空港看護師とは?2種類の働き方や仕事内容、効率的な求人の探し方を解説

「空港で働く看護師に興味があるけれど、どのような仕事があるのか、どのような働き方ができるのかわからない」と考えている看護師も多いでしょう。
空港看護師の仕事には「検疫官」と「空港クリニックの看護師」があり、それぞれで役割や求められるスキルは変わってきます。
この記事では、空港看護師の具体的な働き方や仕事内容、求人の探し方を解説します。
お読みいただくことで、空港看護師に求められる専門性と、キャリアアップに役立つ知識やスキルがわかるでしょう。
空港看護師とは|「検疫官」「空港クリニックの看護師」という2つの働き方
空港看護師とは空港に携わる看護師のことで、次の働き方があります。
- 検疫官
- 空港のクリニックの看護師
どちらの場合も、看護師資格の保有者であると働けます。働き方を知って、転職する際の参考にしてください。
検疫官
検疫官とは、空港にある「検疫所(渡航者の貨物を検査するところ)」で働く厚生労働省の公務員のことです。
海外から国内に感染症が入ってこないようにチェックする仕事をしています。さまざまな病気の知識や、状況に応じてすぐに対応できる力が不可欠です。
また、海外で流行している病気や、その予防方法についても理解しておかなければなりません。これは、検疫官ならではの大切な役割といえるでしょう。
空港のクリニックの看護師
空港には、旅行者や空港スタッフのためのクリニックがあり、そこで働く看護師も「空港看護師」のひとつです。
たとえば、次のような役割を担います。
- 旅行中の急な体調不良やケガに対応
- 旅行者や空港職員からの健康相談に応じアドバイスや情報提供
- 航空機の事故や災害が発生したときの現場でのトリアージや救護
- 海外渡航に必要な予防接種を実施し、イエローカード(国際予防接種証明書)を発行
外国の方と接する機会も多いため、異文化を理解し、スムーズにコミュニケーションをとる力も求められます。
空港看護師の仕事内容
空港看護師は、検疫所で検疫官として働く場合と空港にあるクリニックで働く場合で仕事内容が異なります。それぞれの業務内容について、くわしく見ていきましょう。
検疫官として働く看護師の仕事内容
感染症の流行状況や最新の情報に常に注意を払い、渡航者の健康を守るために尽力するのが、空港の検疫官の役割です。
そんな検疫官の仕事内容は、次のように多岐にわたります。
業務内容 | ポイント |
検疫業務 | ・入国者の健康状態のチェック ・検疫感染症(新型コロナウイルス感染症やエボラ出血熱など)の検査の実施 ・感染症が疑われる人の隔離・宿泊施設に収容して経過観察 |
衛生業務 | ・感染症の原因となる動物の調査の実施 ・海外から来る船舶や航空機の衛生検査の実施 ・船舶衛生管理証明書の交付 |
健康相談業務 | ・海外渡航の予定者に渡航先の感染症情報や健康管理のアドバイス ・検疫感染症の相談にのり、適切な情報提供や医療機関への紹介 |
予防接種業務 | ・渡航先に応じた予防接種の相談とアドバイス ・予防接種の重要性や安全性に関する情報提供 |
検疫をはじめとした業務には迅速な対応が求められるため、検疫官には高い専門知識とスピード感が必要です。
また、勤務地は空港だけでなく港の場合もあるようです。
空港クリニックで働く看護師の仕事内容
空港のクリニックで働く看護師の代表的な業務には、次のものが挙げられます。
業務内容 | ポイント |
急病やケガの対応 | ・旅行者や空港スタッフの急病(頭痛・胃痛・発熱など)やケガの対応 ・症状が重い場合は他院へ救急搬送 |
体調チェック | ・飛行機に搭乗する前の空港スタッフの体調チェック ・体調不良があれば搭乗前に対応しほかの医療機関と連携 |
事故の対応 | 空港内で発生する事故や火災への対応 |
一般的に、重症者は他院へ搬送したり、事故や火災が起こる頻度は少なかったりするため、空港クリニックで働く看護師は、軽症者の対応がメインとなります。
しかし、空港内での事故や火災の発生した場合には、現場に駆けつけて救護することもあります。
空港看護師の年収
空港看護師の年収は、検疫官と空港クリニックの看護師、それぞれで給与形態が異なります。ここで、詳しい年収をチェックしましょう。
検疫官の年収
検疫官として働く看護師は、公務員としての雇用となるため、安定した年収が期待できます。
厚生労働省の検疫官の募集要項によると、入職時の基本給は22万2,700円です。これに、次のような手当が加わった額が年収になります。
- 扶養手当
- 住居手当
- 通勤手当
- ボーナス
検疫官の年収は、経験年数やスキルなどに応じて調整されます。
空港クリニックの看護師の年収
