看護部長は年収1,000万円超えも?訪問看護ステーション転職で役立つ経験を解説
「看護部長の平均年収ってどのくらい?世間では高いほうなの?」
「病院から訪問看護ステーションに転職したい。看護部長の経験は転職に有利になる?」
看護部長とは、看護部のトップでさまざまな管理業務や経営に携わり、大きな責任をともなう役職のことです。その分、高い給与が得られることがメリットのひとつであり、なかには年収1000万円を超える看護部長の方もいます。
また、看護部長の方のなかには、キャリアアップや家族の都合での転居で転職を検討している方もいるでしょう。看護部長での経験は、高いマネジメント力や人材育成がほかでも活きてきます。たとえば、訪問看護ステーションでも、そのスキルを活かすことができ転職に有利です。
そこで本記事では、看護部長の年収の相場と訪問看護ステーションで看護部長の経験が活きる理由を解説します。
看護部長の年収のリアル|1,000万円も可能?
日本看護協会の「2012年病院内勤務の看護職の賃金に関する調査」によると、看護部長の平均年収は約719万円です。看護部長の13.2%が年収900〜1000万円未満の層であり、高い年収であるといえるでしょう。
ただし、基本給や管理職手当などは設置主体ごとに違うため、看護部長の年収に差が生じます。
看護師の給料は高すぎる?|ほかの産業の管理職との比較
看護師は「給料が高い」と言われがちです。ここでは、看護部長に絞り、一般産業の管理職と給料を比べ、給料の実態について紹介します。
役職(平均年齢) | 平均年収 |
看護部長(56.7歳) | 約719万円 |
部長クラス(52.7歳) | 約586万円 |
課長クラス(48.8歳) | 約495万円 |
係長クラス(45.4歳) | 約379万円 |
参照元:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
看護部長の方は、一般産業の部長に相当する役職です。一般産業の部長と看護部長の平均年収と比べると、その差は約133万円であり看護部長のほうが高いです。
また、役職をもたない看護スタッフの平均年収が約478万円であるため、一般産業の課長クラスの年収に相当します。
これらのことから、看護部長、看護スタッフの給料はいずれも一般産業よりも高い傾向です。「看護師の給料は高すぎる」「看護師=高給取り」などといわれるイメージとおりの結果といえるでしょう。
ただし、感染症のリスクや夜勤もあるハードな仕事であるため、一概に「高すぎる」とは言えないのも事実です。
看護部長の5つの役割
看護部長の役割として以下があげられます。
- 病院長・副院長との折衝
- 病院経営への参画
- 看護部の業務計画の作成
- 看護師の教育方針・教育計画の決定
- 看護部の代表としての外部との連携
看護部長の方は、高い年収が得られる分、役割を果たすためには高い能力が必要であり、看護スタッフのトップとして大きな責任を背負わなければなりません。ここでは、看護部長の役割についてくわしく解説します。
病院長・副院長との折衝
看護部長はすべての看護スタッフのトップとして、病院長や副院長などの運営側と、看護師長や看護スタッフなどとの調整をおこないます。ただし、運営側と現場では考えや方向性に違いがでることがあります。
というのも、運営側と現場、それぞれで「何を重視するか」「どこに重点をおいて患者さまをサポートするのか」などポイントが異なるためです。病院長や副院長は病院を全体的にみる一方で、看護スタッフは自分の仕事にかかわることを視野にいれがちです。
どちらが良い悪いということではありません。ですが、それぞれで方向性が異なると、看護部がうまく機能せずに経営にも悪い影響を与える恐れがあります。
そのため、看護部長は病院の経営を担う一員として、経営陣と現場の看護スタッフ、両者の意見をもとに、どちらにも不利益にならないよう調整する力がもとめられます。
看護部長の方がうまく調整できれば、結果的に患者さまにより良いケアができるでしょう。
病院経営への参画
看護部長は、看護部門のトップとして経営にかかわります。
安定した病院の経営には、看護スタッフの確保と定着が重要です。なぜなら、看護スタッフが足りなければ、1人の負担が増えさらに看護スタッフが辞めるきっかけになるためです。
具体的には、看護スタッフが足りないと看護スタッフ1人あたりの担当する患者数が増えます。負担がかかる状況が続くと、時間外勤務が長くなったり1ヶ月の夜勤回数が多くなったりします。看護スタッフは疲れ切ってしまい退職を考えはじめるでしょう。
すると、さらに看護スタッフは足りなくなり、最悪のケースでは病院の経営を維持できなくなる場合もあります。患者さまの数や手術の件数が増えても、看護スタッフが「働きやすい」「ずっとここで働き続けたい」と思える働き方ができなければ、看護スタッフの確保も定着も難しいといえます。
