地域包括ケアシステムの看護師における役割5つ!課題と働き方も解説
地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けるための仕組みです。医療や介護、予防、生活支援などが一体となって提供され、このシステムにおいて、看護師は重要な役割を担っています。
この記事では、地域包括ケアシステムにおける看護師の役割や課題、その働き方を解説します。地域包括ケアシステムの仕組みや役割がわからず悩んでいる方の悩みを解決できるきっかけになれれば幸いです。
地域包括ケアシステムにおける看護師の5つの役割
地域包括ケアシステムにおいて、看護師の方は多岐にわたる重要な役割を担います。ここでは、とくに重要な役割に焦点を当て解説します。
- 在宅医療や介護施設の場でのケア
- 医療機関との連携
- 多職種との連携
- 高齢者とご家族のサポート
- 介護予防の活動の推進
これらの役割は、高齢者が地域で安心して生活を送るために欠かせないものであり、看護師の方の専門知識とスキルが必要です。高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けるためには、看護師の活躍が不可欠といえます。
在宅医療や介護施設の場でのケア
高齢者が地域のなかで生活していくためには、在宅医療や介護施設でのケアが大切です。
厚生労働省の調査によると、65歳以上の受療率(人口10万対)は次のようになっています。
年齢階級 | 入院 | 外来 |
65歳以上 | 2,449 | 10,208 |
70歳以上 | 2,787 | 10,742 |
75歳以上 | 3,351 | 11,333 |
65歳以上のときと比べて、75歳以上では入院の受療率が約1.4倍、外来の受療率も約1.1倍となっており、年齢を重ねると医療ニーズが増加していることが明らかになりました。そのため、在宅医療や介護施設でのケアが重要であるといえます。
具体的には、血圧や体温測定などのバイタルチェック、服薬管理、褥瘡(床ずれ)の予防や処置をおこないます。
さらに、訪問看護やデイサービス、福祉用具のレンタルサービスなどを利用する際には、ケアマネージャーと連携し、高齢者に最適なサービスが提供されるよう調整します。
このように、看護師は医療ニーズが高まる高齢者に対して、在宅医療や介護施設において、医療的なケアや多職種連携によって生活を支える重要な役割を担っています。
医療機関との連携
病院やクリニックなどの医療機関との連携も、地域包括ケアシステムにおける看護師の重要な役割です。
ある研究結果によると、高齢者の約65%は3つ以上の病気があり、持病が増えると通院のサポートや医療機関に必要な情報提供を求められやすくなるためです。
たとえば、退院後の患者さまに、病院で受けた治療を継続したり、服薬指導や生活指導などをおこなったりすることで、スムーズな在宅療養への移行を支援します。
このように、看護師は患者さまと医療機関との連携を密にすることで、継続的な医療ケアを提供しています。
多職種との連携
地域包括ケアシステムでは、看護師だけでなく、医師やリハビリテーションのスタッフ、介護職者など、多くの専門職が連携して高齢者を支えます。
看護師は、これらの専門職の間で橋渡し役となり、情報共有や連携をスムーズにおこなうことで、より良いケアにつなげることが大切です。
具体的には、定期的なカンファレンスへの参加や情報共有などをおこないます。ほかにも、リハビリテーションのスタッフと連携し、身体機能の維持・向上に向けてリハビリテーションをしたり、介護職者と連携して日常生活における介助方法や注意点などを共有したりします。
このように、多職種と連携することで、それぞれの専門性を活かした包括的なケアを提供し、患者さまの生活の質を高められるでしょう。
高齢者とご家族のサポート
地域包括ケアシステムでは、高齢者だけでなく、ご家族のサポートも大切です。
とくに、ご家族が在宅で介護をおこなっている場合、負担が大きくなりがちです。看護師は、ご家族の心身の状況を把握し、必要な支援をおこないます。
また、地域包括支援センターなどの活用を提案し、次のように介護サービスの利用につなげることもあります。
- 介護に関する相談への対応
- 介護方法の指導
- 介護用品の情報提供
- レスパイトケア(介護者の休息のためのサービス)
これらのサービスを活用することで、ご家族の介護の負担を軽減できるでしょう。
関連記事:【看護師コラム】地域包括ケアを支える“地域包括支援センター”ってどんなところ?
