看護師国家試験の難易度は?試験内容や合格のポイントを解説
看護師になるには国家試験への合格が必須であり、難易度が気になる方もいるでしょう。
この記事では、看護師国家試験の難易度・合格率や試験内容、実施地、スケジュールを解説します。
さらに、合格のためのポイントも紹介しますので、本番で実力を最大限に発揮できるよう参考にしてください。
看護師国家試験の難易度・合格率
看護師国家試験の合格率は、およそ90%近くで推移しており、高い水準を維持しています。
過去5年間の受験者数や結果は、以下のとおりです。
看護師国家試験 実施回 | 出願者数 (新卒者) | 受験者数 (新卒者) | 合格者数 (新卒者) | 合格率 (新卒者) |
第109回 (2020年) | 66,250人 (59,736人) | 65,568人 (59,319人) | 58,513人 (56,174人) | 89.2% (94.7%) |
第110回 (2021年) | 66,778人 (59,936人) | 66,124人 (59,593人) | 59,769人 (56,868人) | 90.4% (95.4%) |
第111回 (2022年) | 65,684人 (59,440人) | 65,025人 (59,148人) | 59,344人 (57,057人) | 91.3% (96.5%) |
第112回 (2023年) | 64,704人 (59,290人) | 64,051人 (58,911人) | 58,152人 (56,276人) | 90.8% (95.5%) |
第113回 (2024年) | 63,931人 (58,215人) | 63,301人 (57,860人) | 55,557人 (53,903人) | 87.8% (93.2%) |
第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表
第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表
第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表
第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表
合格率だけで見ると高い数値ですが、看護師国家試験の難易度が低いとは一概にはいえません。
看護師国家試験を受験するには、看護師養成所や指定の大学などで定められた学科を修め、卒業する必要があります。
座学や臨地実習を経て、卒業が見込まれる場合に受験資格を得られます。
参照元:厚生労働省|看護師国家試験の施行
看護師国家試験の試験内容
看護師国家試験は、必修問題・一般問題・状況設定問題の3つで構成されます。
2024年に実施された第113回試験では、それぞれの合格点が以下のように設定されていました。
問題の構成 | 合格点 |
必修問題 | 40点以上/49点 |
一般問題 状況設定問題 | 158点以上/250点 |
以下では、それぞれの問題の特徴を解説します。
必修問題
必修問題は、看護師として必ず押さえておくべき基本的な知識が問われます。
全240問中50問が出題され、80%以上の正答が必要です。
たとえ一般問題や状況設定問題で高得点を取っても、必修問題が80%に満たなければ不合格となります。
参照元:厚生労働省|保健師助産師看護師国家試験の変遷について 資料2 p.5、保健師助産師看護師国家試験の現状について p.2
出題基準は以下のとおりです。
- 健康の定義と理解
- 健康に影響する要因
- 人間のライフサイクル各期の特徴と生活
- 人体の構造と機能
- 看護における基本技術など
参照元:厚生労働省|看護師国家試験出題基準 p.5、7、9、12
以下は、実際の過去問の一例です。
令和3年(2021年)の人口動態統計における死亡場所で最も多いのはどれか。 1.自宅 2.病院 3.老人ホーム 4.介護医療院・介護老人保健施設 答え:2 |
必修問題を落としてしまうと不合格になるため、十分な対策が必要です。
一般問題
一般問題では、看護師国家試験出題基準に定められた、以下11科目の知識について問われます。
- 人体の構造と機能
- 疾病の成り立ちと回復の促進
- 健康支援と社会保障制度
- 基礎看護学
- 成人看護学
- 老年看護学
- 小児看護学
- 母性看護学
- 精神看護学
- 在宅看護論/地域・在宅看護論
- 看護の統合と実践
一般問題は全240問中130問が出題され、状況設定問題と合わせて250点満点で採点されます。
参照元:厚生労働省|看護師国家試験出題基準 p.3、保健師助産師看護師国家試験の現状について p.1
以下は、過去に出題された問題の一例です。
神経線維には髄鞘のあるものとないものがあるが、活動電位に対する髄鞘の働きはどれか。 1.活動電位の発生頻度を増やす。 2.活動電位のピークを高くする。 3.活動電位の伝導速度を速くする。 4.活動電位が周囲の神経線維に伝わるのを防ぐ。 答え:3 |
出題基準ごとに、基本的な理解を問われます。
状況設定問題
状況設定問題では、医療現場で想定される状況が提示され、その状況に対する理解力や判断力が問われます。
長文を読んだあとに、3問ほどの設問に回答する形式です。