以上のことから、看護部長は看護スタッフが働きやすい環境を考えて、看護部を運営しなければなりません。
看護部の業務計画の作成
看護部長の重要な役割のひとつは、看護部の業務計画の作成です。
なぜなら、看護部の業務計画があると看護部の方針を看護スタッフに知らせることができ、すべての看護スタッフが同じ目標に向かって仕事ができるためです。具体的には、患者さまへのケアが統一できたり、看護スタッフの育成の方針をあきらかにできたりします。
業務計画を作成するポイントは、看護師長が現場の声を集めることです。業務計画をおこなうのは現場の看護スタッフであるため、現場の声を反映した計画でなければなりません。
看護部長は、看護スタッフの声を病院の運営方針と照らし合わせたうえで、業務計画を検討しましょう。看護スタッフの声を反映させた業務計画であれば、看護スタッフからの看護部への信頼度がアップして看護スタッフの定着のきっかけになるでしょう。
看護師の教育方針・教育計画の決定
看護スタッフの質の向上や意欲を高めるために、看護師全体の教育方針とその計画を決めるのが看護部長の役割です。看護部の教育方針は、病院のもとめる看護師像を周知でき、看護スタッフが同じ目標に向かって行動できる指標となります。
ここでのポイントは、目標に向かう看護スタッフが自分で考えて行動できるような体制を整えることです。看護スタッフが主体的に動けるようにするための具体例としては、以下のような資格取得への支援があります。
- 専門看護師
- 認定看護師
- 診療看護師
さらに、看護スタッフのキャリア志向を後押ししてくれる制度があれば「資格をとってみよう」「もっと病院に貢献したい」と働くことへの意欲が上がるかもしれません。
このように、看護部長は教育方針や教育計画を考え、看護スタッフのケアの質向上とキャリア支援をする体制を整えることが大切です。
看護部の代表としての外部との連携・協力
看護部長は、患者さまが医療を受け続けられるように、外部の施設と連携したり協力したりしなければなりません。また、看護部長は病院の「看護部の顔」でもあります。ですが、病院で働くスタッフと地域の医療を担うスタッフとでは、大切にするポイントが異なります。
たとえば、退院支援を考えるケースを例にして紹介します。病院で働くスタッフは「医療や治療をメイン」とした支援を考えがちである一方で、訪問看護は「患者さまの意思をメイン」とした支援を考える傾向です。働く環境が異なるため、違った視点を持つことは自然なことでしょう。
ただし、それぞれの視点がうまく埋まらなければ患者さまに不利益となるかもしれません。この病院と地域の視点の溝を埋めるのが、看護部長の役割のひとつです。病院と地域の「橋渡し」として、お互いが理解し合えるように働きかけることが看護部長にもとめられます。
訪問看護ステーション転職に役立つ看護部長の経験
看護部長の経験が、訪問看護ステーションで活きることをご存じでしょうか。
訪問看護ステーションは、看護師が自ら会社を立ち上げることができる業種です。そのため、看護師が看護の経験を活かして「経営者」となることができます。
また訪問看護ステーションには「管理者」という、スタッフや事業所をまとめる役職があります。その業務は、看護部長が担っている「管理業務」と似ています。
看護部長の経験が訪問看護ステーションでどのように活きるのか、くわしく解説します。
マネジメント業務の経験
訪問看護ステーションの管理者は、看護部長と同じように経営に携わります。訪問看護ステーションの経営の計画を考えるときには、以下のことをマネジメントしなければなりません。
- 利用者さまや地域のニーズ
- ニーズにもとづく訪問看護ステーションの課題
- 看護の質の向上
- 現場スタッフの育成、定着
- スタッフの働きやすさ
ただし、訪問看護が未経験では難しいでしょう。訪問看護のノウハウを学んだうえで活用できると、看護部長としておこなってきた管理業務が訪問看護ステーションで活かせるでしょう。
管理業務の経験
訪問看護ステーションでも、医療現場と同じように管理業務は多岐にわたります。
- 人材管理
- 質管理
- 組織管理
- 危機管理
ここでは、質管理を例に紹介します。
訪問看護ステーションでは、報告書や計画書、日々の記録から看護スタッフのケアが適切であるか、利用者さまのニーズに応えられているかを読みとらなければなりません。
というのも、訪問看護サービスは基本的に看護スタッフ1人で利用者さまのご自宅にうかがうため、管理者が看護スタッフのケアの質を評価しにくいためです。
看護部長を務めていたときも、看護師長からの報告や患者さまの声で看護スタッフのケア評価をしていた経験があるでしょう。
病院と訪問看護ステーションの管理業務は、資源や環境が異なるだけで本質は変わりません。そのため、訪問看護ステーションに転職してからも、看護部長としての経験を活かせるでしょう。
人材育成の経験
