精神科の看護師が病むの?7つの理由とその対処法、向いている人の特徴

「精神科の看護師は病む」という言葉を耳にしたことがある看護師もいるかもしれません。
実際に、精神疾患からくる患者さまの暴力や暴言、職場が閉鎖的な環境などから、精神科の看護師は心身ともに負担が大きく、悩みを抱えやすい職業と言われています。
この記事では、精神科の看護師が病んでしまう7つの理由とその対処法を詳しく解説します。また、精神科の看護師に向いている人の特徴やおすすめの転職先も紹介するため、自分に合った職場を見つけるきっかけとしてください。
精神科の看護師が病む7つの理由
精神科の看護師が病んでしまう理由は、おもに次の7つが挙げられます。
- 患者さまからの暴力や暴言がある
- 患者さまのネガティブな発言で落ち込む
- 患者さまとのコミュニケーションが難しい
- 閉鎖的な空間にストレスを感じる
- 精神科特有のルールがきつい
- 医療行為が少なくスキルアップしにくい
- 職場の方針と自分の看護観が合わない
まずは、これらの理由を理解して、適切に対処することで、心身の健康を保ちながら働けるでしょう。
患者さまからの暴力や暴言がある
精神疾患を抱える患者さまのなかには、感情のコントロールが難しい方もいます。そのため、看護師に対して暴力や暴言をふるってしまうことがあります。
たとえば、夜中に突然暴れだしたり、意味がわからないことを叫び出したりすると、看護師は心に大きな傷を負い、精神的に疲弊してしまうでしょう。
とくに、新人看護師や経験の浅い看護師は、患者さまからの暴力や暴言に戸惑い、深く傷ついてしまうことがあります。
また、患者さまのご家族から心無い言葉をかけられることもあります。患者さまのご家族は、病気に対する不安や心配から、看護師に感情をぶつけてしまうことがあるようです。
そのような言葉も看護師にとっては、大きな負担となります。
患者さまのネガティブな発言で落ち込む
精神科病棟では、患者さまのネガティブな発言を聞く機会が多くあります。
患者さまの苦しみや悲しみに寄り添うことは大切ですが、必要以上に感情移入すると、看護師もつらい気持ちになってしまいます。
具体的には、うつ病の患者さまの「死にたい」「消えてしまいたい」などのネガティブな発言が看護師の心に深く入り込み、無力感や絶望感を覚える方もいるでしょう。
自殺願望を口にする患者さまを見ると、看護師は大きな不安を感じ、眠れなくなってしまうこともあるようです。
患者さまとのコミュニケーションが難しい
精神疾患の種類や症状によっては、患者さまとスムーズなコミュニケーションがとれない場合があります。うまく意思疎通ができないと、患者さまとの信頼関係を築けず、看護師は無力だと感じてしまうでしょう。
たとえば、統合失調症の患者さまの場合、意欲や感情表現が減り、人とのかかわりを避けやすくなるため、関係性をうまく築けなくなります。
患者さまとのコミュニケーションの難しさは、看護師の自信を失わせ、自己肯定感を低下させてしまうことがあるかもしれません。
また、患者さまの中には、自分の気持ちをうまく表現できない方もいます。そのような患者さまに、看護師は辛抱強く寄り添い、患者さまのペースにあわせてかかわることが不可欠です。
閉鎖的な空間にストレスを感じる
精神科病棟は、閉鎖的な空間であることが多く、外との接触が限られます。
たとえば、閉鎖病棟で働く場合、出入り口は常にカギがかかっており、その都度解錠して出入りしなければなりません。そのような閉鎖的な空間は、看護師の心に圧迫感を与え、息苦しさを感じさせてしまうことがあります。
精神科特有のルールがきつい
精神科病棟には、患者さまの安全を守るための厳格なルールがあります。
たとえば、身体拘束や隔離で患者さまの行動を制限したり、患者さまのプライバシーを保護するために手続きが複雑であったりと、精神科特有のルールがあります。
それらのルールを守ることは大切ですが、制限されることにストレスを感じる看護師がいるかもしれません。
医療行為が少なくスキルアップしにくい
精神科では、点滴の投与や注射、傷の処置といった医療行為が少ないため「スキルアップしにくい」と感じる看護師もいます。
しかし、精神科看護には、患者さまの心をケアする高度なコミュニケーションスキルや観察力が求められます。精神科看護は、身体的な医療行為が少ない分、精神的なケアが重要です。
職場の方針と自分の看護観が合わない
看護師には、それぞれ理想の看護観があります。
しかし、職場の方針によっては、自分の看護観を十分に発揮できない場合があります。そのような状況が続くと、看護師としてのやりがいを見失い、モチベーションが低下してしまうでしょう。
職場の方針と自分の看護観のずれは、看護師のストレスの原因となるだけでなく、患者さまへのケアにも影響を与える可能性があります。
看護師は、自分の看護観を大切にしながらも、職場の方針とのバランスを取ることが重要です。
精神科の看護師が病む前に実践したい対処法
精神科の看護師として長く活躍するためには、病んでしまう前に適切に対処することが大切です。ここでは、具体的な対処法を7つご紹介します。
- 上司や同僚に相談する
- 休日にしっかりとリフレッシュする
- 患者さまからの暴力や暴言への対処法を学ぶ
- 院外の研修でスキルアップする
- 院内の産業医やカウンセラーに相談する
