在宅看護で大切なこと9つ!特徴と在宅看護のメリット・デメリットを解説
「在宅看護で大切なことは何?」「在宅看護で働くメリットを知りたい」
このような疑問を感じていませんか。
在宅看護は、高齢者や病気を抱える方が住み慣れた自宅で安心して療養を続けられるようにケアすることです。近年、在宅療養を希望する方が増えており、在宅看護の重要性が高まっています。
在宅看護には、利用者さまや介護者の生活を支えるためにさまざまなスキルや知識が求められ、多職種と協力しながらケアすることが必要です。
この記事では、在宅介護で大切なことやそのメリット・デメリットを紹介します。在宅看護の現状を理解し、転職する際に役立てれば幸いです
在宅看護の特徴と現状
在宅看護の特徴は、次の4つです。
- 治療中心ではなく日常生活を中心としたケア
- 利用者さまとその介護者が主体
- 精神的なメリットの大きさ
- 利用者さまの疾患や障害の幅の広さ
高齢化社会の進展や医療費の削減、病床数の不足などの社会的背景から、在宅看護の重要性は年々高まっています。利用者さまがご自宅で療養を続けたいというニーズも増えています。
厚生労働省の調査(※)によると、医療・療養したい場所は1位:自宅(47.4%)、2位:医療機関(37.5%)、3位:介護施設(10.7%)の順です。看護師の方の専門的な知識とスキルが求められています。
地域包括ケアシステムの推進も在宅看護の需要を後押ししており、今後もそのニーズは拡大していくと考えられます。
(※)「末期がんで食事や呼吸が不自由。しかし、痛みはなく、意識や判断力は健康なときと同様の場合」が前提条件。
在宅看護で大切なこと9つ
次に、在宅看護で大切なことを紹介します。
- 接遇やプライバシーに配慮した対応
- 利用者さまの生活環境に配慮したケア
- コミュニケーション能力
- 多職種との連携
- 幅広い看護技術
- 緊急時に対応できるスキル
- 介護者へのケア
- アセスメント能力
- 社会資源に関する知識
これらの9つの大切なことを知っておくと、在宅看護への理解が深まるでしょう。
接遇やプライバシーに配慮した対応
在宅看護で大切なことは、接遇やプライバシーに配慮した対応です。
というのも、在宅看護では「利用者さまの生活環境に入ってケアする」という意識が足りないと、利用者さまや介護者との信頼関係を築けないためです。具体的には、自宅に入るときにあいさつしたり、清拭のときに身体が露出する場合はタオルをかけたりなど配慮しなければなりません。
また、介護者に対してもわかりやすく説明し、安心感をもってもらうことが重要です。接遇は看護師の方の人間性があらわれる部分であり、利用者さまの満足度に直結するため、常に思いやりを持った行動が求められます。
利用者さまの生活環境に配慮したケア
在宅看護では、利用者さまが安全に過ごせるよう、生活環境に応じた安全対策が欠かせません。
たとえば、高齢者に多い骨折を予防するためには、転倒リスクを減らす環境整備が重要です。
転倒を予防するため、居間にある物を整理したり、浴室に滑り止めマットを敷いたり、玄関の段差があるところに手すりをつけたりと、環境整備の視点がポイントとなります。
また、利用者さまの生活リズムを尊重し、無理のないケア計画を立てることも大切です。利用者さまが自分でできることをサポートし、自立を促すことで生活の質の向上を目指します。
コミュニケーション能力
在宅看護では、利用者さまや介護者、多職種との円滑なコミュニケーションが大事です。
利用者さまのニーズを把握し、適切なケアを提供するためには、相手の話に耳を傾け、共感する姿勢が求められます。介護者にも状況をわかりやすく説明し、不安を和らげることが重要です。
医師やリハビリスタッフなど多職種と連携する際には、情報共有をスムーズにおこない、チーム全体で利用者さまと介護者を支える体制を築く必要があります。
多職種との連携
在宅看護では多職種との連携も不可欠です。
医師や栄養士、リハビリテーションのスタッフなど、多職種と連携してケアを提供します。
それぞれの職種の専門的な知識やスキルを活かし、利用者さまにケアを提供するためには、普段からの情報交換が欠かせません。定期的にカンファレンスをおこない、利用者さまの状況に応じたケア計画に見直しましょう。
幅広い看護技術
在宅看護では、限られた設備の中でのケアであるため、看護師の方が持つ幅広いスキルが求められます。