空港クリニックの看護師の年収は、一般的なクリニックと大きく相違はないでしょう。
というのも、空港クリニックは、おもに医療法人や学校法人が運営しているため、給与形態はほかのクリニックで勤務する看護師の方と同じになるからです。
日本看護協会「2021年看護職員実態調査」によると、クリニックで勤務する看護師の方の平均月収は35万4,563円です。
月収以外にも賞与や手当がつくクリニックもあるため、年収は約425万円以上となる見込みです。
ただし、運営する医療機関や雇用形態などによって異なるため、あくまでも一例であり参考程度としてください。
空港看護師に向いている人の特徴
空港看護師に向いている人の特徴は、次のとおりです。
- 語学力がある人
- 接客スキルがある人
- 冷静な判断力を持っている人
これらの特徴がある人がなぜ向いているのか、その理由を見ていきましょう。
語学力がある人
国外からの旅行者とコミュニケーションを取る機会がある空港看護師にとって、語学力は重要なスキルのひとつです。
さまざまな国からの旅行者が訪れるため、外国語を話せることが強みになります。
英語のほかに中国語や韓国語など、いくつかの言語を話せると重宝されやすいため、転職に有利となるでしょう。
接客スキルがある人
空港での勤務は、旅行者との接点が多いため、一般的な病院以上にホスピタリティ精神が必要になる場合があります。
患者さまに親切かつ丁寧に対応し、安心感を与えられるようにすることが空港看護師に求められます。
冷静な判断力を持っている人
空港で働く看護師は、ときに緊急事態に対応しなければならず、冷静に状況を判断し迅速に対応する能力が必要です。
たとえば、急に体調を崩した旅行者の応急処置や、事故が発生した際の対応などがあげられます。
緊急時に判断力を発揮できる人は、空港看護師に向いているといえるでしょう。
空港看護師として働くメリット
空港看護師として働くメリットは、次のようなものがあります。
- 国際的な環境で働ける
- 安定した職場環境で働ける
- 空港ならではの特別な経験ができる
空港看護師の魅力を、それぞれ解説します。
国際的な環境で働ける
空港は国際的な環境であり、異文化に触れながら働けるのがメリットのひとつです。
英語やほかの言語を使ったコミュニケーションが取れる機会が多いため、語学力も高められるでしょう。
安定した職場環境で働ける
検疫官として働く場合、公務員としての扱いとなるため、福利厚生が充実しており、安定した雇用を受けられるでしょう。
また、空港クリニックでは、重症患者さまをケアするケースはあまりないため、病院と比べると、身体的・精神的に落ち着いて働けることが多い傾向です。
検疫官も空港クリニックの看護師も、いずれも安定した職場環境で働ける点は共通しているといえます。
空港ならではの特別な経験ができる
空港という特殊な環境で、看護師は多様な経験を積めることがメリットです。
機内で急病になった乗客への対応や、感染症の疑いがある渡航者への初期対応など、病院とは異なるスキルや迅速な判断力が養われるでしょう。
また、国際的な環境で働くことは、異文化理解や語学力の向上にもつながり、看護師としてのキャリアパスを広げる機会となります。
空港での経験は、その後の看護師人生において、専門性と柔軟性を高める貴重な財産となります。
空港看護師のデメリット
空港看護師として働くメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 勤務地が限られ転勤の可能性がある
- 早朝・夜間などの変則勤務が必要な場合がある
- 職員が少なく看護師一人の負担が大きくなる
これらのデメリットを知っておくと、実際に働いたときのギャップを感じにくくなります。転職して後悔したくない方は、確認してみてください。
勤務地が限られ転勤の可能性がある
空港看護師の勤務地は、空港内のクリニックや検疫所に限定されます。
たとえば、空港のクリニックには、次の勤務地があります。
- 福岡空港(運営元:医療法人 丸岡内科クリニック)
- 関西国際空港(運営元:近畿大学)
- 羽田空港(運営元:東邦大学)
また、検疫官として働く場合、全国の空港が配属先の候補地となり、2〜3年ごとに異動することも珍しくありません。
これにより、転勤が必要となる場合があり、家族との生活や子育てに影響を与える可能性があります。
早朝・夜間などの変則勤務が必要な場合がある
空港看護師は、早朝勤務や夜遅くの勤務など、不規則なシフトで働く場合があります。
というのも、一部の空港クリニックでは、24時間稼働しているからです。不規則な勤務によって生活リズムが崩れたり、身体的・精神的な負担が大きくなったりするかもしれません。
