助産師と看護師の違い10個!どっちが大変と言われるのか理由を紹介
助産師と看護師は、どちらも医療現場で重要な役割を担う職業です。
患者さまの入院生活を支援して、健康を守ったり治療をサポートしたりするなど役割は共通しています。
しかし、助産師と看護師では、ケアの対象者や業務内容が異なるため、求められる知識やスキル、働き方に違いがあります。
この記事では、助産師と看護師の違いについて、養成課程から仕事内容や年収、将来性までを詳しく解説します。助産師と看護師の違いを明らかにして、ご自身のキャリア選択に役立てていただければ幸いです。
助産師と看護師の10個の違い
助産師の方は、妊娠や出産という周産期に寄り添い、母子の健康を支えるスペシャリストです。一方、看護師の方は、病気やケガで苦しむ患者さまに対し、幅広い医療知識と看護技術を用いてケアを提供します。ここでは、次のポイントで違いを深堀りしていきます。
- 養成学校の違い
- 資格の違い
- 就業人数の違い
- ケアの対象者の違い
- 仕事内容の違い
- 年収の違い
- 職場や配属先の違い
- 求人数の違い
- 将来性の違い
- きついところの違い
それぞれを詳しくみていきましょう。
養成学校の違い
助産師と看護師では、次の表のように通う養成学校が違います。
職種 | 通う養成学校 |
看護師 | ・看護大学4年 ・看護短期大学3年 ・看護師養成所3年または4年 ・5年一貫看護師養成課程校 |
助産師 | ・看護系大学院2年 ・看護大学専攻科・別科1年 ・看護大学4年 ・看護短期大学専攻科1年 ・助産師養成所1年 |
助産師を目指す方は、看護師としての基礎をしっかりと身につけたうえで、妊娠・出産の生理学や新生児のケア、母性看護など専門的な知識とスキルを高めることが求められます。
資格の違い
助産師と看護師は、いずれも厚生労働大臣から免許を受けますが、働くために必要な資格が異なります。
- 看護師:看護師国家資格
- 助産師:看護師国家資格+助産師国家資格
助産師になるには、まず看護師の資格が必須で、1年以上の教育を受ける、もしくは看護師国家試験の際にダブル受験という形で助産師国家試験に合格しなければなりません。
その一方で、看護師になるには、看護系の大学もしくは、3年以上の教育を受けて、看護師国家試験に合格することが求められます。
就業人数の違い
助産師と看護師では、就業している人の数に大きな差があります。
厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、就業している助産師や看護師の数は次のとおりです。
- 助産師:3万8,063人(令和2年よりも+123人)
- 看護師:131万1,687人(令和2年よりも+3万776 人)
看護師の方のほうが、圧倒的に人数が多いです。これは、助産師になるためには、看護師と助産師、両方の資格が必要であり、資格の取得が難しいことが理由のひとつといえます。
ケアの対象者の違い
助産師と看護師では、ケアをする対象者が違います。
- 看護師:病気やケガをした方をはじめとしたすべての方
- 助産師:妊産婦さんと生まれたばかりの赤ちゃんをはじめとしたすべての方
看護師の方は、幅広い年代の患者さまをケアします。一方、助産師の方は妊婦さんや赤ちゃんを中心にケアをします。
仕事内容の違い
助産師と看護師では、仕事内容にも違いがあります。
- 助産師:出産介助や妊産婦さんの保健指導、新生児のケアなど
- 看護師:患者さまの診療の補助や日常生活の援助など
これらはそれぞれ法律で規定されていることです。具体的には、助産師の方は、出産のサポートを中心に、妊娠中から産後までの母子の健康を守るという仕事をおこないます。
対して、看護師の方は、医師の診療を補助したり、患者さまの身の回りのお世話をしたりします。患者さまのバイタルサインの測定や薬の投与、点滴の管理など幅広い仕事内容です。
年収の違い
助産師と看護師では、次のように年収に差があります。
- 助産師の年収:566万9,500円
- 看護師の年収:508万1,700円
看護師の方と比べると、助産師の方が平均年収は高い傾向にあります。助産師と看護師の年収について、さらに詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
関連記事:助産師と看護師の年収の違いとは?手取りや年代別の給料も詳しく解説
職場や配属先の違い
助産師と看護師では、働く場所が違います。それぞれ見ていきましょう。
職種 | 病院 | 診療所 | 助産所 | 訪問看護ステーション | 介護施設等 |
助産師 | 60.7% | 23.0% | 6.4% | 0.1% | - |
看護師 | 67.8% | 13.7% | 0% | 5.4% | 7.7% |
助産師の方は、出産に関わる施設がおもな職場です。看護師の方は大学病院や総合病院、クリニック、訪問看護ステーションなど働く場所は多岐に渡ります。
求人数の違い
助産師と看護師では、求人の数に違いがあります。
厚生労働省の「職業情報提供サイト」の調査によると、令和5年度におけるそれぞれの有効求人倍率は次のとおりです。
- 助産師:1.35倍
- 看護師:2.31倍
助産師の方と比べて、看護師の方の求人数が多い傾向です。というのも、さまざまな場所で看護師の方は働くことができ、求められやすいことが理由のひとつです。
看護師は、慢性的な人手不足の状態が続いており、常に多くの求人があります。助産師は、求人数は看護師に比べて少ないですが、近年は助産師の需要も高まってきています。
将来性の違い
助産師も看護師も、医療の現場では欠かせない存在であるため、将来性のある仕事といえます。
少子高齢化が進んでいるものの産科医が不足していること、高齢出産に対応したケアのスキルが求められる機会が増えたことなどから、今後も助産師の需要は高まると考えられます。
また、一般的に高齢になるほど病気になりやすかったり、運動機能が低下してケガをしやすかったりするため、高齢化社会において、看護師の需要も高まることが予想されます。
きついところの違い
助産師と看護師では、仕事の大変さに違いがあります。
助産師の方は、出産という予測できない状況に対応しなければならず、出産が深夜や休日になり不規則な勤務になりがちであるため「きつい」と感じやすいです。
しかし、赤ちゃんが生まれるという何者にも代えがたい喜びの瞬間に立ち会えます。
一方で、看護師の方は、夜勤や長時間勤務などを求められ、患者さまの状態に合わせて臨機応変に対応する必要があります。ときには、患者さまが助からない場面もあり、精神的なきつさを感じるでしょう。
ですが、患者さまが回復して退院していく姿を見たり、患者さまから「ありがとうございます」と感謝の言葉を言われたりする瞬間はやりがいや達成感を味わえます。
助産師と看護師はどっちが大変?
