終末期看護とは?大切なこと5つや終末期患者との関わり方を紹介

公開日:2024/12/06 更新日:2024/12/06
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「終末期看護ってどんなことをするの?」「終末期看護で欠かせないことについて知りたい!」

終末期看護に興味はあるけど、患者さまやご家族とのかかわり方について不安を感じている看護師の方も多いのではないでしょうか。

終末期看護では、まず終末期の患者さまに対する看護師の方の役割を知ることが大事です。

この記事では、終末期看護における大切なこと、終末期の患者さまとのかかわり方のポイントなどをくわしく解説します。終末期看護に興味があるあなたの助けになれば幸いです。

終末期看護とは?

終末期看護とは、終末期にある患者さまの全人的苦痛(身体的・心理社会的・スピリチュアルな苦痛)を緩和する看護です。

  • 終末期の定義               
  • 終末期の患者の特徴
  • 終末期看護と緩和ケアやホスピスケアとの違い

終末期看護の概要について、上記3つのポイントを解説します。

終末期の定義            

「終末期医療に関するガイドライン」(全日本病院協会)では、以下の3点を満たす場合を終末期と定義しています。

  • 複数の医師が客観的な情報から、治療をおこなっても病気の回復は見込めないと判断すること
  • 患者さまが判断できない場合を除き、患者・家族・医療関係者などが納得すること
  • 患者・家族・医療関係者などが死を迎えることを予測して対応を考えること

参考:人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン 解説編|厚生労働省

また、2018年に厚生労働省が「人生の最終段階における医療ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を発表しました。終末期医療のあり方が見直され、終末期医療という表記が「人生の最終段階における医療」に変更されました。

これにより「終末期医療」という言葉ではなく、「人生の最終段階における医療」という広範囲な対象や事象に対して行うものへ変化しています。

終末期の患者の特徴

終末期の患者さまには「否認」「怒り」「取り引き」「抑うつ」「受容」の段階を経て、死を受け入れるプロセスをたどる特徴があります。

このプロセスをたどる速さや順序には個人差があり、5段階のプロセスを行ったりきたりして死を受け入れるのが一般的です。患者さまだけでなく、ご家族も同じようにプロセスをたどります。

そのため、プロセスの感情の変化に合わせてケアしていくことが看護師の方に求められます。

終末期医療と緩和ケアについて

先述した通り、終末期医療の定義とは別に、緩和ケアの定義をWHO(世界保健機構)が出しています。

「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフを改善するためのアプローチである。」

どちらも、患者さまの痛みや苦痛に対処し、療養生活がよりよく過ごせるようにアプローチすることが書かれています。

終末期看護の大切なこと5つ

終末期看護において大切なことは以下の5つです。

  • 患者や家族の意思を尊重すること
  • 患者の痛みをコントロールすること
  • 患者や家族とコミュニケーションを図ること
  • 多職種で連携してケアすること
  • 家族を心理的にサポートすること

それぞれのポイントを押さえておくと、終末期看護の理解が深まるでしょう。

患者や家族の意思を尊重すること

終末期看護において、患者さまやご家族の意思を尊重することが重要です。

患者さまの意思尊重が基本ですが、患者さまが意思を伝えられない状態になる恐れもあるため、次の3点に沿ってご家族も含めて話し合うことも大事です。

  • 医療従事者から意思決定に必要な情報を十分に伝える
  • 患者さまやご家族の思いの表出を促すために、話し合いを繰り返す
  • 一度決めた意思は、いつでも変えて良いことを伝える

看護師の方は患者さまの価値観を尊重し、個別的なケアが提供できる環境を整えることが求められます。

患者の痛みをコントロールすること

終末期の患者さまは痛みに苦しむことがあるため、この痛みをコントロールすることは患者さまのQOLの向上に欠かせません。

患者さまはどこの痛みを感じているのか聞いたうえで、患者さまの希望に合わせて体位を工夫したり、マットレスを調整したりするなどのケアが大事です。

また、薬物療法をおこなう場合、患者さまの痛みをモニタリングして予防的に使用するなど痛みのコントロールをしていきます。

患者や家族とコミュニケーションを図ること

終末期看護において、患者さまやご家族とコミュニケーションを図ることは欠かせません。

  • 話を聞く時間を設ける
  • 自分の思考の傾向を理解する
  • 患者さま・ご家族の意思決定支援をする

患者さまやご家族の話を傾聴して思いや価値観を理解することが重要です。どこで終末期を過ごしたいのか、どういった医療やサービスを利用できるのかといった情報を提供し、自分たちで選択した決定に納得できるよう支えましょう。

