訪問看護でできること・できないこと12選!訪問看護の対象者や利用する手順

公開日:2024/09/05 更新日:2024/09/05
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「 訪問看護師はどのようなケアをするの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。

訪問看護にはできることと、できないことがあります。はじめて訪問看護業界に転職しようと考えている方は、どのようなケアが訪問看護でできることなのか気になることでしょう。

この記事では、訪問看護で「できること」「できないこと」について詳しく解説します。また、訪問看護の対象者や利用するための手順についても紹介します。

記事を読むことで、訪問看護の基本的な知識について身につけられます。訪問看護師になりたいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。

また、訪問看護業界・訪問看護師の1日の仕事など、幅広く訪問看護師のことを知りたい場合、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:【完全ガイド】訪問看護師とは?仕事内容と1日の流れを徹底解説

訪問看護でできること

訪問看護は病院の看護と同様で、医師の指示のもとに行われます。医師が記載する訪問看護指示書に、訪問看護師がするべきケアが記載されています。

訪問看護指示書に記載されている内容は、例えば「バイタルサイン測定、全身状態観察、保清、服薬管理」です。

訪問看護師は医師の指示をもとに、利用者さまの状態をアセスメントし、具体的なケア内容を決めます。また、介護保険を利用している場合は、訪問看護指示書以外にケアマネージャーが作成したケアプランをもとに、訪問看護でのケア内容が決まります。

利用者さまは療養生活を送る上で、さまざまな援助を求めてくることがあります。しかし、社会保険内で行う訪問看護でできることには限りがあります。(自費サービスを提供している訪問看護ステーションもあります)

ここではまず、訪問看護でできることについて紹介します。

清潔ケア

利用者の健康と快適さを保つために、訪問看護師は清潔ケアをします。
清潔ケアとは、以下のようなケアです。

  • 口腔ケア
  • 手浴
  • 足浴
  • 部分浴
  • 清拭
  • 洗髪
  • 入浴 など

清潔ケアには、口腔ケア、清拭や洗髪、入浴、などが含まれます。

利用者さまの皮膚や粘膜を清潔に保つことは、全身の観察の機会となり、感染症を予防することにもなります。また、口腔ケアを行うことで、虫歯や口内炎のリスク、肺炎のリスクを減らします。さらに、足浴や手浴は、血流の改善や心身のリラックスなどが目的です。

訪問看護師は、利用者さまの状態にあわせて、必要な清潔ケアを行い、安心して日常生活を送れるようにサポートします。

排泄ケア

排泄ケアも訪問看護ができるケアのひとつです。

排泄の感覚がない、トイレに行くのが間に合わないなどの理由で、オムツを使用している利用者さまは多いでしょう。疾患によっては、ウロストミーやストーマ、尿道留置カテーテル、摘便などを行う必要のある利用者さまもいらっしゃいます。

訪問看護師は排泄ケアができるように、手袋やエプロンなどの準備が必要です。これらの物品は、利用者さまのご自宅にあるものを使うか、訪問看護ステーションから持ち出すかのどちらかになります。

必要であれば、陰部洗浄も行い、陰部を清潔に保ち、保湿も忘れずに行います。その際は、利用者さまのプライバシーへの配慮を忘れずに行いましょう。

排泄機能の状態確認や清潔の保持のために、排泄ケアは訪問看護ができるケアのひとつです。排泄量や状態だけでなく、水分や食事の状況も確認していくことで、利用者さまの生活リズムが整い、QOLにも貢献できます。

訪問看護師は、24時間付き添っているわけではないため、利用者さまだけでなくご家族へも排泄に関する説明や指導をすることが大切です。

バイタルサインの測定

バイタルサイン測定も、病院と同じように訪問看護ができるケアのひとつです。バイタルサイン測定には以下の項目があります。

  • 血圧
  • 体温
  • 脈拍
  • 酸素飽和度
  • 呼吸状態
  • 意識レベル など

バイタルサインの測定は利用者さまの健康状態を把握するための手段です。訪問した際にはまず測定し、異常がないかを確認します。慢性疾患を持つ利用者さまや高齢者の場合、定期的なバイタルサインのチェックが非常に大切です。

