多職種連携における看護師の3つの役割!具体例や大切なことを解説
医療の現場において、多職種連携は患者さまに質の高い医療やケアを提供するために欠かせないものです。
厚生労働省によると、多職種連携は「医療スタッフが専門性をもとに情報共有し、業務を分担しつつ連携して、患者さまに対応した医療を提供すること」と考えられています。
では、多職種連携において、看護師の方はどのような役割を担っているのでしょうか。
この記事では、看護師の方が担うべき重要な役割や連携の方法、大切にしたいポイントをお伝えします。具体例を交えながら解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
多職種連携の看護師の役割3つ
多職種連携において、看護師には次の3つの役割があります。
- 多職種と患者さまの仲介役
- 患者さまの観察とケアの提供
- 看護師はチーム医療のキーパーソン
役割の具体的な内容をみていきましょう。
多職種と患者さまの仲介役
多職種連携において、看護師の方はほかの職種や患者さまのコミュニケーションで仲介役も担っています。たとえば、次のような場面です。
- 医師や薬剤師からの薬の指示や情報を、患者さまにわかりやすく伝える
- 患者さまの治療の疑問を傾聴し、不安の軽減に努める
- 日常生活の様子をリハビリスタッフに共有し、リハビリテーションに活かす
- 患者さまの不安を医師にも共有し、治療やケアに活かす
多職種のなかでも、近い立場で患者さまにかかわっている看護師の方だからこそ、患者さまと多職種をつなげる役割を担えます。
看護師の方は、医療チームが患者さま中心のケアを提供できるようにサポートするとともに、治療やケアの一貫性を保つための重要な存在であるといえるでしょう。
患者さまの観察とケアの提供
看護師の方の基本的な役割は、次の項目に沿って心身を観察したり、ケアを提供したりすることです。
- 体調や病状の変化
- 食事の摂取量
- 排泄状況
- 睡眠状況
- 苦痛の有無や程度
- 抱えている想いや願い
これらの観察したことをもとにアセスメントし、患者さまに適したケアを提供します。
身体面だけでなく、精神面や社会面にも目を向け、不安やストレスを軽減するためのサポートも大切です。
さらに、患者さまだけでなくご家族ともコミュニケーションをとり、想いやニーズに寄り添いながら必要な医療やケアにつなげる役割を看護師の方は果たしています。
看護師はチーム医療のキーパーソン
看護師の方には、チーム医療のキーパーソンという役割があります。
というのも、昼夜を通して患者さまの療養生活をサポートし、長い時間ケアすることから、ほかの医療スタッフと比べて患者さまに近い存在であるといえるためです。
このことから、患者さまのちょっとした変化を敏感に察知し、迅速に対応できます。たとえば、以下のような場面です。
- いつもあちこち徘徊している認知症の患者さまがずっと寝ている
- 食事をスムーズに食べていた患者さまが、最近よくむせる
- 夜間ぐっすり眠っている患者さまが、夜間頻回にナースコールを押す
また、看護師の方は、患者さまの精神面へのケアも重要な役割のひとつです。
たとえば「先生には言えないけど退院が不安」「薬が合っているか不安だけど言い出せない」など、ほかのスタッフに言いにくいことでも、看護師の方には伝えられる患者さまもいます。
看護師の方が患者さまとのかかわりで得た「患者さまの想い」や「心身の変化」などの情報は、ほかのスタッフが適切に判断するための情報源です。
チーム医療においては看護師の方が中心となって、ほかのスタッフと情報を共有すると治療やケアがスムーズに進むでしょう。
看護師が関わる多職種連携の具体例
患者さまに医療やケアを提供する多職種のチームには、さまざまなものがあります。医療チームの種類とかかわる職種についてまとめました。
チーム医療の種類 | 看護師の役割 | 関わる職種 |
栄養サポートチーム (Nutrition Support Team:NST) | 多方面からの視点による栄養管理のサポート | 医師・歯科医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・臨床検査技師など |
褥瘡管理チーム | 褥瘡ケアの検討と提供 | 皮膚科医師・看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・作業療法士など |
集中治療チーム | 急変時や周術期などにおける集中的な治療の提供 | 医師・看護師・臨床工学技士・理学療法士・栄養士 |
緩和ケアチーム | 身体的・精神的な苦痛を和らげる治療やケアの提供 | 医師・看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・臨床心理士など |
退院支援チーム | 退院後の医療や生活支援を受けるためのサポート | 医師・看護師・薬剤師・メディカルソーシャルワーカー・医事課など |
参考: 栄養サポートチーム|国立がん研究センター、褥瘡対策チーム|国立がん研究センター、今後の新興感染症等対応の検討に向けた新型コロナウイルス感染症への対応について|日本集中医療医学会、緩和ケアチームによる医療やケアを受けられる医療施設|広島がんネット、チーム医療の具体的実践事例|厚生労働省をもとに作成
