看護師が50代で転職するのは難しい?転職しやすい職場や注意点の解説
50代の看護師の方は長年のキャリアにより、さまざまな実績や経験をもっています。
しかし、医療機関や施設によっては転職が難しいこともあるでしょう。
この記事では、50代の看護師の方は転職が難しいといわれる理由や、転職活動で強みになるポイントを解説します。
おすすめの職場や転職時の注意点も紹介するので、これからの働き方を考える参考にしてください。
看護師は50代でも転職できる?
看護師は社会的にも需要があり、50代でも転職は可能です。
厚生労働省の「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」によると、看護職全体のうち50代の看護師の割合は2020年で21.7%、約5人に1人です。
2008年では18.2%、2014年では20.2%と、50代の看護師は年々増えてきています。
また、厚生労働省の調査によると、2022年度の有効求人倍率はほかの職業が1.1倍であるのに比べ、看護師は2.2倍と人手不足の状態です。
現場の即戦力や、指導者としてのスキルをもつ人材を求めている医療機関や施設では、経験や実績のある50代の看護師の需要はあるといえるでしょう。
50代の看護師の転職が難しいと言われる理由
職場によって需要はあるものの、50代の看護師の方は以下の理由から転職が難しいといわれることがあります。
- 体力面での不安
- 新しい技術や知識への対応への不安
- 看護・介護を理由に離職する率が高い退職までの期間が短い
それぞれ解説します。
体力面での不安
50代になると体力面の不安から、転職へ影響が出る可能性があります。
看護師は立ち仕事が多く、さらに患者さまのケアや夜勤など身体的負担が大きい職業です。
体力を必要とする現場では業務に支障が出ると判断され、転職が難しいケースも考えられます。
新しい技術や知識への対応への不安
20〜30代に比べて、50代の看護師の方は新しい技術や知識をすぐに吸収できるとはいえず、現場ではその不安から採用が難しいと判断することがあります。
新たな分野へ挑戦する場合には、知識や技術を吸収するための努力が必要です。
新しいことを覚えるときは、20代より時間がかかることを想定し、自己学習をしたりメモを見直したりしましょう。
また、同じ分野へ転職する場合にはこれまで培った経験に自信をもっていたとしても、そのやり方に固執するとトラブルにつながる可能性があります。
転職を目指す場合はこれまでの考え方にとらわれず、柔軟に対応していく気持ちでいることが大切です。
看護・介護を理由に離職する率が高い
看護師に限らず、親や親類の看護・介護を理由にした、いわゆる「介護離職」は社会問題にもなっています。
特に、50代では親や親族の看護・介護が理由での退職は多いです。
全国的には、実に10万人以上が看護・介護を理由に退職されています。
実際に50代看護師の方の、退職理由の1位は「親族の健康・介護」となっており、12.7%の方が挙げています。
そのため、50代看護師の方は、職場の介護休暇が取得実績などよく確認しておくと良いでしょう。
また、ひとりで抱え込まずに働けるよう、自身の家族や専門機関を頼って、働きやすい環境を整えておくと、希望する職場にアピールしやすくなります。
参照元:令和4年就業構造基本調査 結果の要約及び概要 (stat.go.jp) P28
001140978.pdf (mhlw.go.jp) P14
退職までの期間が短い
50代の看護師の方は定年退職まで働ける期間が短いことも、転職が難しいといわれる原因の一つです。
日本の定年は65歳までとされており、50代後半で転職する場合には10年以上働くことが難しくなります。
現場ではもっと長く活躍してくれる人材を優先的に採用したい傾向があるため、50代での転職に影響が出る可能性はあるでしょう。
ただし、日本ではさらに長く働けるよう、令和3年より70歳以上の定年引き上げを努力義務としています。
定年の引き上げを導入している職場であれば長く働けるため、転職しやすい可能性があります。
50代の看護師の転職で強みになるポイント
50代の看護師の方には、転職活動で活かせる以下の強みがあります。
- 経験の豊富さ
- 人材育成のスキル
それぞれ解説するので、参考にしてください。
経験の豊富さ
50代の看護師の方は、長年の実績や経験が転職での強みになります。
臨機応変に仕事ができることは、即戦力として採用に有利になるアピールポイントです。
また、50代は社会人としてのマナーやスキルも身に付いています。
人生経験も豊富な世代だからこそ、患者さまやご家族との信頼関係を構築することも、柔軟に対応できるでしょう。
転職活動では、これまでの経験した診療科目や技術、経験をアピールすると、好印象につながりやすくなります。
人材育成のスキル
50代の看護師の方は、今までの経歴で少なからず後輩育成をしてきた経験があります。
幅広い年代の看護師と働くことで、リーダーシップをとることができます。
また、人間関係でも客観的に状況を捉え、落ち着いて行動できるでしょう。
時には、悩んでいる若手の看護師の相談役としても活躍できるかもしれません。
体力的には、自信がなくても机上での学びを支援したり、勉強会を開くなどして、様々な角度から職場への貢献ができるでしょう。
50代の看護師が転職しやすい職場
ここでは、50代の看護師の方が転職しやすいとされる職場を5つ紹介します。
- クリニック
- 健診センター
- 療養型病院