最近では、血圧計や酸素飽和度測定器を持っている利用者さまもいらっしゃいます。利用者さまが、主体的に、日々の状態をモニタリングすることは体調の変化に気づきやすくなるため有効です。

訪問看護師は、日々の利用者さまの状態を確認し、測定だけでなく、測定値から異常を早期発見し、必要な対応を速やかにとることが重要です。

医療処置

訪問看護では、医師の指示に基づいて医療処置を利用者さまへ行います。訪問看護師が医療処置を提供することで、利用者さまはご自宅で療養生活を継続することができます。
訪問看護ができる医療処置は、以下のようなものがあります。

  • 創傷及び褥瘡処置
  • 人工肛門、人工膀胱の管理
  • 経鼻チューブ、胃瘻チューブや腸瘻の管理
  • 尿道留置カテーテル、自己導尿の管理
  • 在宅酸素療法の管理
  • 人工呼吸器の管理
  • 在宅透析の指導、管理
  • 中心静脈栄養の管理
  • 血糖測定
  • 喀痰の吸引及び管理
  • 点滴や注射 など

訪問看護ができる医療処置はさまざまで、病院とほとんど変わらない処置ができます。

医療処置をする場合、医療処置に必要な物品(点滴ルートや膀胱留置カテーテルなど)は、基本的に指示を出した医療機関が準備をします。

そして、利用者さまやご家族に対して疾患についての説明や、医療処置をしながらでも日常生活を送れるようにアドバイスも行います。

薬の管理

薬の管理も、訪問看護ができるケアのひとつです。

処方された薬の種類や効果、副作用について説明し、利用者さまやご家族が理解できるように指導します。そして、服薬カレンダーやピルケースを使い、内服を忘れたり、多く飲んだりすることを防ぎます。利用者さまの理解度や生活に合わせた服薬管理を行うことが大切です。服薬に関する悩みや疑問にも対応します。

また、利用者さまの状態を観察し、薬の効果や副作用などを医師に報告することも訪問看護師の役割です。医師や薬剤師と連携し、必要に応じて利用者さまの薬剤の見直しや調整をします。

薬の管理や相談をすることは、療養生活をする上で必要なことであるため、とても重要な看護です。

褥瘡のケアや予防

褥瘡のケアや予防は、訪問看護が行うことの多いケアです。褥瘡は、同一体位や低栄養などがきっかけで発生しますが、利用者さまの生活環境も大きく影響します。褥瘡ができると、ADLの低下や感染症などを招きます。

褥瘡ができてしまった場合は、医師に報告し、指示を仰ぎます。褥瘡のケアに使用する軟膏やドレッシング材には処方が必要な場合があるので、褥瘡の状態を医師に報告することが重要です。

褥瘡ができると、治癒までに時間がかかります。利用者さまやご家族と相談しながら、多職種で連携し悪化防止や、治療を行います。

リハビリテーション

訪問看護でも理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などセラピストによるリハビリテーション(以下:リハビリ)を利用者さまに提供します。

利用者さまが普段の生活をしながら、日常生活の自立を図るために機能訓練を行います。訪問看護でのリハビリの利点は、利用者さまが安心できる環境で実施できる点や、日常生活に即した内容をサポートする点です。

リハビリを利用者さまに提供する場合には、医師からの指示が必要です。訪問看護指示書に記載していただき、訪問看護計画書にリハビリの計画を記載し、利用の同意を得てから開始します。

