慢性期看護とは?大切なこと3つや慢性期看護のやりがいを紹介

「慢性期看護ではどのようなケアをするの?」「慢性期看護で大切なことは何?」
このように疑問を感じている看護師の方もいるでしょう。
慢性期病棟では、ケアやリハビリテーションをおこなうことで、病気の再発予防や在宅へ復帰を目指します。急性期のような目まぐるしい医療現場とは異なり、慢性期病棟では時間がゆっくり流れているように感じるかもしれません。
しかし、慢性期看護には奥深い知識とスキル、患者さまに寄り添う温かい心が求められます。
この記事では、慢性期看護の役割や特徴、急性期看護との違い、そして慢性期看護で大切なこと3つを解説します。この記事を読むことで、慢性期看護の理解を深め、魅力や奥深さを感じていただけるでしょう。
慢性期看護とは?
慢性期看護とは、急性期の治療を終えた患者さまや、病状が安定しているものの長期的な療養が必要な患者さまに対しておこなわれるケアのことです。ここでは次の3つを解説します。
- 慢性期看護の役割
- 慢性期看護の患者さまの特徴
- 慢性期看護と急性期看護との違い
慢性的な病気を持つ患者さまのQOL向上をサポートし、その人らしい生活を送れるように支えることを目的としています。それぞれを詳しくみていきましょう。
慢性期看護の役割
慢性期看護の役割は、次のとおりで多岐にわたります。
- 病状の管理と合併症の予防
- 日常生活の支援
- 心理的なサポート
- リハビリテーションの促進
- ご家族への支援
慢性期看護では、患者さまの身体的なケアだけでなく、精神的なケアもおこない生活全体を支えることが役割のひとつです。
具体的には、患者さまの不安や悩みに共感することで信頼関係を築き、安心して療養生活を送れるように援助します。
また、退院後の生活を見据えて、患者さまやご家族に対して生活習慣の改善や自己管理の方法など情報提供や指導をおこなうことも慢性期看護の大切な役割といえるでしょう。
慢性期看護の患者さまの特徴
慢性期看護の対象となる患者さまは、慢性的な病気を持つ方や長期的な療養が必要な方です。
たとえば、糖尿病や腎臓病をはじめ、脳血管障害の後遺症や関節リウマチなどを持つ患者さまや、高齢で身体機能が低下している患者さまなどが挙げられます。
慢性期看護の対象の患者さまは、症状は安定していても、継続的な治療が必要であり、入退院を繰り返す患者さまが多いのが特徴です。
慢性期看護と急性期看護との違い
慢性期と急性期の違いは、次の表のとおりです。
医療機関の名称 | 医療機能の内容 |
急性期 | 急性期の患者さまが早期に状態が安定するように医療を提供する機能 |
慢性期 | 長期にわたって療養が不可欠な患者さまが入院する機能 |
急性期看護は、病状が不安定な患者さまに救命や症状の緩和を目的とした集中的な治療をおこなうため、迅速な判断が求められます。
一方、慢性期看護では、長期的な視点に立ってケアすることが重要です。
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慢性期看護で大切なこと3つ
ここでは、慢性期看護で大切なことを3つ説明します。
- 小さな変化に気づき対応すること
- 患者さまの気持ちに寄り添うこと
- 退院後の生活を見据えてケアすること
それぞれのポイントをみていきましょう。
小さな変化に気づき対応すること
慢性期看護で大切なことは、患者さまのわずかな変化に気づき、適切に対応することです。
認知症や寝たきりの患者さまが多く、自分の症状をうまく伝えられない方もいるからです。
患者さまの表情や言動、バイタルサインの変化など些細なことでも見逃さずに観察する必要があります、症状の悪化や合併症の早期発見に努めることが慢性期看護では大切です。
患者さまの気持ちに寄り添うこと
慢性期看護では、患者さまの気持ちに寄り添い、精神的なサポートをおこなうことが求められます。
患者さまは、病気と長く付き合っていくなかで、さまざまな不安や悩みを抱えているからです。病状の変化や自身の将来、ご家族の負担などの不安を強く感じ、治療にネガティブなっている患者さまもいるでしょう。
看護師が患者さまに寄り添い気持ちを打ち明けられる関係性を築くことで、治療やケアにポジティブに取り組めるようにすることも、慢性期看護で大切なことです。
退院後の生活を見据えてケアすること
慢性期看護では、退院後の生活を見据えて、患者さまやご家族に情報を提供したり、指導したりします。
退院して自宅で生活することは、次のように患者さまが自身で管理しなければならないことが増えるため、患者さまにとって大きな変化です。
- 病状の自己管理
- 生活習慣の改善
- 薬の管理
- 定期的な通院
退院後の生活を想定して、看護師のほかに、リハビリテーションのスタッフや栄養士などチームで支援して、自宅で安心して生活できるようにサポートすることが大切です。
慢性期看護でのやりがいやメリット
ここでは、慢性期看護でのやりがいやメリットを紹介します。
- 患者さまとじっくり向き合える
- 患者さまを長期的にサポートできる
- ベテラン看護師から学びの機会が多い
- ワークライフバランスを整えやすい
それぞれをみていきましょう。
患者さまとじっくり向き合える
慢性期看護の魅力は、患者さまに長期的にケアするため、じっくりと向き合い信頼関係を築けることです。
具体的には、患者さまの話をゆっくり聞き、趣味や好きなこと、ご家族との関係性などを深く理解できるため、患者さまへのケアがきめ細やかになります。
ただし、慢性期でも認知症の方や要介護度が重い方を対象とする病院もあり、目が離しにくかったり、頻回なケアが必要になったりして、じっくり向き合えない場合があります。