全240問中60問が状況設定問題として出題され、一般問題と合わせて250点満点で採点されます。
出題基準は以下のとおりです。
- 成人看護学
- 老年看護学
- 小児看護学
- 母性看護学
- 精神看護学など
参照元:厚生労働省|看護師国家試験出題基準 p.3、保健師助産師看護師国家試験の現状について p.1
以下は、過去に出題された問題の一例です。
Aさん57歳、男性は、妻50歳と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。 Aさんの呼吸機能に関する数値で増加を示すのはどれか。 1.1秒率 2.残気量 3.1回換気量 4.動脈血酸素分圧〈PaO2〉(room air) 答え:2 |
状況設定問題を攻略するには、基礎知識をもとに状況を正確に判断する力が求められます。
看護師国家試験の試験地
2024年時点での看護師国家試験の試験地は、以下のとおりです。
- 北海道
- 青森県
- 宮城県
- 東京都
- 新潟県
- 愛知県
- 石川県
- 大阪府
- 広島県
- 香川県
- 福岡県
- 沖縄県
全都道府県で行われるわけではなく、近くの試験地で受験する流れとなります。
参照元:厚生労働省|看護師国家試験の施行
看護師国家試験のスケジュール
看護師国家試験のスケジュールは、以下のように設定されています。
午前 | 午後 | |
説明開始時刻 | 9:00 | 13:40 |
試験時間 | 9:50~12:30 | 14:20~17:00 |
引用:厚生労働省|第113回看護師国家試験受験者留意事項 p.4
試験は9:50に開始されますが、事前に説明時間が設けられているため、余裕をもって会場に到着するよう、受験者の留意事項をよく読み、時間管理に気をつけましょう。
看護師国家試験合格のポイント
看護師国家試験に合格するためには、効率的な学習が不可欠です。
試験合格のためのポイントを5つ紹介します。
出題傾向を把握する
近年の出題傾向を把握すると、学習の優先順位をつけられ、より効果的に対策を進められます。
近年では「看護の統合と実践」が追加され、出題範囲が明確化されました。
また、以下の問題が出題されています。
- 視覚素材を用いた問題
- 非選択式の計算問題
- 五肢択一や五肢択二の問題
これらの傾向を踏まえたうえで学習を進めると、効果的な受験対策ができます。
過去問を解く
過去問を効果的に活用できると、出題傾向の把握や知識の定着、時間配分の練習などのメリットを得られます。
問題を解く際には、ただ解答するだけでなく、解説を読み込み、なぜその解答が正しいのか、誤りの選択肢はどこが間違っているのかを理解することが重要です。
特に、間違えた問題は繰り返し復習し、確実な知識として身につけましょう。
また、本番を意識して時間配分を練習しておくと、焦ることなく実力を発揮できます。
計画的に学習する
看護師国家試験に合格するには、限られた時間を有効活用して効率的に学習を進めることが大切です。
以下のスケジュールを参考に、計画を立てましょう。
期間 | 学習内容 |
最終学年の夏休みまで | 基礎固めと必修問題を対策する |
実習後~冬休み頃 | 過去問演習と模試に集中する |
年明け~試験直前 | 総復習と弱点克服にあてる |
まずは、人体の構造と機能といった基礎を徹底的に理解し、必修問題対策を行います。
基礎がある程度固まったら過去問演習と模試に重点を置いて、基礎知識の定着と苦手部分の確認を行い、追い込みで総復習と弱点克服に時間をあてましょう。
計画的に学習を進められると、焦らず着実に合格へと近づけます。
苦手分野を克服する
看護師国家試験に合格するためには、苦手分野の克服が不可欠です。
特に、それが頻出分野である場合、対策を怠ると合格の可能性が下がってしまいます。
まず、自分がどの部分を理解していないのかを明確にしましょう。
そのうえで、先生やその分野が得意な友人に解説してもらうのも一つの方法です。
苦手分野の克服には、時間と努力が必要ですが、諦めずに粘り強く取り組むことで、確実に成果が出ます。
焦らず一つずつ克服していけば自信につながり、試験本番でも実力を発揮できるでしょう。
メンタル面を強化する
看護師国家試験は、長期間にわたる学習が必要となるため、メンタル面のケアも合格を勝ち取るための重要な要素です。
適度に息抜きをしたり、勉強場所を変えたりするのも効果的です。
試験本番はプレッシャーも感じやすいため、少しでも緊張しないよう、当日の試験を想定したスケジュールで過去問や模試を解いてみるのもおすすめです。
流れが把握できていると、試験に集中しやすくなります。
これまで努力してきた自分を信じ、「自分はできる」と前向きな気持ちをもつことが大切です。
まとめ
看護師国家試験の合格率は、およそ90%と高い水準を維持しており、約10人に9人が合格しています。
試験内容は必修問題・一般問題・状況設定問題で構成され、必修問題では80%以上の正答率が必須です。
看護師国家試験の合格を目指すには、出題傾向を把握し、計画的に学習を進めることが大切です。
過去問を活用しながら苦手分野を克服し、知識を確実に定着させていきましょう。
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