緩和ケア

「住み慣れた自宅で、最期まで暮らしたい」という利用者さまはたくさんいらっしゃいます。緩和ケアも、訪問看護でできるケアのひとつです。

事前に元気なうちからご本人の希望を聞き、できる限り要望を実現できるよう支援します。厚生労働省は、「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」を推奨しており、もしものときのために、望む医療やケアについて、前もって話し合い、共有する取り組みのことです。例えば、人生において大切なことはどんなことか、最期のときはどのように迎えたいかなどを確認しておくとよいでしょう。

また、利用者さまだけでなくご家族の精神面にも配慮し、ケアを提供します。

緩和ケアでは、日頃の訪問看護の場で、利用者さまやご家族と信頼関係を築くことが大切です。

療養生活の相談・連携

利用者さまやご家族は、ご自宅で生活を送る上で、病院とは異なる不安や悩みを抱えています。訪問看護師は、利用者さまやご家族の話をよく聞き、必要なアドバイスを提供します。

例えば、退院後より在宅酸素療法を始める利用者さまの場合、利用者さまは酸素投与の機器や生活上の注意点などを詳しく知らないことがほとんどでしょう。そのため、訪問看護師は利用者さまの理解度や生活に合わせて、説明や教育をします。必要に応じて、リハビリや栄養指導、社会福祉サービスの案内、医療機関との連携をサポートします。

また、利用者さまだけでなくご家族からの相談を聞くことも役割として重要です。利用者さまがご自宅で安心した療養生活を送れるように、専門的な視点から支援します。

訪問看護でできないこと

利用者さまがご自宅で安心して療養生活を送れるように、訪問看護ではできるケアが沢山あります。ですが、「なんでもできる」ということではありません。

以下のようなケアは、訪問看護ではできないことです。

  • 利用者さまのご自宅以外で訪問看護を実施すること
  • 買い物代行や調理など家事全般
  • 通院の付き添い

基本的に訪問看護指示書やケアマネージャーが作成するケアプランに記載されていないことは、訪問看護では行うことができません。

訪問看護師は、自分ができるケアをきちんと把握しておくとともに、事前に利用者さまやご家族に伝えておくことが大切です。

利用者さまのご自宅以外で訪問看護を実施すること

訪問看護は、利用者さまのご自宅で行われる看護です。そのため、ご自宅以外で訪問看護を実施することはできません。

例えば、外出先への訪問や入所施設への訪問などです。

ご自宅での看護は、日常生活に沿ったケアを提供し、利用者さまの健康状態の悪化防止や療養生活の質を向上させることが目的です。

ただし、保険適応外の自費の訪問看護では、ご自宅以外での利用が可能です。

自費の訪問看護の場合は、利用者さまと提供する会社が直接契約し、利用者さまの希望する場所で看護を受けることができます。(別途、医師に訪問看護指示書を記載していただく場合があります)

「家族での思い出に旅行に行きたい」「孫の結婚式に参加したい」など、社会保険内でのサービスでは難しい要望を叶えることができるでしょう。

買い物代行や調理など家事全般

買い物や調理などの家事は、生活には欠かせないものですが、訪問看護では支援することができません。

訪問看護は、利用者さまの疾患や障がいに応じた「看護」を提供するものです。そのため、以下のような家事は訪問看護ではできません。

  • 掃除
  • 調理
  • 買い物
  • 洗濯
  • ゴミ出し など

食事の調理はできませんが、嚥下訓練、評価を目的とした食事の介助や、栄養指導は訪問看護でできることです。 

しかし、利用者さまによっては一人暮らしだったり、家事を自力でできなかったりという場合もあるでしょう。その場合は、ケアマネージャーと相談し、ヘルパーサービスの導入や、デイサービスの利用、宅配弁当などを活用します。

訪問看護では、生活の基盤を整えることも重要な役割なので、多職種と連携しながら利用者さまの生活全般を広い視野で看ていきます。

通院の付き添い

訪問看護は、子どもから高齢者、障がいの程度に関わらず、訪問看護を必要とするすべての利用者さまが受けられるサービスです。ただし、訪問看護では通院の付き添いはできません。ご自宅以外で、訪問看護を提供することはできないからです。