そのような状況でも、チームで患者さまをサポートして、患者さまに寄り添える時間を少しでも確保することが大切です。多職種と連携し患者さまにより良いケアを提供できる体制を整えましょう。
患者さまを長期的にサポートできる
慢性期看護では、患者さまの病状や生活の変化に合わせて、長期間にわたってサポートできるのが魅力です。
たとえば、糖尿病の患者さまの場合、血糖値の変動に合わせて、食事療法や運動療法の指導をおこなったり、医師と連携して薬を調整したりします。
また、高齢で身体機能が低下している患者さまの場合、日常生活の支援やリハビリテーションの提案、福祉用具の選定などをおこないます。
患者さまのQOL向上に貢献していることを実感でき、やりがいを感じられるでしょう。
ベテラン看護師から学びの機会が多い
慢性期看護の現場では、経験豊富なベテラン看護師の方から次のような特有の知識やスキルなどを学べます。
- 慢性疾患の管理
- 褥瘡の予防
- 認知症患者とのコミュニケーション
急性期看護に比べて、慢性期看護では、比較的落ち着いた環境で働けるため、ベテラン看護師からしっかりと指導を受けられるでしょう。
また、患者さまへの接し方や言葉遣い、倫理的な判断などを学ぶことで、看護師としてスキルアップできます。
ワークライフバランスを整えやすい
慢性期看護は、比較的残業が少なく、ワークライフバランスを整えやすいというメリットがあります。プライベートな時間を確保しやすく、心身とともにゆとりを持って働けるのが特徴です。
急性期看護では、患者さまの状態が急変する機会が多く、緊急手術や緊急入院の対応などに追われ、時間外勤務が増えがちです。
対して、慢性期看護では、患者さまの状態が安定し、緊急対応があまりないため、時間外勤務が少ない傾向です。
ワークライフバランスを整えることは、看護師の方が長く働き続けるために重要です。プライベートな時間を充実させることでリフレッシュでき、質の高いケアを提供できるでしょう。
慢性期看護での大変なことやデメリット
慢性期看護のやりがいやメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 急性期と比べて医療行為をする機会が少ない
- 身体的な負担が大きくなりやすい
それぞれを詳しくみていきましょう。
急性期と比べて医療行為をする機会が少ない
急性期看護に比べて、慢性期看護では、医療行為をする機会が少ないため、スキルの維持が難しいと感じる看護師の方もいます。
たとえば、注射や点滴、創傷処置といった急性期で経験する医療行為の頻度が減ります。
身体的な負担が大きくなりやすい
慢性期看護では、体位変換やおむつ交換、入浴介助など患者さまの身体的なケアをおこなうことが多く、負担が大きくなりがちです。
日本看護協会「2010年病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査」によると、看護師の方は次のような症状を自覚していることが明らかになりました。
自覚症状 | 割合 |
肩こり | 59.8% |
腰痛 | 44.3% |
疲れ目 | 39.3% |
頭痛 | 33.4% |
倦怠感 | 31.1% |
とくに、要介護度の高い患者さまや、身体機能が低下している患者さまのケアの場面では、より多くの体力が必要です。
身体の負担が大きくなりやすいことは、慢性期看護のデメリットといえます。
慢性期看護に向いている人の特徴
慢性期看護に向いているのは、次の特徴がある方です。
- 患者さんとゆっくりと向き合いたい
- コミュニケーションスキルが高い
- サポートすることにやりがいを感じる
それぞれを詳しくみていきましょう。
患者さんとゆっくりと向き合いたい
患者さまと長期的な関係を築き、じっくりと向き合いたいという方が慢性期看護に向いています。
たとえば、認知症の患者さまには、昔の思い出話を聞いたり、好きな音楽をかけたりして、精神的に安定するようにケアします。
急性期看護では、患者さまの命を救うことが最優先されますが、慢性期看護では、患者さまの生活をサポートすることが重要です。そのため、患者さんとゆっくり向き合いたいという看護師の方が慢性期看護に向いているでしょう。
コミュニケーションスキルが高い
慢性期看護では、患者さまや家族とのコミュニケーションが不可欠です。
患者さまの気持ちを理解し、退院後の生活をイメージしながら指導をおこなうために、高いコミュニケーションスキルが求められます。
患者さまやご家族が病状や治療、生活習慣の改善方法を理解できるように、資料を用いて分かりやすい言葉で伝えるような工夫が必要です。
サポートすることにやりがいを感じる
慢性期看護は、患者さまの生活を支える仕事です。
患者さまの日常生活の支援や心理的なサポート、退院後の生活を見据えた指導など、慢性期看護の仕事内容は多岐に渡ります。
これらのサポートを通して、患者さまのQOL向上に貢献できることにやりがいを感じる方が、慢性期看護に向いているといえます。
慢性期看護は学びが多く患者さまとじっくり向き合える場
慢性期看護は、患者さまとじっくり向き合い、その人らしい生活をサポートするやりがいのある仕事です。
大変なこともありますが、慢性期看護は学びが多く、患者さまとともに成長できる場です。
また、訪問看護は慢性期の利用者さまが多く、じっくり向き合える場として適しています。
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<参考サイト・文献>

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