看護師が妊娠したときの働き方は?報告のタイミングや制度について解説

公開日:2025/03/07 更新日:2025/03/07
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体力勝負でもある看護師の仕事。

妊娠すると、「働くうえで注意すべきことはあるのか」「どのように周りに伝えたらよいのか」など、さまざまな不安や疑問を抱くでしょう。

この記事では、妊娠中における働き方の注意点から報告のタイミング、伝え方、把握しておくべき制度や手当まで、詳しく解説します。

妊娠したばかりの方や、妊娠を将来的に考えている看護師の方はぜひ読んでみてください。

看護師が妊娠したときの働き方の注意点

妊娠中の看護師は、母体と胎児の健康を守るため、仕事内容や生活習慣を見直す必要があります。

看護師の仕事は肉体的にも精神的にも負担が大きく、特に妊娠中は体調管理に気を配らなければなりません。

まずは、看護師が妊娠したときの働き方の注意点を解説します。

力仕事は極力避ける

体位変換や移乗介助など、瞬間的に力を入れる動作は、身体への負担が大きく、妊娠中の母体に影響を与える可能性があります。

無理をせず、同僚に協力を依頼したり、2人体制で行ったりすることで負担を軽減できます。

できるだけ業務を調整し、負担の少ない仕事を担当できるよう上司へ相談するとよいでしょう。

夜勤を避ける

看護師の方の仕事は夜勤をともなうことが多く、不規則な生活リズムになりがちです。

妊娠中はホルモンバランスの変化や身体への負担が増すため、より健康管理に気を配る必要があります。

特に、質の高い睡眠と規則正しい生活リズムを維持することが大切です。

2019年に公表された環境省のエコチル調査では、夜勤をともなう週36時間以上の労働でが妊娠高血圧症候群、週46時間以上の労働で胎児発育不全のリスクを高めることが明らかになりました。

参照元:環境省|妊娠中の長時間労働と交替制勤務が妊娠期及び周産期の母子の健康に及ぼす影響についての大規模前向きコホート研究

法律では、妊婦が希望すれば深夜業が免除されます。夜勤の負担が大きい場合は、夜勤免除について相談することをおすすめします。

参照元:厚生労働省|働きながら安心して 妊娠・出産を迎えるためにp.4

感染症に気をつける

妊娠中は、免疫力低下により感染症にかかりやすくなります。特に、感染症によっては胎児に影響を及ぼす可能性があるため、注意しなければなりません。

以下の対策を実施しましょう。

  • 標準予防策を徹底する
  • 感染症の患者さまとの接触を避ける
  • ワクチン接種や抗体検査について相談する
  • 歯科健診で歯周病がないか確認しておく
  • 体調管理を徹底する

風疹や水痘、麻疹、流行性耳下腺炎などの感染症は、妊娠中にかかると胎児に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。