職員が少なく看護師一人の負担が大きくなる
空港クリニックは、比較的規模が小さくスタッフ数が限られているため、看護師一人あたりの負担が大きくなりがちです。看護業務以外にも、次のような業務が求められます。
- 受付や電話対応
- 備品の管理
- 院内の掃除
通常の病院勤務では、看護助手やほかのスタッフが担う業務を看護師が担当することもあります。また、最小限のスタッフで運営しているクリニックでは、休暇を取得しにくい可能性があります。
空港で働く看護師になるには
検疫官と空港クリニックの看護師、それぞれで働くための方法が異なります。実際の方法を知って、入念な準備をしておきましょう。
検疫官になる方法
検疫官として空港で働くには、厚生労働省の選考に合格しなければなりません。応募資格や必要書類などを次の表にまとめました。
項目 | ポイント |
応募資格 | ・日本国籍であること ・看護師免許を取得していること ・看護師で3年以上の臨床経験があること(准看護師経験は加算されない) ・普通自動車免許を取得していること(業務で普通自動車を運転する場合がある) |
必要書類 | ・履歴書 ・職務経歴書 ・看護師免許証の写し ・小論文 |
応募方法 | ・必要書類を郵送で提出 ・提出先や詳細は、厚生労働省の指定に従う |
選考方法 | ・書類選考 ・人物試験(面接): 書類選考を通過した場合に実施 |
選考期間 | 約1ヶ月~2ヶ月 |
書類選考で合格となった後で、個別的に日程を調整して面接試験がおこなわれます。
空港クリニックの看護師になる方法
空港クリニックで働く看護師になるには、おもに次のルートがあります。
空港クリニックで働く方法 | 注意点 |
空港クリニックの求人に応募 | 応募条件や必要書類は求人情報によって異なる |
空港クリニックを運営する医療機関に入職後、空港クリニックへ配属 | 必ずしも空港クリニックに配属されるわけではない |
ただし、空港クリニックはすべての空港にあるわけではなく、クリニックのスタッフ数も限られています。採用倍率が高くなりやすいため、早めの準備を心がけ、採用試験に備えましょう。
空港看護師の求人の探し方
空港看護師の募集を確認する方法を解説します。
- 検疫官を希望する場合は厚生労働省のサイトを確認
- 空港勤務の求人は航空会社の派遣情報もチェック
- 空港クリニックで働くなら求人サイトや転職エージェントを活用
それぞれ検索方法が異なるため、あなたに合った方法で求人を探してみましょう。
検疫官を希望する場合は厚生労働省のサイトを確認
検疫官として働きたい場合、厚生労働省の求人情報や採用情報をホームページで確認しましょう。
すべての検疫所で応募しているわけではない点に注意が必要です。
空港クリニックで働くなら求人サイトや転職エージェントを活用
空港クリニックで働きたい場合、看護師専門の求人サイトや看護師の転職エージェントを活用すると良いでしょう。
とくに、空港の医療施設は多くないため、専門の求人情報をチェックすると効率的に求人を探せます。
空港勤務の求人は航空会社の派遣情報もチェック
航空会社が空港勤務の看護師の求人情報を提供していることもあります。各航空会社のホームページや人材派遣会社の情報を確認してみましょう。
空港看護師についてよくある質問
空港看護師にまつわるよくある質問にお答えします。
Q1:空港看護師は英語を話せなければいけないのでしょうか?
絶対に英語を話せなければならないというわけではありません。
ただし、語学スキルがあれば採用に有利に働きます。空港看護師として働く場合、英語が話せるのは役立つからです。
とはいえ、スタッフ同士で協力して対応するため、流暢に話せる必要はなく、簡単な会話や指示ができる程度でも問題ないとされています。
Q2:空港看護師になるにはどんな経験が必要ですか?
空港看護師になるために特別な経験は必須ではありません。
しかし、病院やクリニックでの看護師経験があると良いでしょう。
というのも、一般の病院と同じように、空港看護師にも緊急対応や感染症の管理に関する知識が求められることもあるからです。
そのため、これらの分野での経験が豊富であると、採用されやすいでしょう。
空港看護師はグローバルな関りが可能!新しい看護のキャリアを築きましょう
空港看護師は「検疫官」と「空港クリニックの看護師」の働き方があり、それぞれ異なる役割を担います。
語学力や冷静な判断力がある人に向いており、国際的な環境で働けるのが空港看護師の魅力です。
興味がある方は、自分に合った求人を探し、キャリアの選択肢を広げましょう。
<参考サイト・文献>

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