介護予防の活動の推進
高齢者が、要介護状態とならないように支援をおこなうことも、看護師の役割です。
地域の資源を活用した活動を企画・実施し、高齢者の健康維持・増進に貢献します。具体的には、地域の公民館で健康教室を開催したり、体操やレクリエーションなどの活動を企画したりします。
健康教室では、生活習慣病予防のための食事指導や、運動不足解消のための簡単な体操などを教えることもあるでしょう。また、地域のボランティア団体と連携し、高齢者向けのイベントを企画することもあります。
地域包括ケアシステムで求められる看護師のスキル
地域包括ケアシステムで活躍する看護師には、特定のスキルが求められます。これらのスキルは、高齢者が地域で安心して生活を送るために不可欠なものであり、看護師の専門性を発揮するうえで重要な要素です。
- アセスメント能力
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
- 高齢者に対する医療の知識とスキル
高齢者が安心して地域で生活を続けるためには、これらのスキルを持つ看護師の活躍が不可欠です。
アセスメント能力
在宅医療や介護の現場では、看護師が1人で利用者さまの家を訪問することもあるため、利用者さまの状態を的確に把握するアセスメント能力が大切です。
たとえば、食欲不振や睡眠不足といった些細な変化から、病気の兆候を早期に発見したり、転倒のリスクを評価して予防策につなげたりします。
高齢者のわずかな変化に気づき、病気の早期発見・早期治療ができることで、安心して在宅生活を送れるように支援できるでしょう。
コミュニケーション能力
看護師は、円滑なコミュニケーションを図る能力が求められます。
その理由は、高齢者やご家族のほかに、医師やリハビリテーションスタッフ、介護職など多くの人と関わる機会があるためです。
高齢者の言葉に耳を傾け、不安や悩みを受け止めたり、ご家族に対して、病状やケアの方針などを分かりやすく説明したりします。また、多職種との情報共有においては、専門用語を避けて、分かりやすい言葉で伝えるように心がけることが重要です。
看護師が高いコミュニケーション能力を持ち、高齢者やそのご家族、多職種の気持ちを理解することで信頼関係を築き、より質の高いケアを提供できます。
マネジメント能力
地域包括ケアシステムでは、さまざまな場面でマネジメント能力が必要です。
たとえば、高齢者の状態に合わせて、訪問看護の頻度や内容を調整したり、必要に応じて、医師やリハビリテーションスタッフなどに情報提供を求めたりします。また、ケアマネージャーと連携し、ケアプランの見直しやほかのサービスの利用調整などをおこなうこともあります。
このように、状況に応じて適切に判断して関係者と連携することで、効果的なケアを提供できるでしょう。
高齢者に対する医療の知識とスキル
地域包括ケアシステムでは、高齢者医療に関する専門的な知識とスキルが不可欠です。
高齢者の病気や在宅での看取りに関する知識、認知症の方への対応など特有のスキルが求められるためです。
具体的には、高血圧や糖尿病、心疾患などの病気やその治療方法、認知症の種類や症状、対応方法などを理解している必要があります。
また、在宅での看取りにおいては、利用者さまやご家族の意向を尊重し、最期のときまで安心して過ごせるよう支援する知識とスキルが重要です。このように、高齢者医療に関する専門的な知識とスキルを持つことで、質の高いケアを提供できます。
地域包括ケアシステムにおける看護師の課題
地域包括ケアシステムにおける看護師は、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を送るために重要な役割を担っています。ただし、次のようにいくつかの課題に同時に直面しています。
- 看護師の役割遂行
- 多職種との連携
- 人材の育成と確保
これらの課題を理解し、今後適切に対応していくことは、地域包括ケアシステムを構築し向上させていくために不可欠です。
看護師の役割遂行
地域包括ケアシステムにおける看護師の役割は、高齢化社会の進行とともに拡大しています。高齢者の健康管理や医療処置はもちろん、多職種との連携やご家族のサポートなど多岐にわたり、この役割がさらに増えることが予想されます。
たとえば、オンラインでの健康相談やウェアラブルデバイスを用いた健康管理などが普及することで、看護師の方はこれらの技術を活用したケアを提供しなければなりません。
また、地域包括ケアシステムの推進に伴い、看護師の教育や研修の充実も重要です。このように、役割の拡大に対応するためには、継続的な学習と自己研鑽が不可欠です。
多職種との連携
地域包括ケアシステムをスムーズに維持するためには、医療と介護の連携が欠かせません。
高齢者を支えるためには、24時間体制でのサポートが必要となる場合もあり、多職種での連携が重要です。
たとえば、利用者さまの状態変化に応じて、迅速に情報共有をおこない、適切なケアを協議し、医師やケアマネージャーのほかに理学療法士や介護士がそれぞれの専門性を活かしたプランを立案します。
このように、多職種が円滑に連携することで、利用者さまに最適なケアを提供できるでしょう。
人材の育成と確保
厚生労働省の調査によると、2022年度の看護師職(看護師と准看護師)の有効求人倍率は2.20倍です。職業計は1.19倍であることから、看護職は人手不足であるといえます。
地域包括ケアシステムの質を維持するためには、看護師の人材確保と育成が急務です。
具体的には、ワークライフバランスを重視した勤務体制の導入や子育て中の看護師が働きやすい環境の整備などが求められます。さらに、地域包括ケアに関する専門的な知識やスキルを習得するための研修プログラムの充実も必要です。
看護師の方の労働環境や待遇の改善、キャリアアップ支援、人材の育成と確保などに取り組むことで、地域包括ケアシステムの質を維持し、向上できるでしょう。
地域包括ケアシステムの看護師としての働き方
地域包括ケアシステムで看護師として活躍したい方は、訪問看護ステーションや地域包括ケア病棟などで働くことをおすすめします。
これらの場所では、地域包括ケアシステムにおける看護師の役割を十分に発揮できるでしょう。
訪問看護ステーションでは、利用者さま宅を訪問し、療養生活の支援をおこない、利用者さまやご家族のニーズに合わせたケアを提供します。
一方で、地域包括ケア病棟は、急性期治療を終え、在宅復帰に向けてリハビリテーションなどをおこなう病棟です。ここでは、多職種と連携しながら、利用者さまの在宅復帰を支援する役割を担います。
これらの職場では、地域包括ケアシステムの中核的な役割を担うことができ、地域医療に貢献できます。
関連記事:後進に繋ぐ在宅看護への想い【訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック】
地域包括ケアシステムの看護師として地域医療に貢献しよう
地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすための大切な仕組みです。
看護師は、専門知識とスキルを活かし、多職種と連携しながら、地域医療に貢献できます。また、地域の方々との交流を通して、地域社会に貢献しているということを実感できます。地域包括ケアシステムの一員である看護師として働くことは、専門職としての成長だけでなく、人間としても成長できる貴重な経験となるでしょう。
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<参考サイト・文献>
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