これらの感染症に対する抗体の有無を調べ、抗体がない場合は、妊娠前に予防接種を受けておくと安心です。

また。同居するパートナーにも予防接種を受けてもらうことが感染リスクをさらに減らせるでしょう。

参照元:厚生労働省|働きながら安心して妊娠・出産を迎えるためにp.2

また、歯周病は早産や低体重児出産のリスクを高める可能性があります。

妊娠中は、歯科健診と必要に応じた治療が大切です。

妊娠の有無にかかわらず、日頃から歯科検診を受けておきましょう。

参照元:厚生労働省|妊産婦における口腔健康管理の重要性p.2

周囲の理解を得る

妊娠中は、つわり(悪阻)や体調の変化などで業務に影響が出る可能性があるため、同僚や上司には早めに報告をし、理解を得ることが大切です。

報告により、周囲からの適切なサポートを受けやすくなり、安心して働ける環境を整えられます。

看護師が妊娠報告するタイミング

妊娠報告は、妊娠が判明したらなるべく早くすることが大切です。

ですが、妊娠初期は流産のリスクが高く、精神的にも不安定になりやすい時期であり、安定期に入るまで報告を控えたいと考える方もいるでしょう。

妊娠はセンシティブな報告でもあるため、無理に早く報告しなければと焦る必要はありません。

しかし、職場に早めに伝えることで、業務調整がしやすくなり、無理のない働き方が相談できるようになります。

さらに、業務の引継ぎや新たに看護師の採用をするかなど、職場では今後のことを検討しやすくなります。

とくに、悪阻がひどく休みの調整が必要な場合は自分自身の体と赤ちゃんを守るためにも、早めに報告しましょう。

看護師が上司・同僚へ妊娠報告するときの例文

妊娠報告の際は、落ち着いて、簡潔に伝えましょう。

また、体調や勤務について、具体的に伝えることも大切です。

以下は、看護師の方が上司、同僚へ報告するときの例文です。

上司への報告

お忙しいところ失礼いたします。私事で恐縮ですが、この度妊娠いたしました。現在○週目で、出産予定日は○月○日です。体調を見ながら、できる限りこれまで通り勤務したいと考えております。今後の状況によっては勤務時間の調整などを相談させていただくこともあるかと存じますが、ご理解ご協力をお願いいたします。

報告先は、まず直近の上司です。

上司には、シフトの調整や急な欠勤を依頼する可能性があることを伝え、誠意をもって報告しましょう。

同僚への報告

お時間いただきありがとうございます。実はこの度、妊娠しました。現在○週目で、出産予定日は○月○日です。体調を見ながら、これまで通り頑張っていきたいと思っています。ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。

妊娠に関する内容はセンシティブで、同僚のなかには不妊に悩む方、流産を経験した方がいるかもしれません。

そのため、報告の際は、態度や表情に配慮して端的に行いましょう。

看護師が妊娠したら知っておきたい制度

妊娠中も安心して働けるよう、法的にさまざまな制度が整備されています。

看護師の方が妊娠した場合に知っておきたい制度を2つ紹介します。

男女雇用機会均等法における母性健康管理措置

妊娠中や出産後の看護師が安心して働き続けられるよう、男女雇用機会均等法には母性健康管理に関する措置が定められています。

保健指導または健康診査受診のための時間の確保

妊娠中は、妊娠週数に応じた頻度で健康診査などを受けるための時間が確保されます。

  • 妊娠23週まで:4週間に1回
  • 妊娠24週~35週まで:2週間に1回
  • 妊娠36週~出産まで:1週間に1回

産後も、医師の指示に従って必要な時間が確保されます。

指導事項遵守のための措置

医師の指導を受けた場合、その指導を守れるよう、就業先により勤務時間の変更や勤務の軽減などの措置がとられます。

たとえば、以下があげられます。

  • 通勤緩和のための時差通勤や勤務時間の短縮
  • 休憩時間の延長や休憩回数の増加
  • 作業の制限や休業など

不利益取扱いの禁止

妊娠・出産・産前産後休業の取得、母性健康管理措置・母性保護措置を受けたことを理由とした解雇や不利益な扱いは禁止されています。

具体的には、以下のような行為が該当します。

  • 解雇や労働契約内容の変更の強要
  • 降格や減給、賞与の不利益な算定
  • 昇進・昇格での不利益な評価
  • 就業環境の悪化、自宅待機命令など

紛争解決

母性健康管理措置が講じられず、事業主と労働者の間にトラブルが生じた場合、調停などの紛争解決援助を申し出ることが可能です。

参照元:厚生労働省|働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

労働基準法における母性保護規定

労働基準法には、妊娠・出産に関わる女性労働者の健康を守るために、以下の規定があります。

  • 産前・産後休業:産前6週間(多胎妊娠は14週間)、産後8週間の休業
  • 軽易業務への転換
  • 危険有害業務の就業制限
  • 変形労働時間制の適用制限
  • 時間外・休日・深夜労働の制限
  • 育児時間の確保:子どもが1歳未満の場合、1日2回30分以上の育児時間を取得可能