- 一時的に休職する
- 転職を検討する
これらを実践することで、心身の健康を保ちながら、長く精神科の看護師として活躍できます。
上司や同僚に相談する
悩みを抱え込まずに、上司や同僚に相談しましょう。
話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になり、アドバイスをもらえる可能性があるからです。上司や同僚は、あなたの状況を理解しサポートしてくれるでしょう。
また、相談することで、ほかの看護師の経験や考え方を知れるため、あなたの視野を広げ、新たな解決策が見つかるかもしれません。
休日にしっかりとリフレッシュする
心身を休ませるために、休日はしっかりとリフレッシュしましょう。
趣味を楽しんだり、旅行したりするのも良いでしょう。心身をリフレッシュすることで、新たな気持ちで仕事に取り組めます。
また、睡眠を十分とることも大切です。睡眠不足は、心身の疲労を蓄積させ、ストレスを感じやすくします。
患者さまからの暴力や暴言への対処法を学ぶ
患者さまからの暴力や暴言に適切に対処するためには、研修会や学会などに参加し、具体的な対処法を学べると、万が一のときに冷静に対応できるでしょう。
また、暴力や暴言を受けた際の記録の取り方や関係機関との連携についても学ぶことが大切です。
院外の研修でスキルアップする
精神科看護にかかわる院外の研修に参加して、スキルアップを目指すことで病まなくて済むかもしれません。
新しい知識やスキルを習得することで、自信を持って患者さまと向き合えるようになります。
また、研修でほかの病院や施設の看護師と交流することで、情報交換や悩みの共有でき、あなたの専門性を高めるだけでなく、モチベーション向上にもつながるでしょう。
院内の産業医やカウンセラーに相談する
心身に不調を感じたら、無理せずに院内の産業医やカウンセラーに相談することも大切です。
専門家のアドバイスを受けることで心の回復につながります。産業医やカウンセラーは、あなたの心身の状態を把握し、適切なアドバイスや治療を提供してくれます。
また、相談内容や個人情報については、厳守されるため安心してください。
一時的に休職する
心身の疲労が深刻な場合は、一時的に休職することも検討しましょう。
休養期間を設けることで、心身を回復させられます。休職は、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、自分自身を大切にするための勇気ある決断です。
休職期間中は、心身の回復に専念し、復職後の働き方について考える良い機会です。
転職を検討する
どうしても職場環境が合わない場合は、転職を検討することも視野に入れましょう。
より働きやすい環境を見つけることで、看護師として長く活躍できます。転職は、新たなスタートを切るチャンスです。
あなたの経験やスキルを活かせる職場を見つけ、より充実した看護師生活を送りましょう。
精神科の看護師に向いている人
精神科の看護師に向いている人には、次の特徴があります。
- 精神科領域に興味がある人
- 精神的にタフな人
- 長期的に患者さまに向き合える人
- 観察力や察する能力がある人
- ワークライフバランスを重視したい人
これらの特徴を持つ人は、精神科の看護師として活躍できる可能性が高いと言えます。
精神科領域に興味がある人
精神科領域に興味があり、患者さまの心に寄り添いたいという気持ちがある方は、精神科の看護師に向いています。
精神科領域への興味は、学習意欲を高め、困難な状況でも乗り越える力となります。また、患者さまの心に寄り添いたいという気持ちは、信頼関係を築き、より良いケアを提供するために不可欠です。
精神的にタフな人
精神科の看護師は、患者さまの感情に振り回されず、冷静に対応できる精神的なタフさが必要です。
また、精神的なタフさは、困難な状況にも立ち向かう力となります。
精神科の看護師は、患者さまの苦しみや悲しみに寄り添いながらも、自分自身の心をしっかりと保つ必要があります。
長期的に患者さまに向き合える人
精神疾患の治療は長期にわたることが多いため、患者さまに寄り添い、根気強く支援できる方が精神科の看護師に向いています。
患者さまの症状が改善したり、悪化したりするなかで患者さまの治療過程を長期的に見守り、支え続けることが大切です。
また、患者さまだけでなく、そのご家族の支援も必要となる場合があります。
観察力や察する能力がある人
患者さまの表情や言動から、心の状態を的確に観察しなければならないため、相手の気持ちを察する能力がある方は、精神科の看護師として活躍できます。
精神科の看護師は、患者さまの言葉だけでなく、表情や仕草、行動などからも心の状態を察しなければなりません。患者さまが言葉で表現できない気持ちを理解し、適切なケアを提供することが大切です。
また、患者さまの変化にいち早く気づき、対応することも重要です。
ワークライフバランスを重視したい人
精神科は、比較的残業が少なく、ワークライフバランスを重視したい方におすすめです。
精神科の看護師は、患者さまのケアだけでなく、自分自身の心身の健康も保つ必要があります。ワークライフバランスを重視することで、心身ともに健康な状態で患者さまに向き合えます。
ご家族や友人との時間、趣味や休息の時間も大切にすることで、より充実した人生を送れるでしょう。
