リエゾン看護師とは?6つの役割や給料、おもな活動場所を詳しく紹介

「リエゾン看護師ってなに?どういう役割があるの?」
リエゾン看護師という用語を聞いたことはあるものの、活動内容や役割を理解している看護師の方は少ないでしょう。
リエゾン看護師は、精神看護分野に特化した看護師を指し、患者ケアや医療スタッフのメンタルヘルス、教育などを担います。
この記事では、リエゾン看護師の役割や実際の活動内容、求人の探し方まで幅広くご紹介します。リエゾン看護師がどのように活躍しているのか、一から知りたい方はぜひ参考にしてください。
リエゾン看護師とは
リエゾン看護師とは、多くの場合「精神看護専門看護師」や「精神科認定看護師」を指します。
2024年12月時点で精神看護専門看護師は454名、2024年9月時点で精神科認定看護師は928名が登録されています。
リエゾン看護師は患者さまだけではなく、医療従事者のメンタルケアも担い、患者さまと医療従事者から求められる医療現場に不可欠な存在です。
リエゾン看護師が管理職に就くこともあり、今後その役割はさらに拡大すると期待されています。
リエゾン看護師の役割6つ
リエゾン看護師は、精神看護の専門知識や技術を活かし、精神的な問題や病気を抱える患者さまや医療スタッフに適切なケアを提供する役割を担っています。
おもな役割は、以下のとおりです。
- 患者さまやご家族の精神的サポート
- 医療スタッフへのコンサルテーション
- 看護師のメンタルヘルス支援
- 医療チームとの連携や調整
- 医療チームへの教育
- 臨床研究
くわしく解説します。
1.患者さまやご家族の精神的サポート
リエゾン看護師は、精神的な不調を抱える患者さまやご家族に対し、おもに以下の方法で心の健康をサポートします。
- 長く入院する患者さまへの退院支援
- 精神疾患をもつ患者さまへの直接的ケア
- 倫理的な問題を解決するためのケアや、医療スタッフ同士の調整
- 身体的な疾患の治療中に不安を抱える患者さまやご家族の相談や生活調整
こうした支援を通じて、患者さまとご家族の心理的な負担を軽減し、より質の高い医療を提供します。
2.医療チームやスタッフへのコンサルテーション
リエゾン看護師は、医療チーム内の精神看護の専門家として医療チームやスタッフへ、よりよいケア方法をアドバイス(コンサルテーション)します。おもなコンサルテーション内容は、以下のとおりです。
- 薬物治療に頼らない看護実践の促進
- 患者さまへの直接的な関わりを通じたケアの方向性の検討
- 精神看護の視点からのアセスメントやケア方法を病棟看護師へアドバイス
専門的な視点と実践的なアプローチにより、医療チーム全体の質を向上させます。
3.看護師のメンタルヘルス支援
リエゾン看護師は、病棟管理者や精神科医、臨床心理士と連携して、おもに個人面談を通じて看護師のメンタルヘルスをサポートします。
たとえば、管理者が「様子がおかしい」と感じた新人看護師に面談をおこない、必要に応じて休職や復職ができるように支援します。
精神的な負担の原因があれば丁寧に確認し、早期に対応することがリエゾン看護師の重要な役割です。
4.医療チームとの連携や調整
施設によって「精神科リエゾンチーム」が発足されていることもあり、リエゾン看護師はその中心的な存在として活動しています。
チームに所属する職種は、おもに以下のとおりです。
- 精神科医
- リエゾン看護師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
- 作業療法士
- 薬剤師
- 管理栄養士
多職種の専門家が集まって、質の高い精神医療を提供できるよう連携してサポートします。リエゾン看護師は、病棟看護師と情報共有しながら、チームへの橋渡し役として活動します。
5.医療チームへの教育
リエゾン看護師は、精神看護の専門知識を活かし、院内研修会の開催や最新知識の共有によって病院全体の精神医療サービスの質向上につなげます。
提供する専門知識の具体例は、以下のとおりです。
- 精神症状のマネジメント
- 精神科領域の薬物療法
- 精神疾患の理解とアセスメント
- 心理的ストレスとストレスマネジメント
- 精神的問題を抱える患者さまとのコミュニケーション技術
- 精神科患者さまの権利擁護や倫理的問題への対処法
このような教育を通じて、医療チーム全体の精神医療への理解を深め、より質の高いケアを提供できることを目指します。
