地域連携室の看護師の仕事内容6つ!向いている人の特徴やおすすめの資格

「退院後、本当は自宅で安心して生活したい」――
患者さまのそんな願いを叶えるのが、地域連携室の看護師です。
入院前から退院、その後の生活まで――彼らは多職種と協働し、
“住み慣れた家”で暮らし続けられる環境を構築する専門家です。
この記事では、現場のリアルをお届けしつつ、仕事の魅力や必要資格まで徹底解説します。
転職検討中の看護師さん、必見です。
地域連携室の看護師の仕事内容6つ
地域連携室の看護師は、入院前から退院後までをメインに関わります。患者さまやご家族が安心して地域で生活できるよう、多岐にわたる業務を通して支援します。患者さまの状況を把握し、多職種と連携しながら継続的なケアを実現することが重要な役割です。
- 入院時のスクリーニングとアセスメント
- 退院前のカンファレンスの実施
- 退院後の生活に向けた社会資源の調整
- 医療機関や介護施設との連携
- 患者さまやご家族の相談支援
- 退院後の療養状況のモニタリング
これらの業務を通じて、患者さまの生活の質を高めることが地域連携室の看護師の使命といえるでしょう。
入院時のスクリーニングとアセスメント
入院時のスクリーニングとアセスメントは、患者さまが入院した段階で「退院に向けてどのような支援が必要か」を早期に把握するための重要なプロセスです。
入院時、もしくは入院する前の外来で、次の情報を問診で確認し、退院後の生活を見据えた支援計画を作ります。
- 病状
- 既往歴
- 日常生活の状況
- 家族構成
- 経済状況
これらの情報をもとに、退院後に課題となりそうなことを明らかにすることで、多職種と連携し、よりスムーズで質の高い退院支援へとつなげることが可能になります。
退院前のカンファレンスの実施
退院前にカンファレンスを実施することは、患者さまが安心して退院し、その後の生活を送るために不可欠です。
看護師のほかに、医師やリハビリテーションスタッフ、ソーシャルワーカーなどが集まり、患者さまの状態や退院後の生活環境、必要な医療・介護サービスについて情報を共有します。
退院後の暮らしを支援するために、ケアマネージャーや訪問看護師、福祉用具のスタッフらも同席します。
患者さまやご家族の意向を中心にした退院支援を目指します。
退院後の生活に向けた社会資源の調整
退院後の生活に向けた社会資源の調整は、患者さまがご自宅や地域で安心して療養生活を送るために重要な業務です。
具体的には、患者さまやご家族のニーズに合わせて次のような社会資源を調整します。
- 介護保険サービスの申請支援
- 社会福祉サービスの紹介
- 訪問看護やヘルパーの手配
適切な社会資源の活用は、患者さまの生活の質向上に欠かせません。
医療機関や介護施設との連携
患者さまの状態に合わせて、医療機関や介護施設と連携して、必要な医療や介護を続けて受けられるようにすることは、地域連携室の重要な仕事です。
少し古い情報ではありますが、厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」によると、療養を希望する場についての回答結果は次のとおりです。
療養を希望する場 | 割合 |
自宅 | 41.7% |
介護老人福祉施設 | 18.6% |
病院などの医療機関 | 17.1% |
介護老人保健施設 | 11.5% |
わからない | 5.8% |
子どもの家 | 2.3% |
民間有料老人ホーム | 2.2% |
親族の家 | 0.5% |
その他 | 0.4% |
高齢者の健康に関する意識調査(平成19年度内閣府)より
退院後、ご自宅での療養を希望するケースが多いことがわかります。
この状況を踏まえて、地域連携室の看護師は、患者さまが定期的に通院したり、ご自宅療養中に状態が悪化した際にスムーズに受診したりできるように、地域の医療・介護の関係機関と情報共有しておくことが大切です。
患者さまやご家族の相談支援
患者さまやご家族の相談支援は、地域連携室の看護師の重要な仕事です。