これらの措置を受けるためには、妊婦本人が職場に申請する必要があります。

なお、産後6週間を経過後、本人の希望と医師の許可があれば、復帰することも可能です。

これらの規定に違反した場合、就業先には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

参照元:厚生労働省|働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

看護師の妊娠に関する手当・控除

妊娠・出産に際して、さまざまな手当・控除が用意されています。

代表的な手当・控除を紹介します。

出産育児一時金

出産育児一時金は、健康保険の被保険者または家族(被扶養者)が妊娠4ヶ月(85日)以上で出産した場合に支給されます(早産、死産、流産、人工妊娠中絶を含む)。

◼︎支給額

状況令和5年4月1日以降の出産
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠22週以降に出産1児につき50万円
・産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産 ・産科医療補償制度に加入の医療機関等で、妊娠22週未満で出産1児につき48.8万円
*産科医療補償制度:分娩時の何らかの理由により赤ちゃんが重度の脳性まひとなった場合、家族の経済的負担を補償する制度
参照元:全国保険健康協会|子どもが生まれたとき

出産育児一時金の支給方法は、多くの場合「直接支払制度」を利用できます。

「直接支払制度」は、被保険者または被扶養者の申請により、出産費用のうち支給額が医療機関に直接支払われる制度です。出産費用が支給額を超えた場合、差額を退院時に支払います。

そのため、この制度を利用すれば、出産費用を全額自己負担する としてまとまった額を用意する必要はありません。

出産費用が支給額を超えなかった場合には、加入する健康保険組合に申請し、差額を受け取ることが可能です。

出産手当金

出産のために休業する際、健康保険から出産手当金が支給されます。

◼︎支給期間

出産予定日または実際の出産日の42日前(多胎妊娠は98日前)から、出産翌日以後56日目まで

※出産日が予定日より遅れた場合、遅れた日数分も追加支給

◼︎支給額の計算式

(一番初めの給付支給日より前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均額)÷ 30日 × 2/3

受給するためには、「健康保険出産手当金支給申請書」を就業先に提出する必要があります。

なお、傷病手当金の受給対象となる場合、出産手当金より傷病手当金のほうが高ければ、その差額が支給されます。

参照元:全国健康保険協会|出産で会社を休んだとき

育児休業給付金

育児休業給付金は原則、1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得する場合、一定の要件を満たすと支給されます。

育児休業は、2回まで分割取得も可能です。

◼︎支給額

期間支給額
育児休業開始日~180日目休業開始前の賃金日額の67%
181日目~育児休業終了日休業開始前の賃金日額の50%
参照:厚生労働省|育児休業給付の内容と支給申請手続(令和7年1月1日改訂版)p.16

育児休業給付金の申請は、就業先を通じて行います。

また、令和7年4月1日から、以下の新しい給付金制度が創設されます。

  • 出生後休業支援給付金:父親が育休を利用する際に支給
  • 育児時短就業給付金:2歳未満の子どもを養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に支給

詳細は、厚生労働省のWebサイトをご確認ください。

参照元:厚生労働省|育児休業等給付について

医療費控除

医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)に自身または家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を行うことで所得控除を受けられる制度です。

この医療費には、妊娠・出産にかかった費用も含まれます。

◼︎控除を受ける条件

年間の医療費が10万円以上(所得が200万円未満の場合、所得の5%を超える金額)

確定申告後、5年間の領収書保管が必要です。

参照元:国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

さらに、医療費が高額になった場合は高額療養費の制度を利用することもできます。

看護師は妊娠何週目まで働ける?

産前休暇は、産前6週間(多胎妊娠は14週間)から取得できますが、これは必ず休まなければならない期間ではなく、体調が良好であれば、産前休業に入る直前まで働くことも可能です。

ただし、看護師は身体的・精神的に負担が大きい職種のため、自身の体調を最優先に考え、無理のない範囲で働くことが大切です。

参照元:厚生労働省|産前・産後の休業について

まとめ

看護師の仕事は肉体的にも精神的にも負担が大きいため、妊娠が判明したときには働き方を見直す必要があります。

周囲の理解を得るためにも、早めの妊娠報告が安心です。

日本では、働く妊婦のためにさまざまな制度や手当が用意されています。

安心して出産・育児へ臨めるよう、各制度・手当を把握し、積極的に活用していくことが大切です。

妊娠や出産は不安もありますが、産まれてくる赤ちゃんとの生活を楽しみに、健やかに過ごしましょう。

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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