新人看護師におすすめの診療科6つとその理由!タイプ別のおすすめの診療科も紹介
「おすすめの診療科はなに?」と多くの新人看護師(注1)の方、または卒業予定の看護学生の方が不安に感じていらっしゃるのではないでしょうか。
新人看護師の方が働く病院やクリニックの診療科(以下:科)は60種類以上と言われています。看護学生にとって、これらの科から自分に合うところを見つけるのは難しいかもしれません。
この記事では、新人看護師におすすめの科とその理由、タイプ別のおすすめの科を紹介します。就職したものの「ここは合わないのではないか」と感じている新人看護師の方の悩みを解決できれば幸いです。
注1:看護師免許を取得し、はじめて看護師の業務を行う新卒看護師のこと
新人看護師におすすめの科6つとその理由!
まずは、新人看護師の方におすすめの科とその理由を解説します。
- 循環器内科
- 小児科
- 産婦人科
- 整形外科
- 集中治療室(ICU)
- 救急救命センター(ER)
それぞれのおすすめの理由を確認し、自分の興味とあった科を見つけられると幸いです。
循環器内科
循環器内科は、心臓や血管に関する疾患を専門的に扱う科です。心筋梗塞や心不全、高血圧といった重篤な疾患に対応するための高度な知識とスキルを習得できます。
ほかにも、心電図の読み方や血液・酸素の流れなどアセスメント能力も養われます。
循環器内科は、救急対応が多く迅速な判断力や対応力が求められるため、新人看護師にとってはプレッシャーと感じるかもしれません。
ただし、その分、やりがいや成長の機会を得られます。
ほかの科でも役立つ基本的なスキルを身につけられ、将来的に別の科に異動したときにもそのスキルを活用できるでしょう。
スキルアップを目指す場合は、循環器内科での勤務はおすすめです。
小児科
小児科は、新人看護師の方にとってやりがいのある科です。
成人や老年を対象としたケアとは異なり、子どものケアは特有の技術や知識が求められるからです。
また、子どもたちが元気になって退院する姿を見たり、新人看護師の方に心を開いてくれたりするとモチベーションが高まります。
さらに、小児科の魅力は、成長段階に応じたケアやご家族とのコミュニケーション能力など専門性の高いスキルを身につけられる点です
一方で、小児科では子どもが悲しんだり、苦しんだりする姿を見るため、精神的な負担が大きくなるケースもあります。
こうした経験を乗り越えることで、看護師として成長できるでしょう。
産婦人科
産婦人科は、新人看護師の方にとっておすすめの科の一つです。
その理由は、専門性の高いスキルを学べたり患者さまと深く関わる機会が多いからです。
たとえば、産婦人科では以下のようなスキルを学べます。
- 不妊治療
- 新生児ケア
- 母子の健康管理
- 婦人科疾患の治療
- 妊娠・出産に関する知識
分娩や手術に立ち会う機会も多く、対応力や判断力も磨かれるため、キャリアの幅が広がります。
さらに、妊娠から出産、産後のケアまで一貫してサポートすることで、患者さまとの信頼関係を築きやすく、やりがいを感じる場面も多いでしょう。
産婦人科は、専門性を高めながら患者さまと深く関わりたい新人看護師の方にとって、魅力的な選択肢と言えます。
整形外科
整形外科では、骨折や関節の疾患、スポーツ傷害などの患者さまが対象であり新人看護師の方にとっておすすめです。その理由として、以下のポイントが挙げられます。
- 多職種と連携する
- 急変の対応が少ない
- 幅広い年齢層の患者さまと接する
セラピストと協力してリハビリテーションをおこなうことが多いため、多職種とのコミュニケーション能力やチームワークのスキルを磨くことができます。
さらに、整形外科の患者さまは、状態が安定しているケースが多いため、他の科と比較して予定通りの業務が多く、新人看護師の方でも安心して業務に取り組めます。
患者さまの回復過程をじっくり見守ることができ、達成感を得やすいでしょう。
集中治療室(ICU)
集中治療室(ICU)は重篤な状態や手術前後の患者さまが入院されます。
ICUでは、主に以下のような患者さまを対象とします。
- 周手術期の患者さま
- 院内で急変した患者さま