というのも、病気や治療に対する不安、退院後の生活への心配、経済的な問題などさまざまな悩みに寄り添い、アドバイスをおこなうことで、安心して療養生活を送れるようにサポートできるからです。
必要に応じて、専門職や関係機関への橋渡しをおこなうことも、地域連携室の看護師の役割です。
退院後の療養状況のモニタリング
退院後の療養状況のモニタリングは、患者さまが退院後も安心して地域で生活できているかを確認するために欠かせない業務です。
電話連絡や必要に応じた家庭訪問などを通して、患者さまの健康状態や生活状況、困りごとなどを把握します。
モニタリングの結果を関係機関と共有し、追加の支援を検討することで、患者さまの再入院の予防や生活の質の維持に貢献します。
地域連携室の看護師のスケジュール例
地域連携室の看護師の1日は、患者さまの入退院の状況や相談内容によって変動しますが、効率的に業務を進めるための基本的な流れがあります。
時間帯 | 業務内容 |
8:00 | 出勤 |
8:15 | ・入院、転院、退院に関する情報の確認 ・チーム内での情報共有 |
9:00 | ・連携先(地域の医療機関、介護施設など)への連絡 ・患者さまの紹介状や診療情報の確認 ・転院や退院に関する受け入れ調整 |
11:00 | ・患者さまやご家族からの入院や転院に関する相談に対応 |
12:00 | 休憩 |
13:00 | ・関係機関との会議・打ち合わせ ・地域の医療機関や介護施設の担当者との定例会議 ・患者さまの状況に関する個別カンファレンス |
14:30 | ・退院支援や調整業務 |
16:00 | ・記録業務や事務作業 |
17:00 | 退勤 |
これはあくまで一例です。より具体的なスケジュールを知りたい場合は、興味のある病院や施設の地域連携室の情報を調べてみることをおすすめします。
看護師が地域連携室で働くやりがいとメリット
看護師が地域連携室で働くことは、病院内での看護とは異なる、地域に根ざした視点から患者さまを支えるという点で、多くのやりがいとメリットがあります。
- 患者さまやご家族の生活を支えられるというやりがい
- 介護や福祉の視点を身につけられる
- 地域医療への貢献を実感できる
- デスクワーク中心で働ける
看護師としての新たなキャリアを考えるうえで魅力的な要素となるでしょう。
患者さまやご家族の生活を支えられるというやりがい
患者さまやご家族の生活を支えられることは、地域連携室の看護師にとってやりがいのひとつです。
退院後の生活を見据えた支援をおこない、患者さまやご家族が安心して地域で暮らせるようにサポートすることで、感謝の言葉をいただくこともあり、その達成感は格別でしょう。
患者さまの笑顔や「ありがとう」「あなたがいてくれて助かったよ」という言葉は、何よりも励みになります。
介護や福祉の視点を身につけられる
地域連携室では、医療の知識だけでなく、介護保険制度や地域の福祉サービスについての知識も必要となるため、幅広い視点を身につけられます。
退院を控えた患者さまのご自宅での生活について相談を受けた際、医療的な管理だけでなく、介護保険で受けられるサービスや、自費でのサービスによる支援などを提案できます。
また、地域のケアマネジャーと連携して、患者さまの状態やご家族の状況に合わせて、最適な在宅療養プランを検討するといった場面で、医療・介護・福祉の知識を活用できるでしょう。
病院内での看護経験に加えて、介護や福祉の視点を持つことで、総合的に患者さまを理解した支援ができるようになります。
地域医療への貢献を実感できる
地域連携室の看護師は、病院と地域の介護施設や関係機関との橋渡し役として、地域医療に役立てることを実感できます。
たとえば、病院での治療を終えた患者さまが、地域の主治医や訪問看護ステーションと連携し、ご自宅での療養生活を開始できたと報告を受けたとき、地域医療に貢献できたという実感につながります。
患者さまが住み慣れた地域で安心して療養生活を送れるよう、地域の医療・福祉の向上に貢献できることは、やりがいにつながり、働くうえでのモチベーションを高めるでしょう。
デスクワーク中心で働ける
地域連携室の仕事は、病棟での看護業務と比較すると、身体的な負担が少なく、デスクワークが中心となります。
