地域に根差した訪問看護ステーションであるために~大切にしているのは『考える看護』 リハビリ訪問看護ステーションNEXTかとり 高橋さんにインタビュー~

公開日:2025/01/30 更新日:2025/01/30
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これまで、長い年月にわたり訪問看護に携われてきた高橋さん。訪問看護を通してご自身の看護観を見つめなおしたり、地域貢献のために精力的に活動されたりしています。

高橋さんが訪問看護に長く携わることになったきっかけや訪問看護に感じる魅力についてうかがいました。

病院での看護師経験を積んだのち、興味を持った在宅の分野へ。訪問看護師のキャリアが始まる

看護専門学校を卒業後、8年間総合病院に務めました。その間に産休・育休を取ったあと、子育てと看護師の夜勤の両立の壁に当たって、退職を考えたときがありました。そのときに自分の看護師としてのキャリアを考え始めました。

当時はちょうど2000年あたりで介護保険制度が作られ始めた時期というのもあり、介護支援専門員の資格をとってみようと思いました。そこから自分の今後のキャリアが在宅医療の方向にシフトチェンジしていきました。

訪問看護の存在を知ったのも、実は介護支援専門員の資格をとるときでした。私が看護学校に通っていた頃には在宅看護論という授業がなかったので、看護師として地域に出るイメージはあまりなかったです。

介護支援専門員の試験を受けたあたりから、利用者さんが自宅でどんな風に過ごしているのかもっと知りたいと思うようになりました。そんなとき、偶然にも訪問看護ステーションの方からお誘いをいただき、それがきっかけとなり、訪問看護の道に進みました。

訪問看護ステーションでの勤務は現在で2か所目になります。1か所目はスタッフとして勤務しており、十数年いろいろ学ばせてもらいました。今度は違う場所でキャリアアップができないかと考えていたタイミングで当事業所との出会いがあり、転職のきっかけになりました。

当事業所の経営者は地域貢献を大切にしており、精力的に活動しているところに心惹かれました。

管理者としての採用というところで不安はありましたが、これまでの経験から自分が役立つことがあるかなと思い入職しました。

笑顔で看護師経験をお話しされる高橋さん

訪問看護での利用者さんとの出会い。看護観が変わるきっかけに

訪問看護で働き始めた頃に、あるALSの利用者さんと出会いました。その方からドキッとするようなひとことをいただいたのは今でも忘れられません。

その方は胃ろうがあって栄養の注入はされていましたが、呼吸に関しての延命処置の希望はされていませんでした。

病状が進行して呼吸が苦しくなってきたときに「苦しければ気管切開や呼吸器をつければまだまだ生きていくことができますよ」と、私は利用者さんに一般的なことをお話してきましたが、そうしたら「苦しいのは私(利用者さん)ではなくて、高橋さんでしょ」って言われたんです。

身体的に苦しいのは違いないけれど、自分の今後は自分ですべて決めているからこれでいい、という利用者さんの想い。命の選択にどう向き合うべきか、頭を殴られたような衝撃を受けましたし、自分の看護観が変わるきっかけにもなりました。

その利用者さんとの出会いもあり、看護師としての自分を見つめ直した結果、訪問看護の認定看護師に興味を持ちました。訪問看護を学べば学ぶほど、看護の原点は在宅にあるのではないかなという思いが強くなりました。利用者さんの人生の最期まで関わる訪問看護の奥深さに魅了され、歴はもう20年近くなります。

医療者として地域を支えるために。困ったときに気軽に相談できる場所でありたい

厚生労働省が推進している地域包括ケアシステムをもとに、私自身も「地域は地域で支えたい」という強い思いがあります。事業所としても地域貢献を大切にしていて、近隣の高校に福祉についての講義をしたり、Instagramで情報発信したりしています。できるだけ自分の働いている地域や住んでいる地域において、医療職として貢献できたらいいなと考えています。

病院だとナースコールをすれば看護師がきてくれるという安心感があります。地域でも訪問看護ステーションや地域包括支援センターなど、ちょっと声をかけるだけで来てくれるとか、誰かが訪問で回っているときにちょっと様子見てくれるとか、誰かが見守ってくれているという安心感を地域で作ることができればいいなと思います。

地域に関わるということは、高齢者だけでなく若い世代にも関わるということです。

たとえば、おじいちゃんやおばあちゃんと同居している子どもたちが私たちとの関わりをみて「地域にはこうして助けてくれる人がいるんだ」「こんな地域やつながりがあるんだ」ということを知ってもらうということです。

そうすると自然と「地域で暮らしている」ということを実感できると思います。当事業所が「困ったときには地域で相談にのってくれるところがある」というような場でありたいと思っています。

患者さんのため、日々奮闘されています

病院と地域で求められる看護師の役割の違い。考える看護を大切に

訪問看護をやりたいという人は多いけど、実際には担い手が増えないという現状があります。やっぱり病院とは違って、看護師がひとりで利用者さんのもとへ行って、ひとりで判断するという責任感が大きいところを私自身も実感しました。