- 介護施設
- 訪問看護ステーション
それぞれの特徴を把握して、転職先を考える際に参考にしてください。
クリニック
クリニックは夜勤やなく、残業が少ないため、体力面が不安な50代の看護師でも転職しやすい職場です。
また、重症患者さまが少ないため、精神的な負担も抑えられます。
地域密着型のクリニックでは病院よりアットホームな雰囲気で、近隣から通う患者さまとの信頼関係を築くことがやりがいにもつながりやすいでしょう。
健診センター
健康診断や人間ドックなどを行なう健診センターは、夜勤がなく残業が少ないため、50代の看護師の方が転職しやすい職場です。
健診で行なう内容には、身体測定や視力・聴力測定、レントゲン、内視鏡などがあり、看護師が主に担当するのは採血です。
対応する患者さまは1日に100人以上にのぼることもあり、採血が得意な人や次々と作業をこなすことが好きな人に向いています。
採血は大体の看護師が経験しているスキルであり、比較的新しい技術を覚える必要もないため、50代の看護師の方もスムーズに働けるでしょう。
療養型病院
療養型病院は、慢性期の患者さまが医師の管理下で看護や介護、リハビリテーションなどを受ける病院です。
患者さまの容体は比較的安定しており、看護師は基本的にルーティンワークが多くなります。
そのため、50代の看護師の方が転職してもスムーズに働き始められます。
患者さまと長く関われる療養型病院は、これまで培ってきたコミュニケーション力や対応力を発揮できる職場です。
介護施設
介護施設は難しい医療処置が少なく夜勤がないところもあるため、50代の看護師の方が転職しやすい職場です。
看護師は介護士とともに利用者さまの生活に寄り添い、健康管理と日常生活のサポートを行ないます。
医師の指示のもとで行なう医療行為は、点滴や、痰の吸引、褥瘡の処置などです。
ただし、利用者さまは高齢であるため、急変する可能性もゼロではありません。
経験や知識が豊富な50代の看護師の方は、的確な判断で医師や病院へつなげられるため、介護施設で活躍できるでしょう。
訪問看護ステーション
利用者さまのご自宅に訪れる訪問看護は、健康状態の悪化を防止したりターミナルケアをサポートしたりと、さまざまな対象を看護します。
パート勤務の場合は訪問件数などで勤務を決めることもできるため、50代の看護師の方は自分のペースで無理なく働くことが可能です。
なかにはオンコール制度がある訪問看護ステーションもありますが、基本的に働き方は平日の日勤がメインで、土日祝休みになります。
また、業務内容には病院と同じような医療処置もあります。
50代の看護師の方はこれまでの経験や知識・技術を活かしながら、利用者さまやご家族に近い距離で看護を提供できるため、やりがいをもって働けるでしょう。
50代の看護師が転職する場合の注意点
50代の看護師の方が転職で後悔しないようにするために、以下4点に注意しましょう。
- 過去の成功体験に執着しない
- 未経験の分野は難しいと把握しておく
- 年齢上限を確認しておく
- 転職にあたっての優先順位を明確にしておく
それぞれ解説します。
過去の成功体験に執着しない
50代の看護師の方がスムーズに転職先で働けるようにするためには、過去の成功体験に執着しないことが大切です。
50代の看護師の方は、長年働いてきたことで多くの成功体験をしており、こだわりが出てくる場合があります。
しかし、新しい職場では別の方法を取り入れているケースもあり、こだわりが強すぎると馴染むのが難しくなる可能性があります。
転職時には、自分の成功体験から得た方法以外にも選択肢があることを念頭におきましょう。
未経験の分野は難しいと把握しておく
50代の看護師の方が未経験の分野へ転職を希望しても、採用が難しい可能性があります。
年齢を重ねると新しいことを覚えるのには時間が必要になり、20代に比べて転職が不利になります。
とはいえ、未経験の分野にチャレンジするのは悪いことではありません。
未経験でも採用してもらえる職場はないか、これまでの実績や経験が活かせる職場はないかよく検討し、転職先を選ぶようにしましょう。
年齢上限を確認しておく
50代の看護師の方が転職する場合には、年齢上限が設けられていないか確認しておきましょう。
職場によっては、若年層の育成や人材確保を目的に求人を出しているケースもあります。50代の看護師が応募しても、職場が求めている年齢に該当しない可能性があります。
転職にあたっての優先順位を明確にしておく
転職するときには優先順位を明確にしておくと、ぶれずに転職先を検討できます。
転職時に検討する項目には、以下のようにさまざまな内容があります。
- 雇用条件
- 有給消化率
- 職場環境
- 年収
- 立地 など
優先すべき項目から転職先を選定していくと、50代の看護師の方も難しい転職にはならないでしょう。
まとめ
50代の看護師の方は、体力面や新しい技術・知識の吸収力などの懸念点から転職が難しいといわれることもありますが、転職は可能です。
まずは転職しやすい職場を検討し、転職活動時にはさまざまな実績や経験をもつことや、人材育成で職場への貢献ができることをアピールするのがおすすめです。
50代の看護師の方が転職で後悔しないためには、過去の成功体験に執着せず、これまでの経験が活かせる職場を検討するとよ良いでしょう。
検討項目の優先順位を明確にしておくと、ぶれずに自分に合う転職先を見つけやすくなります。
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