訪問看護ステーションの看護スタッフは中途採用が多く、同じような経験年数や経歴などの方は少ないです。ただし、これは訪問看護の分野に限ったことではありません。さまざまな経歴をもった看護スタッフが病院にも従事しています。
そのような状況で、看護スタッフをまとめて教育方針や教育計画を考えてきた看護部長の経験は、訪問看護ステーションの人材育成にも活かせるでしょう。
地域連携の経験
訪問看護ステーションの管理者は在宅医療を支えるため、以下の施設との連携が欠かせません。
- 病院やクリニック
- 介護福祉施設
- 介護保険サービス
- 役所や自治体などの行政機関
- 就労支援施設
- 特別支援学校や保育園などの教育機関
訪問看護ステーションは、主にケアマネージャーや病院のソーシャルワーカーから依頼を受け、医師や薬剤師のほかにリハビリのスタッフなどと利用者さまの生活を支えます。
そのため、訪問看護ステーションの管理者はサービス担当者会議や地域ケア会議などを通じて多職種と協力していくことが必要です。
こうした、ほかの職種との連携も看護部長として経験を積んだことでしょう。目標を共有したり、課題を考えて問題解決に取り組んだりする姿勢は変わりません。
看護部長として地域の課題に取り組んだ経験が、訪問看護ステーションにおいてリーダーシップを発揮できるきっかけになるでしょう。
運営の経験
訪問看護ステーションは、病院と同じように規模の大小があります。大規模な訪問看護ステーションでは、全国展開している会社もあり、エリアマネージャーやスーパーバイザー(SV)、役員をおいている場合もあります。その場合は、たとえば「首都圏のエリアマネージャー」として採用されれば、過去の経験を活かすことができます。
具体的な業務内容は、以下の通りです。
● エリア内の訪問看護ステーションの運営支援
● ほかエリアの事業所との連携
● 管理職の採用や面談
看護部長として経験してきた運営に関して、おおきな力を発揮し、貢献することができることでしょう。
看護部長になって年収をアップさせる方法
まだ、看護師長や主任の立場ではあるものの、「看護部長になって年収アップしたい」と考える方もいるでしょう。ここでは、看護部長になるためにはどうしたらよいか、主な2つの方法を紹介します。
現職場でキャリアアップを目指す
看護部長になるには、現職場でのキャリアアップが必要です。日本看護協会は、看護部長には以下の能力が求められるとしています。
- 組織管理能力
- 質管理能力
- 人材育成能力
- 危機管理能力
- 政策立案能力
- 創造する能力
管理職に必要な能力を身につけたいときは、日本看護協会が開いている研修を受けることが有効な方法です。
たとえば、認定看護管理者教育課程のファーストレベルやセカンドレベル、サードレベルなどの受講が有効です。
ただし、これらの受講要件のひとつに「通算5年以上の実務経験」とあります。
そのため「将来的に看護部長を目指したい」と考えている看護スタッフは、まず新人の育成や病棟での管理業に携わり、人材育成や組織の管理にかかわる能力をのばすことを検討してみてはいかがでしょうか。
今できることを積極的におこなう姿勢がキャリアアップには大切です。
看護部長になれる環境に転職する
看護部長という名称でなくても、管理的役職につける環境もあります。
厚生労働省の調査によると、1事業所あたりの常勤の看護スタッフの数は5.6人であり、多くの訪問看護ステーションは少人数で運営しているといえます。
そのため、訪問看護ステーションの管理者になれる確率は、病院の看護部長になるよりも高くなるかもしれません。
また、訪問看護ステーションの管理者として経験を積み、自分で訪問看護ステーションを立ち上げることができれば、年収1,000万円を実現できるでしょう。
看護部長の年収は1,000万円も可能!看護部長経験が活きる訪問看護ステーションへの転職を検討しよう
看護部長の平均年収は約719万です。
ですが、働く環境によっては年収1,000万円を達成できる可能性があります。
その方法のひとつが、訪問看護ステーションへの転職です。看護部長で経験したマネジメントや経営策略、人材育成などは訪問看護ステーションへの転職に有利です。
特に、大規模な訪問看護ステーションでは、「エリアマネージャー」を募集している場合もあります。エリアマネージャーになると、看護部長としての経験がより一層発揮されることでしょう。
さらに、訪問看護ステーションを自分で設立できると、経営者にもなり看護部長の年収を超えられるでしょう。訪問看護ステーションへの転職を視野にいれてみてはいかがでしょうか。
参考サイト・文献
2012 年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査|日本看護協会
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。