助産師と看護師、どちらが大変ということは一概には言えません。
患者さまの命に関わる大切な仕事であり、それぞれの仕事に、特有の大変さがあります。大切なのは、仕事の役割を理解し、自分に合った道を選ぶことです。
いずれの仕事も人の役に立ちたいという強い気持ちと、責任感、使命感が求められるでしょう。
助産師と看護師に向いている人の特徴の違い
ここでは、助産師と看護師、それぞれに向いている人の特徴の違いを紹介します。
助産師に向いている人
助産師に向いているのは、次のような人でしょう。
- 出産や育児に強い関心がある人
- 責任感が強く、冷静な判断ができる人
- 母子の健康を第一に考えられる人
助産師は、出産という神秘的な瞬間に立ち会う仕事です。そのため、出産に強い興味と関心を持っていることが大切です。
また、出産は予測できない状況が起こることもあります。そのような状況でも、冷静に判断し、適切な対応ができる能力が求められます。
さらに、母子の安全と健康を第一に考え、常に最善のケアを提供しようとする責任感と倫理観も重要です。
看護師に向いている人
看護師に向いているのは、次のような人でしょう。
- 人の役に立ちたいという気持ちが強い人
- コミュニケーション能力が高い人
- 幅広い分野で活躍したい人
看護師は、病気やケガで苦しむ人々を支え、心身のケアを行う仕事です。そのため、人の役に立ちたいという強い気持ちを持っていることが大切です。
また、患者さまやそのご家族、医師やほかの医療スタッフとスムーズにコミュニケーションを図る能力も求められます。
さらに、看護師の方は心臓血管外科や循環器内科、集中治療室、小児科などのさまざまな分野で活躍する機会があるため、幅広い分野に興味を持ち、柔軟に対応できる能力も重要です。
助産師と看護師の違いに関するよくある質問
ここでは、助産師と看護師の違いに関するよくある質問に回答します。それぞれの回答を確認して、悩みを解決しましょう。
Q1:助産師と看護師のどちらが上ですか?
助産師と看護師に、上下関係はありません。どちらも対等な立場で仕事をしています。
しかし、産婦人科の病棟や助産院などでは、仕事の役割分担から、助産師の方の指示を受けて看護師の方が動く場面もあります。
これは、助産師の方が出産という専門分野において、高度な知識とスキルを持っているためです。
たとえば、出産の進行状況の判断や緊急時の対応などは、助産師の方が中心となっておこないます。看護師の方は、助産師の方の指示のもと、出産の介助や母子のケアなどをおこないます。
このように、それぞれの専門性を活かして連携することで、安全な出産をサポートしているのです。
Q2:助産師にできて看護師にできないことは何ですか?
助産師の方は、正常な出産において、嘱託医師と連携していることを条件に医師の指示なしで出産の介助ができます。これは、看護師の方にはできないことです。
Q3:助産師と看護師の見分け方は?
助産師と看護師は同じような服装をしているため、服装で見分けるのは難しいです。
名札で職種が明記されている場合があります。また、助産師の方は、出産に関わる業務をおこなっていることが多いので、そのような場面で見分けることができるかもしれません。
しかし、産婦人科の病棟では、助産師も看護師も同じような服装をしており見分けが難しいため、直接尋ねてみてください。
Q4:助産師は看護師免許なしで働くことはできますか?
助産師の方は、看護師免許がないと働くことはできません。
助産師の国家試験を受けるためには、看護師の資格が必要、もしくは取得見込みであることが条件だからです。
これは、助産師の方が看護師としての基礎的な知識とスキルを持っていることを前提に、より専門的な知識とスキルを学ぶ必要があるためです。
助産師になりたい方は、まず看護師の資格の取得を目指し、その後、助産師の養成学校などで専門教育を受けなければなりません。
助産師と看護師の役割や仕事内容の違いを理解してキャリア選択に活かそう
助産師と看護師は、どちらも医療現場で重要な役割を担っています。
それぞれの仕事内容や役割の違いを理解したうえで、ご自身のキャリア選択に活かしてください。
助産師は、命の誕生というかけがえのない瞬間に立ち会い、母子の健康を支えるというやりがいのある仕事です。一方、看護師は、幅広い分野で患者さまのケアをおこない、病気やケガで苦しむ人々を支えるという、社会貢献性の高い仕事です。
どちらの道を選ぶにしても、人の役に立ちたいという強い気持ちや責任感が大切です。
<参考サイト・文献>
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