具体的には、書類作成や情報収集、関係機関との連絡調整などがおもな業務です。
そのため、体力的な負担を軽減したいと考えている看護師や、落ち着いた環境でじっくりと業務に取り組みたい方にとって、メリットといえるでしょう。
看護師が地域連携室を辞めたくなる理由とデメリット
地域連携室の仕事は魅力的な側面が多い一方で、辞めたくなる理由やデメリットもあります。
- 臨床から離れることに不安を感じる
- 事務作業の多さが負担になる
- 医療機関や介護施設との連携の難しさがストレスになる
これらは、地域連携室への転職を考える際に、事前に理解しておくべき重要な側面といえるでしょう
臨床から離れることに不安を感じる
地域連携室の仕事は、医療処置をおこなう機会が少ない傾向です。
そのため、これまで臨床の第一線で活躍してきた看護師のなかには、看護技術が低下してしまうのではないかと不安を感じる方もいます。
また、急性期医療で、専門的な知識や技術を活かしたいと考える看護師の方にとっては、物足りなさを感じる可能性もあるでしょう。
事務作業の多さが負担になる
地域連携室の業務は、患者さまや関係機関との調整だけでなく、退院支援計画書や各種報告書などの書類作成、データ入力といった事務作業も多く含まれます。
これらの事務作業に時間を取られ、患者さまへの支援に十分な時間を割けないと感じる場合や、事務作業が苦手な看護師の方にとっては、大きな負担となりがちです。
医療機関や介護施設との連携の難しさがストレスになる
医療機関や介護施設との連携は、関係機関との間で意見の食い違いが生じたり、情報共有がスムーズにいかなかったりするなど、円滑に進むとは限りません。
それぞれの組織のルールや考え方の違いから調整に時間がかかったり、板挟みになったりすることで、ストレスを感じることもあるでしょう。
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関連記事:在宅看護で大切なこと9つ!特徴と在宅看護のメリット・デメリットを解説
地域連携室の看護師に向いている人の特徴
地域連携室の看護師として活躍するためには、特定のスキルや特性が求められます。
- 地域看護に興味関心がある人
- コミュニケーション能力がある人
- 情報収集と分析力がある人
これらの特徴がある方は、地域連携室の仕事でやりがいを感じ、活躍できる可能性が高いといえるでしょう。
地域看護に興味関心がある人
地域連携室の看護師は、病院内だけでなく、患者さまが地域でどのように生活していくかという視点を持ち、地域の医療や福祉に関心がある人に向いています。
地域社会に貢献したいという意欲のある看護師は、この仕事を通して大きなやりがいを感じられるでしょう。
コミュニケーション能力がある人
地域連携室の看護師は、患者さまやそのご家族はもちろんのこと、医師やソーシャルワーカー、ケアマネジャー、介護施設の職員など多くの関係者と連携を取りながら仕事を進めます。
そのため、相手の意見を丁寧に聞き、自分の考えを分かりやすく伝える高いコミュニケーション能力が不可欠です。
円滑なコミュニケーションは、チームワークを高め、より良い支援につながります。
情報収集と分析力がある人
地域連携室の看護師には、情報収集と分析力がある人が向いています。
というのも、患者さまの病状や生活背景、社会資源に関する情報などさまざまな情報を収集し、それらを分析して、患者さまに合った支援計画を立てる必要があるからです。
集めた情報を整理し、課題を明確にする能力が求められます。
地域連携室の看護師におすすめの資格
地域連携室の看護師として、専門性を高め、キャリアアップを目指すうえで、いくつかの資格が役立ちます。
- ケアマネジャー
- 保健師
- 社会福祉士
- 在宅ケア看護認定看護師
- 地域看護専門看護師
資格を取得することで、幅広い視点から患者さまを支援できるようになり、キャリアの選択肢も広がります。
ケアマネジャー
ケアマネジャーの資格は、介護保険制度に関する専門的な知識を深められ、退院後の介護サービスの調整やケアプランの作成に有用です。