- 救急搬送された患者さま
一般的に、ICUでは急性期の重症患者を対象とするため、高度な医療技術と迅速な判断力が求められます。
さらに、患者さまの状態は刻々と変化するためモニタリングとアセスメントが欠かせません。
一方で、ICUでの勤務は精神的・身体的な負担が大きいことも事実です。
重症の患者さまを担当するためストレスがかかりやすく、夜勤や長時間労働により疲れが溜まりやすいです。
ICUで得られる経験と知識は、ほかの科に転職するときにもアドバンテージとなります。
たとえば、急変時に対応する能力や高度な看護技術は、急性期の病棟や救急外来など他の科でも活かせます。
救急救命センター(ER)
救急救命センター(ER)での看護師の仕事は、さまざまな疾患や緊急時に対応するため、常に緊張感と迅速な判断が求められます。
この現場では、外科や内科の枠を超えた症例に対するアセスメント能力や迅速な対応力がきたえられます。
ERでの経験は、看護師としての基礎力を向上させる機会です。
また、ERでは短時間での緊急対応が多く、複数の患者さまを同時にケアするため、効率的な時間管理と優れたコミュニケーション能力が欠かせません。
このような環境での経験は、看護師としてのキャリアを大きく広げるチャンスです。
緊張感が苦手な新人看護師の方にはストレスになってしまうかもしれませんが、挑戦意欲のある新人看護師の方には最適な場と言えるでしょう
新人看護師のタイプ別のおすすめの科
ここでは、新人看護師のタイプ別のおすすめの科を紹介します。
- おっとりした新人看護師
- 患者さまとじっくり向き合いたい新人看護師
- キャリアアップを目指したい新人看護師
- 基本的な知識や技術を身につけたい新人看護師
- 特定の分野の専門性を高めたい新人看護師
- プレッシャーが少ない科で働きたい新人看護師
あくまで性格的な部分からのおすすめの科になります。「どの科がいいのか迷っている」という看護師の方へ、参考になれば幸いです。
おっとりした新人看護師
おっとりした新人看護師の方には、患者さまと深く関わることができる精神科・心療内科、療養病棟(療養病床)などの科が向いています。
精神科・心療内科では、患者さまとのコミュニケーションが重視され、じっくりとかかわれます。また、精神的なサポートや患者さまの心のケアに重点を置くため、おっとりとした性格の新人看護師の方に適していると言えるでしょう。
療養病棟(療養病床)も、長期入院の患者さまが多く、落ち着いた環境でケアを実施しやすいです。
患者さまの日常生活の援助やセルフケア支援に時間をかけることができ、コミュニケーションを重視したケアが求められます。
これにより、患者さま一人ひとりと向き合う時間が確保できるため、おっとりとした性格の新人看護師の方に向いています。
一方で、緊急性の高いERや手術室は、迅速な対応が求められるため、落ち着いた環境で患者さまと向き合うことが難しいかもしれません。
おっとりした性格の新人看護師の方は、自分のペースでじっくりと看護を提供できる科を選ぶと良いでしょう。
患者さまとじっくり向き合いたい新人看護師
おっとりした新人看護師の方と同じように、患者さまとじっくり向き合いたい方におすすめの科は、療養病棟(療養病床)や精神科・心療内科です。
いずれの科でも患者さま一人ひとりとの深いコミュニケーションが求められます。
療養病棟(療養病床)では、慢性疾患を抱える患者さまと長期的にかかわる機会があり、病状の変化を細かく観察したり適切なケアを提供したりしなければなりません。
一方、精神科・心療内科では点滴や与薬などの対応はあるものの、患者さまの精神的な支えとなることが大きな役割と言えます。
というのも、患者さまは長期間の入院や通院が必要であり、日々のコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが治療の一環になるからです。
実際に、厚生労働省の「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、病院の平均在院日数が27.2日であるのに対して、精神病床は276.7日です。