通院の付き添いが必要な場合は、家族や友人に頼んだり、ヘルパーの移動支援サービスを利用したりことで解消できます。

また、訪問看護ステーションによっては、「通院の付き添い」を自費サービスの一つとして提供しているケースがあります。

訪問看護の対象者と対象疾患

これまで訪問看護でできることと、できないことを紹介してきました。

他にも訪問看護をするときには、訪問看護の対象や対象となる疾患を知っておくことが大切です。

訪問看護の対象者

訪問看護の利用者さまは、医療保険か介護保険が適応されます。
介護保険の対象者は以下のとおりです。

  • 40歳以上65歳未満の医療保険加入者、または16特定疾患に該当し要支援や要介護に認定された人
  • 65歳以上の要支援や要介護に認定された人

医療保険の対象者は以下のとおりです。

  • 40歳未満の医療保険加入者とそのご家族(妊産婦や新生児も含む)
  • 40歳以上65歳未満の16特定疾患以外の人
  • 65歳以上で要支援や要介護の認定を受けてない人
  • 特別訪問看護指示書期間内の人
  • 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する人
  • 精神疾患の人(精神科訪問看護基本療養費が算定される指定訪問看護)

どちらの保険に当てはまるかは、年齢や疾患、状態などによって異なります。介護保険と医療保険が重複している場合は、介護保険が優先されます。

訪問看護の対象疾患

訪問看護は、さまざまな疾患や障がいを持つ方々に対してご自宅で行われる看護サービスです。
おもな対象疾患には、以下のような疾患があります。

  • 糖尿病や心不全などの慢性疾患
  • パーキンソン病などの神経系の疾患
  • 悪性腫瘍
  • 難病
  • 精神疾患
  • 認知症 など

退院後の生活を整えるためや、ご家族の介護負担を減らすためにも訪問します。

病棟と異なり、〇〇科などと診療科目は限定されておらず、幅広い疾患や症状を看ていく必要があります。

訪問看護を受けるための手順

利用者さまが、訪問看護を利用するためにはいくつかの手順が必要になります。ここでは、訪問看護を利用するための手順について、詳しく解説します。

【介護保険の場合】

  1. 自治体の介護保険担当の窓口に行き、介護申請をする
  2. 介護認定員が利用者さまのご自宅(または入院先等)を訪問し、認定調査をする
  3. 介護認定を受ける
  4. ケアマネージャーが窓口となり、利用者さまやご家族を含む関係者で、必要なサービスを決める
  5. ケアマネージャーが作成したケアプランに沿って訪問看護が開始する

訪問看護の利用にあたり、医師による訪問看護指示書が必要となるため、かかりつけ医に訪問看護の利用について事前に相談することも必要です。

医療保険の場合は、ケアプランは必要なく、医師が訪問看護の必要性を認め、利用者さまやご家族も希望すると、訪問看護指示書が作成されて訪問看護を受けられます。

介護保険、医療保険どちらの場合も訪問看護の利用が決定されると、訪問看護師は訪問看護計画書を作成し、計画書に沿ってケアを行います。

まとめ

訪問看護は、ご自宅で療養生活を送れるように看護を提供することが目的です。ご自宅で生活をする上で、さまざまなサポートが必要となりますが、訪問看護師が全てを担うことはできません。

訪問看護師は利用者さまのご自宅で「看護」を提供できますが、ご自宅外でのケアや家事全般、通院の付き添いなどはできません。訪問看護でできること、できないことは訪問看護師だけでなく、利用者さまやそのご家族も知っておくとスムーズにケアを提供できるでしょう。

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参考:「人生会議」してみませんか|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

これからの過ごし方 (umin.jp)

20200909hellovisitingnursing.pdf (jvnf.or.jp)

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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