在宅看護の場面では、具体的に次のような処置やケアをおこないます。
- バイタルサインの測定
- 吸引
- 導尿
- 点滴の投与
- 呼吸器のチェック
- ストマのケア
基本的なケアから専門的なスキルを必要とする場面があります。ほかにも、おむつ交換や食事介助、入浴介助などを求められるケースもあります。
利用者さまの状態に合った対応をするためには、日々のスキルアップが欠かせません。
緊急時に対応できるスキル
利用者さまの体調が急変した場合に、迅速に対応するスキルが求められます。
在宅看護では、急な体調変化が起こったときにすぐに判断して、適切に対処することが重要です。たとえば、心肺蘇生や救急車の手配、医師への連絡などしなければなりません。
また、利用者さまや介護者の不安を和らげるため、落ち着いた対応が求められます。緊急時の対応能力を高めるためには、定期的にデモンストレーションをおこなったり、BLSやACLS、ICLSといった研修に参加したりすることが効果的です。
介護者へのケア
介護者が身体的・精神的に疲れないように、適切なサポートが大切です。
介護者の負担が大きくなると、利用者さまへのケアにも悪影響が及びます、そのため、次のような介護サービスを活用して、休息を促すことが求められます。
- レスパイトケア
- ショートステイ
- デイサービス
- 訪問入浴介護
また、看護師の方が介護者に負担が少ない介護方法の指導や、心理的なサポートをおこなうことで、介護者の負担を軽減できます。
安心してケアを続けられるような環境づくりが大切です。地域包括支援センターやケアマネジャーとも利用者さまや介護者の情報交換をして、最適なケアを検討しましょう。
アセスメント能力
利用者さまの健康状態や生活環境を把握し、必要なケアを判断する能力が欠かせません。
利用者さまの体調や環境の変化を見逃さないこと、または変化がみられた際にはすぐに対応することが重要です。
利用者さまのニーズにもとづいたケアを提供するためには、日頃の様子をよく観察してアセスメントにつなげることが不可欠です。
社会資源に関する知識
介護保険や福祉サービスなど、社会資源を活用して利用者さまを支援することが重要です。看護師の方が社会資源を理解していると、利用者さまや介護者に必要なサポートを提案しやすくなります。
たとえば、地域包括支援センターや福祉機関、担当のケアマネジャーと連携して、介護サービスの紹介や手続きをサポートしましょう。社会資源の活用は、利用者さまの生活の質を向上させます。
在宅看護のメリット
ここでは、在宅看護のメリットを紹介します。
- 住み慣れたところで生活できること
- 通院が難しい利用者さまにケアできること
- 利用者さまの希望を反映しやすいこと
それぞれを詳しくみていきましょう。
住み慣れたところで生活できること
在宅看護のメリットは、利用者さまが住み慣れた環境で生活を続けられることです。環境の変化がなく、病院という集団生活を送ることによるストレスもありません。
住み慣れた環境では、生活リズムを維持しやすく、家族と一緒に過ごせる時間があるため安心感を得られます。
通院が難しい利用者さまにケアできること
通院が難しい利用者さまでも、ご自宅で必要なケアを受けられることが在宅看護のメリットです。
とくに、高齢者や身体の不自由な方にとって、通院は大きな負担です。在宅看護では、ご自宅で療養できるため、通院にともなう負担を軽減し、心身のストレスを減らせます。
看護師の方の定期的な訪問が、健康管理をおこなうきっかけとなり、異常の早期発見につながるかもしれません。
利用者さまの希望を反映しやすいこと
利用者さまや介護者と話し合いながらケアを進めるため、それぞれのニーズに合わせて柔軟に対応できることが在宅看護のメリットです。
たとえば、食事や入浴を利用者さまの希望の時間でおこなったり、リハビリテーションで近所を散歩したりなど、日常生活に密着したケアが実現します。
利用者さまの生活スタイルに合わせて、看護計画やケアプランを調整することで、満足度の高いケアを提供できます。
在宅看護のデメリット
在宅看護のメリットがある一方で、次のようなデメリットもいくつかあります。
- 介護者の介護負担が増加すること
- 高度な最先端の医療を提供できないこと
- 常時、利用者さまの状態をモニタリングできないこと
それぞれのデメリットをみていきましょう。
介護者の介護負担が増加すること
