5年一貫看護学校のメリットデメリットとは?
看護師になるためには、現在次の4つのルートがあります。
- 高校卒業後4年制大学へ進学する
- 高校卒業後3年制短期大学へ進学
- 高校卒業後3年制専門学校へ進学
- 中学卒業後5年制の看護師養成課程に入学する
このうち、5年一貫看護学校は最も早く正看護師として働き始めることができるルートです。5年制の看護師養成課程では、5年間をかけて高校の学習と看護師養成のための教育が行われ、卒業すれば看護師国家試験の受験資格が得られます。
この記事では、5年一貫看護学校で看護師を目指すメリット・デメリットを紹介します。これから看護師を目指したい方や、看護師を将来の選択肢に入れている方は、ぜひ参考にしてみてください。
5年一貫看護学校のメリット
まずは、5年一貫看護学校で看護師になるための勉強をするメリットについて紹介します。
看護師資格を目指す最速ルート
中学卒業後に5年一貫の看護学校に入学すれば、看護師資格を最短ルートで得ることができます。
それぞれの進路別に、最短で看護師免許を取得した場合の就職する年齢を見ていきましょう。
- 大学(高校3年間・大学4年間):22歳
- 短大(高校3年間・大学3年間):21歳
- 専門学校(高校3年間・専門学校3年間):21歳
- 5年一貫看護学校(看護学校5年):20歳
5年一貫看護学校を卒業すれば、20歳で看護師として働き始めることができます。大学卒業よりも2年、3年制の看護専門学校卒業よりも1年早く働き始められるということです。最速ルートで看護師になりたい方には魅力的な選択肢であるといえるでしょう。
国家試験の合格率が高い
看護師国家試験の合格率が比較的高いことも5年一貫看護学校の特徴です。以下は、旺文社教育情報センターの発表する「2023年看護師国家試験結果」の卒業学校の種類別の新卒の合格率です。
卒業校 | 合格率 |
大学 | 97.10% |
短大[3年課程] | 92.60% |
養成所[3年課程] | 95.70% |
短大[2年課程] | 81.40% |
養成所[2年課程] | 96.10% |
通信制 | 87.20% |
高校専攻科と5年一貫の計 | 94.30% |
その他 | 48.70% |
上記より、「高校専攻科と5年一貫の計」の合格率は94.3%であり、短大卒の合格率より高くなっています。2年制・3年制の専門学校(養成所)の合格率とさほど変わらない水準で国家試験に合格していることがわかります。
低学費
学費についてもみていきましょう。以下の表は、看護師になるための学校を卒業するまでの学費をおおまかにまとめたものです。
学校の種類 | 学費 |
5年一貫看護師養成課程 | 150〜350万円 |
専門学校 | 250〜400万円 |
短大 | 300〜350万円 |
大学(国公立) | 250〜300万円 |
大学(私立) | 500〜700万円 |
参照元:
東京都専修学校各種学校協会:令和2年度 専修学校各種学校調査統計資料
文部科学省令第16号 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
文部科学省 令和元年度 私立大学等入学者に係る初年度学生納付金 平均額の調査結果について
学校にもよりますが、5年一貫看護師養成課程は150〜350万円と、他の学校と比較しても比較的学費が抑えられていることがわかります。高校の学費がかからないため、総合的に見ても低学費で看護師になれるといえるでしょう。
奨学金が充実している
5年一貫看護学校では、「高等学校等就学支援金制度」が利用できます。これは、学ぶ意思のある学生が安心して教育を受けられるよう、低所得世帯を対象に支援が行われる制度です。都道府県により「高校生等奨学給付金」や授業料軽減の措置が受けられる場合もあります。
また、看護・医療系の専門学校には、学校や病院が行っている奨学金制度がある場合が多いことも特徴のひとつです。このような奨学金を上手に利用すれば、学費の予算が少ない場合でも看護資格を取ることができます。
参照元:
高校生への2つの支援 高校生等奨学給付金・高等学校等就学支援金リーフレット
実践的な臨床研修プログラム
5年一貫看護学校では、最初の3年間の「看護科」から4年生以降の「看護専攻科」への進学に受験がありません。一般的な高校生のように受験勉強をする必要がないため、5年間という年月をかけて、じっくりと看護について学ぶことができます。
また、高校2年生にあたる2年目より臨地実習を経験します。学習と実践を繰り返し、社会人に向けてより実践的に働けるよう訓練を積めるという特徴があるのです。
参照元:
5年一貫の看護高校 | 看護科 | 高等学校 | 浜松修学舎 中学校・高等学校
5 年一貫看護師課程の看護学生の臨地実習における成功体験の実態と影響要因及び教育的支援
卒業後の進路が多岐にわたる
5年一貫看護学校で看護師の資格を取得したあとは、もちろん病院に看護師として就職できます。また、高校卒業の資格が得られるため、保健師や助産師など看護関連資格を取得し、それを活かして働く道も開けるでしょう。
卒業後に保健師養成所に1年通い、保健師国家試験に合格すれば保健師として働けます。同様に、5年一貫看護学校卒業後に助産師養成所で訓練を積み、助産師国家試験に合格できれば、助産師として活躍できます。
高校から段階的に看護スキルを学べる
段階的に看護スキルを学べることもメリットです。5年一貫看護学校では、高校1年生にあたる1年目から、普通教科と並行しながら基礎的な看護学を学びます。看護学に触れる期間が一般的な4年生大学より長くなるため、じっくりと知識をつけることができるのです。