6.臨床研究
リエゾン看護師は、専門知識や技術の向上、開発を図るために現場における研究活動をおこないます。具体的な研究は、以下のとおりです。
- リエゾンチームと一般病棟の連携のあり方
- リエゾン看護師による看護師へのメンタルケアの現状
- 「怒り」をあらわす患者さまに対するリエゾン看護師のかかわり
こうした実践を通してどのような変化が得られたかを研究し、エビデンスにもとづいた質の高い看護につなげます。
リエゾン看護師になるには
リエゾン看護師になるには、以下のどちらかの資格取得が望ましいでしょう。
- 精神看護専門看護師
- 精神科認定看護師
それぞれ資格取得までのルートが異なります。ひとつずつ見ていきましょう。
精神看護専門看護師
精神看護専門看護師は、日本看護協会が認定する資格です。
精神の病気を抱える方に専門的な看護を提供するだけでなく、一般病院でも心のケアを担う「リエゾン精神看護」としての役割を果たす目的で制定されました。取得条件や取得までの流れは、以下のとおりです。
項目 | ポイント |
取得条件 | ・看護系大学院(修士課程)を修了した者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師の教育課程基準で所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること ・実務経験が通算5年以上で、そのうち3年以上は精神看護分野の実務経験であること |
資格取得までの流れ | 1.看護系大学院の修士課程を修了する 2.専門看護師教育課程を修了する 3.専門看護師認定検査に合格する 4.専門看護師認定証を取得する |
資格を取得したら、精神科病院や総合病院の精神科、リエゾンチームがある病院などでリエゾン看護師として働けます。専門性の高さを活かして、管理職の立場からスタッフの教育をする役割が求められることもあるでしょう。
自身がどのように精神領域にかかわりたいかによって、就業先を検討してみてもよいかもしれません。
精神科認定看護師
精神科認定看護師とは、日本精神科看護協会の定める資格で、専門の研修を修了し認定試験に合格した精神科看護のスペシャリストです。以下の流れで資格を取得できます。
資格取得までの流れ | ポイント | |
1 | 受講資格審査 | 以下の受講資格をもつ方の中から小論文・書類選考で選抜 【受講資格】 1.日本の看護師免許を取得 2.看護師として通算5年以上働き、そのうち3年以上は精神科での実務経験 |
2 | 精神科認定看護師 教育課程の受講 | 約1年間で必要なカリキュラムを習得 |
3 | 認定試験 | 筆記試験、小論文、口頭試問の3つの項目で試験を受け、合格したら資格取得 |
4 | 更新 | 5年ごとの更新が必要 |
専門看護師と異なり、最終学歴が専門学校や短期大学の場合も、看護師の実務経験があると受講資格を得られます。そのため、より早くリエゾン看護師として働きたい方は認定看護師を目指しましょう。
認定看護師は、病棟看護師と兼任してリエゾン業務を担うことも少なくありません。
リエゾン看護師に特化して働きたい方は「リエゾン看護師」を募集している医療機関への転職も視野に入れると理想の働き方につながります。

リエゾン看護師の給料
精神看護専門看護師や精神科認定看護師の分野別の給料は明らかになっていません。
ただし「2022年度専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」によると、以下の結果であり、リエゾン看護師もこの給料に相当すると考えられます。
項目 | 専門看護師 | 認定看護師 |
平均基本給月額 | 33万1,456円 | 31万9,013円 |
平均給与総月額 | 43万5,291円 | 42万9,170円 |
同年の厚生労働省の調査では、一般の看護師の平均月収は35万1,600円(きまって支給す
る現金給与額)とされています。そのため、一般的な看護師と比べて、リエゾン看護師の給料は高い傾向です。
また、資格の取得によって手当が発生するかは施設によって異なります。毎月手当の支給があった場合、専門看護師は月額平均1万1,279円、認定看護師は8,530円です。
リエゾン看護師の活動場所