このため、患者さまの話を丁寧に聞いたり共感したりする姿勢が求められます
これらの科では、患者さまの状態を継続的に観察したうえで対応する力が身につくため、看護師としてのスキルアップにもつながります。
長期的に患者さまと向き合いながら、生活をサポートすることに興味がある新人看護師の方にとって、内科や精神科・心療内科はやりがいのある職場となるでしょう。
キャリアアップを目指したい新人看護師
キャリアアップを目指す新人看護師の方には、ERやICUがおすすめです。
一刻を争う状態の患者さまや重症度が高い患者さまが多く、さまざまな病態に触れることでアセスメント能力や判断力を養えるからです。
これらの科での経験は、内科や外科などの科でも活用でき将来的なキャリアの選択肢を広げられます。
また、プリセプター制度やリーダー教育など教育体制や研修制度などを知っておくと就職後に指導を受けられキャリアアップしやすいでしょう。
基本的な知識や技術を身につけたい新人看護師
基本的な知識や技術を身につけたい新人看護師の方には、内科や外科が適しています。
ERやICUと比べると、内科や外科では患者さまの重症度が下がるため、比較的落ち着いて基本を踏まえながら業務を覚えられるからです。
内科や外科では、それぞれの科で対象とする疾患や薬を理解でき、以下の技術が身につくでしょう。
- 処置:採血・注射・吸引・褥瘡の処置など
- 清潔ケア:清拭・洗髪・シャワー浴介助・入浴介助など
- 日常生活動作の介助:車椅子への移乗・食事介助・おむつ交換など
内科や外科では、看護師としての基本的な知識や技術を身につけられます。
複数の診療科がある大きな病院ではない場合、「内科・外科」の2種類だけの場合があります。その場合は、前述した循環器内科やICUから出られたものの他院から転院してきた重症患者さまがいらっしゃることもあります。オールマイティーに手技やケアを学ぶことができるでしょう。
看護師の方に必要な知識や技術については、下記の記事で詳しく解説しているためぜひ参考にしてください。
関連記事:看護師に必要な知識と技術10選!これからの看護師に求められるもの
特定の分野の専門性を高めたい新人看護師
特定の分野で専門性を高めたい新人看護師の方には、専門的な科を選びましょう。
それぞれの科と学べることについては以下のとおりです。
科 | 疾患 | 検査や治療 |
循環器内科 | ・心筋梗塞 ・狭心症 ・弁膜症 | ・心臓カテーテル検査 ・心電図検査 ・生活指導 |
心臓血管外科 | ・胸部大動脈瘤 ・大動脈解離 ・急性動脈閉塞 | ・胸部ステントグラフト内挿術 ・人工血管置換術 ・冠動脈バイパス術 |
呼吸器内科 | ・肺炎 ・気胸 ・慢性閉塞性肺疾患 | ・胸腔穿刺 ・呼吸リハビリテーション ・呼吸機能検査 |
精神科・ 心療内科 | ・うつ病 ・統合失調症 ・パニック障害 | ・認知行動療法 ・カウンセリング ・電気けいれん療法 |
こちらに記載しているのはほんの一例であり、病院やクリニックによって学べることは異なるため、あくまでも参考としてください。
これらの科での経験は、特定分野での専門家としてのキャリア形成に役立ちます。
将来的に転職を考えている新人看護師の方にとって、自身の専門性を深められる科の選択がカギとなります。
プレッシャーが少ない科で働きたい新人看護師
プレッシャーが少ない環境で働きたい新人看護師の方は、比較的落ち着いて勤務できる内科や地域医療とかかわる科を選ぶことがおすすめです。
これらの科では、急変時の対応や急患の受け入れの対応などが少ないため、患者さまとの関係の構築に重点を置きながら、じっくりとスキルを身につけられます。
ただし、ちょっとしたミスが患者さまの生命にかかわるリスクがあることは、ほかの科と変わらないことは忘れないようにしましょう。
ほかにも、訪問看護ステーションでは、利用者さま(患者さま)とじっくり向き合いながら仕事に取り組めます。訪問看護師に向いているタイプか知りたい方は、下記のリンクから簡単な質問に答えるだけで診断できるため、ぜひチェックしてみてください。
参考リンク:訪問看護師タイプ診断
新人看護師の科はどのように決まるの?