関連記事:訪問看護における終末期の利用者・家族とのコミュニケーションの3つのポイント 

多職種で連携してケアすること

患者さまやご家族への意思決定を支援するうえで、多職種で連携してケアすることが大切です。

理由としては、患者さまやご家族が意思決定するためには、次のようなあらゆる情報から選択することが大事だからです。

  • 医療の内容
  • ケアの内容
  • 過ごせる施設・サービスの情報
  • 自分の意思の伝え方や残し方
  • 相談・サポート体制

多職種と連携できると、上記の情報で患者さまやご家族にとって必要な情報を提供することが可能です。

家族を心理的にサポートすること

終末期看護において、患者さまだけでなくご家族を心理的にサポートすることも大切です。

患者さまを支えるご家族には、介護する負担感や無力感があり、心理的なストレスがかかっている場合があるからです。

ご家族の相談に乗ることで、訪問看護やデイサービス、訪問リハビリテーションなどの介護サービスや社会資源の情報を提供できます。

また、ご家族が抱える患者さまの介護・療養にかかる負担や不安といった感情も表出できるよう、ご家族の話を傾聴して心理面から支えることも必要です。

終末期看護のポイントと終末期患者との関わり方

終末期の患者さまには「身体的な苦痛」「精神的な苦痛」「社会的な苦痛」が現れやすいです。そのため、終末期看護では患者さまに対し、大きく分けて3つのケアをおこないます。

  • 身体的な苦痛を和らげるケア
  • 精神的な苦痛を和らげるケア
  • 社会的な苦痛を和らげるケア

上記の終末期看護におけるそれぞれの症状とかかわり方のポイントを解説します。

身体的な苦痛を和らげるケア

終末期の看護のポイントは、身体的な苦痛を和らげるケアです。

というのも、終末期の患者さまは痛みや倦怠感、食欲不振などの症状を感じやすいからです。具体的には、次のようなケアをおこなうと良いでしょう。

  • 痛み症状の緩和
  • 栄養・水分補給
  • 体位交換
  • 医師の指示に従って薬剤の投与

ほかにも、症状の悪化にともない食事を取りにくくなった患者さまに対しては、食事をきざんだり、すり潰したりして食べやすくして、苦痛を減らすことが大事です。

食事の制限がなければ、好きなものをご家族に買っていただくのも良いでしょう。

精神的な苦痛を和らげるケア

終末期の看護において、精神的な苦痛を和らげるケアが大切です。

終末期になると、病状の悪化や孤独感、死への恐怖などの精神的に不安定となりストレスを感じやすいです。不安やせん妄、不眠など精神的な症状があらわれることもあります。具体的に精神的な苦痛を和らげるケアとして、以下の方法があります。

  • 普段と変わらない生活ができるようにサポートする
  • 患者さまやご家族に声をかけコミュニケーションを図る
  • 残された時間を有意義に過ごせるよう環境を整える
  • 患者さまとご家族がゆっくり過ごせる時間をつくる

終末期の看護では、患者さまや家族が精神的に安定して過ごせるよう精神的なケアが大事です。

社会的な苦痛を和らげるケア

終末期の患者さまへの社会的な苦痛を和らげるケアも欠かせません。

終末期になると、身体的や精神的にもつらくなり、思うように動けなくなることで次のような社会的な苦痛を感じる場合があります。

  • 自治会や仕事の役割がなくなる
  • 家計が不安になる
  • 子どもの将来が心配になる

ソーシャルワーカーやほかの機関と連携して患者さまの役割を維持できるよう、または新しい役割を担えるようにすることで患者さまの社会的な苦痛を和らげましょう。

終末期看護を受けられる場所

終末期看護が受けられる場所は病院や介護施設、自宅などです。患者さまの意思決定が難しいときには、患者さまの希望を汲み取ったうえで家族の意思が尊重されます。

  • 病院
  • 介護施設
  • 自宅

それぞれの場所の特徴やメリット・デメリットを紹介します。

病院

終末期を病院で過ごすメリット・デメリットは、以下の表のとおりです。

メリットデメリット
・急変したとき、すぐに対応してもらえる ・家族の負担が少ない ・多職種への相談できる環境が整っている・経済的負担が大きい ・面会時間が決められており好きなときに会えない ・環境が家より落ち着かない

病院では24時間体制でケアを提供しているため、患者さまの状態が急に悪化してもすぐに対処できるメリットがあります。

しかし、入院費や治療費など費用も大きくなりやすいです。また、面会時間に制限があれば、患者さまが不安や孤独を感じやすくなるかもしれません。

家族に面会の回数について相談したうえで、患者さまへの精神的なケアが必要です。

介護施設

終末期を介護施設で過ごすメリット・デメリットは、以下の表のとおりです。

メリットデメリット
・介護スタッフが日常生活のサポートやケアをしてくれる ・人とかかわる機会が増えて、孤独を感じにくい ・家族への負担が少なくストレスが少ない・リラックスして過ごせない場合がある ・家族との面会が限られるケースがある ・経済的負担がある ・入居に時間がかかることがある