感受性の豊かな高校生時代から学ぶからこそ、人の気持ちに寄り添える人間性や、相手を思いやる気持ちを大切に育み、看護スキルとともに対人関係のスキルを身につけられるでしょう。
就職率が高い
中学卒業後に一般的な高校へ通うよりも就職がしやすいということもメリットです。
5年一貫看護学校に通う方は中学卒業後に入学し、5年間を通して一貫した教育カリキュラムのなかで、看護師として必要な知識と実践的な技術を効率的に身につけます。国家試験に関してもしっかりと専門的な指導・対策が行われ、高い合格率を誇っています。
また、高齢化の進む現在、看護師は需要の絶えない職種です。資格があれば、全国どこでも就職しやすいという強みがあります。
これらのことから、5年一貫の看護学校に入学し教育を受けることで、卒業後に高い確率で就職が可能であるといえるでしょう。
5年一貫看護学校のデメリット
5年一貫看護学校は低学費で看護師資格を取得できるうえ、早く働き始めることができるため、これから看護師を目指す学生のなかには、魅力を感じている方も多いでしょう。
一方、5年一貫制看護学校には以下のようなデメリットもあります。
- 学歴が高卒扱い
- 高校の段階から勉強が大変
- 上位の資格取得がしづらい
- 進路の変更がしづらい
それぞれ解説します。
学歴が高卒扱い
5年一貫制看護学校を卒業しても、学歴は高卒扱いとなります。職場によっては、経験年数の同じ他の看護師との基本給に差が出る場合もあるかもしれません。
また、大卒の看護師と比較して、就職や昇進などで不利になる可能性もあるでしょう。とくに将来的に専門看護師として活躍することを目指したいと考える場合、大学院進学が必要となります。学士のない5年一貫制看護学校の卒業生は、資格取得のハードルが高くなります。
高校の段階から勉強が大変
5年一貫制看護学校では、高校1年生から看護の専門科目の勉強が始まります。普通科の高校と比べると求められる勉強量が多く難易度も上がるため、学習面での負担が比較的大きくなります。
高校生活を楽しみながら、部活動や趣味に打ち込みたいと考える方にとっては、勉強との両立がつらいと感じられるかもしれません。
上位の資格取得がしづらい
看護師としてさらにキャリアアップしたい場合、その代表例として、次の資格が挙げられます。
- 専門看護師
- 認定看護師
専門看護師の取得を目指す場合、大学院への進学が必要となります。大学院に進学するためには、4年制大学や指定された学校を卒業(修了)している、または4年制大学を卒業しているのと同等の学力があると認められていなければなりません。
つまり、5年一貫制看護学校の卒業生が専門看護師を取得するためには、改めて大学に進学する必要があるのです。大卒の看護師より時間と費用がかかってしまいます。
進路の変更がしづらい
5年一貫制看護学校では、入学時から看護師になることを前提とした教育課程が組まれています。もしも途中で看護師以外の進路に変更したい場合、他の高校や大学への編入学など、進路変更のハードルが高くなってしまいます。自分の適性や興味がしっかりと固まっていないまま入学すると、進路変更に大変な決断が必要になる可能性があるのです。
看護師資格を得るためのその他の方法
ここからは、看護師になるためのその他のルートについても見ていきましょう。
大学
一般大学の看護学部や、医療系大学の医学部看護学科など、全国の大学で看護学を学べます。この10年で看護大学は増えており、さまざまな特色から選べることが魅力です。保健師や助産師、養護教諭のカリキュラムが組み込まれている場合も多いので、将来的なキャリアの選択肢が大きく広がることも大学の特徴です。
大学では、単位の取得や卒業論文の作成と同時に国家試験の勉強を進めていかなければならないため、自己管理をしっかりしながら卒業に向けて進めていく必要があります。
とはいえ、友人との楽しい学生生活が過ごせ、長期休暇の際には海外のボランティアに参加するなど、沢山の経験を増やすことができます。
短期大学
看護短期大学は3年制です。4年制大学と比較すると1年早く国家試験を受けることができます。卒業すると準学士の称号が得られます。卒業後に大学に編入すれば、学士を取得することも可能です。
看護大学が増える一方で看護短期大学は、年々減少傾向です。
理由としては、看護の専門性を高めたいという方が増えて、少子化も後押しになっているようです。
そのため、看護短期大学を希望する方は、通学できる範囲にあるか、よく確認しておきましょう。
看護専門学校
看護専門学校では高校卒業後、原則3年間で看護学を学びます。実習や実技の授業が比較的多いため、より実践的なスキルを習得できることが特徴です。そのため、現場に出てからスムーズに業務に入りやすいというメリットがあります。
看護専門学校は、4年制の大学に通うよりも費用が抑えられる場合が多いので、経済的に大学入学が難しいという方でも通いやすい点もメリットです。
ただし、実習や実技が多いため、長期休暇が少なかったり、アルバイトや友人と遊ぶ時間が取りにくかったりとハードな学生生活になります。友人と楽しく充実した学生生活を送りたい、という方にはおすすめできません。
まとめ
この記事では、5年一貫看護学校に通うメリット・デメリットについて解説しました。
5年一貫制看護学校は、看護師の資格を最短・低コストで取得できるメリットがある一方、学歴が高卒扱いになることや、進路変更が難しいといったデメリットもあります。これから看護師を目指したい方は、適性や将来の目標に合わせて慎重に進路を検討し、最適なルートを見つけてみてください。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。