実施により、呼吸困難感の軽減やADL(日常生活動作)の向上が期待できます。
呼吸リハビリテーションの主な内容は、以下のとおりです。
- 運動療法
- セルフマネジメント教育
- 栄養療法
- 患者さまやご家族への心理的・社会的支援など
看護師は、医師やリハビリテーション専門職と連携しながら、患者さまの状態に合わせた介入を行う必要があります。特に、適切な体位ドレナージや咳嗽訓練・吸引・精神的支援といったスキルを習得し、実践することが大切です。
病棟でよく使用する薬剤
看護師にとって、病棟でよく使用する薬剤の正しい知識と使用方法の習得は、患者さまの安全を守るために必要不可欠です。
不適切な投与や副作用の見逃しを防ぐため、適切な学習が求められます。
薬剤の種類や用法・用量だけでなく、具体的な症例に基づいた勉強会にすると、習得しやすくなります。
たとえば、診療科目ごとに以下のようなテーマがあげられます。
診療科目 | テーマ例 |
循環器内科 | ・抗不整脈薬の使い分け、副作用対応 ・心不全治療薬の作用機序と看護 ・抗凝固薬のモニタリングと注意点 |
呼吸器内科/外科 | ・気管支拡張薬の種類と使用方法 ・吸入ステロイド薬の使用方法と副作用への対応 |
消化器内科/外科 | ・消化性潰瘍治療薬の作用機序と看護 ・鎮痛薬、制吐薬の使い方と副作用への対応 |
整形外科 | ・鎮痛薬の種類と使い分け、副作用への対応 ・骨粗鬆症治療薬の種類と投与方法 |
また、診療科目ごとに起こったインシデント・アクシデントの事例に基づいた薬剤の学習をすると、注意喚起もあわせて実施でき、効果的です。
感染対策・感染管理
感染対策・管理は、患者さまの安全確保だけでなく、看護師自身を守るためにも重要です。
勉強会のテーマ例には、以下があげられます。
- 標準予防策、PPEの正しい着用方法
- 感染経路別の予防策
- 感染症の発生状況など
また、感染症発生時の対応や感染対策チームとの連携についても学べると、より実践的な知識を習得できます。
急変対応
急変対応は、看護師にとって必須スキルといえますが、いつ発生するかわからないため、事前の学習と訓練が重要です。
勉強会では、以下のテーマをとりあげると実践的なスキルが身につきます。
- 緊急コールのタイミング
- 発見者、応援者の役割(物品用意・手技・記録)
- 急変時の他職種連携・コミュニケーションのポイント
- 実際の事例を用いた対応訓練など
冷静な対応ができるよう、日頃からシミュレーションや訓練を定期的に実施し、現場で即対応できる体制を整えましょう。
検査値データの読み方
検査値データを読み解く能力は、患者さまの状態を正しく把握し、適切な看護の提供に不可欠です。
数値の正常・異常を判断できると、貧血や感染症、出血傾向などの有無、臓器機能の低下などをアセスメントできます。
症例を交えた学習を取り入れると、実践的な判断力が身につき、臨床での対応力向上につながるでしょう。
エンゼルケア
エンゼルケアは、ご遺体の清潔を保つ以外に、ご家族のグリーフケアにもつながります。
看護師が適切なケアを提供できるよう、勉強会では以下の内容をとりあげましょう。
- エンゼルケアの意義と看護師の役割
- ご遺体の特徴と適切な処置
- エンゼルケアの手順や大切なポイント
- ご家族との関わり方(声かけや対応の仕方)
手順だけでなく、ご遺体の特徴やご家族との関わり方も学べると、より実践的なスキルを習得でき、看護師自身のやりがいにもつながります。
看護師の勉強会のテーマの選び方
効果的な勉強会を開催するためには、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
参加者のレベルや学習内容を考慮し、実践に活かせる内容を設定しましょう。
参加するメンバーのレベルに合わせる
勉強会は、参加者の経験年数や知識レベルに応じたテーマ設定が大切です。
適切な内容を選ぶことで、全員が実務にも活かせる学びを得られます。
たとえば、以下のような内容があげられます。
経験年数 | 内容 |
1~3年目 | 基礎知識の確認、事例紹介、ロールプレイングなど |
3~5年目 | より専門的な知識、応用的な技術、症例検討など |
5年以上 | 最新の知見、他部署との連携、リーダーシップ、教育など |
参加者のレベルを考慮し、成長を促すテーマを選ぶことが、勉強会の効果を高めるポイントです。
簡単すぎる内容は避ける
勉強会では、簡単すぎる内容は避けなければなりません。
内容が簡単すぎると、参加者のモチベーション低下や時間の無駄につながる可能性があります。
新しい知識や技術の習得、あるいは既存の知識の深堀ができるテーマが望ましいでしょう。
大きすぎるテーマは向かない
大きすぎるテーマでは内容が具体的でなくなり、臨床で活かしにくくなります。
たとえば「循環器疾患について」では範囲が広すぎ、扱うべき情報も膨大になります。
「心電図の読み方」など、具体的で実践的なテーマを選ぶと、学習効果が高まるでしょう。
実務で応用できる内容にする
勉強会のテーマは、実務に活かせる内容にしましょう。
特に、新人看護師は実務経験が少なく、座学で学んだ知識と現場での実践にギャップを感じやすいため、実務に直結する知識やスキルを学ぶことで不安を軽減できます。
バイタルサインの正しい測定方法や医療機器の基本操作など、実践的な内容を取り入れると、即戦力としてのスキル向上にもつながるでしょう。
まとめ
看護師が勉強会で効果的にスキルアップを図るためには、適切なテーマ選びが大切です。
適切なテーマ設定により、知識・技術の向上や自信の獲得を図れます。
勉強会のテーマは、心電図の読み方やME機器の使い方、エンゼルケアなど多岐にわたります。
参加者のレベルを踏まえ、目的を明確化してテーマ設定すると、参加者のモチベーションを維持しつつ有意義な勉強会を開催できるでしょう。

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