介護施設では、介護スタッフによる生活のサポートやケアが受けられます。また、スタッフだけでなく、ほかの入居者さまとかかわる機会も増えるため、孤独を感じにくいでしょう。

しかし、施設の設備や体制によっては家族の経済的な負担が大きく、利用者さまがリラックスできない、面会時間の制限があるなどのデメリットもあります。

また、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などへの入居を希望する場合は、待機者が多く入居までに時間がかかることがあります。

自宅

終末期を自宅で過ごすメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリットデメリット
・残りの時間を家族と過ごせる ・慣れ親しんだ環境で安心してすごせる ・家族の通院や見舞いの負担は少なく、費用も抑えられる・患者さまの状態によっては家族の負担が大きくなることがある ・家族の心身の負担が大きい場合がある ・急変への対応が遅くなる

日本財団の調査によると「死期が迫っていると分かったときに人生の最期をどこで迎えたいか?」との問いに58.8%の人が自宅と回答したことが明らかとなりました。

自宅で過ごすときには、患者さまとご家族との貴重な時間を作ることができ、思い出を残すことができるメリットがあります。

一方で、ご家族の心身の負担は大きくなるため、状態が悪化・急変したとき、医師にすぐ診てもらえない不安も残ります。

終末期を自宅で過ごす希望があるときは、患者さまやご家族と話し合い、医師の訪問診療や訪問看護、介護サービスなどの利用を検討することが必要です。

関連記事:訪問看護での終末期ケア・在宅看取り 

終末期看護に関わる看護師に適した資格

終末期看護にかかわる看護師の方に適した資格は以下の3つです。

  • がん看護専門看護師
  • 緩和ケア認定看護師
  • 終末期ケア専門士

それぞれ詳しく解説します。

がん看護専門看護師

がん看護専門看護師の資格を取得することで、終末期の患者さまやご家族に対して、より質の高いケアを提供できるようになります。具体的には、次のような点でかかわりが深まります。

  • 患者さまの苦痛や症状の緩和
  • 患者さまやご家族の心理的なサポート
  • 患者さまやご家族の意思決定支援

終末期にある患者さまの身体的・心理的・社会的なニーズを評価し、さまざまな苦痛や症状に対してケアを提供できるようになります。

がん看護専門看護師の資格を取得するためには、看護系大学院の修士課程を修了し認定審査(書類審査・筆記試験)に合格しなければなりません。

この資格を取得するハードルは高いといえるでしょう。

ただし、終末期の患者さまへの質の高いケア提供につなげることができるため、終末期医療にかかわりたい看護師の方にはおすすめの資格です。

緩和ケア認定看護師

緩和ケア認定看護師は、おもにがんを患う患者さまの身体的・精神的・社会的な苦痛を緩和し、次のようにQOLを向上させるためのケアを提供することが役割です。

  • 患者さまの苦痛に対するアセスメントとケア
  • 患者さまやご家族への意思決定のサポート
  • 多職種との連携

認定看護師の資格を取得するためには、A課程もしくはB課程の教育機関を修了し、認定審査に合格しなければなりません。

緩和ケアを必要とする患者さまとかかわる中で「よりケアの仕方を考えたい」「よりよい緩和ケアを病棟全体に広めたい」と考えている看護師の方におすすめの資格です。

終末期ケア専門士

終末期ケア専門士とは、日本終末期ケア協会(JTCA)による民間資格で、エビデンスにもとづいた終末期ケアをおこなうスペシャリストのことです。

看護師として臨床経験が2年以上ある方が対象であり、筆記試験に合格すると資格を取得できます。

緩和ケア病棟や介護施設など、終末期を迎える患者さまが多い場所で働く人におすすめの資格です。

まとめ:終末期看護における看護師の役割を知って、より良いケアを実践しましょう

終末期看護は、患者さまやご家族が残りの人生をその人らしく過ごせるよう支援することです。

患者さまやご家族の意思を尊重したかかわりをすることは欠かせません。

そのため、患者さまやご家族と積極的にコミュニケーションを図り、多職種と連携することで、必要に応じた支援の提供が大切です。

今後も終末期看護の需要は高まると考えられるため、看護師の方の役割は重要になっていくでしょう。

<参考サイト・文献>

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説編|厚生労働省

終末期医療に関するガイドライン|厚生労働省
診断時の緩和ケア|厚生労働省

人生の最期の迎え方に関する全国調査|日本財団 

専門看護師|日本看護協会

認定看護師|日本看護協会

終末期ケア専門士|日本終末期ケア協会

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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