精神科の看護師に向いていない人
精神科の看護師に向いている人がいる一方で、向いていない人もいます。
- 精神的に弱く切り替えがうまくない人
- 精神疾患に偏見がある人
- 自分の感情をコントロールできない人
- 医療処置にやりがいを感じる人
それぞれの特徴を見ていきましょう。
精神的に弱く切り替えがうまくない人
患者さまのネガティブな感情に影響されやすく、気持ちの切り替えが苦手な方は、精神科の看護師にはあまり向いていないかもしれません。
精神科の患者さまは、様々な悩みを抱えているため、看護師は患者さまのネガティブな感情に触れる機会が多くあります。
看護師自身がネガティブな感情に影響されやすく、気持ちの切り替えが苦手だと、心身ともに疲弊してしまう恐れがあります。
精神疾患に偏見がある人
精神疾患に対して偏見を持っている方は、患者さまに寄り添うことが難しく、精神科の看護師には不向きです。
精神疾患は、誰にでも起こりうる病気であるものの、未だに精神疾患に偏見を持っている方は少なくありません。
看護師自身が精神疾患に対して偏見を持っていると、患者さまを差別的に扱ってしまったり、適切なケアを提供できなかったりする可能性があります。
自分の感情をコントロールできない人
自分の感情をコントロールできず、患者さまに感情的に接してしまう方は、精神科の看護師として働くことは難しいでしょう。
精神科の看護師は、常に冷静さを保ち、患者さまに寄り添う必要があります。
しかし、自分の感情をコントロールできず、患者さまに感情的に接してしまうと、患者さまとの信頼関係が損なわれてしまうリスクがあります。
医療処置にやりがいを感じる人
精神科の看護師のおもな役割は、患者さまの心のケアです。
精神科では、身体的な医療処置が少ないため、そのような処置にやりがいを感じる方は、ほかの診療科の方が向いています。
精神科看護師におすすめの転職先と求人
精神科の看護師として、他の病院や施設への転職を考えている方もいるかもしれません。ここでは、おすすめの転職先を3つご紹介します。
- 訪問看護ステーション
- 病院の外来
- クリニック
それぞれ転職先の特徴を見ていきましょう。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、精神科看護師にとって、より利用者さまに寄り添い、じっくりとケアができる魅力的な転職先です。
また、近年では精神科に特化した訪問看護ステーションの需要が高まっていると言われているため、精神科での経験を活かして活躍できます。
訪問看護ステーションへの転職を検討している看護師は「NsPaceCareer」を活用してみてください。訪問看護に特化した求人サイトであり、豊富な求人から、あなたに合った職場を見つけられるでしょう。
病院の外来
病院外来では、患者さまの継続的な治療をサポートできます。
病棟と比べて、病院の外来では医療処置をおこなったり、急変に対応したりする機会が少ないため、無理なく勤務できるでしょう。また、夜勤もないため、身体の負担も少なく、ワークライフバランスを重視する看護師におすすめです。
クリニック
クリニックでは、患者さま一人ひとりにじっくりと向き合ったケアを提供できます。
病院の外来と同じように夜勤はなく、予約制のクリニックであると患者数が限られており時間外勤務も短い傾向です。
しかし、クリニックは看護師数が少ないため、即戦力を求められがちです。十分な教育を受けられないところもあるため、求人情報で看護師の配置基準や教育体制などをチェックしましょう。
「精神科の看護師は病むの?」と思う人からよくある質問
精神科の看護師に関するよくある質問をまとめました。
Q1:他病棟の看護師よりも精神科の看護師は病むの?
精神科の看護師が特に病みやすいというデータはありません。
しかし、精神科特有のストレスを抱えやすいことは事実です。精神科の看護師は、患者さまの感情に触れる機会が多く、精神的な負担が大きいと言えます。
Q2:精神科の看護師の年収はどれくらい?
精神科の看護師の年収は、ほかの診療科の看護師と大きく変わりません。
一般的に、看護師の年収は、経験年数や役職、勤務先によって異なり、精神科の看護師も同様に、経験やスキルによって年収が変わります。
ただし、精神科の看護師は、危険手当といった手当がつく可能性があります。そのため、この手当の分、年収が高くなる傾向です。
Q3:「精神科の看護師はレベル低い」と言われるのはなぜ?
精神科看護は、身体的な医療行為が少ないため、スキルが低いと思われがちです。
しかし、実際には高度なコミュニケーションスキルや観察力が必要であり、患者さまの心の状態を把握し、適切なケアを提供する必要があります。
精神科とほかの診療科では、求められるスキルと知識が異なるため、どちらのレベルが低い、高いと評価ができません。
まとめ:精神科の看護師は病みやすいから転職してより良い働き方を実現しよう
精神科の看護師は、患者さまの心のケアというやりがいのある仕事です。
しかし、精神的な負担が大きいことも事実です。あなたが精神科の看護師として悩みを抱えているなら、この記事で紹介した対処法を試してみてください。
転職も検討し、より良い働き方を実現しましょう。
<参考サイト・文献>

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