病院と地域では、看護師としての役割や求められるものが違ってきます。

私自身、訪問看護で経験を積んでいくなかで、今は「考える看護」を大切にしています。

病院だと医師の指示を受けて医療やケアを提供するという、医師との決まりのなかで看護師が動くという印象がありました。たとえば、病院だと「血圧が180を超えたら降圧薬を内服する」という医師からの指示が入院時から出ます。それを「血圧が高いときは下げないといけないからだ」と解釈して指示を受け取るというのが私の臨床経験でした。

だけど、訪問看護としては薬を処方した主治医の意図や薬を内服したあとの観察項目、報告内容などまで考えています。病院のように何かあればすぐ先生に来てもらえるわけではないので、訪問看護の役割は大きいですし、そこで、利用者さんの情報や自身の知識をどれだけ持って考えられるかというのがとても大事だと思っています。

あと、病院とは違う点でいうと自宅では「利用者さんの生活がある」ということです。利用者さんが実はお酒を飲んでいたり、農作物が気になって見に行っていたり、生活の中で体調や症状がどのように変化しているのかという視点も忘れてはいけないなと思っています。

それに加えて、利用者さんのこれまでの人生や大事にされていることがあります。たとえば病院では飲酒は禁止ですが、自宅であれば「少しならいいよ」と言えることもあります。利用者さんの病気や身体だけじゃなくて、生活・生き方・考え方などを含めて理解していかないといけないところが病院と違うところであり、訪問看護の面白さでもあります。

利用者さんの心身だけでなく生活も含めて自分で考え、医師と連携して治療やケアにつながり、その成果が利用者さんに還元されたときに、訪問看護ならではの達成感ややりがいを感じます。

働きやすい職場づくり。スタッフみんなが同じ立場でコミュニケーションがとれる環境

週1回スタッフみんなで集まって、業務時間内に30〜45分ほどカンファレンスの時間をとっています。カンファレンスの進行係は担当制にしています。管理者の私が提案するのではなくて、スタッフ主導でやってもらいます。カンファレンスの進行の経験は、いろんな場面で役立つと考えています。たとえば主治医へ報告するときに、自分が得た情報や判断に迷っていること、どういう指示がほしいのかということを的確に伝える訓練になると思っています。

カンファレンスではスタッフ個人の悩みや迷いもみんなの前で話せるように「迷っている理由」や「この先の行動」をみんなで考えるように心がけています。ひとりで抱え込むのではなくて、迷ったときには何でも聞いて相談できる関係づくりを大切にしていますね。管理者や決まった人が発言するのではなくて、どのスタッフでも同じ環境の中で話ができるというステーションでありたいと思っています。

当事業所のスタッフの年代はさまざまで、私より年上のスタッフもいます。そのスタッフは私よりずっと臨床経験が長いですが、自分の看護師人生を考えたときに、興味があった訪問看護をしてみたいという想いからうちのステーションに入って来てくれました。

看護の経験が人それぞれあるように、訪問看護の経験も人それぞれです。病院だと看護の経験年数で先輩や後輩ができますが、訪問看護では、自分より年下でも訪問看護の経験が長い人が出てきます。看護師の経験が長いからといって意見が正しいとか、年齢が若いからといって言っていることが間違っているとか、そうではないケースが訪問看護のなかにはあったりします。

いろんな経験を持ったスタッフの集まりなので、病院のような上下関係はなくして、スタッフみんながどの立場でも同じように意見を言っていけるような環境を作っていきたいです。

スタッフが経験を惜しみなく教えあうのも「リハビリ訪問看護ステーションNEXTかとり」の特徴です

地域に貢献していきたい。住民みんなが集える場所づくりを目指して

私自身の今後の目標として、地域の小中学生の教育の現場で訪問看護としてできることはないかなと考えています。

たとえば、自宅で人が亡くなるという経験って、なかなかないと思います。これから高齢化社会の中で、おうちで人が亡くなっていくことも増えていくと思いますし、そういうところに関して、小中学生のうちから丁寧にお伝えしていきたいです。

ほかにも、訪問看護を通してだと病気や障害を抱えている方との関りがほとんどですが、暮らしの保健室のような、どんな方でも悩みごとを相談できたり、気軽に人と関わりに来たりできる場所が作れたらいいなと思っています。

インタビュアーより

長く訪問看護に携わられてきた高橋さん。「自分で考える看護」や「地域貢献」への熱い想いが印象的でした。

地域に根付いた事業所であるために、訪問看護ステーションのご利用者様だけでなく、住民の皆様とのつながりも大切にしながら、精力的に活動されています。

若いスタッフの方も活躍されており、お互いに切磋琢磨しながら成長していけるステーション様です。

事業所概要

リハビリ訪問看護ステーションNEXTかとり

住所:千葉県香取市野田1953‐31

運営方針・理念:

「熱意・真心・謙虚・感謝・恩返し」の行動理念をもとに、スタッフ一人ひとりが想いを持ち、考え、行動できることを目指しています。

スタッフのワークライフバランスを大切にし、誰もが働きやすく、自分らしさを発揮できる職場づくりを心がけています。

そして、地域共生に向けて、地域の皆様との対話を大切に、創意工夫しながら行動していきます。

事業所紹介ページ:https://ns-pace-career.com/facilities/14338

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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