在宅看護のデメリットは、ご家族が介護者としてかかわることが多く負担が大きくなりがちなことです。
とくに、介護度が高くなり24時間体制でのケアが必要な場合、介護者が休息をしっかりと取れず疲れやストレスが溜まります。
レスパイトケアや訪問看護などを活用し、介護者がリフレッシュできる時間を作ることは介護者の負担を軽減することになり、利用者さまへのケアの質を保つためにも大事です。
高度な最先端の医療を提供できないこと
在宅看護のデメリットは、病院のような専門的な設備がないため、高度な医療を提供することが難しい点です。
たとえば、高度な外科的処置、MRIやCTの検査など、専門的な治療や検査が必要な場合、在宅で対応することは困難です。こういった場合は、病院を受診するか、入院しなければなりません。
このように、ご自宅では高度な医療をすぐに提供できないため、利用者さまの状態をみながら、病院との連携を重視したケアが重要です。
また、ご自宅でできる限りのケアを工夫し、必要に応じて適切なタイミングで専門医療を受けられるよう支援することが求められます。
常時、利用者さまの状態をモニタリングできないこと
看護師が24時間常駐するわけではないため、利用者の状態を常にモニタリングすることが難しいことが在宅看護のデメリットです。
利用者さまの急な体調変化への対応が遅れるリスクがあります。介護者に対して、日頃の観察のポイントと緊急時やトラブル発生時の対応方法を指導することが重要です。
緊急時には医療機関とスムーズに連携できるよう、普段から連絡体制を整えておきましょう。
在宅看護に関するQ&A
ここでは、在宅看護に関するよくある質問に回答します。
Q1:在宅看護と訪問看護の違いは何ですか?
在宅看護と訪問看護のはっきりとした違いはありません。
在宅看護は、病気や障害をもつ利用者さまが自宅で療養できるようにケアすることを指します。一方で、訪問看護は利用者さまがいるところ(自宅や老人ホームなど)に医療従事者が訪問してケアをおこなうことです。
いずれも利用者さまが、自分らしく生活を送れるように支援するポイントは同じです。
関連記事:https://www.ns-pace.com/article/category/feature/ninursing-difference/
Q2:在宅看護をしたいときはどこに転職すれば良いですか?
在宅看護の分野で働きたい場合は、訪問看護ステーションのほかに、在宅ケアを提供する病院やクリニックへの転職が適しています。
また、地域包括ケアの一環としてデイサービスや介護施設で働くことも選択肢のひとつです。自分のスキルや経験に合った職場を選ぶことで、在宅ケアの現場で活躍できるでしょう。
Q3:在宅看護の家族のケアで大切なことは何ですか?
家族の負担を軽減するために、適切な休息やサポートを提供することが大切です。
家族が介護者としてかかわる場合は、負担を軽減するために訪問看護やデイサービスなどの社会資源を活用しましょう。
また、同じ境遇にある家族同士のコミュニケーションは、精神的な支え合いを図ることも負担軽減に役立ちます。看護師の方は家族に寄り添い、適切なアドバイスをおこなうことで、家族の不安を軽減する役割を担います。
Q4:在宅看護に向いている人はどんな特徴がありますか?
在宅看護には、コミュニケーション能力が高く、緊急時に冷静に対応できる人が向いているでしょう。
在宅看護では、利用者さまや介護者とかかわる場面が多いため、人との関わりを大切にし、相手の気持ちに寄り添う姿勢が求められます。
また、自宅での急な体調変化に対しても柔軟に対応できる判断力が必要です。自主的に行動し、あらゆる状況に対応できる人は、在宅看護で活躍できます。
まとめ
在宅看護は、利用者さまが住み慣れた環境で安心して療養できるように支援することを目指します。
利用者さまや介護者にとってのメリット・デメリットを理解し、適切なケアを提供することが大切です。
在宅看護の現場では、看護師の方が利用者さまや介護者に寄り添い、支援をおこなっています。多職種との連携や社会資源の活用を通じて、利用者さまの生活を支える取り組みが欠かせません。
今後も在宅看護の需要は高まると考えられており、看護師の方の役割はますます重要になるでしょう。
<参考サイト・文献>
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