新人看護師の科が決まる3つのポイントは以下のとおりです。
- 新人看護師の希望
- 新人看護師の適正
- 病棟での必要な人数
面接時や、入職後に希望する科を聞かれる場合があります。
とはいえ、新人看護師の方の適性や病棟の状況との兼ね合いなどにより希望の科に配属にならないケースもあります。
たとえ希望する科に配属されなくても、看護師としての基本的な仕事はどの科でも学べ、貴重な経験になるため、前向きな姿勢を忘れずに業務に取り組みましょう。
新人看護師がおすすめの科を考えるときのポイント
ここでは、新人看護師の方がおすすめの科を考えるときのポイントを解説します。
- どのような看護をしたいのか
- どのようにキャリアアップしたいのか
- どのような職場で働きたいのか
- どのような科を希望すべきか先輩看護師の意見を聞く
それぞれのポイントに沿って、自身に合った科を探してみてください。
どのような看護をしたいのか
新人看護師の方がおすすめの科を考えるときには、まず自分がどのような看護を実践したいのかを明らかにすることが重要です。
たとえば、急性期の医療に興味がある場合はICUや外科、一方で、慢性疾患の管理や患者さまとの長期的な関係を重視するなら、内科や精神科が合うでしょう。
さらに、子どものケアをしたいと考えているケースでは、小児科や小児集中治療室(PICU)、保育園などが適しています。
新人看護師の方にとって、自身の看護に対する希望や目標に合った科を選ぶことが、キャリア形成への第一歩となります。
どのようにキャリアアップしたいのか
新人看護師の方がおすすめの科を選ぶときには、キャリアアップのビジョンを明らかにしましょう。
たとえば、専門的なスキルを磨きたい場合はERや小児科、緩和ケアなど専門的な科での経験が有効です。
一方、マネジメントや教育に興味がある場合は、特定の科ではなくさまざまな科、もしくは幅広い領域を学べる訪問看護を経験することがおすすめです。
また、研究や発展に携わりたいなら、大学病院や研究機関での勤務が役立つかもしれません。
いずれにせよ自分のキャリアプランに合った科を選ぶことが、転職後の成長につながります。
どのような職場で働きたいのか
新人看護師の方がおすすめの科を考える際には、どのような職場環境で働きたいのかを考えておくことも重要です。
ワークライフバランスを重視するのか、仕事に重きをおきたいのかなどによって向いている科は変わります。また、同じ科でも病院やクリニックによって、働き方や職場の雰囲気は異なります。
職場は多くの時間を過ごす場所であるため、どのような職場環境に身をおきたいかという視点で考えてみると良いでしょう。
どのような科を希望すべきか先輩看護師の意見を聞く
新人看護師がどの科を希望すべきかを考える際には、先輩看護師の意見を参考にすることも一つの方法です。
先輩の経験やアドバイスは、実際の科の業務内容や職場の雰囲気を知るためには欠かせません。
たとえば、急性期での経験が豊富な先輩が語る業務の厳しさややりがい、また療養病棟(療養病床)での魅力といった実体験に基づく情報は、自身に適した科を選ぶときの参考になります。
インターンシップや病院見学などに参加して先輩看護師の経験を聞いてみることで、自身に合った科を選べるでしょう。
まとめ
新人看護師におすすめの科は、専門的なスキルを身につけたい場合は循環器内科や小児科、産婦人科です。
ただし、自身がどのような看護師になりたいのか、どのようなタイプであるのかなどでおすすめの科は変わります。
そのため、将来の看護師像を明らかにしたうえで、選ぶことが良いでしょう。配属されてみたら意外と自分に合っていた!なんていうこともあります。ご縁を大切に、前向きに働けるよう応援しています。
参考サイト・文献
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。