また、看護師の方は退院後の生活でのサポート体制を見据えて、病院内に限らず在宅介護や施設、地域との連携も求められます。たとえば、訪問看護師や施設の看護師のほかに、ケアマネジャーや行政のスタッフとの連携が必要です。
どのチームにおいても、看護師の方は「日々の体調」や「症状の変化」「抱える想い」などの情報をチームに共有します。患者さまに質の高い医療やケアを提供するために、チームのまとめ役として活躍します。
多職種連携で看護師に大切なこと
多職種連携を円滑に進めるためには、看護師の方の心構えやスキルが必要です。ここからは、看護師の方が多職種連携において大切にしたいポイントをご紹介します。
- 多職種連携の目標を明らかにする
- 相手を尊重する姿勢を持つ
- コミュニケーションがスムーズに進むように心がける
- 専門分野の知識とスキルを高める
それぞれ詳しく解説します
多職種連携の目標を明らかにする
多職連携では、患者さまにとっての目標設定を明らかにすることが欠かせません。
- リハビリテーションをおこない自立歩行できる
- 補助具を使用して自分で食事が食べられる
- 痛みがコントロールできて生活の質が向上できる
「患者さまがどうありたいか」という患者さま目線の目標の設定が大切です。多職種連携の目的が明らかになると、医療チームが同じ方向で治療やケアを提供できます。また、それぞれのスタッフが専門性を発揮したケアを実施しやすいでしょう。
看護師の方は患者さまをそばでサポートする存在で、患者さまがどのような想いを抱えているのか引き出す役目を担っています。
目標達成に向けた多職種間の調整役として、患者さまの心身の状態やケアの進行状況を見守り、必要なときには目標に向けて軌道の修正をおこなうのも重要な役割です。
相手を尊重する姿勢を持つ
多職種連携では、医師や薬剤師をはじめ、リハビリテーションのスタッフや管理栄養士、医療事務などさまざまな専門職がかかわります。
専門的な視点や知識を活かしながら患者さまに質の高いケアを提供するには、それぞれの職種の「倫理綱領」を知って、お互いを尊重する姿勢が重要です。「看護職の倫理綱領」のように、ほかの職種にも同じようなものがあります。
- 医師:医の倫理綱領(日本医師会)
- 薬剤師:薬剤師綱領 薬剤師行動規範・解説(日本薬剤師会)
- 理学療法士:倫理綱領(日本理学療法士協会)
相手を尊重する姿勢は、多職種の信頼関係を築くうえで重要なものです。
看護師の方は、ほかの職種も行動指針を示した倫理綱領があることを念頭に置き、お互いに信頼できる姿勢やかかわり方を心がけましょう。
信頼がなければ意見交換や連携が円滑に進まず、患者さまへの最適な医療やケアの提供が難しくなります。
コミュニケーションがスムーズに進むように心がける
多忙な現場では、情報共有が不十分になりがちです。ただ、多職種の連携を効果的なものにするには、質の高いコミュニケーションが欠かせません。
とくに、患者さまの状態が変化したときには、多職種連携においても迅速な対応が必要になり、多職種間での密なコミュニケーションが重要です。
日ごろから多職種間でのコミュニケーションがスムーズだと、急を要する場面でもチームで協力して患者さまをサポートできるでしょう。
ただし、ときには治療やケアの方向性において、職種間で意見が食い違うこともあります。そのような場面では、看護師の方が患者さまの想いを代弁して、多職種で患者さま中心のアプローチができるように促す役割を担います。
また、医療の現場におけるカンファレンスは、多職種連携の質を向上させる重要なものです。
単なる情報交換だけでなく、スタッフ間での議論ができるように看護師の方が中心的役割となることもあるでしょう。
最近では対面のコミュニケーションだけでなく、情報共有ツールとして電子カルテやオンライン上でのコミュニケーションツールなども活用できます。
専門分野の知識とスキルを高める
看護師として効果的な多職種連携を促すためには、専門的な知識やスキルが必要です。
日々の経験や学びを通して、看護師の方が自己の専門性を高めることにより、チーム内での貢献度も高められます。
たとえば、認定看護師や専門看護師などの資格を取得してスキルアップを図ると、医療チームにおいても欠かせない存在となるでしょう。
看護師の専門分野において自信を持って多職種連携を進めると、ほかの職種に対しても信頼感を与え、チーム全体のパフォーマンスを向上できます。
多職種連携で看護師の役割を果たしケアに役立てよう
患者さまに質の高い医療やケアを提供するには、多職種連携が必須です。
看護師の方患者さまと多職種の橋渡し役としての役割があります。
多職種連携における看護師の役割を果たすことで患者さまに喜んでもらえたり、目標が達成したときにはやりがいを感じられたりします。
看護師としての知識やスキルを活かしてチーム医療における重要な存在として活躍し、患者さまにより質の高い医療・ケアを提供していきましょう。
<参考サイト・文献>
チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会 報告書)
今後の新興感染症等対応の検討に向けた新型コロナウイルス感染症への対応について|日本集中医療医学会
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