地域連携室の看護師がケアマネジャーの視点を持つことで、患者さまの在宅生活をより具体的にイメージし、スムーズな支援をおこなうことが可能になります。
保健師
保健師の資格は、地域全体の健康課題や予防活動についての知識を深められ、地域包括ケアシステムにおける多職種連携を円滑に進めるうえで強みとなります。
地域住民の健康増進という視点を持つことで、退院後の患者さまの生活支援だけでなく、地域全体の健康レベルの向上に貢献できます。
社会福祉士
社会福祉士の資格は、福祉制度や相談援助についての知識と技術を習得できるためおすすめです。
また、生活上の困難を抱える患者さまやご家族に対する相談支援において、状況に合ったサポートを提供できるようになります。
地域連携室において、患者さまの社会的な側面からの支援を強化できるでしょう。
在宅ケア看護認定看護師
在宅ケア看護認定看護師の資格は、在宅医療における高度な看護知識と技術を証明するものです。
退院後もご自宅で療養を続ける患者さまに対して、質の高い看護を提供するために役立ちます。
地域連携室の看護師がこの資格を持つことで、関係機関とのスムーズな連携が期待できます。
地域看護専門看護師
地域看護専門看護師の資格は、次のような地域看護に関する高度な専門知識と実践能力を持つことを示します。
- 地域住民の健康レベルの向上
- 疾病予防
- 健康教育
地域包括ケアシステムの推進において中心的な役割を果たし、地域連携室においてもその専門性を活かせます。
地域連携室の看護師の求人を見つけるコツ
地域連携室の看護師の求人を探す際には、いくつかのコツがあります。
- 医療機関のホームページを確認する
- 求人サイトや転職エージェントを活用する
- ハローワークを利用する
- 地域の看護協会や医療関連団体に問い合わせる
さまざまな方法を組み合わせることで、多くの求人情報にアクセスできる可能性が高まります。
医療機関のホームページを確認する
興味のある病院があれば、まずはホームページの採用情報をチェックしてみることがおすすめです。
求人情報が載っており、ホームページでそのまま応募できる場合があります。
また、病院の雰囲気やスタッフの様子なども知ることができるため、就職した後の姿をイメージできるでしょう。
求人サイトや転職エージェントを活用する
看護師専門の求人サイトや転職エージェントは、地域連携室の求人を豊富に扱っています。
非公開求人を紹介してくれる場合もあったり、キャリアの相談に乗ってくれたりなど、転職活動を全面的にサポートしてくれるでしょう。
ハローワークを利用する
ハローワークでは、地域の医療機関の求人情報を扱っているため、地域連携室での求人を探しやすいでしょう。
窓口では、専門の職員に相談できるため、希望やスキルに合わせた就職相談が可能です。
また、ハローワークならではの地域に密着した求人情報も得やすく、地元の医療機関への就職を希望する方にとって、頼りになる存在といえます。
地域の看護協会や医療関連団体に問い合わせる
地域の看護協会や医療関連団体は、地元の医療機関と密接なつながりがあるため、一般には公開されていない求人情報を保有している場合があります。
とくに、会員に向けて限定的に公開している求人情報もあるため、これらの団体に問い合わせることは、新たな就職の機会を見つける有効な手段のひとつです。
地域の医療事情に詳しい担当者から、有益な情報やアドバイスを得られる可能性もあるため、積極的にコンタクトを取ってみましょう。
まとめ:地域連携室で働く看護師の仕事内容は切れ目のないサポートの提供!
地域連携室で働く看護師の仕事内容は、入院前から退院後、そして地域での生活へと患者さまが安心して療養できるよう切れ目のないサポートを提供することです。
多職種と連携し、患者さま一人ひとりのニーズに合わせた支援をおこなうことで、その人らしい生活を支えられるというやりがいのある仕事といえるでしょう。
地域連携室での勤務は、看護師としての新たな視点やスキルを身につける良い機会にもなります。
<参考サイト・文献>

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