リエゾン看護師は、訪問看護ステーションや病院をはじめとする医療施設で活躍しています。活動場所ごとのリエゾン看護師の活動について、見ていきましょう。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションには、医師の指示にもとづいてケアをする「精神科訪問看護」があり、ここでリエゾン看護師が中心となって活動します。
リエゾン看護師は、訪問看護の現場で精神的なサポートをおこない、その専門性を活かしています。おもな活動内容は以下のとおりです。
リエゾン看護師の役割 | おもな活動内容 |
精神の病気を抱える利用者さまへのメンタルケア | ・自宅で安心して過ごせるように、心のケアをおこなう ・主治医や多職種と連携しながら、症状の変化に応じて対応する |
訪問看護スタッフへの教育・指導 | ・経験が浅い看護師に対して、利用者さまへの対応方法や、症状が悪化したときの対応を助言する |
社会とのつながりの構築 | ・福祉サービスや地域支援機関と連携し、社会とのつながりを築くためにサポートする ・利用者さまが孤立せず、おだやかに生活できる環境を整える |
リエゾン看護師は、精神の病気を抱える利用者さまの生活を支えるだけでなく、訪問看護スタッフや地域と連携し、より質の高い精神科訪問看護の実現に貢献しています。
医療施設
リエゾン看護師は、病院や診療所などの医療施設において精神科の専門知識を活かし、以下の立場で患者さまや医療スタッフを支援します。
- 病棟管理者
- 看護部長直属の部下
- 精神科の外来看護師
- 病棟スタッフとの兼務
- 地域連携室専属の看護師
入院患者さまの精神的ケアや退院後の生活を見据えた環境調整、家族支援などをおこないます。
また、看護師や医師に向けた教育やコンサルテーションを通じ、ケアの質を向上させ、橋渡し役として精神科と一般診療科で多職種がスムーズに連携できるように調整します。
リエゾン看護師に向いている人の特徴
リエゾン看護師は、患者さまの心に寄り添いながら、専門的なケアを提供する役割を担います。そのため、以下の特徴がある方がリエゾン看護師に向いているといえるでしょう。
- 患者さまに辛抱強く寄り添える
- 高いコミュニケーション能力がある
- 患者さまの心のサポートに関心がある
- 一人ひとりに合わせたケアを提供したい
- 日常生活のサポートをおこなう体力がある
患者さまの気持ちを理解し、チームで協力しながら最適なケアを考える姿勢が大切です。
リエゾン看護師の求人を探す方法
リエゾン看護師の求人は、以下の方法で検索してみましょう。
- 検索エンジンから探す
- 看護師専門の転職サイトや転職エージェントを活用する
紹介する方法を参考に実際に調べてみると、リエゾン看護師の需要が見えてきます。
ぜひ試してみてください。
検索エンジンから探す
GoogleやYahoo!などの検索エンジンを使うと、リエゾン看護師の幅広い求人情報を見つけられます。
ただし「リエゾン看護師」と検索してしまうと求人数が限られるため「精神科 看護師」と入力して、より多くの求人を比較しましょう。
また、専門看護師や認定看護師の資格を持っていると採用の可能性が高まるうえに、資格手当をはじめとする待遇が受けられることもあります。
まずは検索し、希望に合う求人があるか確認してみてください。
看護師専門の転職サイトや転職エージェントを活用する
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転職サイトは自分のペースで仕事を探したい方に、転職エージェントは転職活動に時間を割けない忙しい方に向いています。
自分に合った転職方法を見つけ、キャリアアップへの第一歩を踏み出しましょう。
リエゾン看護師は精神科看護のプロ!役割を知りキャリアの可能性を広げよう
リエゾン看護師は、精神科看護の専門家として患者さまやご家族の精神的サポート、医療スタッフのメンタルヘルス支援など多岐にわたる役割を担います。
とくに、医療チームとの連携や病棟看護師へのコンサルテーションを通じ、より質の高いケアを提供する重要な存在です。
管理職としての活躍も増え、今後さらなる発展が期待されます。リエゾン看護師の役割を知り、キャリアの可能性を広げましょう。
<参考サイト・文献>
都道府県別専門看護師登録者数(日本地図版)2024年12月現在|日本看護協会精神科認定看護師全国データ 精神科認定看護師制度|日精看オンライン

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